【アメリカ】「若者の酒離れ」の陰で、50〜64歳の多量飲酒が増加 ― 日本も見過ごせない晩酌の変化

【アメリカ】「若者の酒離れ」の陰で、50〜64歳の多量飲酒が増加 ― 日本も見過ごせない晩酌の変化

「最近の若者は、お酒を飲まない」。そんな話を聞くと、飲酒による健康問題も自然に小さくなっていくように思える。

しかし、社会全体の数字が改善していても、その内側で別の方向へ進んでいる人たちはいる。

米ワシントン・ポストが2026年9月23日に紹介した飲酒研究は、この見落としやすい問題を浮かび上がらせた。日本から注目したいのも、若者がどれだけ飲まなくなったかという話だけではない。日々の生活にすっかり組み込まれた、中年期の晩酌である。


全体は減少、それでもコロナ前には戻っていない

研究は医学誌「Annals of Internal Medicine」に発表された。南カリフォルニア大学のKeck Medicineなどの研究者が、2018〜2024年の米国の全国健康面接調査に参加した成人11万4,352人のデータを分析している。

米国内科学会の発表によると、2024年は2022年に比べ、飲酒する人の割合と、多量飲酒に該当する人の割合がともに低下した。若い世代で減少が目立った一方、多くの集団ではコロナ前と同等か、それを上回る水準にあった。

これは、同じ人を追い続けて禁酒の効果を測った研究ではなく、各時点の調査データから集団の傾向を調べる横断研究だ。「一人ひとりが何杯減らしたか」を示すものではない。


注目すべき「例外」は50〜64歳

大学の発表では、全体の飲酒率は2022〜2024年に約2%、多量飲酒率は8%超低下した。一方、50〜64歳では2018〜2024年に飲酒率が約4%、多量飲酒率が36%超増加していた。

ここで注意したいのは、比較期間が違うことだ。全体の減少は2022年からの2年間、中年層の増加は2018年からの6年間を比べた数字である。また、36%超という数字は増加率であり、「50〜64歳の36%が多量飲酒をしている」という意味ではない。

研究は、若者が飲酒を減らした理由まで検証していない。健康意識の変化や飲酒に対する価値観の変化は考えられても、今回の結果だけで原因を決めつけることはできない。

「若者は健康的で、中年は自制心がない」といった世代論にしてしまえば、かえって必要な問いが抜け落ちる。どんな生活の中で飲酒が増え、誰が支援につながりにくいのか。その違いを見る必要がある。


日本でも、気になるのは中年層

日本の状況を考える手がかりになるのが、厚生労働省の2024年「国民健康・栄養調査」だ。

生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している人の割合は、男性13.9%、女性9.3%。年代別では、男性は60代の21.6%、女性は50代の18.4%が最も高かった。

これは日本でも米国と同じ増加が起きたという証拠ではない。日本のこの数字は2024年時点の分布であり、米研究とは飲酒の判定基準も年齢区分も異なる。数値を並べて、どちらの国が深刻かを判断することはできない。

それでも、「飲酒問題は若者の無茶な飲み方に注意すればよい」という見方では、中年層の課題を拾いきれないことは分かる。

仕事を続けながら親の介護を担う。退職後の暮らしを考える。家庭での役割が変わる。こうした状況と飲酒の関係は、今回の米研究が証明したものではないが、日本で支援を考える際に確認したい生活背景だ。

同じ「毎晩飲む」でも、食事を楽しむためなのか、気持ちを切り替えるためなのか、眠れない夜をやり過ごすためなのかで、必要な対応は変わってくる。


SNSには「翌日を大切にしたい」という声も

飲酒を減らす動きをめぐり、SNSではどんな経験が語られているのか。

 

公開投稿を確認できたRedditの2024年のスレッドでは、ミレニアル世代の投稿者が、飲酒を減らした理由として長期的な健康への関心や、二日酔いのつらさを挙げていた。返信には、少量でも翌日の調子が悪くなり、一日を無駄にしたくないという声や、睡眠への影響を気にする声があった。

