「また泊まりたい」は設備より“人”で決まる?民泊リピートの鍵を6年研究が示した

「また泊まりたい」は設備より“人”で決まる?民泊リピートの鍵を6年研究が示した

1. 民泊の勝負は「設備」か「人」か——答えは意外とシンプルだった

旅行の宿選びで、私たちはつい“スペック”に目がいく。駅近、広さ、キッチン、Wi-Fi、写真映え、そしてレビュー点数。ところが、Airbnbのような民泊プラットフォームで「次も同じホストのところに泊まりたい」と思わせる最大の要因は、設備や価格だけではなく、**ホストとの“つながり”**だ——そんな結論を示す研究が報じられた。 Phys.org


Phys.orgおよびAnglia Ruskin University(ARU)の発表によると、この研究は英国とイランなど複数大学のチームが実施し、宿の品質や価値も満足に影響する一方で、リピート予約を押し上げる“決定打”は人間的な交流だと示唆している。 Phys.org


2. 研究は何をしたのか:レビュー×調査×インタビューの“合わせ技”

この研究の面白さは、「それっぽい話」で終わらせず、複数のデータで検証している点だ。論文では、Airbnbの**オンラインレビュー(Study 1)**を出発点に尺度を作り、**アンケート調査(Study 2)でモデルを検証し、さらにコロナ後にフォローアップのインタビュー(Study 3)**と追加調査で見直す、という多段階の設計になっている。 bura.brunel.ac.uk


具体的には、Study 1で1,170件のレビューを分析し(Inside Airbnbから取得したレビューを利用)、そこから「体験の型」を抽出。 bura.brunel.ac.uk


次にStudy 2のアンケートでは478件の回答を用い、モデルの妥当性を確認している。 bura.brunel.ac.uk
そしてStudy 3では、パンデミック後にStudy 2の回答者の一部へ47件の追跡インタビューを行い、変化を捉えようとしている。 bura.brunel.ac.uk


(注意:論文要旨には“第2回調査”実施が明記される一方、公開PDFの本文からはサンプル数など詳細が読み取りにくい箇所もあったため、本稿では「要旨で言及されている」範囲を超えて断定しない。) bura.brunel.ac.uk



3. 「満足」の先にある3つの体験タイプ:民泊の価値は1枚岩じゃない

研究が提示するキーワードは、ゲスト体験を3つに分けた考え方だ。


  • Con­genial(親しみ・居心地)体験:ホストの温かさ、歓迎感、家のような安心感(いわゆる“homely”)。 Phys.org

  • Affective(感情)体験:滞在中の楽しさ、気分の良さ、雰囲気、心地よさ。 Phys.org

  • Intellectual(認知・価値)体験:清潔さ・安全性・利便性・「値段に見合う」など、納得感のある評価。 Phys.org


重要なのは、この3つが同じゴールに効くわけではないことだ。ARU/Phys.orgの要約では、「温かさや居場所感はロイヤルティ(再訪)を強めるが、それだけでは他者へのおすすめ(口コミ)に直結しない場合がある」とされる。 Phys.org


4. 「リピート」と「おすすめ」は別ゲーム——ここが最大の発見

多くのホストは「良いレビュー=次も来る」と考えがちだ。しかし研究は、もう一段階踏み込む。

  • **リピート予約(ロイヤルティ)**を強く押すのは、ホストの温かさ・親しみ・「ここにいていい」感。 Phys.org

  • いっぽうで、おすすめ・口コミ・高評価に効くのは、「楽しかった」「得した」「価値があった」といった**感情体験(Affective)と価値体験(Intellectual)**の要素が強い、という整理が示される。 Phys.org


つまり、民泊における“勝ち筋”は1本ではない。


「再訪を狙う設計」と「拡散を狙う設計」は、似ているようで違う。
ここを取り違えると、「感じのいいホストなのに伸びない」あるいは「人気はあるのに固定客がつかない」といったズレが起きやすい。


5. コロナ後も“人間味”は消えなかった。でも「安心」との両立が必須

パンデミック以降、宿泊に求められるものは変わった。安全、衛生、信頼、そして対面接触の減少。論文も、コロナがP2P宿泊の利用や評価軸に影響し、やり取りがデジタルへ寄ったことを前提に「前後比較」を重要テーマとしている。 bura.brunel.ac.uk


ここで誤解したくないのは、研究が「人間味さえあればOK」と言っているわけではない点。Phys.org/ARUは、ゲストが**情緒的な手がかり(温かさ、雰囲気、美的感覚)**と、**認知的な手がかり(清潔さ、安全性、利便性)**の両方で滞在を判断すると述べている。 Phys.org


