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痛いとき“口が悪くなる”のは仕様だった? 罵りと言葉の科学

痛いとき“口が悪くなる”のは仕様だった? 罵りと言葉の科学

2025年12月31日 17:14

ベッドの角に小指をぶつけた瞬間、頭の中で「痛っ……」と変換するより早く、口から“ピーーー”が飛び出す。
理性では「言葉遣いが悪い」と分かっているのに、なぜか身体が先に反応してしまう——。


英紙Independentに掲載された「人間は“罵り”にハードワイヤードされているのか?」という記事は、この現象をマナーではなく生存の仕組みとして捉え直す。結論を先に言うと、暴言そのものを推奨する話ではない。けれど「痛みやショックの瞬間に、なぜ“禁句”が出やすいのか」を、脳と自律神経の観点から解剖していくと、私たちの“口の悪さ”には思った以上に身体的な理由があることが見えてくる。 The Independent



1)“汚い言葉”は、思考より先に出る「反射」だった

Independentの記事が面白いのは、罵りを「言語」よりも「反射的な発声行動」に近いものとして扱っている点だ。驚いた時に出る叫び、息をのむ音、笑い、悲鳴——それらと同じく、罵りは意識的に文章を組み立てる前に出ることがある。 The Independent


通常の会話は大脳皮質(いわゆる“考える脳”)で組み立てられる。一方で罵りは、より古い脳のネットワーク、たとえば情動の警報装置として働く扁桃体や、習慣的・自動的な行動に関わる基底核などが関与しやすい、と記事は説明する。結果として、脳幹に信号が走り、「考える」より先に「口が動く」。 The Independent


この瞬発力こそがポイントだ。痛みや危険は、しばしば“考えてから”では遅い。だから身体は、ショックを受けた瞬間に交感神経を立ち上げ、心拍や血圧、注意を一時的に上げ、筋肉をこわばらせて身構える。罵りは、その一連の反応に“声”として乗ってくる。 The Independent



2)なぜ「叫び」ではなく「禁句」なのか:身体を動かす“言葉のスイッチ”

では、ただ「うわっ!」と叫ぶのではなく、なぜ“タブー語(禁句)”が出やすいのか。
Independentは、罵りが横隔膜や肋間筋を強く使う“爆発的な呼気”と結びつき、皮膚反応(発汗など)まで伴うことを描写する。つまり、罵りは頭の中だけの出来事ではなく、呼吸・筋肉・循環を巻き込んだ身体反応だというわけだ。 The Independent


さらに記事は、脳内の痛み調整に関わる領域(中脳水道周囲灰白質など)や下垂体を経由して、βエンドルフィンやエンケファリンといった“天然の鎮痛物質”が放出されうる、という流れにも触れている。要するに、禁句は「感情のガス抜き」だけではなく、痛みやストレスの処理モードに切り替える合図になっている可能性がある。 The Independent



3)「本当に痛みは減るの?」—研究の世界ではかなり本気で検証されている

ここからが、SNSでバズりやすいポイントだ。「言葉で痛みが変わるなんて、眉唾じゃない?」と思う人は多い。ところが研究は意外と積み重なっている。


有名なのが、冷水に手を浸す“コールドプレッサー課題”で、罵り語を繰り返したほうが痛みに耐えられる時間が伸びたという報告(Stephensら、2009)。心拍上昇なども観察され、単なる気のせい以上の反応が示唆された。 PubMed


さらに、日常的に罵りが多い人ほど“効き目”が弱まる(慣れでタブー性が薄れる)可能性も報告されている。つまり、効くとしたら「禁句としての刺激」が重要かもしれない。 サイエンスダイレクト


そして近年のまとめとして、2024年のミニレビューは、罵りが痛覚の閾値や耐性、主観的な痛み評価に影響しうる研究の流れを整理している。 PMC


「じゃあ、作り話の“新しい罵り語”でもいいの?」という素朴な疑問もあるが、2020年の研究では、作った“擬似罵り語”は本物ほどの鎮痛効果を示しにくかった、という結果が報告されている。タブー性や学習された情動の重みが、やはり鍵なのかもしれない。 PMC



4)痛みだけじゃない:ストレス回復(“戻りの速さ”)にも関係?

