高所得世帯まで「外食を減らす」 ― カナダの調査が日本に問いかけること

高所得世帯まで「外食を減らす」 ― カナダの調査が日本に問いかけること

「今日は外で食べよう」が、簡単に言えなくなる

仕事で疲れた夜、家族で出かけた週末、久しぶりに友人と会う日。外食は空腹を満たすだけでなく、家事から離れる時間や、人と過ごす機会でもある。

その身近な楽しみを減らす動きが、比較的所得の高い世帯にも及んでいる。

カナダのGlobal Newsが2026年9月24日に報じたRestaurants Canadaの調査では、生活費の上昇を理由に外食の頻度を減らしていると答えた人が80%に達した。前年の75%から5ポイント上昇したことになる。

報道によると、調査はAngus Reidが5月にカナダの1,500人を対象に実施。対象となる外食には、接客を伴うレストランだけでなく、ファストフードも含まれる。高級店を利用しなくなったという話に限らず、日常の食事の選び方に関わる結果だ。


高所得世帯で増えた「節約」、低所得世帯ではすでに高水準

所得別に見ると、変化の大きさと、負担の広がりは分けて考える必要がある。

世帯年収(カナダドル)2025年2026年増加幅
10万ドル以上70%78%8ポイント
5万~10万ドルの区分76%81%5ポイント
5万ドル未満86%87%1ポイント

※生活費上昇を理由に外食頻度を減らしていると答えた割合。所得区分はGlobal Newsの記載に基づく。


最大の上昇幅を示したのは、年収10万カナダドル以上の世帯だった。しかし、外食を控える割合自体が最も高いのは、年収5万カナダドル未満の世帯である。

低所得層の増加が1ポイントにとどまったからといって、暮らしが楽になったとは読めない。前年の段階ですでに86%が外食を控えていたことが重要だ。一方、高所得層の変化は、これまで比較的余裕があると見られていた層にも、支出を見直す動きが広がっていることを示唆する。

ここでいう「高所得」は調査上の世帯年収の区分であり、資産家と同じ意味ではない。共働きかどうか、子どもの人数、住宅費などによって、同じ年収でも自由に使える金額は変わる。カナダの年収を円に換算して、日本の同額の世帯と単純に比較するのも適切ではない。

また、80%という数字は回答者の割合であって、外食の回数や支出が80%減ったことを表してはいない。少し回数を減らした人と、ほとんど行かなくなった人の違いは、この割合だけでは分からない。


「食べに行きたくない」より「以前ほど行けない」

今回の調査では、自由に使える所得が増えれば、テーブルサービスのあるレストランをもっと利用したいという回答も61%に上った。前年は53%だった。

外食そのものの魅力がなくなったというより、他の支出との優先順位の中で、回数を抑えている人がいると考えられる。

Global Newsに登場する消費・小売アナリストのブルース・ウィンダー氏も、食費だけでなく、家賃や燃料などの負担で外食に回すお金が不足していると説明する。同時に、支払額が増えるのに得られるものが減るという、価値への不満にも言及している。

家計には二つの判断がある。支払う余裕があるか。そして、その食事に支払いたいと思えるか。所得が比較的高くても、後者の納得感が薄れれば、利用を減らす理由になる。


SNSに見える「高いだけではない」という不満

SNS上の関連議論にも、価格と満足度をめぐる投稿が見られる。以下は今回の記事への直接反応ではなく、2025年の関連報道や2026年のトロントの外食事情をめぐるReddit投稿の要旨だ。投稿者の体験談であり、カナダ全体の世論を代表するものではない。

 

2025年の外食節約に関する報道を共有したスレッドでは、家族3人の手軽な外食でも負担が大きいという声や、ファストフードが以前のように安く感じられないという不満が寄せられていた。客が価格を理由に離れる中、さらに値上げすることへの疑問も見られる。

2026年のトロントの外食頻度を尋ねるスレッドでは、家族で食べに行く総額の重さを指摘する声に加え、週1回の外食を月1回に減らし、その分、満足できる店を選ぶという投稿があった。回数を減らしてでも、外食の楽しみは残したいという考え方だ。

一方、人気店は予約が埋まっているという指摘や、服など他の出費を抑えて食事にお金を使うという説明もある。外食の頻度は一様ではなく、所得、家族構成、何を楽しみにするかによって違う。

「SNSで皆が外食しているように見える」という投稿に対して、SNSの見え方と現実は同じではないとの反応もあった。画面に流れてくる華やかな一皿からは、その人が他の日にどれだけ節約しているかまでは分からない。


