若者の新たな心の拠り所?悩みを打ち明ける相手はAI ― 若い利用者の28%が相談、便利さの先にある課題

若者の新たな心の拠り所?悩みを打ち明ける相手はAI ― 若い利用者の28%が相談、便利さの先にある課題

夜、友人に連絡するには少し遅い。家族には説明しづらい。専門家に相談するほどのことなのか、自分でも分からない。

そんなとき、スマートフォンを開き、チャットボットに気持ちを打ち込む。調べものや文章作成のために使っていたAIが、いつの間にか「悩みを話す相手」になっている。

この変化を示す調査が、ドイツで報じられた。BUSINESS-PANORAMAが2026年11月2日に掲載した記事によると、若いチャットボット利用者の28%が、悩み、健康や治療に関する疑問、感情的な支えを求める個人的な会話にAIを使っているという。

ただし、この数字は「若者の28%がAIに治療を受けている」という意味ではない。そこには、ちょっとした不安を言葉にする使い方から、深刻な問題を相談する使い方まで含まれ得る。

今回の調査が問いかけるのは、AIが人間の代わりになるかどうかだけではない。人に相談する前にAIを開く時代に、どのような支えと安全策が必要なのか、という問題だ。


若い利用者の28%が、AIと個人的な話をしている

報道によると、調査はドイツ消費者団体連盟「vzbv」の委託で、世論調査機関Forsaが実施した。対象は14~25歳の574人で、代表性のあるオンライン調査と説明されている。

回答者の93%は、過去12カ月にAIチャットボットを使ったことがあると答えた。そして、チャットボット利用者の28%が、個人的な相談にもAIを利用している。

ここで注意したいのは、数字の母数だ。93%は調査回答者における利用経験の割合であり、28%はチャットボット利用者における個人的な会話の割合として報じられている。

さらに、調査対象には未成年だけでなく、20代の成人も含まれる。「子どもの約3割がAIに悩みを相談」と言い換えてしまうと、元の情報からずれてしまう。

今回確認できた報道本文だけでは、詳しい質問票や利用頻度、使われたサービスの内訳までは分からない。毎日長時間相談する人と、過去に一度だけ相談した人を、同じ利用者として数えている可能性もある。

この調査から読み取れるのは、AIが若い世代の個人的な会話の場にも入り込んでいるということだ。依存の広がりや治療効果を直接示す調査ではない。


健康、食生活、友人関係――相談は日常のすぐそばにある

個人的な話をチャットボットにする人たちは、何を相談しているのだろうか。

報道が挙げた内訳では、健康に関する話題が55%。栄養や食行動が48%、心配事や問題が47%、恋愛・友人関係が40%だった。また、寂しいときや、話せる相手がいないときに利用する人は30%だった。

これらは、個人的な相談をする人の中での割合であり、調査対象者全体の割合ではない。また、各数値を足して100%になる構成でもない。

注目したいのは、相談内容の幅広さだ。

体調のこと、食べ方のこと、友人との行き違い、恋愛の迷い。どれも日常的な話題でありながら、人には切り出しにくい場合がある。AIへの相談は、必ずしも「誰ともつながっていない人」だけの行動とは限らない。

周囲に人がいても、今すぐには話せないことがある。悩みを説明するための言葉が、まだ見つかっていないこともある。そうした隙間に、いつでも文章を受け付けるチャットボットが入ってきたと考えられる。


なぜ人ではなく、AIに話したくなるのか

AIとの会話には、人に相談するときとは違う気軽さがある。

同じ話を繰り返しても、相手の時間を奪っていると気にせずに済む。まとまらない文章を送っても、返事がある。恥ずかしさや遠慮のために口にできなかった内容を、文字なら入力できることもあるだろう。

米国心理学会(APA)も、チャットボットが感情的な支援を求める人を引きつける背景として、無料または低価格であること、いつでも利用できること、批判されにくいと感じられることを挙げている。

