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Roombaはなぜ“帰れなくなった”のか:iRobot破産が示すスマート家電の落とし穴

Roombaはなぜ“帰れなくなった”のか:iRobot破産が示すスマート家電の落とし穴

2025年12月16日 07:48

1) 「床を走るロボット」を当たり前にした会社が、なぜ倒れたのか

ロボット掃除機を“家電”ではなく“文化”にしたプロダクトがある。2002年に登場したRoombaだ。名前が一般名詞のように使われ、ミームになり、猫を乗せて走る動画まで生んだ──その中心にいたのがiRobotだった。 TechCrunch


だが2025年12月、iRobotはチャプター11(米連邦破産法11条)を申請し、再建後は主要サプライヤー兼貸し手であるShenzhen PICEA Roboticsが実権を握る形になる。TechCrunchはこれを、研究者の夢からキッチンの床へ、そして“中国サプライヤーの手中へ”という、痛いほど象徴的なアメリカ企業の軌跡として描いた。 TechCrunch


2) 栄光の始まり:MIT発、そして「先駆者のコスト」

iRobotは1990年、MITのロドニー・ブルックスと教え子のコリン・アングル、ヘレン・グライナーらが創業した。単純な仕組みの積み重ねが複雑な振る舞いを生む、というロボティクスの思想を家庭へ持ち込み、最終的に“5,000万台超を販売した”とされる規模にまで到達した。 TechCrunch


2005年のIPO、そして2015年のベンチャー投資部門立ち上げ。ここまでは典型的な“勝者の物語”だった。 TechCrunch
しかし、この手の先駆者には常に請求書が回ってくる。開発コスト、失敗のコスト、そして市場が成熟した瞬間に始まる「模倣ではなく、より良い代替」のコストだ。


3) 転機:Amazon買収(約17億ドル)の“幻のゴール”

2022年、AmazonはiRobotを約17億ドルで買収すると発表した。もし実現していれば当時のAmazonで4番目規模の大型買収になった、とTechCrunchは振り返る。 TechCrunch


ところが欧州当局が強く警戒した。論点は「プライバシー」だけではない。Amazonが自社の巨大マーケットプレイスを使って、競合ロボット掃除機の露出や条件を不利にし、市場を“締め出す”可能性がある──という競争政策上の懸念だったと報じられている。結果、2024年1月に買収は破談、Amazonは9400万ドルの解約金を支払い、アングルCEOは退任。iRobotは従業員の約31%を削減する局面に追い込まれた。 TechCrunch


ここで企業体力が一段落ちた。買収審査の長期化は「待つ時間」を生むが、ロボット掃除機市場は待ってくれない。競合は新機能を積み、価格を削り、広告を打ち続ける。買収という“出口”が消えた瞬間、資本と組織は一気に現実へ引き戻される。


4) じわじわ効いた「三重苦」:供給網・低価格競争・資金繰り

TechCrunchが「スローモーションの崩壊」と表現したように、決定打は一発ではない。 TechCrunch
大枠は三重苦だ。

  • 供給網の混乱:2021年以降のサプライチェーン問題が業績を圧迫した。 TechCrunch

  • 低価格×高機能の競争:中国勢を中心に、より安く、より速く、より多機能な製品が市場を埋めた(Reutersは中国勢との競争激化を明記)。 Reuters

  • 資金繰りと債務:Reutersによれば、iRobotは資金繰りのために2023年ローンを抱え、その後の再建ではPiceaが株式100%を取得し、負債の一部を放棄する形になっている。 Reuters


さらにReutersは、米国の新関税(ベトナムからの輸入に高率の関税がかかるケース)によるコスト増にも触れている。 Reuters
「売れないから倒れた」というより、「コスト構造と競争環境が変わったのに、資本と時間が足りなくなった」という方が実態に近い。


5) “サプライヤーがオーナーになる”という現実:Piceaとは何者か

再建後の主導権を握るPiceaは、いわゆるロボット掃除機のODM(受託設計・製造)として大きな存在感を持つ企業だとThe Vergeは解説している。PiceaはiRobotの契約製造元であり、債務(ローンや製造代金)の扱いを通じてiRobotを丸ごと取得する構図になった。 The Verge


