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「人を伸ばすAI」が3倍成長 ─ Google出身チームのYoodli、評価額3億ドル超 “置き換えないAI”が企業研修を変える

「人を伸ばすAI」が3倍成長 ─ Google出身チームのYoodli、評価額3億ドル超 “置き換えないAI”が企業研修を変える

2025年12月07日 09:24

評価額3倍、“人を置き換えないAI”が主役に

生成AIブームのニュースは「また仕事がAIに奪われるのでは」と不安を煽りがちだ。その流れの中で、あえて逆張りするスタートアップがある。シアトル発のYoodli(ユードリ)だ。


同社は2025年12月、4,000万ドルのシリーズB資金調達を発表。これにより企業価値は3億ドル超と、わずか半年で3倍に跳ね上がった。累計調達額は約6,000万ドルに達し、AIを使った「コミュニケーション練習」のニッチ領域から、一気に本格派のエンタープライズプレイヤーへとステージを上げつつある。TechCrunch


そんなYoodliが掲げるキーワードは、「AI built to assist, not replace people」──AIは人を置き換えるのではなく、支える存在であるべきだという思想だ。このメッセージが今、テック業界のSNSで大きな共感を呼んでいる。



Yoodliとはどんなサービスか?

Yoodliは、一言でいえば「会話のフライトシミュレーター」である。


ユーザーはブラウザ上で、営業商談、上司としてのフィードバック面談、採用面接、1on1、リーダーシップコーチングなど、さまざまなシナリオを選択する。画面の向こう側にはAIで動く“相手役”が登場し、ユーザーの発言に応じてリアルタイムに反応。想定外の質問を投げかけたり、あえて難しい態度を取ったりしながら、本番さながらのやり取りを繰り返すことができる。TechCrunch


セッション後には、話すスピードや間、否定的な言い回しの頻度、相手の発言をどれだけ拾えているかといった定量・定性のフィードバックが返ってくる。企業は自社の営業プロセスやマネジメントモデルに合わせて、ロールプレイの台本や評価軸をカスタマイズ可能だ。


当初のYoodliは、プレゼンやスピーチの練習に特化したコンシューマー向けツールとしてスタートした。しかし利用者が面接対策や営業ピッチ、難しいフィードバック面談の練習など、より現場に近い用途に使い始めたことで、事業の主戦場は自然と企業研修へとシフトしていったという。TechCrunch


現在はGoogle、Snowflake、Databricks、RingCentralといったテック企業だけでなく、フランクリン・コヴィーなどのコーチングファームも顧客に名を連ねる。彼らは自社メソッドをYoodli上に組み込み、“AI付きのオリジナル研修”としてクライアントに提供している。TechCrunch



数字で見るYoodli:売上9倍、社員数3倍

今回の大型資金調達の裏には、かなり攻めた成長曲線がある。

・2025年5月 シリーズAで1,370万ドルを調達
・2025年12月 シリーズBで4,000万ドルを調達(リードはWestBridge Capital。Neotribe、Madronaなどが参加)
・半年で企業価値は3倍、3億ドル超に到達
・過去1年で売上は約900%成長、従業員数は40名超と約3倍に増加


とくに売上の伸びと組織拡大ペースは、B2B SaaSスタートアップとしてもかなりアグレッシブだ。GeekWire


Yoodliは具体的なユーザー数を公表していないものの、TechCrunchの取材に対し、プラットフォーム上で実施されたロールプレイの回数と総練習時間が、シリーズAからBまでの間に約1.5倍に増えたと説明している。TechCrunch


資金の使い道は、AIコーチング機能や分析機能の拡充、パーソナライズの強化、そしてAPAC地域を含むグローバル展開の加速だ。特に日本語や韓国語、複数のインド諸語など、非英語圏への対応を進めている点は、日本のユーザーにとっても無視できない。TechCrunch



「AIは0→8までは運んでくれる。最後の1〜2は人間が担う」

CEOのVarun Puri氏は、インドから18歳で米国に渡った自身の経験をよく語る。優秀であっても、アクセントや自己主張のスタイルの違いが原因で、実力を正しく評価されない仲間を多く見てきたという。