ただし、「批判されない」という感覚には、二つの面がある。

気持ちを否定されずに話せることは、相談の入口になり得る。一方で、自分の見方に同意する返事ばかりが続けば、別の可能性を考える機会が減るかもしれない。

例えば、友人との行き違いを相談したとき、傷ついた気持ちを受け止めてもらうことと、相手が全面的に悪いと断定してもらうことは違う。気分が楽になる返答が、関係を改善する助言とは限らない。

AIの相談相手としての価値を考えるには、この違いを見落とさないことが大切だ。


SNSでは「聞いてもらえた」と「同意されすぎる」が並ぶ

海外の掲示板型SNS、Redditには、AIを個人的な相談に使った体験が投稿されている。

 

以下は今回のドイツの調査報道に対する直接の反応ではなく、同じテーマに関する公開投稿の要旨だ。投稿者の年齢や体験の真偽を独立に確認できたものではなく、若者全体の意見を代表するものでもない。

2025年11月26日の投稿では、ある利用者が、過去の深く個人的な出来事についてAIと話し、話を聞いてもらえた感覚や、前向きな働きかけを評価していた。単なる慰めだけでなく、自分を見直すような指摘も受け取ったと述べている。

この体験談が示すのは、相談の内容だけでなく、「受け止めてもらえた」という感覚そのものが、利用者にとって大きな意味を持つということだ。ただし、その満足感から治療効果を判断することはできない。

一方、2025年7月の別のスレッドには、AIが同意に偏ることを警戒しながら、人間のセラピストとの相談に併用しているというコメントがある。気分を記録したり、次の面談で話したい内容を整理したりするために使っているという。

さらに、2025年8月の投稿では、相談中のセラピストが本人の悩みや所在地をAIに入力し、その回答を伝えたことに、不安を感じたという体験が書かれていた。

こちらで浮かぶのは、AIの返答の質だけではない。自分の個人的な情報が、誰の判断で、どこへ渡るのかという問題だ。

これらの投稿を読むと、賛成か反対かという単純な区分では見えない事情がある。気持ちを整理できたと感じる人もいれば、同意の多さに違和感を覚える人もいる。そして、自分で使うことと、他人が自分の情報を入力することでは、受け止め方が大きく変わる。


「親友のように話すAI」に、消費者団体が警戒する理由

今回の報道で、vzbvの代表ラモナ・ポップ氏が問題視したのは、AIが人間のように振る舞い、問題のある行動を後押しすることだった。

同氏は、チャットボットが親友を装ったり、孤独を感じる人に危険な助言をしたり、不健康な減量目標をあおったりしてはならないと主張。提供企業に安全な設計を義務づける、拘束力のあるルールを求めた。

ここで問われているのは、親しみやすい話し方を全面的にやめるべきか、ということではない。

利用者が弱っているとき、その親しさがどこへ向かうのかが重要になる。現実の人に相談する手助けになるのか。それとも、チャットの中だけで判断が完結する方向へ進むのか。

今回の調査では、健康や食行動について相談する人が多かったと報じられている。だからこそ、返答の心地よさだけで安全性を評価することはできない。

APAも、汎用の生成AIチャットボットを心理的な治療に使うことは推奨していない。情報を誤って生成する可能性や、重要な背景を見落とすこと、不健全な対処行動を強めてしまうことなどを指摘している。

日記の整理に役立つことと、専門的な評価や治療を担えることは、分けて考える必要がある。


回答者の91%は、安全を守る法的ルールを支持

今回の調査で、利用率と同じくらい注目したい数字がある。

回答者の91%が、危険な助言や不適切な影響から利用者を守る特別な法的ルールについて、「良い」または「非常に良い」と評価した。チャットボットの最低利用年齢を13歳とすることにも、80%が賛成したという。

AIを使うことと、その提供方法に条件を求めることは両立する。利用するからこそ、安心して使える仕組みを望む場合もあるだろう。

ただし、最低年齢への賛成が多いことは、13歳以上なら安全だと証明されたことを意味しない。これは回答者の政策への意見であり、医学的・発達的な安全性を判定する数字ではない。