日本の「外食売上増」と、生活者の節約は両立する

日本にも、このニュースを考えるための材料がある。

日本フードサービス協会の2025年年間調査では、会員社の全店売上は前年比7.3%増。客数は2.9%増、客単価は4.3%増だった。売上の伸びには客数の増加だけでなく、値上げなどによる客単価上昇が寄与している。

同協会は、消費者が日常は節約し、年末年始や夏休みなどの外食にはお金を使う傾向を指摘する。市場全体で売上が増えても、個々の家庭が日々の外食に余裕を感じているとは限らない。

ただし、日本の調査は会員社の新規店を含む売上・客数の集計で、カナダの調査は消費者への質問だ。時期も異なり、日本でも同じ割合の人が外食を減らしているとは結論づけられない。日本では、この集計の客数全体は増えているという事実も押さえておきたい。

両者から考えられる共通の論点は、外食を一括りにせず、利用場面を分けて見ることだ。

例えば、平日の昼食は価格を重視し、誕生日には好きな店を選ぶ。家族で出かける回数を減らしても、一回の食事の満足度は保つ。これは日本のすべての家庭の実態を示すものではないが、売上の増加と節約意識が同時に存在する仕組みを理解しやすくする例である。


客も苦しいが、店にも値下げの余地があるとは限らない

消費者の立場では、値上げへの不満は自然だ。しかし、飲食店側の事情も見落とせない。

Restaurants Canadaの発表によると、業界の平均税引き前利益率は4.1%で、飲食企業の41%が赤字か収支均衡の状態にある。売上が増えても、経営に十分な余裕が生まれるとは限らない。

客は一回の会計を見て「高くなった」と感じ、店は食材や人員などの費用を支払って「利益が残らない」と感じる。この二つは同時に起こり得る。

日本の飲食店にとっても、カナダの数字をそのまま当てはめることはできないが、価格と満足度の関係は考える価値がある。単純に安さを競うだけでなく、予算を把握しやすいメニュー、十分な量、接客、居心地など、客が何に価値を感じるかを捉えることが大切になるだろう。


年収よりも、「払った後に残る余裕」が問われる

今回の調査から「外食は終わった」と判断するのは早い。外食をもっと楽しみたい人はいるし、SNSの関連投稿にも、大切な一回にお金を使う姿が見える。

一方で、高所得とされる層でさえ、以前と同じ頻度で外食するとは限らない。年収の数字と、日々の暮らしで感じる余裕には隔たりがある。

日本にとっても注目すべきなのは、外食費の増減だけではない。友人と会うための食事、家事を休むための夕食、家族で過ごす週末。そのうち何を残し、何を諦めるようになっているのか。

一食の値段へのためらいには、家計の数字だけでは見えない、暮らしのゆとりの変化が表れている。


出典

  1. Global News(2026年9月24日)
    調査対象・時期、所得階層別の回答割合、専門家の説明を参照。
    https://globalnews.ca/news/12071929/higher-income-households-eating-out-less-as-consumer-pain-bites-survey/

  2. Restaurants Canada(2026年9月24日)
    「2026 Foodservice Facts」の公式発表。外食を控える割合、可処分所得が増えた場合の利用意向、利益率と経営状況を確認。
    https://www.restaurantscanada.org/eight-in-10-canadians-are-cutting-back-on-restaurant-visits-as-affordability-pressures-worsen/

  3. 日本フードサービス協会「外食産業市場動向調査 令和7年(2025年)年間結果報告」(2026年1月26日)
    日本の売上・客数・客単価の前年比、節約志向と利用場面の選別、集計対象を参照。
    https://www.jfnet.or.jp/wp/wp-content/uploads/2026/01/nenkandata-2025.pdf

  4. Reddit・r/canada(2025年の関連議論)
    外食の価格、家族での利用負担、ファストフードへの評価をめぐる投稿。今回の記事への直接反応ではなく、個人の意見として要約。
    https://www.reddit.com/r/canada/comments/1nnokxl/restaurants_struggle_as_more_canadians_look_for/

  5. Reddit・r/askTO(2026年の関連議論)
    トロントの外食頻度と予算に関する投稿。頻度を抑えて満足度を重視する声や、消費の優先順位が異なるとの意見を参照。
    https://www.reddit.com/r/askTO/comments/1qtm3q1/do_people_actually_eat_out_very_often_in_toronto/