Amazonの実店舗戦略が大転換 — FreshとGoが“全店クローズ”へ、勝ち筋は配送とWhole Foodsに

Amazonの実店舗戦略が大転換 — FreshとGoが“全店クローズ”へ、勝ち筋は配送とWhole Foodsに

Amazonが「店舗での買い物」を大きく組み替える。2026年1月27日、Amazonは自社ブランドの実店舗であるAmazon Fresh(スーパーマーケット)とAmazon Go(小型・コンビニ型)について、実店舗の運営を終了し、原則として全店を閉鎖する方針を明らかにした。閉鎖は段階的に進み、多くの店舗が2月初旬までに営業を終える見通しだ。さらに、閉鎖対象のうち一部はWhole Foods Marketの店舗として転換される可能性があるという。


「伸びるのはネット、軸はWhole Foods」へ

今回の決定は、Amazonが“実店舗=未来の買い物体験”として続けてきた実験の一区切りを意味する。Amazon Goはレジ待ちをなくす「Just Walk Out(手に取って出るだけ)」の象徴として登場し、Amazon Freshは「ネット企業が作る次世代スーパー」の看板を背負って出店を拡大してきた。しかしAmazonは、Fresh/Goという自社ブランドの実店舗で、他社が簡単に真似できない体験を“採算が合う形で”大規模に展開することが難しかった、と認めた格好だ。


一方でAmazonは、食料品ビジネスそのものから退くわけではない。むしろ勝ち筋を「配送」と「Whole Foods」に定め、投資を集中する。Whole Foodsはすでに高価格帯・品質重視のイメージを確立し、Amazonの会員施策とも親和性が高い。加えてAmazonは、日用品と生鮮をまとめて届ける即日配送の拡大を“次の伸びしろ”として強調している。店舗を増やすのではなく、生活導線の中心を「アプリ上の買い物カゴ」に寄せる戦略だ。


なぜFresh/Goは伸び悩んだのか:店舗運営の“地味な難しさ”

SNSの議論で目立つのは、「Amazonほどの物流企業でもスーパー運営は難しいのか」という驚きだ。確かにAmazonは倉庫・配送の効率化に強みを持つ。しかしスーパーやコンビニは、仕入れ、鮮度管理、棚割り、欠品対応、惣菜のオペレーション、スタッフ配置、万引き対策、近隣需要の読み違いなど、“毎日の小さな失敗が積み上がる産業”でもある。オンラインの在庫最適化と、売り場の現実は似て非なるものだ。


さらにFresh/Goは「価格訴求」でウォルマート級になりきれず、「品質・体験」でWhole Foods級の強いブランドにもなりきれなかった、という中途半端さを指摘する声もある。つまり、客の頭の中で“その店に行く理由”が固まりにくかった。Amazonは「経済モデルが成立しない」と説明したが、裏返せば「決定的な差別化ができなかった」とも読める。


“レジなし”はどこへ行く:技術の成果は残る

Amazon Goを象徴した「Just Walk Out」は、消費者の関心を強く集めた一方、運用コストや精度、例外処理の難しさが取り沙汰され続けた。SNSでも「便利だけど、結局は監視カメラとセンサーのコストが重そう」「誤検知や返品時の対応が面倒」という印象論が語られやすい。今回の閉鎖は“レジなし”そのものの否定というより、技術を旗印にした小売チェーン運営が、収益化までの距離が遠かったという現実を突きつけた。


ただし、店舗チェーンは閉じても、技術や学びが消えるわけではない。AmazonはGoで得た知見を、別業態(例えばWhole Foods内の新しい売り場や、物流・無人化の取り組み)へ移転させることができる。実店舗での試行錯誤は“高い授業料”だったとしても、配送や既存ブランド強化に資するなら、Amazonにとって完全な損切りではない。


影響は誰に:従業員、地域、テナント

閉鎖で気になるのは現場の雇用だ。報道やSNSでは「友人が働いていたが、ニュースで初めて知った」「店側から十分な説明がなかった」という投稿が広がり、不安と怒りが混じる。実店舗は倉庫と違い、地域の生活者と向き合う“顔”でもあるため、突然の閉店は信頼の毀損につながりやすい。


