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インド全土でリアルマネーゲーム禁止へ:若者を救うか、産業を殺すか

インド全土でリアルマネーゲーム禁止へ:若者を救うか、産業を殺すか

2025年11月28日 00:07

1. 「爆発的成長」の裏に潜んでいたもの

インドは、いまや中国に次ぐ世界第2位のオンラインゲーミング市場とされる。約4.8億人が何らかのオンラインゲームを楽しみ、その中心にあったのが、現金やポイントを賭けて遊ぶ「オンラインマネーゲーム」だ。Lexology


トランプゲームのラミー、オンラインポーカー、ファンタジースポーツ、クリケットの予想ゲーム…。スマホ一台あれば数分で参加でき、「数百ルピーから夢をつかめる」とうたう派手な広告がテレビやSNSを席巻してきた。だが、その華やかなイメージの裏側で、静かに生活を壊されていく人々がいる。


政府試算によれば、インドでは約4億5,000万人がオンラインマネーゲームで年間2,000億ルピー(約2,000億円超)を失っているという。Phys.org


しかも、損失は単なる「娯楽費」ではない。借金、家庭崩壊、うつ病、そして自殺──その連鎖が、ここ数年で社会問題として可視化されてきた。


2. 研究者が暴いた「ビジネスモデルとしての依存」

Phys.orgで報じられた最新の分析は、この問題に「搾取」という言葉を当てはめた。インドのジンダル・グローバル・ロースクールのGaurav Pathak氏ら研究者チームは、大手オンラインマネーゲーム企業の財務データや自殺統計を分析し、ビジネスモデルが本質的にユーザーの依存に依拠していると結論づけている。Phys.org


彼らによれば、一部の企業は売上の最大7割をプロモーション費用に投じている。Phys.org


ボーナス、キャッシュバック、フリーベット…。初期段階で「勝てる体験」をさせ、報酬の快感でユーザーを“フック”したあと、レートを徐々に上げていく。負けが込んでもプッシュ通知やメールが届き、「あと一勝で取り返せる」と誘惑し続ける。

臨床現場では「インターネットゲーム障害(Internet Gaming Disorder)」と診断される若者も増えている。Phys.org


精神科医の中には、「ギャンブル依存と本質はほとんど同じで、スマホの画面がカジノになっただけだ」と警鐘を鳴らす声もある。


3. 150年続いた「スキル vs チャンス」論争の終焉

インドのギャンブル規制は、19世紀の「公共賭博法(Public Gambling Act, 1867)」にまでさかのぼる。この法律は「純粋なスキルゲーム」はギャンブルではないとする考え方を採用し、運が支配的なゲームのみを禁止してきた。Phys.org


その結果、「ラミーはスキルか?」「ファンタジースポーツは?」といった論争が延々と続き、裁判所もゲームごとに“スキルか運か”を判断せざるを得なかった。州ごとに判断が分かれ、ある州では合法、別の州では違法というねじれも生じていた。Phys.org


しかし、オンライン化によって状況は一変する。1つのアプリが全国のユーザーをまたぎ、さらには海外サーバーから提供される時代に、「州ごと」「ゲームごと」の線引きでは追いつかなくなったのだ。


4. PROG法:賭け金を伴うゲームを「一律に」禁止

こうした混乱に終止符を打つべく、2025年8月、インド連邦議会は「オンラインゲームの促進と規制法(Promotion and Regulation of Online Gaming Act, 2025:PROG法)」を可決した。King Stubb & Kasiva


この法律のポイントはシンプルだ。

  • 賭け金(stake)や参加料を払って、金銭的リターンを狙うゲームは、スキル・運を問わずすべて禁止

  • 違反すれば最大3年の懲役や多額の罰金など、重い刑事罰の対象

  • 海外から提供されるサービスでも、インド居住者に向けていれば規制の対象
    King Stubb & Kasiva


一方で、以下のような形は認められている。

  • 無料で遊べる「フリープレイ」型

  • 月額課金などのサブスクリプション型

  • 広告収入で成り立つ広告モデル

つまり、政府は「ゲーム」という娯楽そのものを否定しているわけではない。賭け金と依存性の高いマネタイズ手法の組み合わせを切り離そうとしているのである。Phys.org


