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学力低下の犯人はスマホ? “学校スマホ禁止”は効くのか、最新データで検証

学力低下の犯人はスマホ? “学校スマホ禁止”は効くのか、最新データで検証

2025年12月18日 00:04

2025年12月16日、米公共ラジオ系のWBUR「Here & Now」は、ここ10年の学力テスト低下とスマートフォン/SNSの関係、そして「学校での携帯電話禁止は学びを立て直せるのか」という問いを短いニュース・セグメントで投げかけた。WBUR


このテーマは、教育現場にとって“分かりやすい悪役”になりやすい。だが同時に、家庭の事情、治安、いじめ、学力格差、パンデミック後の学習の遅れなど、学校だけではどうにもならない要因が積み重なっているのも事実だ。では「スマホを学校から遠ざける」ことは、どこまで効くのか。研究と現場の声、そしてSNS上の議論から輪郭を描いてみたい。


“スマホ禁止”でテスト得点は上がったのか:フロリダの準実験

近年もっとも注目を集めた材料の一つが、フロリダ州の大規模学区を対象にした研究だ。州法は「授業時間中」の携帯使用を制限したが、分析対象の学区ではさらに厳しく、登校から下校まで(昼休みや移動時間も含め)スマホを消音してバックパック内に保管させる、いわゆる“ベル・トゥ・ベル”型の運用を行ったとされる。NBER


研究では、学校建物レベルのスマホ活動データ(校内での“利用の痕跡”)と、学区の出席・懲戒・テスト得点などの行政データを組み合わせ、規制前後で校内のスマホ利用が大きく落ちたことを確認している。具体的には、校内スマホ活動が平均で約3分の2減った、という要旨がNBERのダイジェストに示されている。NBER


肝心の学力面では、「導入直後の1年目」でははっきりした改善が見えにくい一方で、「2年目」に入ってから得点が小幅に上向いた、というのが複数メディアの共通した読み取りだ。Education Weekは、効果が“控えめだが”全体で0.6パーセンタイルポイント、春の最終テスト同士で比べると1.1ポイント程度と紹介している。Education Week


数字だけ見れば「たったそれだけ?」と思うかもしれない。けれど、数十万人規模の集団平均を政策で動かすのは難しい。小さなシフトでも、対象が巨大であれば“社会全体の上積み”になる——そんな評価も、議論の背景にある。


ただし副作用も:懲戒(停学など)の急増と公平性

一方で、この研究が強烈に示したのは“副作用”だ。導入初期には停学などの懲戒が増えたとされ、月次では前年同月比で25%増という記述もある。NBER


Education WeekやHechinger Reportは、初年度の停学増が特に黒人学生に偏り得る点を強調し、「段階的な導入」や「持たせたまま禁止する運用の難しさ」など、設計面の課題を挙げている。Education Week


ここで重要なのは、スマホ禁止が“正しいか”以前に、運用は必ず摩擦を生むという現実だ。取り締まりが強いほど、校内の空気は締まり、教師の負担も増える。逆に取り締まりが弱いと、ルールは形骸化し「守る子だけ損」になりやすい。政策は、正しさと実装可能性の綱引きになる。


得点改善の鍵は「集中」だけではない? 出席という“別ルート”

もう一つ見逃せないのが、出席の変化だ。Education Weekは、特に中高生で欠席(無断欠席)の改善が見られ、得点改善と結び付いている可能性を示す。Education Week


「教室の雰囲気が落ち着けば学校に来やすくなる」「昼の途中で“迎えに来て”と気軽に連絡できないことで、簡単に帰りにくくなる」——理由は複数考えられるが、少なくとも“校内でスマホを触れない”ことが、集中の改善だけでなく行動パターン(出席)にも波及し得る、という視点は大きい。


つまり、スマホ禁止が効くとしても、それは「授業中の注意力が上がった」一本道ではなく、学校という場の“居心地”や“離脱しやすさ”を変えた可能性がある。ここを読み違えると、禁止だけを強化しても同じ効果が出ない、という落とし穴にはまりやすい。


“万能薬”ではない、という反論もある:国際研究と生徒の声

一方で、スマホ禁止の効果を疑問視する声も根強い。アイルランドのダブリン市立大学(DCU)の報告は、国際研究のレビューと生徒への質的調査を踏まえ、「スマホ禁止が学業・いじめ・ウェルビーイングに与える影響は小さい/限定的」という結論を“主要な所見”として掲げている。また「厳しい禁止ほど、生徒は抜け道を探す」とも指摘する。Dublin City University


