スターバックス、ロボットバリスタで新たな一杯の革命を!スタバ再生の切り札は“ロボットと手書き” ─ AI導入で“第三の場所”は戻るのか

スターバックス、ロボットバリスタで新たな一杯の革命を!スタバ再生の切り札は“ロボットと手書き” ─ AI導入で“第三の場所”は戻るのか

1. ドライブスルーの向こう側で起きていること

コーヒーを買うという日常の行為が、いま静かに作り変えられている。米国の一部店舗では、ドライブスルーで注文を受けるのが“人”ではなくAIロボットになることがある。店内では、バリスタがレシピ確認や手順の迷いを「仮想の相棒」に相談し、バックヤードでは在庫を数える地味で骨の折れる作業がスキャンで置き換わる。


狙いは単純だ。「待たされる」「品切れ」「オーダーのもたつき」──顧客が感じる小さなストレス(摩擦)を消すこと。スターバックスは、そのために数億ドル規模の投資を続けている。


2. “売上は戻り始めた”のに、株価が冷えた理由

直近の決算では、米国の既存店売上が2年ぶりにプラスへ転じた。数字だけ見れば反転の兆しだ。ところが投資家の視線は別の場所に向かう。人員増強を含む支出が利益を押し下げ、「売れても儲からない」懸念が再燃したからだ。


ここで重要なのは、スターバックスが「コスト削減」と「現場投資」を同時に掲げている点だ。今後3年で大きなコストセーブを打ち出しながら、店のオペレーションを支えるための投資も止めない。相反する二つの目標を両立させる鍵として、同社はテクノロジーを選んだ。


3. “手書き”の復活と、AIの加速は矛盾なのか

就任後の新体制が象徴的に打ち出したのが、カップへの手書きメッセージの復活だ。数字では測れない「つながり」を取り戻すため、という説明は分かりやすい。さらに店内の居心地を上げる改装、アームチェア、セラミックマグなど、“滞在したくなる店”への回帰も進める。


一方で、AI注文やAIチャットボットの導入は加速している。いかにも皮肉に見える組み合わせだが、経営側の理屈はこうだ。AIは人の代わりではなく、人が“もてなし”に集中するための道具。人がやらなくていい確認作業や滞留をAIが吸収し、店内の空気を良くする時間を捻出する──という発想である。


4. AIが狙うのは「会話」ではなく「摩擦」

今回の動きで注目したいのは、AIが“味”を作るというより、プロセスの詰まりを解消するために配置されていることだ。

  • ドライブスルー:注文処理をAIが担い、スタッフは挨拶や配膳の丁寧さに回る

  • カウンター裏:レシピ確認やイレギュラー対応をAIが即答し、迷い時間を削る

  • 在庫管理:数える・記録する・欠品を見つける作業をスキャンで短縮し、品切れを減らす
    この“見えない時間”が削れれば、待ち時間が減り、イライラが減り、結果として「また来よう」が増える。スターバックスがAIを「体験の潤滑油」として扱っているのは、このためだ。

5. それでも残る、労働とブランドの火種

ただし、現場が抱える問題はオペレーションだけではない。労働組合との対立は続き、経営陣の報酬や働き方への批判も起きやすい。店舗の「第三の場所」性を取り戻すと言いながら、トイレ利用のルール強化など“締め付け”の印象を与える施策もある。


つまりスターバックスは、「温かさ」を掲げながら「管理」を強めざるを得ない局面にいる。AIはこの矛盾を解消する魔法ではない。むしろ、AI導入のメッセージが強すぎると「人を減らしたいのでは?」という疑念が先に立ち、ブランドの情緒価値が揺らぐリスクもある。


6. SNSの反応:期待は「楽になるなら歓迎」、不安は「また混むのでは?」

SNS上では、反応は大きく3つに分かれやすい。


(1)賛成派:「その“面倒”が減るならいい」

特に現場目線の投稿では、「レジを回すより、フロアでの対応やドリンク作成に人を回したい」「ただし十分な人員と賃金が前提」といった声が目立つ。AIや端末を歓迎する条件として、“人への投資”を求める論調だ。
言い換えると、AIが人件費削減の口実になった瞬間に支持は反転する、ということでもある。


(2)懐疑派:「AI相手の注文は、結局ストレスが増えるのでは?」

ドライブスルーAIに対しては、冗談めかして「認識ミスで何度も言い直す未来」を描く投稿も出ている。スターバックスはカスタマイズが多く、用語も独特だ。音声認識が少しでも躓けば、待ち時間どころか“やり直し”が増えてしまう。


AIの精度が体験を左右する領域だけに、導入初期の失敗はSNSで拡散しやすい。


(3)本質派:「問題はAIじゃなく、モバイル注文と現場の詰まり」

別の潮流として、「混雑の原因は、モバイル注文の割り込み構造や店舗ごとの運用ブレ」と見る意見もある。実際、モバイルとドライブスルーと店内の三つ巴で“順番の体感”が崩れると、顧客は不公平感を抱きやすい。


この文脈では、AIは主役ではなく、行列と順番の設計(キュー設計)を整えるための道具として評価される。


(4)“手書き復活”への皮肉と共感

カップの手書きメッセージ復活には、「嬉しい」「久しぶりにスタバらしい」という好意もある一方で、「強制された笑顔(forced joy)に見える」といった冷笑も混ざる。ここはブランドが“人の温度”を売る以上、避けて通れない論点だ。現場が疲弊していると、演出は逆効果になる。


7. 値上げは“最後の手段”──ただしゼロではない

トップは値上げ停止を掲げてきたが、将来の値上げ可能性は残した。インフレ沈静化やコーヒー価格の落ち着き、さらに関税の見直しなど外部環境が味方すれば、値上げに頼らず利益を戻せる。


だが現実には、賃金・原材料・店舗改装・テック投資が同時に走る。売上が戻っても利益が戻らなければ、値上げの誘惑は再び強まる。経営が「最後のレバー」と呼ぶのは、まさにブランドの信頼を削りかねない手段だからだ。


8. “第三の場所”は復活するのか──チェックすべきポイント

スターバックスの勝負どころは、AIそのものよりも「AIで何を空けたか」だ。

  • AI導入で本当に待ち時間は短くなったか

  • 品切れは減ったか(在庫管理の改善が効いているか)

  • スタッフの体験は改善したか(負担が減ったか、監視が増えたか)

  • 店内の滞在価値は上がったか(椅子・導線・雰囲気・清潔感)

  • 労使関係の緊張は緩むのか、むしろ燃料になるのか
    このうち一つでも“逆回転”すると、SNSはすぐに「やっぱりね」に傾く。逆に、待ち時間と品切れが目に見えて改善し、スタッフの余裕が戻れば、「AIは裏方でいい仕事をしている」という最も強い肯定につながる。

9. 結論:ロボットが淹れるのはコーヒーではなく、“余白”だ

スターバックスの再生策は、AIでコーヒーを美味しくする話ではない。AIで“余白”を作り、その余白を人が“もてなし”に変換できるかどうかの実験だ。


手書きメッセージ、居心地の良い空間、第三の場所──そうした価値は、忙しさに押しつぶされると一瞬で失われる。だからこそ同社は、効率と温度の両方を追う。


ロボットは、ブランドを救う英雄にも、幻滅を加速させる装置にもなり得る。勝負を決めるのは、AIではなく「現場の空気が戻るか」という一点だ。



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