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生理を語れない職場はもう古い? イギリス発「月経インクルージョン」研究が突きつけるもの — 0.9%の日本と、世界で進む「生理と就労」見直しの波

生理を語れない職場はもう古い? イギリス発「月経インクルージョン」研究が突きつけるもの — 0.9%の日本と、世界で進む「生理と就労」見直しの波

2025年12月02日 00:07

1. 「生理はプライベート」のツケが、職場に回ってきている

「生理のことなんて、職場では話しにくい」。
多くの人がそう感じているのではないでしょうか。


広告では「フェミニンケア」「ブルーデー」といった遠回しな言葉が使われ、血の色でさえ青く塗り替えられる。そんな文化の中で育つと、「生理は人前で語ってはいけないもの」というメッセージを知らないうちに受け取ります。Phys.org


しかし、そのタブーの代償は小さくありません。
イギリスのポーツマス大学が2025年に発表した研究は、重い生理症状がどれほど職場でのパフォーマンスとウェルビーイングを削っているのか、そして企業側の対応がいかに遅れているかを、数字で浮き彫りにしました。Phys.org


2. 世界で初めて「職場の月経差別」を本格的に洗い出した研究

この研究は、Equality, Diversity and Inclusion 誌に掲載された「Menstrual discrimination: period pain, productivity and performativity」という論文に基づいています。著者たちは、医療・社会学・組織論など様々な分野にまたがる先行研究を徹底的に洗い直すシステマティックレビューを行いました。emerald.com


結果は衝撃的です。

  • 職場の月経健康を正面から扱った査読付き論文は、世界中でわずか16本しか見つからなかった。emerald.com

  • 42,000人以上の女性を対象にした大規模調査では、**38%が「日常生活に支障が出るほどの生理症状」**を経験していると回答。Phys.org

  • 重い症状を持つ人の多くが、痛み・貧血・不眠・気分の落ち込みなどで集中力や判断力が下がり、「出勤はしているが全くパフォーマンスが出せない」プレゼンティーイズム状態に陥っている。emerald.com


一方で、そうした人を支える仕組みを持つ組織はごく一部にとどまります。

  • 調査対象の組織のうち、月経健康を福利厚生の一部として位置づけていたのは18%。

  • 「生理や子宮疾患への具体的な支援制度」を用意していたのは**12%**しかありませんでした。Phys.org


研究チームは、このギャップを「menstrual discrimination(生理に基づく差別)」と呼び、放置すればうつ・離職・キャリア停滞など長期的なダメージにつながると警鐘を鳴らしています。emerald.com


3. 見えない痛みが、働き方をどう変えてしまうのか

生理に伴う症状は、単なる「お腹が痛い」で片づけられるものではありません。

論文や関連研究を総合すると、以下のような症状が仕事に影響すると報告されています。Phys.org

  • どんな姿勢でも耐え難い下腹部痛・腰痛

  • ふらつきを伴う貧血、倒れそうな疲労感

  • 頭痛、吐き気、睡眠障害

  • イライラや不安、抑うつ感などのメンタル面の変化

  • 子宮内膜症や子宮筋腫など慢性疾患による長期の不調

これらが重なると「とりあえず出社はするけれど、ほとんど何も進まない」という状態に陥ります。実際、他国の研究では、月経関連の不調がある人はそうでない人に比べて欠勤日数が増えるだけでなく、勤務中の生産性も大きく低下することが報告されています。サイエンスダイレクト


しかし、会議室で「今日は生理が重くて集中できません」と素直に言える職場はまだ少数派でしょう。その結果、痛みを抱えたまま働き続ける「サイレント損失」が積み重なっています。


4. なぜここまでタブー視されるのか

研究チームは、「タブー視される文化そのもの」が問題を見えにくくしていると指摘します。emerald.com

  • 生理を直接示す言葉が避けられ、「女性特有の体調」「あの日」といった婉曲表現が使われる

  • 広告やメディアは血液の色を青く変え、現実の身体感覚から生理を切り離してしまう

  • 「プロなら体調管理も仕事」「痛みは気合で乗り越えるべき」といった自己責任論が根強い

こうしたメッセージの積み重ねが、「生理について話すこと=プロフェッショナルでない」といった空気を生み、上司に相談すること自体をためらわせます。


極端な例として、ネパール西部の「チョウパディ」のように、生理中の女性を家から追い出し小屋に隔離する慣習が、現在も形を変えつつ残っている地域もあります。ウィキペディア


