Amazon「AIで効率化」の裏で進む“第2波” — なぜ今、再び数千人規模の削減なのか

Amazon「AIで効率化」の裏で進む“第2波” — なぜ今、再び数千人規模の削減なのか

「次はどこが削られるのか」——。巨大企業の再編報道は、社内外の空気を一変させる。Amazonが、AI活用を軸とした業務の作り替えと、組織構造の見直しを理由に、再び数千人規模の人員削減に踏み切る可能性があると伝えられた。昨年10月に白領(ホワイトカラー)中心で約14,000人を削減したばかりだが、今回はそれに匹敵する規模になり得るという。長期目標として「約30,000人規模の削減」を視野に入れているとも報じられ、企業の“次の形”が問われている。


「AIで効率化」だけでは説明しきれない構図

今回の報道で目を引くのは、AIが単なるコスト削減の道具ではなく、「組織そのものの設計変更」を伴っている点だ。Amazonはこれまでも、生成AIによるコード作成、いわゆるAIエージェントによる定型作業の自動化など、ホワイトカラー業務の置き換えを進めてきた。AIが“できること”が増えれば、当然「人がやる理由」は再定義される。


一方で、Amazonのトップは「AIだけが原因ではない」とも示唆している。ポイントは“層(レイヤー)”だ。組織が成長するほど管理の段数が増え、意思決定が遅くなり、仕事が「成果」より「調整」へ寄っていく。そこにメスを入れる——という説明は、AIブームとは別の次元で、企業が抱えがちな慢性病への対処にも見える。


つまり今回の再編は、

  • AIによる作業置換(仕事の中身の置き換え)

  • 組織の階層削減(仕事の流れの置き換え)
    が同時に走っている可能性がある。前者は職務単位で効いてくるが、後者は部署横断で効いてくる。両方が重なれば、人員に与えるインパクトは大きくなる。


どの領域が影響を受けうるのか

報道では、AWS、リテール、Prime Video、人事部門(People Experience and Technology)など複数領域が挙げられている。ここから読み取れるのは、「AI投資の中心」と「コスト圧縮の対象」が必ずしも一致しないという現実だ。


たとえばAWSはAIの主戦場である一方、営業・サポート・運用・管理といった周辺機能も巨大だ。リテールは収益の中核だが、業務は多層化しやすい。Prime Videoはコンテンツ投資と収益のバランスが常に問われる。人事はAI導入の影響を最も受けやすい領域の一つで、採用・評価・問い合わせ対応など定型処理の自動化余地が大きい。


“AIに賭ける”ほど、逆説的に「AI以外を薄くする」圧力も高まる。


「90日猶予」が示す“社内転職”モデルの限界

前回の削減では、対象者が一定期間給与支払いを受けながら社内公募に応募できる仕組みが取られたとされる。これは「退職=即戦力流出」を緩和し、社内での再配置を促す設計だ。しかし第2弾が同規模で来るなら、社内の空席そのものが足りず、再配置の受け皿が細る可能性がある。


社内転職が機能するには、(1)空きポジションが十分ある、(2)スキルの移転が可能、(3)採用側がリスクを取る、の3条件が要る。大規模削減が続く局面では、この前提が崩れやすい。


テック業界の“共通課題”としてのレイオフ

Amazonに限らず、テック企業はここ数年、レイオフとAI投資を同時に進める局面にある。資本市場は「成長」だけでなく「効率」を強く求め、企業は人件費の重みを再評価せざるを得ない。そのうえ生成AIが、企画・開発・運用・バックオフィスの広範囲で“自動化の幻想”ではなく“現実的な改善”を持ち込み始めた。


ただし、ここで誤解しやすいのは「AIが人を全て置き換える」という単純図式だ。実際には、

  • 仕事の一部がAIに置き換わる

  • その結果、必要な人の“構成”が変わる(ジュニアよりシニア、実装より設計、など)

  • 同時に、組織の“管理コスト”が削られる
    という複合現象が起きる。レイオフは「AIのせい」でもあり、「AIを口実にした構造改革」でもあり得る。


SNSの反応:不信、怒り、現実論が交錯

SNSでは、このニュースをめぐって感情の振れ幅が大きい。特にRedditでは、単なる人員削減ではなく「雇用の質」「国境を越える人件費最適化」「働き方の矛盾」まで議論が広がった。