5. 研究者が見る「福祉国家としての一手」

Pathak氏らの論文は、この新法を単なる「反ビジネス」ではなく、「福祉国家としての新しいゲーム市場の再設計」と位置づける。Phys.org


オンラインマネーゲームは、少数の“ヘビーユーザー”が全体の売上の多くを支える構造になりがちだ。収入に比して過大な額を賭けてしまうユーザーを前提に収益を上げるビジネスは、「消費者保護」という観点から見れば、たしかに“構造的に有害”と言える。


研究チームは、PROG法が他国にとっても「参考モデルになりうる」と指摘する。実際、欧州や東南アジアでも、課金ガチャやルートボックスを巡る規制は強まりつつあり、「ゲームとギャンブルの境目」は国際的な政策課題になりつつある。King Stubb & Kasiva


6. 業界の反発:「20万人の雇用」「2.5兆円市場」が危機に

こうした規制を「やりすぎだ」と批判しているのが、ゲーム業界や一部の経済アナリストだ。

オンラインマネーゲームを含むインドのオンラインゲーム産業は、約2.5兆円規模の市場と推計され、関連雇用は20万人にのぼるとする試算もある。mint


リアルマネーゲーム企業は広告費だけで年間4,500億ルピー以上を投じ、スポーツ中継のスポンサーやインフルエンサーマーケティングの大口顧客でもあった。IPLF


PROG法によってリアルマネーゲームが事実上「ゲームオーバー」となれば──

  • 既存アプリの閉鎖や撤退

  • 大規模なレイオフ(ある企業はインド国内スタッフの6割削減を検討との報道も)

  • スポーツリーグやメディアのスポンサー収入減少

といった“副作用”が現実化しつつある。IPLF


7. 憲法論争:自由なビジネスか、守るべき公共善か

法改正を巡っては、裁判所でも激しい争いが起きている。事業者側は、「職業選択の自由」や「営業の自由」(インド憲法19条1項(g))に反するとして、違憲訴訟を提起している。King Stubb & Kasiva


また、ギャンブル規制は本来「州」の権限に属するのではないかという、連邦制の観点からの問題提起もある。中央政府が一気に全国一律の規制をかけることは、「立法権の越権ではないか」との批判だ。SSRN


政府側はこれに対し、「オンラインマネーゲームがもたらすのは単なる娯楽ではなく、金融犯罪・税逃れ・マネーロンダリングにつながる国家的なリスクだ」と強調。The Economic Times


公共の利益と弱者保護の観点からは、強力な介入が正当化されると主張している。


8. SNSの反応:拍手とブーイングが交錯するタイムライン

法律の是非をめぐる議論は、テレビ討論だけでなく、SNS上でも激しく展開されている。

X(旧Twitter)では、ハッシュタグ #OnlineGamingBill2025 や #RealMoneyGaming がたびたびトレンド入りし、タイムラインは賛否両論で埋まる。

  • 「給料日ごとにオンラインラミーでお金を溶かしていた弟がいる。正直、この法律にはホッとしている。」(20代女性ユーザー)

  • 「ゲーム会社で働いている身としては、この一撃で将来のキャリアが真っ暗になった。依存対策は必要だけど、全面禁止は乱暴すぎる。」(30代男性エンジニア)

  • 「『自己責任』と言う人は多いけど、アルゴリズムと広告に囲まれた環境で、どこまで自由な選択ができるのか。」(政策研究者)


これらは典型的な投稿内容を要約したものだが、実際に似たトーンの声が数多く観測される。業界関係者や弁護士はLinkedInで「一律禁止ではなく、金融市場のような細かなルールベース規制の方が現実的だ」と発信し、linkedin.com