そこで彼がたどり着いたのが、「AIを使って、誰もが安心して練習できる場を作る」という発想だ。彼は「AIは人をゼロから“かなり上手い”レベルまで押し上げてくれるが、最後の微妙なニュアンスや人間らしさを磨くのは、やはり人間のコーチや仲間との対話だ」という立場を取る。TechCrunch


実際、Yoodliはプロのコーチを排除するのではなく、

  • 日々の練習とフィードバックはAIが担当

  • 重要な節目や感情面のサポートは人間のコーチが行う
    という“協業モデル”を前提に設計されている。AIセッションのデータを踏まえ、人間のコーチが「どこで詰まりやすいか」「どのような癖があるか」を理解しやすくすることで、より濃いセッションを提供できる構造だ。TechCrunch


旧来型研修との決定的な違い:無限ロールプレイと“ジャッジのない場”

Puri氏は、従来型の企業研修を「長い資料や動画を早送りで眺めて終わる受け身の学習」だと批判する。学んだ気にはなるが、実際の商談や面談の場でとっさに言葉が出てこない──そんな経験は多くのビジネスパーソンに覚えがあるだろう。TechCrunch


Yoodliが目指すのは、その真逆だ。

  1. 実践中心
    練習の主役は常にユーザーの発話。AIの相手役は、あくまで「ボールを投げ続ける存在」に徹する。

  2. 無限の“打席”
    従来のロールプレイは時間と人手に制約があり、1人が体験できる回数は限られていた。Yoodliなら、納得いくまで何十回でも繰り返しトライできる。

  3. 評価の怖さが薄い
    上司や同僚を相手にすると「下手なところを見せたくない」という心理的ハードルがあるが、AI相手なら失敗しても恥ずかしくない。GeekWireの取材でも、あるユーザーは「AIだからこそ、本音に近い練習ができる」と語っている。GeekWire


この「ジャッジされない場」と「現場に近い練習」の両立が、企業側にとっても個人にとっても魅力的に映っている。



SNSでの反応:祝福ムードと冷静な視線

今回の資金調達と高い評価額は、SNSでも大きな話題になった。


LinkedInでは祝福と期待の声が多数

  • 資金調達発表のポストには、投資家やパートナー企業、SaaS業界の関係者から「おめでとう」「AIロールプレイはセールスコーチングを一変させる」といったコメントが並んだ。LinkedIn

  • 「一番好きなAIツールの一つ」「新しい営業イネーブルメントの標準になる」といった、現場のプロダクトマーケターや営業マネジャーからのポジティブな評価も目立つ。LinkedIn


X(旧Twitter)やテック系掲示板では、より多様な議論

  • 「人を置き換えず、スキルを伸ばす方向にAIを使う好例」と、いわゆる“Human-first AI”の象徴として持ち上げる声

  • 「とはいえ、3億ドル超のバリュエーションはAIバブルでは?」という冷静な見方

  • 「従業員の会話データをAIに学習させるとき、どこまで守秘義務やプライバシーを担保できるのか」と懸念を示すコメント


Techmemeのスレッドでも、ニュースリンクとともに「YoodliはAIコーチング市場のカテゴリーリーダーの一つになりつつある」といった評価が紹介されている。


このように、祝福ムード一色というよりは、「人を伸ばすAI」というコンセプトへの期待と、データ利用・AI依存への慎重な視線が同時に存在している構図だ。



なぜ今、コミュニケーションAIコーチが伸びるのか

Yoodliの躍進は、いくつかの潮流が重なった結果とも言える。

  1. リモートワークとグローバルチームの常態化
    オンライン会議が当たり前になったことで、プレゼンやファシリテーション、1on1の重要度は確実に上がった。一方で、対面なら伝わっていたニュアンスがオンラインでは伝わりにくく、マネジャーやリーダーの“会話力格差”が露呈しやすくなっている。

  2. エンタープライズ研修の再発明ニーズ
    多くの企業がLMS(学習管理システム)やeラーニングを導入してきたが、「動画は見たけれど行動は変わらない」という問題に直面している。Yoodliはその不満の受け皿になっている。GeekWire

  3. “安全な実験場”としてのAI
    実際の商談や評価面談で失敗すると、売上やキャリアに直結するダメージになる。AI相手なら、いくら失敗しても現実には影響しない。これは、心理的安全性を重視する近年のマネジメントトレンドとも相性が良い。

