“PSY以来”発言が火種に — ブルーノ×ロゼを巡る‘BTS消し’論争の正体

“PSY以来”発言が火種に — ブルーノ×ロゼを巡る‘BTS消し’論争の正体

photo : slgckgc / Wikimedia Commons / CC BY 2.0


「PSY以来の衝撃」——その一言が、K-POP史の“記憶”をめぐる論争に火をつけた。


発端は、ブルーノ・マーズがBLACKPINKのロゼ(Rosé)との楽曲「APT.」について語ったインタビュー内容が拡散されたことだった。ブルーノは「APT.」の反響を、2012年に世界的バイラルヒットとなったPSY「Gangnam Style」級の現象として捉え、ロゼの存在が“知らない人々”に届いていく様子を目撃するのが楽しい——といった趣旨で語ったと報じられている。 Music Mundial


「APT.」自体はロゼとブルーノのコラボ曲としてリリースされ、グローバルに広く聴かれている作品だ。 スポーツキーダ


ところが、この“Gangnam Style以来”という比喩が、SNS上では予想以上に強い反発を招いた。怒りの中心にあったのは、BTSの存在が話の流れから抜け落ちているように見える点だ。「PSY→(空白)→ロゼ」という語り口は、BTSが築いた世界的な浸透を“なかったこと”にしている——そう受け取る人が続出したのである。実際、拡散した投稿の中には「BTSの影響が消されることが当たり前になっている」といった趣旨の言葉が見出し級に引用され、議論をさらに煽った。 Koreaboo


なぜここまで荒れたのか:論点は「誰が道を開いたか」ではなく「語りの省略」

この手の炎上は、単なる“どっちがすごいか”の比較に見えて、実はもっと複雑だ。K-POPの海外浸透には、PSYの「Gangnam Style」のようなバイラル現象もあれば、BTSのように長期的にチャート・ツアー・ファンダム拡大を積み上げるモデルもある。つまり、成功の形が違う。


だからこそ、ブルーノの発言が“個人の体感”の話(=自分の周囲が今こんな反応をしている)だったとしても、受け手は“歴史の総括”として聞いてしまう。特にBTSは、いわゆる「K-POPがメインストリームに居場所を作った」象徴として語られがちで、その文脈が抜けると「意図的な無視」に見えてしまうのだ。 Koreaboo


一方で擁護側はこう言う。「“PSY以来”は、K-POP全体の歴史を整理した厳密な発言ではなく、比喩だろう」「ブルーノが語っているのは“自分が初めて見た種類の熱狂”であって、BTSを否定しているわけではない」。つまり、ここは“意味の取り違え”か“言葉の精度”の問題だ、と。


この食い違いが解けにくいのは、ファンダム同士の長年の対立軸——いわゆる “paved the way(道を開いた)”論争が背景にあるからだ。誰かが称賛されるたびに「それは先人のおかげだ」「いや本人の努力だ」と応酬が起き、やがて“歴史の所有権”の争いになっていく。今回の件も、その延長線上にある。 KpopTop


SNSの反応:大きく3つの声に割れた

今回のSNS反応は、ざっくり次の3タイプに整理できる。


1)「BTSの功績を飛ばすな」派(批判)
最も多く拡散されたのは、「PSYの次にいきなりロゼを“初”扱いするのは不自然」「BTSが築いた認知や市場拡大を無視している」という趣旨の批判だ。中には「業界がBTSの影響を軽視することに慣れすぎている」と、構造的な問題として捉える声もある。 Koreaboo


2)「言葉狩りでは?」派(擁護・中立)
逆に、「比喩を文字通り受け取りすぎ」「“自分が体感した熱狂”の話なら成立する」と冷静に見る声もある。音楽のインタビューは、分析より感想が前に出やすい。そこを“歴史修正”と断定するのは飛躍だ、という立場だ。 Music Mundial


3)「そもそも“誰のおかげ”で語るのが失礼」派(疲労・反発)
さらに別の層は、「誰かの成功を第三者の功績に結びつけるのが失礼」「ロゼやブルーノ本人の成果として見ればいい」と、ファンダム論争そのものに距離を置く。過去にも似た構図の衝突が繰り返されてきたため、うんざりする反応が出るのも自然だ。 KpopTop


“PSY以来”は危険なショートカットだった

今回の炎上から見えるのは、「短い比喩が、巨大な歴史を端折ってしまう危うさ」だ。


K-POPのグローバル化は、一本の線ではなく複数の波でできている。PSYが“入口”をこじ開け、BTSが“定住”を可能にし、BLACKPINKやソロ勢、そして海外スターとの大型コラボが“拡張”を続ける——この重なりで今がある。そこを「PSY以来」と言ってしまうと、“間の10年”を生きてきた人たち(特にファンダム)が反射的に反発するのは、ある意味で当然だ。


ただ同時に、今回の騒動は「言葉が雑だったから炎上した」で片付けるだけではもったいない。なぜなら、そこには“誰が評価されるべきか”“誰の物語が語られやすいか”という、ポップカルチャーの権力構造の話が潜んでいるからだ。 Koreaboo


結局のところ、必要なのは「単独の英雄譚」を作ることではなく、複数の成功モデルを並べて語ることだろう。PSYのバイラル、BTSの持続的浸透、ロゼ×ブルーノのコラボが生んだ新しい熱狂——全部が“あり得た”。その“全部”を丁寧に言葉にできるかどうかが、今のK-POP報道とSNSの成熟度を問うている。



参考記事

「BTSの影響が常に無視されることが当たり前になっている」 - ブルーノ・マーズがロゼを『江南スタイル』以来の大ヒットと評価したことに対して、インターネット上で意見が分かれる
出典: https://www.sportskeeda.com/us/k-pop/news-constant-erasure-bts-s-impact-become-normalized-internet-divided-bruno-mars-crediting-rose-surge-unseen-since-gangnam-style