この視点は重要だ。学校からスマホを追い出しても、学校支給のタブレットや家庭の端末は残る。さらに言えば、学校で“我慢”しても放課後に反動が来るなら、総量としてのスクリーン時間は減らないかもしれない。禁止は、生活全体の設計(家庭・地域・オンライン空間)とセットで考えないと、期待ほどの成果が出ない可能性がある。


SNSの反応:賛成派は「常識」、慎重派は「運用と安全」、懐疑派は「効果が小さい」

では、現場や一般の感覚はどうか。SNSや掲示板の反応を拾うと、論点は大きく3つに分かれる。


1)賛成派:「学びに集中できないのは当たり前。まず取り上げろ」

Hacker Newsでは「親が“日中に子どもへ直接連絡できない”ことに強く反発するのが普及の壁」といった趣旨の投稿が目立つ。Hacker News


また、教師コミュニティのRedditでも、校内でのスマホ管理ができれば授業が成立しやすくなる、という実感ベースの語りが繰り返される。Reddit


この層の論理はシンプルだ。「大人ですらスマホに負ける。子どもが勝てるわけがない」。そして、学校が今すぐ実行できる数少ない“手の届く改革”として、携帯規制に期待が集まる。


2)慎重派:「安全と例外処理をどうする? 親の不安は消えない」

一方で、保護者側の不安は根深い。Redditの議論には、銃撃や爆破予告などを想定して「緊急時に子どもと直接つながれないのが怖い」「学校の対応を信用できない」といった切実な声がある。Reddit


さらに、医療的理由(例:持病の管理)でスマホが生命線になり得るケース、言語支援で翻訳アプリが必要なケースなど、「例外」をどう扱うかが現場の火種になることも指摘されている。Reddit


ここは、“禁止するか否か”の二択ではなく、緊急連絡の手段・医療・合理的配慮を制度設計として先に用意できるかが、賛否を分けるポイントになる。


3)懐疑派:「効果が小さい」「別要因(テスト制度やコロナ回復)では?」

Hacker Newsでは、得点上昇が小さいことや、時期的に“コロナ後の回復局面”と重なるのでは、という疑義も出る。Hacker News


Hechinger Reportも、学力上昇の因果を判定する難しさ(テストが易化した可能性、別施策の影響)を比喩で説明しつつ、研究が準実験で工夫している点と、それでも残る不確実性を併記している。The Hechinger Report


つまり、「スマホ禁止は効くかもしれないが、期待値を上げすぎるな」という立場だ。ここにDCUのような「国際研究は混在している」という整理が重なると、議論は一気に複雑になる。Dublin City University


では、どう設計すべきか:“禁止”を成果につなげる5つの条件

「禁止する/しない」だけで終わらせないために、研究とSNSの論点を踏まえると、少なくとも次の条件が見えてくる。

  • 段階導入(グレース期間):導入初期に懲戒が跳ね上がりやすいなら、警告→指導→措置の順に“慣らし”を入れる。Education Week

  • 保管方法の標準化:教師が個別に取り締まると燃えやすい。ポーチ等も万能ではなく「破られる」「抜け道が生まれる」前提で運用を詰める。Reddit

  • 緊急連絡の代替ルート:保護者不安を“気のせい”扱いしない。災害・事件時の連絡手順を可視化する。Reddit

  • 公平性のモニタリング:懲戒が特定属性に偏る兆候が出たら即修正。ルールの正しさより、運用の公正さが信頼を左右する。Education Week

  • デジタル・リテラシーをセットに:禁止だけでは“放課後に爆発”しがち。オンライン空間の歩き方を教える設計を、学校の役割として手放さない。Dublin City University


結論:スマホ禁止は「一手」にはなる。でも「それだけ」で勝てる戦いではない

WBURが投げかけた問い——「スマホ禁止で学びは立て直せるのか」。WBUR


現時点の最も誠実な答えは、「一定の条件下では、小さく効く可能性がある。しかし副作用と限界も大きい」だろう。フロリダの研究が示すのは、スマホを遠ざけることが“集中”だけでなく“出席”や“学校の空気”を変え得る一方、導入初期の懲戒増や公平性の問題が避けられないという現実だ。Education Week


そしてSNSの反応は、その現実をさらに生々しく映す。「親の不安」「抜け道」「医療・配慮」「コスト」「教師の負担」——スマホは、単なるガジェットではなく生活インフラになってしまった。だからこそ、学校がやるべきは“取り上げるかどうか”の議論だけではない。
取り上げた先に、子どもが自分でコントロールできるようになる道筋を作れるか。 そこまで含めて初めて、禁止は“学力対策”ではなく“教育”になる。



参考記事

携帯電話とソーシャルメディアがテストの成績に与える影響
出典: https://www.wbur.org/hereandnow/2025/12/16/cell-phones-test-scores

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