年齢の線引きだけでなく、危険な相談にどう対応するか、会話データをどう扱うか、利用者にどのような説明をするか。実際の使われ方に沿った設計が必要になる。


日本で考えたいのは、「AIに相談した後」をどうするか

ドイツの調査結果を、そのまま日本の若者に当てはめることはできない。相談文化や学校の支援体制、医療へのアクセス、使われるサービスも異なる。

それでも、身近な人には話しにくい悩みを、スマートフォンの中の相手に打ち明けるという場面は、日本でも想像しやすい。

ここからは調査結果そのものではなく、日本での使い方を考えるための提案だ。

一つの方向は、AIを「結論を決める相手」ではなく、「人に話すための準備を手伝う道具」として位置づけることだろう。

例えば、起きた出来事と自分の気持ちを分けて書き出す。相談したいことを短くまとめる。相手に伝える文章を下書きする。こうした使い方なら、会話を現実の支援へつなげやすい。

健康や治療に関する重大な判断は、AIの回答だけで決めない。氏名、学校名、住所、他人の秘密などを入力する前には、その情報が本当に必要かを考える。身近な人や専門家に相談するとき、AIからどのような回答を受けたかを伝えることも、話を整理する材料になる。

家庭や学校でも、「AIに相談するなんて」と利用そのものを責めるより、何を相談し、その後どう感じたのかを聞くほうが、状況を理解しやすいのではないだろうか。

目指したいのは、AIとの会話を隠さなければならない環境ではなく、その体験も人に話せる環境だ。


便利な相談相手が増えても、人に届く道は必要だ

今回の調査は、AIがすでに情報検索の枠を超え、若い利用者の個人的な会話に入り込んでいることを伝えている。

その背景には、話したいときに話せる便利さがある。人には切り出しにくい内容を言葉にできる気軽さもある。SNSの体験談には、そうした会話に支えを感じた人の声がある。

一方で、気持ちよく同意されることへの懸念や、個人的な情報の扱いへの不安も見える。便利さを認めることと、限界を確かめることは、どちらも必要だ。

AIに悩みを書き込むことが、誰かに助けを求める最初の一歩になる場合もあるだろう。その一歩が、必要なときに人との会話へ続いていくこと。スマートフォンの中に相談相手が増えた今、社会が整えるべきなのは、その先へ進める道なのかもしれない。


出典

  1. BUSINESS-PANORAMA/dts通信:
    Forsa・vzbv調査の対象、利用割合、相談内容、安全ルールへの賛否、ラモナ・ポップ氏の発言。
    https://business-panorama.de/news.php?newsid=6716572BUSINESS-PANORAMA.de

  2. 米国心理学会(APA):治療の場でAI利用について話し合うための解説。
    利用者がAIに引かれる理由、同意に偏る返答への懸念、面談前の記録整理などの用途、汎用チャットボットを治療に使うことへの見解を参照。
    https://www.apa.org/topics/artificial-intelligence-machine-learning/discussing-ai-use-therapyapa.org

  3. 米国心理学会(APA):生成AIチャットボットとウェルネスアプリに関する健康上の助言。
    誤情報、診断・治療の限界、利用者への不適切な助言に関する注意点を参照。
    https://www.apa.org/topics/artificial-intelligence-machine-learning/health-advisory-chatbots-wellness-appsapa.org

  4. Reddit:AIとの個人的な会話を肯定的に評価した投稿。
    2025年11月26日。「話を聞いてもらえた」と感じた個人の体験談。今回のドイツ報道への直接の反応ではなく、治療効果の証拠でもない。
    https://www.reddit.com/r/ChatGPT/comments/1p7i5ce/chatgpt_became_my_therapist/reddit.com

  5. Reddit:同意への偏りを懸念し、人間のセラピストと併用するというコメント。
    2025年7月13日のコメント群。元投稿は削除されているが、参照したコメントは公開表示されている。
    https://www.reddit.com/r/ChatGPT/comments/1lyv144/removed/reddit.com

  6. Reddit:セラピストによるAI利用と個人情報の入力に不安を示した投稿。
    2025年8月8日。本人が申告した体験として紹介し、実際の診療行為や医学的評価を確認したものとしては扱っていない。
    https://www.reddit.com/r/askatherapist/comments/1mkl1am