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「思いやり」は生まれつきじゃない ─ 子どもが学び、大人が取り戻すスキルとしてのコンパッション:脳科学が明かす「思いやりの効能」と落とし穴

「思いやり」は生まれつきじゃない ─ 子どもが学び、大人が取り戻すスキルとしてのコンパッション:脳科学が明かす「思いやりの効能」と落とし穴

2025年11月30日 09:49

1. 「思いやり」が世界的なテーマになっている理由

11月28日は、インドの詩人であり活動家でもあるプリティシュ・ナンディが提唱した「World Compassion Day(世界コンパッションデー)」だ。ガンジーの「アヒムサ(非暴力)」の思想を核に、人や動物、自然に対する思いやりをあらためて見つめ直そうという一日である。ウィキペディア


ドイツの新聞『WELT』は、この記念日に合わせて「子どもはどうやって思いやりを学び、大人はどうそれを再発見できるのか」をテーマに記事を掲載した。背景には、戦争や気候危機、格差や分断など、世界を覆う「慢性的なストレス」がある。日々流れてくるニュースやSNSの炎上にさらされ、他人の痛みに共感するどころか、自分を守るので精一杯……そんな空気の中で、「思いやり」をあえて取り上げる意味は小さくない。


ダライ・ラマはかつて、思いやりを「人類にとって唯一の宗教」とまで呼んだという。どの宗教や文化、哲学でも、他者をいたわる心は人間社会の土台だと考えられてきた。その一方で、現代の心理学・脳科学は、この「思いやり」が生まれつきの性格ではなく、「学べるスキル」であることを示し始めている。



2. 「かわいそう」は思いやりじゃない? コンパッションの定義

『WELT』の記事でも引用されている神経科学者オルガ・クリメツキは、「思いやり(コンパッション)」をこう定義する。
他者の苦しみに対して、温かさとつながりを感じながら、その苦しみを和らげたいと願う心の動き。DIE WELT


ここでポイントになるのが、「ただ一緒に落ち込むこと」とは違う、という点だ。

  • 同情(pity):相手を「かわいそうな人」と見て上から目線になりがち

  • 共感(empathy):相手の感情を自分のことのように感じる状態。時に“もらい疲れ”しやすい

  • 思いやり(compassion):相手のつらさを感じつつ、「どう支えられるか?」と建設的に向き合う

思いやりには、相手も自分も巻き込んで沈んでしまう「共感疲れ」を防ぐ役割もあるとされる。脳画像研究からは、思いやりを育む瞑想やトレーニングを行った人ほど、ポジティブな情動や報酬に関係する領域の活動が高まり、ストレス反応が下がることが示されている。Frontiers



3. 子どもはどうやって「思いやり」を学ぶのか

『WELT』の記事が強調しているのは、思いやりが「社会的に身につけるスキル」であるという点だ。乳幼児の頃から、子どもは大人の表情や声色に驚くほど敏感で、誰かが泣いていると一緒に不安そうな顔をしたり、ティッシュを持っていったりする行動が観察されている。DIE WELT


その背後には、次のような学びのプロセスがある。

  1. モデルとしての大人
    誰かが困っているとき、親や保育者がどのように声をかけるのか。
    「大丈夫?」とそっと寄り添う姿を見慣れている子どもほど、自分も同じように行動しやすくなる。

  2. 安全基地としての関係性
    自分が泣いたとき、怒られたとき、失敗したときにどう扱われたか。
    条件付きではなく、「存在そのもの」を受け止められた経験が、「人は助け合っていい」という感覚をつくる。

  3. 小さな成功体験の積み重ね
    友だちを手伝ったときに「助かったよ、ありがとう」と喜ばれれば、援助行動は「気持ちよいもの」として脳に刻まれる。

クリメツキらの研究によると、こうした環境に加えて、子ども向けのマインドフルネスや思いやりのプログラムを行うことで、協力行動や分かち合いの頻度が高まることが示されているという。DIE WELT


しかし、すべての子どもが同じように思いやりを身につけるわけではない。家庭のストレス、いじめの経験、経済的な不安などは、「まず自分の身を守ること」が最優先になり、他者の感情を受け止める余裕を奪ってしまう。思いやりの差は、単に「性格」ではなく、環境によるところも大きい。



4. 大人になってからでも「思いやり」は鍛えられるのか

では、すでに社会で揉まれ、心がすり減ってしまった大人はどうだろうか。
『WELT』が紹介するクリメツキらの研究では、対人関係に悩みを抱える108人を対象に、5週間の「思いやりトレーニング」を実施した。参加者は、職場の苦手な同僚や、家族・パートナーとの難しい関係を思い浮かべながら、その人の人間的な背景や自分との共通点を丁寧にイメージし、相手と自分の両方の苦しみに優しく注意を向ける練習を続けたのだ。DIE WELT


トレーニングの結果、次のような変化が見られたという。

  • 相手への“ザマァ見ろ”的な感情(シャーデンフロイデ)が低下

  • その相手に対する「心理的な距離感」が縮まり、近しさを感じやすくなった

  • 実際の行動としても、より協力的で、対立をエスカレートさせにくくなった

さらに、カップルを対象にした研究では、数週間の思いやりトレーニングを経たパートナー同士は、「ケンカの後味」が良くなり、自分のニーズをはっきり伝えつつ、相手にも耳を傾けられるようになったと報告している。DIE WELT


興味深いのは、これらの変化が単なる「気分の問題」ではなく、脳の活動パターンの変化としても確認されている点だ。長期的な瞑想・マインドフルネス介入では、孤独感の減少や社会的排除への反応の変化が見られたという報告もあり、思いやりは対人関係だけでなく、メンタルヘルス全般にとって重要なバッファーになりうる。ResearchGate



5. 「優しさの裏側」──思いやりにもダークサイドがある?

