まじめな人ほど折れる? 30〜40代がいちばん危ない:成果・育成・介護が同時に来る“ミッドキャリア燃焼”

まじめな人ほど折れる? 30〜40代がいちばん危ない:成果・育成・介護が同時に来る“ミッドキャリア燃焼”

「中堅は強い」「経験があるから大丈夫」――職場では、そんな前提が静かに共有されがちだ。新人は守るべき存在、ベテランは裁量で回せる存在。その間にいる中堅は“現場が分かる万能選手”として、最も都合よく配置される。だが皮肉なことに、この中堅期こそ、バーンアウト(燃え尽き)と職場ストレスにとって最も危険な季節になりやすい。


1) 中堅期に起こる「二重負荷」

中堅の危うさは、仕事の負荷が増えるタイミングと、私生活の負荷が増えるタイミングが重なりやすい点にある。職場では、成果の責任だけでなく「リーダーシップ」「後輩育成」「横串調整」「炎上対応」まで乗ってくる。家庭側では、育児が本格化したり、親の介護が現実味を帯びたり、住宅ローンや教育費がのしかかる。


負荷が増えるのは“時間”だけではない。判断回数、感情労働、対人摩擦、見えない調整、期待に応えるための自己演出――こうした「消耗する仕事」が増える。中堅は現場と上層の板挟みになりやすく、上からは「数字」、下からは「安心」、横からは「調整」、外からは「顧客対応」を求められる。どれも正解が一つではなく、常に“それっぽい最適解”を出し続ける必要がある。


2) バーンアウトは「個人の問題」ではなく「職場の設計ミス」

バーンアウトが厄介なのは、本人のメンタルや根性の問題にすり替えられやすいことだ。「セルフケア」「ストレス耐性」「マインドセット」ばかりが強調されると、本人は“できない自分”を責め、周囲は“できない人”として片づける。だが本質は逆で、慢性的な職場ストレスが適切に管理されていない状態が、燃え尽きへと押し流す。


つまり、バーンアウトが増えているなら、まず点検すべきは個人の性格ではなく、仕事の作り方と運用の仕方だ。
・過大な目標や過剰な監視
・長時間労働の常態化
・「常に返信できる人」が評価される文化
・声を上げづらい空気(心理的安全性の欠如)
・いじめ、ハラスメント、毒性の強いリーダーシップ

こうした“組織の設計”が、じわじわと人を削る。

3) 「吸収役」を期待される中堅が、最も隠してしまうサイン

中堅には「吸収役」が求められる。組織変更のしわ寄せ、上司の曖昧な指示、後輩の不安、顧客の無理難題――それらを“波風立てずに”吸収して、結果だけ出すことが暗黙の美徳になる。しかも中堅本人も、「私は乗り切れるタイプだ」と思い込みやすい。これが危険だ。


サインは分かりやすく崩れる形では来ない。
・疲労が抜けない
・寝つけない/眠りが浅い
・焦りや不安が増える
・やる気が出ないのに仕事は止められない
・皮肉っぽくなる、他者に冷たくなる
・「どうせ無理」が口ぐせになる

それでも中堅は“仕事ができる人”としての自己像を守るため、踏ん張ってしまう。周囲も「いつも通り」に見えるから気づきにくい。経験は防波堤ではなく、むしろ「隠蔽のスキル」になってしまうことがある。


4) 昇進が“報酬”ではなく“罠”になる瞬間:育成なき責任増

中堅の燃え尽きを加速させる典型が、「役割は増えるのに、準備がない」パターンだ。プレイヤーとして優秀だった人が、ある日突然“人を動かす仕事”を背負わされる。ところが多くの職場では、ラインマネジャーに必要な基礎(対話、評価、葛藤処理、業務設計、心理的安全性の作り方)を体系立てて学ぶ機会が少ない。結果、「現場で覚えて」が発生する。


この“現場で覚えて”は、当人の自己効力感を削る。成果は求められるのに、うまくいかない。相談すると「中堅なんだから」と返される。学びの時間は“余裕がある人だけ”のものになり、常に忙しい人ほど育たない。焦りと自己否定が積み上がると、燃え尽きは一気に現実になる。


