健康志向のZ世代がいちばん砂糖を欲しているという意外な現実

健康志向のZ世代がいちばん砂糖を欲しているという意外な現実

Z世代は健康志向が強い。酒を控え、成分表示を見て、たんぱく質や腸活を話題にし、加工度の高い食品に警戒感を示す。そんなイメージはここ数年ですっかり定着した。ところが、その一方で「いちばん甘い物を欲しているのもZ世代だ」という調査結果が出た。ヘルシーでありたいのに、クッキーやアイス、チョコやキャンディーにも手が伸びる。この一見ちぐはぐな姿こそ、いまの若い世代の食習慣を理解するうえで重要な入り口なのかもしれない。

発端となったのは、米紙系メディアが紹介した米国の調査だ。HI-CHEWの委託でTalker Researchが2026年1月末から2月初旬にかけて実施したインターネット調査では、14~29歳のZ世代の約4分の3が、クッキー、アイス、チョコ、キャンディーなどの甘い物を1日に1~6回は必要と感じると答えた。さらにZ世代の86%が自分を“sweet treat people”、つまり甘い物好きだと考えており、全世代で最も高かったという。調査対象は米国の成人2,000人で、Z世代、ミレニアル、X世代、ベビーブーマーがそれぞれ500人ずつ含まれている。

ただし、この話は「Z世代は甘党で決まり」と単純には片づけられない。なぜなら、同じTalker Researchが2025年11月に別企業の委託で行った調査では、甘い物を欲しがる割合が最も低かったのはZ世代だったからだ。その調査では、甘い物を欲すると答えたのはZ世代で43%、ミレニアルとX世代はともに46%、ベビーブーマーは49%だった。わずか数カ月で真逆の印象が示されたことになる。ここで大事なのは、どちらが絶対に正しいかを決めつけることではなく、設問やスポンサー、回答者の想定シーンが変われば「甘い物好き」の見え方も変わる、ということだ。

それでも、若い世代と甘さの距離が近いこと自体は、この1本の話では終わらない。国際食品情報協議会の2024年調査では、若い世代ほど甘味料として砂糖を好み、ベビーブーマーは甘味料全般を避ける傾向が強いとされている。さらに、ウェルネス市場に関する調査では、ミレニアルとZ世代にとって健康管理は特別なイベントではなく、日々の習慣として組み込まれているという。つまり彼らは「健康を気にしないから甘い」のではなく、健康を意識しながらも甘さを完全には手放していない。そこに今っぽい矛盾がある。

この矛盾を解く鍵のひとつが、“ご褒美化”だ。2025年11月の調査では、米国人が甘い物を選ぶ理由として最も多かったのは「自分へのご褒美」で53%、次いで「気分を上げたい」が37%だった。2026年のHI-CHEW調査でも、甘い物は幸福感、安心感、懐かしさと結びついていた。特にZ世代では、甘いお菓子が“comfort and nostalgia”をもたらすと答えた人が多い。経済的不安、情報過多、常時接続の疲れが前提になっている世代にとって、甘い物は単なる味覚の選択ではなく、短時間で気分を立て直すための小さな装置になっている。

だが当然、問題は「どれくらい摂るか」だ。米国心臓協会によると、米国では多くの人が1日に約17杯分のティースプーンに相当する添加糖を摂っており、年間では約57~60ポンドに達する。推奨量は成人男性で1日9ティースプーン、成人女性で6ティースプーンが目安だ。ハーバード系の情報でも、添加糖の摂り過ぎは体重増加、高血圧、炎症の増加などを通じて心血管リスクと関連するとされる。さらに米国の研究では、超加工食品が米国の添加糖摂取の約89.7%を占めていた。甘さそのものより、「どんな食品から、どれだけ入ってくるか」が健康面では重い。

 

ここでSNSを見ると、数字以上に興味深い“温度差”が見える。たとえばRedditのGen Z系スレッドでは、「今のお菓子や炭酸飲料は甘すぎる。人工甘味料ではなく、ただ甘さを4分の1にしてほしい」という声が支持を集めていた。別の投稿でも、「子どもの頃は平気だったのに、今はキャンディーが“ただの砂糖”にしか感じられず楽しめない」という反応が出ている。つまりZ世代の一部は、甘い物そのものを否定しているわけではなく、“雑に強すぎる甘さ”や“加工っぽい甘さ”にうんざりしている。

一方で、別のSNS的な流れでは、甘さはむしろエンタメ化している。TikTokなどを通じて広がった「dirty soda」のように、シロップやミックスを重ねた甘い飲み物が若年層向けカルチャーとして可視化され、ブランド側もその会話を追って商品開発を行っている。甘い物を控えたい気持ちは確かにあるのに、映える飲み物、限定フレーバー、懐かしい菓子の再評価といった流れは強い。抑制と享楽が同じタイムラインに並んでいるのが、いまのSNSらしい。