親や家族の飲酒問題を見て、自分は同じ道を歩みたくないと考えたという経験談もある。その一方で、つらい状況に対処するため以前より飲んでいるという投稿も見られた。

これらは今回の論文やワシントン・ポストの記事に直接寄せられた反応ではなく、以前から続く「飲酒を減らす理由」をめぐる議論である。自己申告の体験談であり、世代全体を代表するものでもない。

ただ、この温度差には考える価値がある。ある人にとって飲まないことは、翌朝を気持ちよく迎える選択だ。別の人にとっては、今夜をしのぐ手段を一つ失うように感じられるのかもしれない。後者に必要なのは、健康情報を渡すことに加え、何がつらいのかを話せる相手や場所ではないだろうか。


「缶1本」を、量と度数で見直す

日本の読者が飲酒を振り返る際、具体的な手がかりになるのが純アルコール量だ。

厚生労働省は、飲んだ液体の量だけでなく、含まれるアルコールの重さに着目するよう説明している。計算は「飲酒量ml×度数÷100×0.8」。この式で計算すると、同じ500mlでも、度数5%なら20g、9%なら36gになる。

「缶1本しか飲んでいない」という感覚だけでは、摂取量の違いを捉えにくい。

また、日本で使われる「男性1日40g以上、女性20g以上」というリスクの指標は、そこまで飲んでよいという許容量ではない。厚生労働省のガイドラインも、その点を明記している。

同ガイドラインは、不安や不眠を解消するための飲酒を避けること、服薬中などの飲酒は主治医に相談することも示している。量だけでなく、飲む目的や体の状態にも目を向けたい。


減らせる人を増やすには、飲まない時間の選択肢も必要だ

今回の研究を日本の暮らしに引き寄せて考えるなら、問いは「どうすれば若者にもっと酒を飲んでもらえるか」よりも広い。

飲まない人が気兼ねなく参加できる食事会はあるか。仕事帰りや休日に、お酒を中心にしなくても人と過ごせる場所はあるか。飲酒が増えた家族に対して、叱る以外の会話ができるか。

例えば、「また飲んでいるの」と責める前に、「最近、眠れている?」「何か負担が増えていない?」と聞いてみる。これは研究で効果を確かめた対策の紹介ではなく、数字の向こうにいる人の生活を知るための提案だ。

若い世代の変化を喜ぶことと、中年層の飲酒に注意を向けることは両立する。社会全体の酒離れを、自分や家族の安心材料に置き換えずにいられるか。いつもの一杯を見直すきっかけは、そこにある。


出典URL

  1. The Washington Post(2026年9月23日):提供された記事抜粋を参照し、研究内容は以下の研究機関・学会発表で補完した。
    https://www.washingtonpost.com/health/2026/09/23/americans-are-drinking-less-since-pandemic-began-one-group-bucks-trend/

  2. Keck Medicine of USC(2026年9月21日):飲酒率の変化、50〜64歳の結果、比較期間、研究で原因を検証していない点を確認した大学の発表。
    https://news.keckmedicine.org/us-alcohol-use-falls-for-first-time-since-the-covid-19-pandemic-but-remains-above-pre-pandemic-levels/

  3. American College of Physicians/Newswise(2026年9月21日):調査対象11万4,352人、横断研究という研究形式、年代別の傾向を確認した学会発表。
    https://www.newswise.com/articles/gen-z-and-millennials-drove-recent-drop-in-alcohol-use-study-shows

  4. 厚生労働省「令和6年 国民健康・栄養調査結果の概要」:21ページにある、リスクを高める量を飲酒している人の性別・年代別割合を参照。
    https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001603146.pdf

  5. 厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」:飲酒量の指標は許容量ではないこと、不安・不眠への対処としての飲酒、服薬時の留意点を参照。
    https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001211974.pdf

  6. 厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドラインについて」:純アルコール量の計算方法を参照。9%・500mlの数値は同式による計算。
    https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_38541.html

  7. Reddit/r/Millennials(2024年の公開スレッド):飲酒を減らす理由についての投稿と返信を参照。今回の報道への直接の反応ではなく、健康・翌日の生活・家族の経験などをめぐる個人の声として紹介。
    https://www.reddit.com/r/Millennials/comments/1clb0a8/millennials_are_drinking_less_i_know_i_am_what/