5) 認知・承認の欠如が、最後の一押しになる

中堅期は「やって当たり前」が増える時期でもある。誰かの尻ぬぐい、トラブル回避、後輩フォロー、空気の調整。うまくいっている限り、成果は“何も起きていないこと”として見えない。ところが本人は、その“何も起きていない状態”を維持するために、膨大な心的コストを払っている。


ここで承認がないと、「自分の仕事は価値がない」という感覚が静かに広がる。評価面談は数字だけ、感謝はない、上司は忙しい。中堅は“組織の心臓”になりやすいのに、心臓が動いていることは称賛されにくい。燃え尽きは、過重労働だけでなく、「意味の喪失」で決定打を受ける。


6) SNSで見える“中堅の本音”(反応まとめ)

この記事の話題は、SNSでも刺さりやすい。「まさに今」「自分のことだ」と感じる層が厚いからだ。投稿の傾向を整理すると、だいたい次のタイプに分かれる。


(共感・実感)

  • 「中堅って、上にも下にも気を使って、家でも責任あって、休む場所がない」

  • 「“経験あるよね?”で雑に仕事増えるの、ほんとそれ」

  • 「忙しい人ほど研修受けられないの、構造バグすぎる」


(怒り・組織批判)

  • 「セルフケア言う前に、人員と目標を現実にして」

  • 「常時対応が“できる人”扱いされるの終わってる」

  • 「管理職にして放置するなら、昇進は罰ゲーム」


(性別役割・家庭負荷)

  • 「仕事の負荷に加えて家事育児の“見えないタスク”が重なる」

  • 「女性の中堅が燃えやすいの、当たり前に負担が偏ってるから」

  • 「介護が始まると詰む。制度はあるけど使いにくい」

(対策・工夫共有)

  • 「“返信は翌営業日”をチームでルール化したら楽になった」

  • 「1on1で“感謝を言語化”するだけで離職が減った」

  • 「仕事の棚卸しをして、やらないことを決めた」


(冷笑・諦め)

  • 「変わるのは個人じゃなく会社だけど、会社は変わらない」

  • 「燃え尽きる前に転職が最適解、って社会が悲しい」


ここで重要なのは、SNSの“愚痴”が単なる弱音ではなく、職場設計へのフィードバックになっている点だ。「個人の頑張り」で解決しない領域が確かに存在する。


7) じゃあ、何を変えればいいのか:個人と組織の“現実的な打ち手”

最後に、記事が示唆する方向性を、実装可能な形に落としてみる。


組織がやるべきこと(最優先)

  1. 仕事を“持続可能”に設計する:目標・人員・期限の整合性を点検し、恒常的な火消しを前提にしない。

  2. 常時対応を評価しない:即レス文化を能力指標にしない。連絡の時間帯・優先度・エスカレーションを明文化する。

  3. 中堅の管理職育成に“保護時間”をつける:学びを“余った時間”に押し込まない。

  4. 承認の仕組みを作る:成果だけでなく、維持・予防・育成の貢献を可視化し、言葉で返す。

  5. 有害な行動にゼロトレランス:いじめ、ハラスメント、毒性リーダーを放置しない。


個人ができること(ただし“組織の責務”を肩代わりしない範囲で)

  • サインを数値化する:睡眠、疲労、焦燥、皮肉、ミス増加などを自分の“警報”として扱う。

  • 役割の境界線を言語化する:「今週はこれ以上は引き受けない」を、感情ではなく業務設計として提案する。

  • 相談を“遅らせない”:壊れてからの相談は選択肢が減る。早めに上司・産業保健・人事などルートを確保する。

  • つながりを守る:中堅期は孤立が燃え尽きを加速する。雑談や小さな助け合いが防波堤になる。


バーンアウト対策は、気合や根性の話ではない。設計の話だ。中堅が健全に働ける職場は、新人にもベテランにも優しい。逆に、中堅が壊れる職場は、いずれ全員が回らなくなる。中堅の燃え尽きは“個人の問題”ではなく、“組織が未来を失うサイン”なのだ。



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