1) 「AIは口実。実態は海外移転・外注では?」

ある議論の軸は、AIよりもオフショア化への疑念だ。「米国内の雇用を削って、別地域で採用が増えているのでは」という見方や、ビザ制度・海外採用を絡めて批判する声が目立つ。加えて「リモートが一般化した瞬間から、距離の“遠さ”は会社にとって障壁ではなくなった」という冷めた指摘もある。


ここではAIは“主役”というより、“正当化の看板”として語られがちだ。


2) 「RTO(出社回帰)を強める一方で、海外には仕事を移すの?」

働き方の矛盾を突く声もある。出社回帰を進める企業文化がある一方で、業務自体は国境を越えて最適化される——そのギャップに不満が噴き出す。「国内の社員には出社を求めるのに、コストの安い地域で採るのは都合が良すぎる」というニュアンスだ。
“オフィスに来い”と“国境を越えて安く採る”が同居すると、従業員の納得感は下がる。


3) 「文化が悪い」「層が厚すぎる」…内部目線の自己診断

別のRedditコミュニティ(Amazon従業員関連)では、より生々しい“内部目線”が出る。

  • 「AIの成果が十分でないのに、AI投資のために他を削っているのでは」

  • 「マネジメントや評価の文化が人を疲弊させる」

  • 「人が減るほど残ったチームが骨だけになり、品質や保守が崩れる」
    といった声が並ぶ。中には「人が多すぎるのではなく、プロジェクトの“風呂敷”が広すぎる」という反論もあり、削減の是非は一枚岩ではない。
    ただ共通するのは、“現場が既に余裕を失っている”という危機感だ。

4) 「自動化が進むほど、人間の生活はどうなる?」

LinkedIn上では、より社会的な視点からの嘆きも見られる。自動運転やロボティクスの例を引き合いに、「便利さのために人の仕事を削る社会でいいのか」という倫理的な問いが投げられている。これはAmazon単体への批判というより、AI・自動化全体に向けた不安の表出だろう。


これから何が起きる?3つの論点

最後に、この話題を追ううえで重要な論点を3つに絞っておきたい。

  1. 削減の“中身”:人数だけでなく、どの職種・等級・地域が対象か。AIの影響は職務によって濃淡が出る。

  2. 再配置の実効性:社内公募や異動が機能するのか。大量削減が続けば、制度の理想と現実が乖離する。

  3. AI投資の回収:AIで生まれた効率が、顧客価値・収益・生産性のどこに現れるのか。投資が重いほど、短期の“成果演出”が起きやすい。


Amazonのレイオフ報道は、単なる「またビッグテックが切った」という話ではない。AIが業務を変え、組織を変え、雇用の常識を変える——その連鎖の中心に、世界最大級の雇用主がいるという事実が重い。


AIの導入が加速するほど、問われるのは技術力だけではない。企業が、働く人の不安と社会の納得感をどう設計するか。次の発表が、そこに答えを出せるかどうかが注目される。



出典URL

  1. Business Matters
     https://bmmagazine.co.uk/news/amazon-slash-jobs-ai-overhaul-second-round/

  2. Reuters(2026年1月22日付):30,000人削減目標、来週にも開始の可能性、影響を受けうる部門、Amazonがコメントを控えた点
     https://www.reuters.com/business/world-at-work/amazon-plans-thousands-more-corporate-job-cuts-next-week-sources-say-2026-01-22/

  3. The Verge(2025年の14,000人削減に関する経緯):前回削減の文脈(AI・再編・社内猶予など)を補う背景
     https://www.theverge.com/news/807825/amazon-job-layoffs-2025-ai

  4. Reddit(r/technology スレッド):海外移転・雇用・RTOなどをめぐる“世論的”反応の例
     https://www.reddit.com/r/technology/comments/1qkbl0m/amazon_plans_second_round_of_corporate_job_cuts/

  5. Reddit(r/amazonemployees スレッド):社内文化、AI投資への懐疑、骨格チーム化への不安など“従業員目線”反応の例
     https://www.reddit.com/r/amazonemployees/comments/1qa9pxl/amazon_layoffs_from_14000_to_a_potential_30000/

  6. LinkedIn(Reuters投稿のコメント欄):自動化が雇用に与える影響への倫理的な懸念の例
     https://www.linkedin.com/posts/reuters_amazonis-planning-a-second-round-of-job-activity-7420222489663877122-Culy