結論はむしろ逆で、
“人”の魅力を活かすためにも、実務の土台(清掃・安全・情報の明確さ)を落とすな、という話だ。


6. さらに重要:プラットフォーム(サイト/アプリ)の品質も行動を動かす

研究はホストだけでなく、予約サイト側にも視線を向ける。ARU/Phys.orgによると、サイトの出来は「宿そのものの感じ方」を直接変えるわけではないが、信頼できて使いやすいサイトはロイヤルティと口コミを直接押し上げるという。 Phys.org


言い換えると、同じ物件・同じホストでも、

  • 表示が分かりにくい

  • ルールが不透明

  • サポートが頼れない

  • コミュニケーション導線が弱い
    となると、体験価値が削れてしまう。民泊が「人」で勝負するビジネスだからこそ、信頼のUI/UXが効いてくる。

7. 実務に落とす:ホストが今日からできる“人間味”の設計(押しつけないのがコツ)

研究の示唆を、現場のアクションに翻訳するとこうなる。


(1)予約直後:テンプレ+一言の“個別化”
テンプレ返信は効率的。ただし最後に「到着時間は無理なく」「寒い時期なので暖房の使い方を先に案内します」など、相手の状況に寄り添う一言を足す。これだけで「温かさ」の印象は上がる。


(2)滞在前:ローカル情報は“選べる形”で渡す
おすすめ店リストを押し付けるより、「静かに過ごしたい人向け」「子連れ向け」「雨の日向け」など選択肢にして、“自分で選べる体験”にする。するとAffective(楽しさ)とIntellectual(価値)の両方に効きやすい。


(3)滞在中:必要な時だけ近くにいる
「いつでも連絡してね」は大事だが、過干渉は逆効果。民泊の“つながり”は、距離感の上手さでもある。


(4)滞在後:レビュー依頼は“評価”より“感想”を聞く
「星5お願いします」ではなく「良かった点と改善点を率直に教えてください」。信頼のコミュニケーションは次の再訪につながる。


8. SNSの反応:賛否が割れるのは「民泊に求める温度」が人それぞれだから

今回の記事そのものは、公開時点でPhys.orgページ上の表示シェア数が0、コメントも0となっており、少なくとも同ページ上では“炎上”や大きな議論は見えない。 Phys.org


ただし「民泊に人間味は必要か?」というテーマ自体は、ネット上で昔から温度差がある。近い論点として、Hacker NewsのAirbnb関連議論では大きく2派に割れているのが分かりやすい。


A:人間味・生活感こそ価値派
「ホテルは無機質。少し不揃いでも“人が住んでいる感じ”が良い」という声があり、キッチンの備品や生活感を含めて“人間っぽい空間”に価値を見出す意見が見られる。これは研究でいうCon­genial(居心地)体験と相性がいい。 Hacker News


B:標準化・予測可能性こそ正義派
一方で「価格がホテルと変わらないのに品質がぶれる」「標準化された品質・検査・アメニティが欲しい」という声も強い。こちらはIntellectual(認知・価値)体験を重視する立場で、民泊の“人間味”がむしろリスクに見える。 Hacker News


C:プラットフォームの信頼/レビュー文化への不満派
「悪いレビューを書きにくい圧」「プラットフォームがどちら側に立つのか」といった不信感も語られており、研究が示す“サイトの信頼性が行動に影響する”という話とつながる。 Hacker News


また、専門家・研究者サイドのSNS(LinkedIn)では、論文の採択や枠組み(3つの体験タイプ)そのものへの関心が示されている。 LinkedIn


9. まとめ:「テックか人か」ではなく、「テックで信頼を作り、人で記憶に残す」

この研究が突きつけるのは、シンプルだが刺さる現実だ。


民泊は“宿泊”である前に、“人の家に入る体験”でもある。だからこそ、再訪を生むのは「また会いたい」「ここに戻りたい」と思わせる関係性——つまり人間的なつながりになる。 Phys.org


ただし、そのつながりは、清潔さや安全性、情報の明確さ、そしてプラットフォームの信頼性という“土台”があって初めて光る。 Phys.org


ホストにとっての処方箋は、「親切にしよう」ではなく、
“押しつけない温かさ”を、運用に組み込むこと。


そしてプラットフォームにとっては、
“人間味が発揮される導線”を、安心できるUXで支えること。
民泊の次の競争は、きっとそこにある。



参考記事

人間関係が成功するバケーションレンタルの鍵
出典: https://phys.org/news/2026-01-human-key-successful-holiday-rental.html