『WELT』の記事が最後に触れているのが、思いやりの「影」の側面だ。ウルム大学の研究者らは、特定の集団への強い思いやりが、時に「外側の人」への敵意を強める可能性を示している。DIE WELT


わかりやすい例を挙げれば、

  • 「自分の家族だけは絶対に守る」という気持ちが強すぎるあまり、他の人を犠牲にする選択を正当化してしまう

  • 「同じ国民」「同じ宗教」の仲間への思いやりが、「違う人たち」への排除につながる

といった現象だ。


つまり、「誰かへの親しみ」が強くなればなるほど、「その輪の外」にいる人への冷たさや攻撃性が増してしまうケースがある。

思いやりを鍛えるときに重要なのは、「範囲をどこまで広げていくか」という視点だ。自分の家族や友人、同僚だけでなく、「自分とは違う立場の人」「いまは理解しがたい相手」にも、少しずつ視野を広げていく必要がある。World Compassion Day が、宗教や国境を超えた「普遍的な思いやり」を掲げているのは、その危うさを乗り越える試みだとも言えるだろう。ウィキペディア



6. SNSに広がる「思いやり」への共感とモヤモヤ

11月28日前後になると、X(旧Twitter)、Instagram、Facebookなどのタイムラインには、World Compassion Day に関連する投稿が一気に増える。「今日はWorld Compassion Day。誰か一人でもいいから優しくしてみよう」「コンパッションは自分自身に向けることから始まる」といったメッセージが多くのアカウントでシェアされている。インスタグラム


大まかに見ると、SNSの反応は次のような傾向に分かれる。

  1. 前向きな共感派

    • 「こういう日があるおかげで、普段スルーしていたことに立ち止まれる」

    • 「ニュースや炎上ばかり見てると心がすさんでくる。思いやりを意識するきっかけとしてちょうどいい」
      といった声。特に、介護や教育、医療など「ケア」の現場で働く人々からの発信が目立つ。

  2. セルフ・コンパッション重視派

    • 「他人に優しくする前に、自分への思いやりを忘れないで」

    • 「失敗した自分を責め続けるのは、もっとも身近な暴力かもしれない」
      というメッセージも多い。実際、Facebookの投稿には「World Compassion Day は、自分のドジを許し、もっと優しい言葉で自分に話しかける機会にもなるはずだ」といった趣旨のコメントもあった。

  3. 「優しさの義務化」への違和感派

    • 「しんどい人に“もっと思いやりを持て”と迫るのは逆効果では?」

    • 「構造的な問題を無視して、個人の優しさだけを強調するキャンペーンには疲れる」
      といった批判的な声も見られる。思いやりが個人のマナーや性格の問題に矮小化されることへの警戒だ。


これらの反応は、思いやりが単なる「いい話」で終わらないテーマであることを物語っている。個人の内面、社会構造、オンラインの炎上文化が複雑に絡み合うなかで、「どのような思いやりを、誰に、どこまで向けるのか」という問いが、SNS上で絶えず再演されているのだ。



7. 日常に「トレーニングとしての思いやり」を取り入れるには

『WELT』の記事や最新研究が教えてくれるのは、思いやりが「才能」ではなく、「訓練次第で伸びる筋肉」のようなものだということだ。では、実際の日常生活で、どんな小さな実践から始められるだろうか。


① 1日1回、「誰かの視点に立ってみる」練習
ニュースやSNSでイラッとした投稿を見たとき、「この人はどんな背景や不安を抱えている可能性があるだろう?」と30秒だけ想像してみる。賛同できなくてもよく、「自分とは違う世界を生きている」という事実を確認するだけでも、脳の中では思いやりの回路が微かに動き始める。


② 自分への思いやりのセルフ・トーク
失敗したとき、「なんでこんなこともできないんだ」と責める代わりに、「今のはつらかったね。それでも挑戦した自分は悪くない」と、親しい友人にかけるような言葉を自分に向けてみる。セルフ・コンパッションの高さは、うつや不安の予防因子になるとする研究も増えている。


③ 家族やチームで「思いやりのルール」を話し合う
家庭や職場のミーティングで、「お互いにどう扱われたら安心できるか」を具体的に言葉にしてみる。


例:

  • 批判は「人格」ではなく「行動」に向ける

  • 誰かがミスしたときは、まず事実確認をしてから感情を伝える
    こうしたルールづくりは、単に雰囲気をよくするだけでなく、研究で示されるような「建設的な対立」の土台にもなる。



8. 「思いやり」をめぐるこれからの問い

思いやりは、ロマンチックな理想でも、ふわっとしたスピリチュアル用語でもない。
子ども時代の経験や、日々のコミュニケーション、そして意識的なトレーニングによって形づくられる、きわめて具体的な心理スキルだ。


一方で、誰に、どこまで思いやりを向けるのかという問題は、政治や倫理と深く結びついている。特定の仲間にだけ向けられた思いやりが、外部への攻撃性を正当化してしまう危険性も、研究は指摘している。


World Compassion Day に合わせて公開された『WELT』の記事は、

  • 子どもが思いやりを「学ぶ」過程

  • 大人がそれを「再び学び直す」方法

  • そして、思いやりが持つ光と影
    をコンパクトに示していた。ここから先は、一人ひとりが自分の生活とSNSのタイムラインを眺めながら、「私にとって、そして私たちの社会にとってのコンパッションとは何か?」を問い続ける番なのかもしれない。


参考記事

心理学:子どもが共感を学ぶ方法と大人がそれを再発見する方法 - WELT
出典: https://www.welt.de/wissenschaft/article69201c8ab00be2ddef31814c/psychologie-wie-kinder-mitgefuehl-lernen-und-erwachsene-es-neu-entdecken.html

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