  4. グローバルタレントの活用
    アクセントや文化の違いを理由に、非ネイティブが過小評価される問題は根深い。Puri氏自身のバックグラウンドもあり、「非ネイティブが武器として使えるコミュニケーションAI」という文脈で語られることも増えている。TechCrunch


APAC・日本市場へのポテンシャル

TechCrunchによると、Yoodliは今回の資金を使って、アジア太平洋地域での展開を強化する計画だという。すでに日本語や韓国語、フランス語など複数言語に対応しており、ローカル市場向けのカスタマイズも視野に入れている。TechCrunch


日本市場で特に相性が良さそうなのは、次のような場面だ。

  • 大企業の営業研修:台本通りの「型」を教えるだけでなく、想定外の質問やクレームにどう応じるかを、AI相手に何度もロールプレイ

  • 若手マネジャーの1on1練習:「部下との本音の対話」が苦手なマネジャーが、AI部下相手にまずは練習

  • 外資・グローバル案件向けの英語プレゼン対策:日本語・英語両方でロールプレイし、言語をまたいだコミュニケーションを磨く


日本では「人前で失敗したくない」という文化的プレッシャーが強いが、Yoodliのような“見られない練習場”は、その心理的ハードルを下げる装置になるかもしれない。



それでも残る課題と論点

もちろん、Yoodliのアプローチにも課題はある。

  1. 本当にスキルは定着するのか?
    ロールプレイの回数や話した時間など、活動量は測りやすい。しかし、「顧客との関係性が良くなったか」「部下のエンゲージメントが上がったか」といったアウトカムは、まだ十分に実証されているとは言い難い。今後はLMSやCRM、人事データとの連携を通じて、学習とビジネス成果の相関をどこまで示せるかが鍵になる。

  2. データプライバシーと倫理
    実在する顧客や従業員に関するセンシティブな会話をAIに話す場合、その音声・テキストデータをどう扱うのか。モデルの学習に使われるのか、どこまで匿名化されるのか、企業側のチェックポイントは多い。Yoodliはエンタープライズ向けとしてセキュリティやプライバシーに配慮していると説明するが、今後も透明性が求められるだろう。yoodli.ai

  3. AI依存と“スクリプト人間”のリスク
    AIが作った理想的なフレーズをなぞるだけでは、会話が画一的になり、かえって人間らしさを失う可能性もある。Puri氏が強調するように、AIはあくまで「0→8」に引き上げる道具であり、最後の1〜2は人間が自分で磨く必要がある。

  4. 競合との競争激化
    AIによるコーチングや面接練習の領域には、すでに複数のスタートアップが参入している。Yoodliは「特定のトレーニング領域に深く入り込み、パートナーと一緒にカスタマイズする」戦略で差別化を図っているが、その優位性をどこまで維持できるかは未知数だ。TechCrunch


おわりに:AIが“努力の仕方”を変える時代へ

Yoodliのストーリーは、「AIが人間の仕事を奪うのか」「それとも人間を強くするのか」という議論に、一つの実例を提示している。


仕事そのものを丸ごと自動化するのではなく、「本番前の練習」「振り返り」「セルフコーチング」といった、これまで個々人の根性と時間に任されてきた領域をAIが支える。そんな未来像だ。


SNSの反応を眺めていると、Yoodliに寄せられているのは単なるAI礼賛ではない。「怖くないAI」「努力の質を上げてくれるAI」への期待と、「その裏側にあるデータと権力構造をどうコントロールするか」という冷静な疑問が、同時に存在している。


評価額3億ドル超という数字は、その綱引きの最前線にYoodliが立っていることの証でもある。今後、日本を含むアジア市場でどのような形で展開していくのか、そして本当に人のコミュニケーションを豊かにするのか。Yoodliの次の一手は、“人とAIの関係”を考えるうえで、重要なケーススタディになりそうだ。



参考記事

元Google社員が設立したYoodli、AIを活用し人を補助することで評価額が3億ドル以上に3倍増加
出典: https://techcrunch.com/2025/12/05/ex-googlers-yoodli-triples-valuation-to-300m-with-ai-built-to-assist-not-replace-people/

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