そこまで露骨でなくとも、「オフィスには『目に見えない小屋』がある」と感じている人は少なくないはずです。


5. 制度はあるのに使えない──日本の「0.9%問題」

では、日本はどうでしょうか。

実は日本には、1947年の労働基準法で「生理日の就業が著しく困難な女性は休暇を請求できる」と規定されており、世界的に見てもかなり早い段階から生理休暇が法制度として整えられてきました。厚生労働省


ところが現実の取得率は驚くほど低いのです。

  • 厚生労働省の調査によると、2020年度に生理休暇を請求した女性労働者は全体の0.9%。厚生労働省

  • 別の調査では、「生理休暇を一度も取得したことがない」と答えた人が8割を超える結果も出ています。JIL日本経済研究所

  • 国際アンケートでは、「強い痛みがあっても一切休まない」と答えた日本の女性は44%に達していました。毎日新聞

なぜここまで使われないのでしょうか。
複数の調査は、以下のような理由を挙げています。JIL日本経済研究所


  • 「周りの誰も取っていないので取りにくい」

  • 「忙しくて休める雰囲気ではない」

  • 「上司(特に男性)に言い出しにくい」

  • 「制度はあるが無給なので、収入面で使えない」

つまり、日本は制度は早くから整えたが、文化と運用が追いついていない国ともいえます。


一方で、東京の企業では、男性社員が「生理痛シミュレーター」を装着して痛みを疑似体験し、職場の理解を深めようとする取り組みも始まっています。体験した男性からは「こんな痛みの中で毎月仕事をしているのか」と驚きの声が上がったといいます。Reuters


こうした試みは、タブーをほぐす一つのきっかけになるでしょう。


6. 世界では何が議論されているのか

ポーツマス大学の研究は、単に「生理はつらい」と訴えるだけでなく、企業に対して具体的なアクションを求めています。Phys.org


提案されている主な対策は次のとおりです。

  • 生理休暇や在宅勤務など、症状に応じて柔軟に働ける選択肢を用意する

  • トイレに生理用品を常備し、安心して使える設備を整える

  • 生理や婦人科疾患についての研修・勉強会を行い、管理職にも基礎知識を持たせる

  • 評価や昇進で不利にならないよう、運用ルールを明文化する

  • 「女性」だけでなく、トランス男性やノンバイナリーなど、月経を経験する全ての人を視野に入れた言葉遣いを心がける

こうしたポリシーを導入した組織では、欠勤日数が減り、生産性やエンゲージメントが高まるという報告も出てきています。Phys.org


7. SNSに広がる反応——共感と不安、二つの波

今回のPhys.orgの記事は、公開から間もなく英語圏・中国語圏のSNSで拡散され、ニュースアグリゲーターやソーシャルメディアまとめサイトにも取り上げられました。sciurls.com


SNS上の声を眺めると、大きく4つのトーンが見えてきます。


①「やっと研究が追いついた」という安堵と共感

生理痛やPMSで仕事に支障をきたしてきた人たちからは、

  • 「ずっと『気合が足りない』と言われてきたけど、データで示されると救われる」

  • 「“サボり”扱いされてきた経験がある。これをきっかけに理解が広がってほしい」

といった声が多く見られます。


2024年に日本のメディアが生理休暇の低取得率(0.9%)を報じた際も、X(旧Twitter)では「生理休暇取るって言える人いるの?」という投稿が話題になりましたが、今回の研究はそうしたモヤモヤを世界規模で代弁する存在になっています。TBS NEWS DIG


② 「生理休暇は逆差別になるのでは」という不安

一方で、「女性だけ特別扱いすると、採用や昇進で不利になりかねない」という懸念も根強くあります。類似の議論は、オーストラリアやヨーロッパで生理・更年期休暇制度が話題になるたびに繰り返されています。Victorian Women's Trust


