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「夫に養ってもらえばいいじゃないか」――非正規公務員“妊婦切り”の連鎖と構造的背景

「夫に養ってもらえばいいじゃないか」――非正規公務員“妊婦切り”の連鎖と構造的背景

2025年06月19日 14:27

1. はじめに――“妊婦切り”の衝撃

2025年6月、AERA DIGITAL が「『夫に養ってもらえばいいじゃないか』非正規公務員の“妊婦切り”」という特集を配信すると、SNS 上には瞬く間に「#妊婦切り」が拡散し、当事者や支援者の証言が雪崩のように投稿された。記事で取り上げられたのは、広島県の自治体で6年間勤務した会計年度任用職員の女性。産休・育休を申請したわずか一か月後、「勤務継続の必要がない」と不更新通知が届いたという。x.com

同様の事例は全国各地で確認されており、FN News も「産休・育休を申請したら雇い止め?」と題したレポートで、少なくとも10自治体で同様のケースが表面化したと報じた。fnnews.jp



2. 非正規公務員とは――制度の基礎知識

2-1 会計年度任用職員制度の概要

  • 導入年:2020年度

  • 人数:約74万3,000人(2023年総務省調査)works-i.com

  • 契約期間:最長1年(会計年度末)

  • 任用更新:実質毎年公募・選考(“ゼロベース更新”)

制度は本来、待遇格差是正を目的に創設されたが、単年度契約を盾にした雇い止めを招く「構造的脆弱性」を抱える。ジェンダー統計では4分の3が女性であり、出産年齢と雇用不安定が重なる点も問題を深刻化させている。roudou-navi.org


2-2 海外の類似制度との比較

国雇用区分妊娠・産休中の解雇制限本稿で扱う日本との相違点
英国Fixed-term Civil Servant契約終了予定でも妊娠中は原則90日間の延長義務(2024年法改正案)不更新を実質禁止する保護期間がある
フランスContractuel de droit public産休期間中は契約停止扱い、期間満了でも解雇禁止service-public.fr「期間満了=終了」は認められず罰金あり
コロンビアFixed-term Contract満了時点の妊娠が判明すれば自動延長(憲法裁判所判決1997年)publications.iadb.org司法判断で保護を拡大




3. ケーススタディ――“妊婦切り”の実態

3-1 広島県・北広島町の事例

• 6年勤務のフルタイム任用職員が妊娠報告 → 1か月後に不更新通知。
• 町側は「勤務態度が理由」と説明するも、同僚評価シートでは高評価が並ぶfnnews.jp。
• 労働委員会に救済申立てをしたが、審理終了前に任用期間が終了し退けられた。


3-2 オンライン調査に見る傾向

ニュースサイト S-News Commons のアンケート(回答者356人)では、妊娠を理由に「更新打診がなかった」と答えた非正規公務員が 27%に上った。s-newscommons.com

被害者の声から浮かぶ共通点

  1. 妊娠報告直後に「業務引き継ぎが困難」と言われる

  2. 「育休前例がない」と上司が強調

  3. 「夫に養ってもらえば」と家庭事情に言及

いずれも男女雇用機会均等法の「妊娠・出産を理由とする不利益取扱いの禁止」に抵触し得る発言だが、行政内の監督系統が曖昧で是正が遅れる。



4. 法制度の抜け穴

4-1 労基法の“適用除外”と監督空白

地方公務員は労働基準監督署の直接指導を受けず、内部監察や人事委員会が主体となる。しかし非常勤職員には常設相談窓口が乏しく、権利救済が著しく遅れる。xn--alg-li9dki71toh.com


4-2 総務省マニュアルの限界

総務省は「育休申請を理由に更新拒否は許されない」とQ&Aで明記datu-chihoukoumuin.com。だが罰則も監視機構もなく、多くの自治体が「人件費抑制」を優先し実効性に欠ける。


4-3 “合理的期待”理論の不足

私企業で確立した「契約更新の合理的期待」判例が、公務員任用では十分に類推適用されていない。司法も「任用=行政行為」として慎重姿勢を示すため、救済が長期化する。



5. データで読む妊娠・育休取得の実態

項目2023年度実績備考
非正規公務員総数743,000人総務省
女性比率75%総務省
育休取得者(非常勤・国)294人人事院調査
不更新・雇い止め相談件数1,072件自治労(2024年)


数字が示す通り、対象者の約0.04%しか育休を取れていない一方、雇い止め相談は拡大している。chihei.net



6. 国際基準から見る日本の遅れ

ILO の専門委員会は2024年に「有期契約の期間満了であっても、妊娠を理由に更新しないことは差別に当たる」と再度指摘した。normlex.ilo.org
しかし日本は Maternity Protection Convention(C183/14週有給休暇を規定)を未批准であり、公的部門における保護水準が先進国平均を下回る。



7. 当事者と専門家の声

「妊娠は自己都合だから仕方ない、と言われた。公務の現場でまさかと思った」
— A さん(元会計年度任用職員)x.com

「単年度任用に“雇用継続の合理的期待”概念を導入し、育休の間は契約を自動延長する法整備が急務」
— 竹信三恵子氏(ジャーナリスト/法政大学教員)s-newscommons.com


8. 改革ロードマップ

  1. 契約更新ガイドライン改正

    • 育休取得者を“合理的期待”の特例対象と明記

  2. 労働基準監督権限の拡充

    • 公務部門にもマタハラ是正命令を直接適用

  3. 財政措置とインセンティブ

    • 育休継続予算を国庫負担率に反映

  4. 相談・救済スキームの一元化

    • オンライン申立て→調停→司法へシームレス



9. まとめ――ジェンダー平等の試金石

「人口減少対策」「女性活躍推進」を掲げながら、公共部門が妊娠を理由に女性職員を切り捨てる現状は日本社会の矛盾を象徴している。ILO 基準や諸外国の事例は、固定契約であっても妊産婦を保護できる制度設計が可能であることを示す。


非正規公務員という“官製ワーキングプア”解消は、ジェンダー平等だけでなく行政サービスの質を守る上でも不可欠だ。まずは「年度末更新=リセット」という慣行を見直し、安心して出産・子育てができる公的職場を実現することが、国際社会に信頼される持続可能な日本への第一歩となるだろう。




参考記事一覧

  1. AERA DIGITAL「『夫に養ってもらえばいいじゃないか』 非正規公務員の“妊婦切り”」2025-06-18x.com

  2. FN News「産休・育休を申請したら雇い止め? 非正規公務員の出産・育休取得の壁」2025-02-17fnnews.jp

  3. S-News Commons「非正規公務員は年度末に出産なら雇い止め? 当事者アンケート」2025-04-10s-newscommons.com

  4. Works Report「公務員の5人に1人が非正規――総務省最新調査を読む」2024-07-18works-i.com

  5. datu-chihoukoumuin.com「会計年度任用職員の育児休業と再度の任用」2025-06-11datu-chihoukoumuin.com

  6. ルポ『無法労働――非正規公務員の荒野(1)妊産婦切り』2025-06-12chihei.net

  7. Service-Public.fr「Maternity leave is obligatory」2024-12-23service-public.fr

  8. ILO/NORMLEX「Termination of fixed-term contracts and maternity discrimination(Committee Report)」2024-06normlex.ilo.org

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