一方で精神科医や教育関係者は「今こそ若者を守るために必要な一歩」として支持を表明している。X (formerly Twitter)

 


政府系の情報発信では、「この法律は“ゲームを殺す”のではなく、“賭博ビジネスからゲームを救う”ためのものだ」と強調されており、公式Facebookページなどでも同趣旨の説明が繰り返されている。Facebook


9. 当事者たちの声:プレイヤー、家族、開発者

ある若いプレイヤーは、インドのニュース番組のインタビューにこう語っていると報じられた。「最初は小遣い稼ぎのつもりだった。けれど、負けを取り返そうとして借金をし、気づけば家族に言えないほどの額を失っていた」。


家族の側からは、「子どもが夜通しスマホを手放さず、成績も落ちていった。アプリが一晩中通知を送り続けるので、実質的に“やめる自由”などなかった」との不満も聞かれる。


一方、ゲーム開発者の中には、「自分たちは物語性やコミュニティ形成を重視した“健全なゲーム”を作ってきたのに、マネーゲームと一括りにされてしまう」と不満を吐露する人もいる。彼らは、「ハイリスクな賭け金モデルだけを的確に規制し、インディーゲームやeスポーツにはむしろ税制優遇や支援策が必要だ」と訴える。storyboard18.com


10. 「楽しさ」と「搾取」をどう切り分けるか

今回のインドの動きは、世界に対しても大きな問いを投げかけている。

  • 誰かの依存や破産を前提に成り立つビジネスを、どこまで許容すべきか。

  • 「自己責任」と「事業者の責任」の境界線をどこに引くのか。

  • ゲームデザインと報酬設計は、どこからが「楽しさ」で、どこからが「搾取」なのか。


オンラインマネーゲームのアルゴリズムは、プレイヤーのプレイ時間・課金履歴・離脱タイミングなどを精密にトラッキングし、離反しそうなユーザーにだけボーナスを提示するといった“パーソナライズされた誘惑”を可能にしている。King Stubb & Kasiva


こうしたテクノロジーの力が「人間の弱さ」を突き続けるとすれば、従来型の「大人なんだから自己責任でしょ」という感覚だけでは対処しきれない。


11. 日本にとっての示唆

日本でも、ソーシャルゲームのガチャや確率表示、未成年の高額課金をめぐる議論は何度も巻き起こってきた。現時点でインドほど大胆な「全面禁止」に踏み切る気配はないが、インドの事例は少なくとも次の2点を考えるヒントになる。

  1. 依存を前提とした収益モデルからの脱却
    「使いすぎるユーザーほど“上客”」という構造をどう変えるか。上限課金やクールダウン期間など、ビジネスインセンティブと保護を両立させる仕組みが問われる。

  2. ゲームとギャンブルの境目の再定義
    「景品表示法」「賭博罪」といった既存の枠組みだけでなく、オンライン特有のデータ駆動型ビジネスに対応した新しいルールが必要になるだろう。


12. おわりに:ゲームを守るために、何を手放すか

インドの新法は、「ゲームの未来を守るために、あえてリアルマネーゲームという巨大市場を手放す」という、極端とも言える選択だ。その是非は、今後の司法判断や長期的な社会・経済への影響を見ていく必要がある。IPLF


しかし一つだけ確かなのは、オンラインマネーゲームがもはや「個人の趣味」レベルではなく、金融・医療・教育・雇用を巻き込む巨大な社会システムになっているということだ。


SNSのタイムラインで飛び交う賛否の声は、その社会システムのひずみを映す鏡でもある。インド発のこの決断は、「ゲームが好きだ」と胸を張って言える未来をつくるために、世界が避けて通れない議論の出発点なのかもしれない。



参考記事

分析によると、インドにおける「搾取的な」オンラインマネーゲームが、財政的、健康的、社会的な害を引き起こしていることが明らかになりました。
出典: https://phys.org/news/2025-11-exploitative-online-money-gaming-india.html

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