これに対しては、

  • 「すでに社会の多くの制度は“生理がない人”を前提に設計されている」

  • 「サポートがあってもなお、キャリアや賃金ではジェンダー格差が残っている」

といった反論も多く、コメント欄は活発な議論の場になっています。


③ 「女性だけの問題ではない」という視点

近年のSNSでは、「生理=女性」という図式への違和感を示す声も増えています。
トランス男性やノンバイナリーの当事者からは、

  • 「自分も生理があるが、女性トイレには入りにくい。どう配慮してくれるのか」

といった投稿が散見されます。


研究論文自体は主に「women(女性)」を対象としているものの、今後の職場ポリシーは、身体とジェンダーアイデンティティが一致しない人たちも含めた設計が求められる、という指摘は重要です。emerald.com


④ 企業の“攻めの施策”への評価

男性社員が生理痛シミュレーターを体験した日本企業の事例や、オーストラリアで生理・流産・更年期をカバーする有給休暇を導入した企業のニュースが拡散されると、ポジティブなコメントが目立ちました。Reuters


  • 「こういう会社なら働きたい」

  • 「単なる“配慮します”ではなく、制度と教育をセットでやっているのがいい」

といった反応は、採用広報の観点からも企業に無視できないシグナルになっています。


8. 日本の職場が今すぐできる5つのこと

では、日本の企業・組織はこれから何をすればいいのでしょうか。
ポーツマス大学の研究や各国の事例、日本の統計を踏まえて、現実的かつすぐに始められるアクションを5つに絞ってみます。


1. 「生理」という言葉を正式な社内用語にする

  • 社内文書や就業規則で、遠回しな表現ではなく「生理」「月経」という言葉を使う

  • 研修やミーティングで、管理職が率先してその言葉を口にする

たったこれだけでも、「話題にしてはいけない雰囲気」はかなり和らぎます。


2. 既存の生理休暇制度を“使える制度”に見直す

  • 有給・無給の扱いを含め、実際に使える仕組みになっているかを点検する

  • 申請のフローを簡素化し、特別な証明書や詳細な理由説明を不要にする

  • 利用状況を人事評価に影響させないことを明文化する

日本の調査でも、「無給だから使えない」「評価に響きそうで怖い」といった理由が取得率の低さと強く結びついていました。TBS NEWS DIG


3. 生理用品・休憩スペースなど“物理的な配慮”を整える

  • トイレに無料の生理用品を常備する

  • 痛みが強いときに横になれる静かなスペースを用意する

  • テレワークやフレックスの選択肢を広げる

これだけでも、「どうしても今日は耐えられない」という日のハードルはぐっと下がります。


4. 上司・人事向けの基礎研修を行う

  • 生理やPMS、子宮内膜症などの基礎知識

  • 配慮を申し出られたときの対応ロールプレイ

  • 「病名がなくてもつらい日はある」という前提の共有

研究でも、管理職の無理解がサポート不足の大きな要因と指摘されています。emerald.com


5. 当事者の声を、匿名で集めて可視化する

  • 匿名アンケートで「生理や婦人科の不調で困ったこと」「あったら嬉しい配慮」を聞く

  • 結果を社内に共有し、改善策を一緒に考える

当事者の声を「エモい意見」として流すのではなく、データとして扱うことが重要です。ポーツマス大学の研究も、まさにその一歩を踏み出したと言えます。emerald.com


9. 「我慢する力」から「助けを求める力」へ

生理にまつわる話題は、どうしても個人的でデリケートに感じられます。
しかし、3人に1人が日常生活に支障が出るレベルの症状を抱えているのであれば、それはもはや「個人の問題」ではなく、組織のパフォーマンスにも直結する社会課題です。Phys.org


日本では、“痛みに耐えて仕事をやり切る人”が「頑張り屋」と称賛されがちです。
でも本当は、痛みを抱えたときに「今日は無理をしない」と言えること、そしてそれを組織が受け止めることこそが、持続可能な働き方の土台ではないでしょうか。


ポーツマス大学の研究は、科学的なエビデンスを通じてこう訴えています。

生理は病気ではない。だからこそ、その自然なリズムとともに働ける職場を作るべきだ。emerald.com


タブーを壊す一歩は、誰かの勇気ある告白かもしれません。
でも、組織としてできることはたくさんあります。


この記事をきっかけに、自分の職場では何から変えられそうか、ぜひ一度考えてみてください。



参考記事

新しい研究が月経に関するタブーに挑み、より包括的な職場環境の促進を目指す
出典: https://phys.org/news/2025-11-menstrual-taboo-inclusive-workplaces.html

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