Independentの記事でもう一つ重要なのは、罵りが「ストレスから落ち着くまでの回復」にも関係しうる、という視点だ。ショックや痛みの直後、身体はアドレナリンやコルチゾールで“戦闘モード”になる。問題は、その高ぶりが長引くと、睡眠や免疫、心臓への負担など別のコストを生みやすいこと。 The Independent


記事は、心拍変動(HRV)など自律神経の指標に触れつつ、罵りが一時的にストレスを上げても、その後の“落ち着きへの戻り”を早める可能性を示唆する。 The Independent


乱暴に言えば、罵りは「上げて、下ろす」までをワンセットで回すスイッチになっているのかもしれない。



5)進化の話:人間だけがやっているわけじゃない

罵りは文化差が大きい——そう思いがちだが、記事は霊長類の鋭い鳴き声など、痛みや脅威の場面で“短く強い発声”が起きる点にも触れている。つまり、危機の声自体はかなり普遍的で、そこに人間は“言葉(タブー語)”を乗せた、という見立てだ。 The Independent


この観点に立つと、罵りは「下品な癖」ではなく、「痛みや驚きを“身体で処理する”ための古い反応」に見えてくる。もちろん現代社会では、場面や相手によっては大きなトラブルを生む。だからこそ、仕組みを理解した上で“使いどころ”を考える必要がある。



SNSの反応(海外掲示板・SNS投稿から)

今回のテーマは「科学×日常あるある」なので、SNSの反応が割れやすい。ざっくり分けると、反応は次の4タイプに収束していく。


A)「体感ある。絶対ラクになる」派

Redditの科学系スレでは、研究の話題が出るとすぐに“体験談”が集まる。たとえば「救急の現場で痛み(やショック)が切れた瞬間に口が悪くなった」という趣旨の投稿があり、罵りと痛みの関係を“現場感”で補強している。 Reddit


B)「罵りじゃなくて“叫ぶ”でも同じでは?」派

同じくRedditでは、「必要なのは罵りでなく、叫び全般の効果では?」という疑問が出る。たしかに、強い発声で身体が切り替わるなら、罵りに限定する理由が薄く見える。 Reddit


研究側もこの論点は意識していて、罵りの“タブー性”そのものが効いているのか、単なる発声や注意の逸らしが効いているのかは、まだ議論の余地がある。


C)「昔、MythBustersでやってたよね」派

科学ネタあるあるだが、「その実験、番組で見た」という記憶で語る人も多い。Redditでは「MythBustersが何年も前にやってた」というコメントが複数出ている。 Reddit


こういう反応が出るのは、罵りの効果が“直感に合う”からでもある。痛い時に言葉が荒くなるのは、誰にでも心当たりがある。


D)「脳のどこで処理されるの?」派(+誤情報の訂正)

古いスレッドだが、罵りは通常言語と違う脳回路で処理される、という説明(トゥレット症候群の話題など)も出てくる。一方で、そのステレオタイプは稀だと補足するコメントも付き、SNS上で“訂正が走る”様子が見える。 Reddit


番外:ビジネスSNSのノリ

LinkedInでは、研究の話が“職場あるある”に変換されるのが面白い。たとえば「成果の出る会議の“秘伝のソース”はこれだ」的なジョークや、投稿本文の「リーダーをコーチングしてきたが説明がつく」など、半分ネタ・半分納得で回る。 LinkedIn



じゃあ私たちはどうすればいい?(現実的な落としどころ)

ここまで読むと「じゃあ罵れば健康に良いの?」となりそうだが、答えはシンプルではない。
研究が扱っているのは多くの場合「自分に向けた発声」や「実験環境」であり、他者を傷つける罵倒とは別物だ。


現実的な落としどころは、次の3つ。

  1. “反射として出る”自分を必要以上に責めない
    痛みや驚きの瞬間に言葉が荒くなるのは、身体の仕様として起こりうる。Independentの説明は、まさにそこを“道徳”から“生理”へ引き戻している。 The Independent

  2. 場面に合わせて“無害化”する
    子どもや職場では、ピー音に変える、短い掛け声にする、呼吸で置き換えるなど、同じ“スイッチ”を別の形で使う工夫ができる。

  3. “慣れ”が効き目を薄める可能性もある
    罵りが日常化するとタブー性が薄れ、効果が弱まるかもしれない、という示唆もある。 サイエンスダイレクト
    つまり「常用サプリ」みたいに使う話ではなく、あくまで“瞬間の対処”として理解するのが無難だ。


参考記事

私たちは本能的に悪態をつくようにできているのか?新しい研究が示す、悪態をつくことの心理的利点
出典: https://www.independent.co.uk/life-style/health-and-families/healthy-living/swearing-cursing-human-nature-bad-words-pain-b2891620.html

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