体重も炎症も一網打尽?低脂肪ヴィーガン食の“酸性リセット”効果

体重も炎症も一網打尽?低脂肪ヴィーガン食の“酸性リセット”効果

1. イントロダクション

「健康的な食事」と聞けば、これまで多くの日本人が真っ先に思い浮かべてきたのはオリーブオイルと魚介を特徴とする地中海食だろう。しかし2025年6月27日に公開された英インディペンデント紙の記事は、その常識に揺さぶりをかけた。見出しは「ヴィーガン食は地中海食より減量のスタートダッシュに有効」と断じる。independent.co.uk


2. 研究デザインの概要

紹介された研究は米国の研究チームが実施したランダム化クロスオーバー試験である。62人の過体重成人を対象に、①低脂肪ヴィーガン食と②従来の地中海食を16週間ずつ実践させ、その間に4週間のウォッシュアウト期間を設置した。主要評価項目は体重変化、副次評価項目としてPRAL値(Potential Renal Acid Load)や炎症関連マーカーが測定された。independent.co.ukfrontiersin.org


3. 食事性酸負荷と体重減少

結果は明快だった。ヴィーガン期にはPRALが有意に低下し、それに伴い平均5 kg(約13ポンド)の体重減少を記録した一方、地中海期では有意差が認められなかった。酸負荷の低減は慢性炎症の抑制に直結し、インスリン感受性や腸内細菌叢の改善が体重減少に寄与した可能性が高い。研究チームは「アルカリ化作用はカロリー制限とは独立したメカニズム」と結論づけている。independent.co.ukfrontiersin.org


4. メカニズムを深掘り

動物性たんぱく質が豊富な食品は硫黄含有アミノ酸を多く含み、代謝過程で硫酸を産生して体内の酸性度を高める。一方、葉物野菜や果物に富む植物性食品はクエン酸やカリウム塩を供給し、腎臓を介してアルカリイオンを放出することで酸塩基平衡を押し戻す。それが炎症性サイトカインの産生抑制や腸管透過性の改善を促し、結果的に脂肪細胞の肥大を防ぐ――この“酸性リセット”こそが今回の鍵である。frontiersin.org


5. 地中海食の強みと限界

とはいえ、地中海食が「敗北」したと短絡的に解釈するのは早計だ。オリーブオイル由来のオメガ9脂肪酸、魚介に含まれるオメガ3系、ナッツ由来ポリフェノールなど、抗炎症因子は科学的に裏付けられている。実際、地中海食は長期介入で心血管イベントを減少させたとの報告が多い。だが今回の試験が示したのは「短期的な体重減少」という一点において、動物性食品の完全除去が有利に働く可能性があるという事実だ。sciencedirect.comtandfonline.com


6. 経済的インセンティブ

体重だけでなく財布も軽くなる――良い意味で。2024年のJAMA Network Open論文によると、ヴィーガンへ切り替えると食費は1日当たり2.4ドル(約350円)安くなり、年換算で900ドル超の節約になるという。加工肉やチーズの単価を考えれば納得の数字だ。nypost.com


7. SNSの賛同派

インディペンデント紙がX(旧Twitter)で記事を投稿すると、ヴィーガン・コミュニティからは「動物を守りながら痩せるなんて最高」「腸が軽く感じるのは酸負荷が減るからかも」といったポジティブな声が続々。Redditのr/veganでも「皿の力で体重を落とせる」「低脂肪なら満腹まで食べても痩せる」と成功体験がシェアされている。reddit.com


8. SNSの懐疑派

一方、r/scienceのスレッドでは「地中海食の方がエビデンスが厚い」「ヴィーガン食でもポテチと清涼飲料なら不健康」といった批判が寄せられた。「オリーブオイルをほぼ排除する食生活は現実的でない」という投稿も散見され、脂質摂取量の極端な制限に対する不安が透ける。reddit.com


9. 専門家のコメント

共同著者Hana Kahleova医師は「葉物野菜、ベリー、豆類中心の食事は腸内細菌を有益に変え、炎症を抑え、体重を落とす相乗効果がある」と述べる。栄養士の間ではB12・D・オメガ3(EPA/DHA)不足を補うサプリメントや強化食品の併用が推奨されており、環境負荷を考慮したうえでも“プラントフォワード”の潮流は加速しそうだ。independent.co.uk


10. 文化的視点

日本食は本来、穀物と野菜・豆類が主体でヴィーガンとの親和性が高い。戦後に急増した動物性食品摂取を「江戸時代レベル」まで戻すだけでも酸負荷は劇的に下がる。みそ汁に小松菜、玄米に納豆――意外にも“和ヴィーガン”はハードルが低い。


11. 実践ガイド:アルカリ食材トップ10

ブロッコリー/ホウレン草/ケール/ビーツ/アスパラガス/ニンジン/キャベツ/ベリー類/キヌア/レンズ豆。これらを主食・副菜・スムージーで回せば、PRAL目標値-35 mEq/日を容易に達成できる。verywellhealth.com


12. 長期的課題

研究期間は計32週間と十分とは言い難い。減量後のリバウンド、筋量維持、メンタルヘルスへの影響など未解明の点は多い。また、欧米と比べ植物タンパク源が限られがちな日本では、大豆アレルギーやセリアック病など個別事情にも配慮が必要だ。


13. 環境インパクト

畜産は温室効果ガス排出の14 %を占めるとされる。動物性食品を削減し、同量のカロリーを豆類で置換すると、GHG排出は最大90 %削減可能との試算もある。健康と地球――二兎を追って二兎を得る可能性が見えてきた。


14. まとめ

短期的減量という一点では、低脂肪ヴィーガン食が地中海食を凌駕した。しかし長期的心血管予後や文化的受容性を考慮すると、どちらか一方を絶対視するより「動物性を減らし植物性を増やす」という連続的アプローチが現実的だろう。あなたの次の一皿が、体重計の数字だけでなく地球の体温も下げるかもしれない。



参考記事

科学者たちは、減量を始める際にはビーガン食が地中海食よりも効果的であることを発見しました。
出典: https://www.independent.co.uk/news/science/vegan-diet-mediterranean-weight-loss-diet-inflammation-b2778007.html