ここが今回の“物語として強い”ポイントでもある。
かつては「アメリカ発の発明が世界を変える」だったのに、最後は「製造と資金を握る側が企業の命運を握る」。ハードウェア産業の冷たい真理が、Roombaという象徴を通して可視化された。


6) ユーザーに起こりうること:「本体は動く、未来感が消える」

iRobotは、破産手続き中も事業継続し、アプリ機能・サポート・供給網などに“想定される混乱はない”と説明している。 TechCrunch


ただしTechCrunchは、顧客にとっての長期的意味は別問題だと釘を刺す。もし将来クラウドが止まれば、物理ボタンで掃除開始・帰還など基本動作はできても、**スケジュール清掃、部屋指定、音声操作(Alexa連携など)**といった「未来っぽさ」が失われる可能性がある、と整理している。 TechCrunch


ここはスマート家電全般への教訓だ。
“買った瞬間のスペック”ではなく、“サービスが続く前提”で体験価値が成立している製品は、企業の財務が揺らぐと同時にユーザーの不安も跳ね上がる。


7) SNSの反応(要約):同情と皮肉と「自己責任論」が同時に噴き出した

公開投稿を俯瞰すると、反応はだいたい次の5タイプに割れた(以下は要約)。


(1) 「規制の結末が皮肉」派:Amazonを止めたら中国に渡った

Redditでは「1.7Bでの買収は止められたのに、結局は中国サプライヤーに“二束三文”で行くのか」という趣旨の投稿が目立った。 Reddit
規制当局の目的は“個別企業救済”ではなく“競争の維持”だが、感情的には「結果がねじれて見える」ため、この論争は長引きやすい。


(2) 「iRobotが停滞した」派:競合はもう別物

同じくRedditでは、iRobot製品から他社へ乗り換えた経験談とともに「競合の方が技術的に先行している」という主張が並ぶ。 Reddit
これはiRobotへの辛口評価だが、一方で「先駆者は最初に研究開発コストを背負う」という反論もセットで語られがちだ。


(3) 「サブスク嫌い」派:ユーザーより株主価値を優先したのでは

「サブスク路線」「収益化の圧力」への反発も見える。家電に“月額”が入り込むこと自体への拒否感は根強い。 Reddit


(4) 「クラウド依存が怖い」派:最悪“ただの円盤”になる

TechCrunchが整理した「本体は動くが、未来感が消える」というポイントは、そのまま生活者の不安と接続される。 TechCrunch
“買った後に価値が縮む家電”は、次回購入の意思決定に直撃する。


(5) 「中国傘下=安全保障・データ不安」派

家の間取り・生活動線に近いデータを扱う製品だけに、所有構造の変化へ敏感な反応も出る。ここは断定や煽りより、透明性(どんなデータが、どこに、どう保存され、どう消せるか)の提示が信頼を左右する領域だ。


8) iRobotの転落が残す“ハードウェア経営の教訓”

今回の件は、ロボット掃除機の話に留まらない。要点を抽象化するとこうなる。

  • 買収(出口)待ちが長引くほど、商品開発の時間を失う(市場は止まらない)。 TechCrunch

  • 製造と資金を握る相手との力関係が崩れると、企業の自由度が一気に狭まる(サプライヤーがオーナーになる現実)。 The Verge

  • クラウド依存の価値は強いが、“サービス終了時の落としどころ”までが製品設計(物理ボタンで動くだけでは納得されない)。 TechCrunch


Roombaは、たぶん明日も床を走る。問題は「5年後も、同じように賢く走れるのか」だ。iRobotが再建で取り戻すべき“帰り道”は、財務ではなく信頼なのかもしれない。 TechCrunch


参考記事

iRobotが道を見失った理由
出典: https://techcrunch.com/2025/12/14/how-irobot-lost-its-way-home/

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