また、地域によってはFreshが“近所の新しいスーパー”として期待されていたケースもある。特に都市部では、競合が少ないエリアに出店していた店舗もあり、「あそこがなくなると買い物が不便になる」「次は何が入るのか」という生活に直結した嘆きが見られる。一方で、閉鎖店舗の一部がWhole Foodsへ転換されるなら、雇用や空きテナント問題が一定緩和される可能性もある。もっともWhole Foodsは価格帯も品揃えも異なるため、同じ役割を担えるとは限らない。


SNSの反応:落胆、皮肉、納得——“Amazonらしい”賛否の割れ方

 


SNSの反応は大きく分けて6つの論点に整理できる。


1)純粋な落胆:「便利だったのに」
Freshを日常使いしていた層からは、閉鎖を惜しむ声が目立つ。「夜遅くでも揃う」「惣菜が意外と良かった」「店内が広くて快適だった」など、個別店舗の体験は評価されていた。特に“近所にあるから使っていた”タイプの支持は、閉店で一気に行き場を失う。


2)従業員目線の不安:「事前連絡がないのは厳しい」
Redditなどでは、働く側の情報共有の薄さを問題視する投稿が続く。閉店は経営判断として理解できても、現場への伝え方や転籍・補償の丁寧さが問われる、という論点だ。


3)皮肉・揶揄:「結局、店舗は甘くない」
「ネットの王者でも、スーパーは難しい」「棚が埋まっていないと客は戻らない」といった、店舗運営の泥臭さを語るコメントも多い。Amazonが“なんでも支配する”というイメージの反動として、「万能ではない」と確認する空気もある。


4)Whole Foods期待:「転換ならむしろ歓迎」
「FreshよりWhole Foodsの方が安心」「品質面で納得できる」という声もある。ただし、Whole Foodsは価格が高いという印象も強く、「転換しても買い物が安くなるわけではない」という冷静な突っ込みがセットで語られがちだ。


5)配送シフト支持:「最適化として合理的」
Amazonが強い領域に寄せるのは当然、という意見だ。特に都市部では、即日配送やサブスクの利便性が上がれば“店舗がなくても困らない”という感覚も広がる。配送の受け取り体験(時間指定、置き配、品質保証)が改善されるなら歓迎、という見方である。


6)レジなし技術への再評価:「結局、コストに勝てない」
“未来感”はあっても、異常系対応、万引き抑止、システム維持費などが積み上がると採算が合わないのでは、という推測が繰り返される。ここには「テクノロジーで小売の摩擦を消す」という夢への期待と、現実のコスト構造への懐疑が同居している。


これからの焦点:閉店の先にある“次の店舗”

今回の発表は「実店舗を諦めた」と言い切るには早い。Amazonは新しい大型店コンセプトや、Whole Foodsでの実験的売り場、そして配送の拡張を並行して語っている。つまり、Fresh/Goという看板を下ろしても、実店舗を“完全に捨てる”のではなく、成功確度の高いブランド(Whole Foods)と、武器が明確な領域(配送)に寄せながら、別フォーマットの可能性を探る動きだ。


消費者にとっては、店舗が減ること自体よりも、「買い物の摩擦がどこに移動するか」が重要になる。レジ待ちが消えても、配送枠が取れない、欠品が多い、代替提案が弱い、鮮度の当たり外れがある——そうした新しい摩擦が残るなら、勝者にはなれない。逆に、配送体験が“店舗に行く理由”を上回る水準に達すれば、Amazonの決断は時代の先取りとして評価されるだろう。


実店舗の閉鎖は、敗北宣言にも見える。しかし「伸びない事業を畳み、勝てる場所へ資源を移す」という点では、Amazonらしい冷徹さでもある。SNSで賛否が割れたのは、その冷徹さが、生活者の便利さと、働く人の不安の両方に直結するからだ。次に評価されるのは、“閉め方”ではなく、“次の便利さ”をどこまで早く、どこまで確実に届けられるか——その一点に尽きる。



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