さらに、Z世代の少し上や周辺世代の声も面白い。Zillennials系のコミュニティでは、子どもの頃に砂糖の多いシリアルやスナックを食べていた思い出を懐かしむ投稿が目立つ一方、「今はもうあの甘さには戻れない」という感覚も共有されている。Millennials系の投稿では、「今は甘い物はたまにだけ。普段は果物で済ませる」「ジュースは健康的だと思っていたが、実際にはかなり糖分が多かった」といった声も見える。SNSの反応を並べると、世代差というより、同じ人の中に“懐かしい甘さへの愛着”と“健康不安”が共存していることが分かる。

だから、この話を「Z世代はだらしなく甘い物を食べている」と読むのは雑すぎるし、「健康意識の高い世代だから砂糖とは無縁」と考えるのも現実から遠い。実際には、彼らは成分や健康を気にしながらも、疲れた日にコンビニで小さな甘い物を買い、動画を見ながら一口ずつ食べ、たまに罪悪感を抱え、翌日はまた“リセット食”の動画を見る。そうした往復運動の中にいる。甘い物は敵ではなく、かといって無害な癒やしでもない。その中間にある、現代的でやっかいな存在だ。

むしろ注目すべきなのは、Z世代が甘い物を欲していることそのものより、甘さの選び方が変わっていることだろう。昔のように“大きくて安くてとにかく甘い”だけでは通用しにくくなり、そこにストーリー性、限定感、素材感、罪悪感の少なさ、あるいは懐かしさが求められる。SNSで支持されるのも、ただ甘い商品ではなく、「わかっている甘さ」だ。だから今後増えていくのは、砂糖を完全否定する商品より、甘さを再設計した商品かもしれない。少し控えめで、でも満足感はある。そんな“ちょうどいい甘さ”を求める空気が、データとSNSの両方からにじんでいる。

結局のところ、Z世代の甘党ぶりは、単純な食の好みではなく、いまの時代の生活感覚を映している。健康でいたい。でも我慢ばかりでは息が詰まる。情報は多い。でも正解はひとつではない。だから人は、ときどき甘い物に救われる。今回の調査の数字は、その現実を少し大げさに、しかしわかりやすく可視化したものとして読むのがいちばん自然なのではないか。


出典URL

・The Independent。Z世代が最も甘い物を欲しているという2026年の調査内容、比較された世代別数値、添加糖の健康リスクに関する紹介の元記事。
https://www.independent.co.uk/life-style/health-and-families/gen-z-sweet-tooth-added-sugar-b2952596.html

・Talker Researchの2026年調査原文。HI-CHEW委託、2,000人調査、実施時期、設問背景などの確認に使用。
https://talkerresearch.com/gen-z-has-the-biggest-sweet-tooth-of-any-generation/

・Talker Researchの2025年11月調査原文。Z世代が最も甘い物を欲しない世代と出た、今回と逆方向の結果の確認に使用。
https://talkerresearch.com/nearly-half-of-americans-cant-make-it-till-noon-without-a-sweet-treat/

・American Heart Association。添加糖の推奨量、米国人の平均摂取量の確認に使用。
https://www.heart.org/en/healthy-living/healthy-eating/eat-smart/sugar/how-much-sugar-is-too-much
https://www.heart.org/en/healthy-living/healthy-eating/eat-smart/sugar/sugar-shrink-the-sweet-spot-for-blood-sugar-health

・Harvard Health。添加糖の過剰摂取と体重増加、高血圧、炎症、心血管リスクとの関連の確認に使用。
https://www.health.harvard.edu/diabetes-and-metabolic-health/the-sweet-danger-of-sugar

・CDC。添加糖の摂りすぎが健康問題につながるという公的説明の確認に使用。
https://www.cdc.gov/nutrition/php/data-research/added-sugars.html

・BMJ Open掲載の研究。米国の食事における超加工食品が添加糖摂取の大部分を占めるという数値の確認に使用。
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4785287/

・IFIC 2024 Food & Health Survey。若い世代ほど砂糖を好み、ベビーブーマーほど甘味料全般を避ける傾向があるという補足材料に使用。
https://ific.org/wp-content/uploads/2025/07/2024-IFIC-Food-Health-Survey.pdf

・McKinseyのウェルネス調査。ミレニアルとZ世代にとってウェルネスが日常習慣化しているという背景説明に使用。
https://www.mckinsey.com/industries/consumer-packaged-goods/our-insights/future-of-wellness-trends

・Axios。TikTokなどで広がった“dirty soda”が若年層向けの甘い飲料トレンドとして広がっているというSNS文脈の補足に使用。
https://www.axios.com/2026/03/31/dirty-soda-trend-mikes-hard-lemonade

・Reddit上の公開投稿。SNSで見られる「甘すぎる加工食品への拒否感」「懐かしさ」「果物に置き換える感覚」など、代表的な声の把握に使用。
https://www.reddit.com/r/GenZ/comments/1f82e0t/i_cant_eat_them_anymore/
https://www.reddit.com/r/GenZ/comments/1k3qhs4/whats_something_you_used_to_like_but_now_dislike/
https://www.reddit.com/r/Zillennials/comments/ttxedg/we_seriously_were_loaded_with_sugar_before_school/
https://www.reddit.com/r/Zillennials/comments/17cga52/whats_a_snack_from_your_childhood_that_is_now/
https://www.reddit.com/r/Millennials/comments/1l4ulwh/how_many_of_yall_are_sugar_addicts/