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“待機児童ゼロ”の裏に潜む『隠れ待機児童』──数字に現れない保育ニーズと海外比較

“待機児童ゼロ”の裏に潜む『隠れ待機児童』──数字に現れない保育ニーズと海外比較

2025年06月28日 13:27

1. はじめに

「待機児童ゼロ」。この力強いフレーズは、働く親にとって希望の光に映る。しかしゼロの裏側で、「隠れ待機児童」と呼ばれる子どもたちが門前に立ち続けている。

彼らは統計に含まれないため、課題が可視化されにくい。本稿では隠れ待機児童の定義と規模、保護者の実態、そして海外との比較を通じて、日本の保育政策が抱える矛盾を浮き彫りにする。



2. 「待機児童ゼロ」の定義と数字のトリック

国の定義では、認可保育施設に申し込んで入所できなかった児童のうち、特定園のみ希望しているケースや求職活動を行っていないケースなどは待機児童から除外される。このため自治体が「ゼロ」を達成しても、実際には保育ニーズを満たせず家庭内で見えない負担が継続する。

東京都の23区・多摩地域調査では、国定義264人に対し隠れ待機児童1万1,965人と明らかな乖離があった。jcptogidan.gr.jp



3. 最新データ:大阪市・堺市のケース

大阪市は2025年4月、調査開始以来初めて待機児童ゼロを公表した。しかし同時に「利用保留児童」2,528人を公表し、「ゼロ」の達成が課題解決を意味しないことを示した。city.osaka.lg.jpmainichi.jp 隣接する堺市でも未利用児童716人が明記され、定義の差が実数把握を難しくしている。sakai-times.com



4. キャリアプラン崩壊:保護者の“無理”

第一生命経済研究所の調査によれば、出産前にキャリアプランを持っていた有職者の約半数が出産後にプラン変更・喪失を経験した。dlri.co.jp 保育園に入れず、祖父母頼み・在宅勤務への切替・時短勤務・離職を余儀なくされる事例が多い。保育費の高さや保育士不足も、保護者を“隠れ待機児童”の当事者へと追い込む。



5. 見えない負担と子どもの発達

隠れ待機児童の家庭では、成長に合わせた集団保育や専門的ケアを受けにくい。保護者が就労を諦めることで世帯収入が減り、子どもの教育投資にも影響が及ぶ。早期教育・社会性形成の機会格差は学力・所得格差へつながる可能性が指摘される。



6. 海外の現状と日本比較

6-1. 米国:チャイルドケア・デザート

米国では住民の約51%が保育園不足地域に居住するとされ、「チャイルドケア・デザート」と呼ばれる。childcaredeserts.orgft.com 平均費用は大学授業料を上回り、保育の民間依存が強い。


6-2. フランス:クレッシュ争奪戦

パリ首都圏では公立クレッシュの当選確率が50%を切り、共働きでも低所得世帯が優先される。eurochild.org 外れた家庭はナニーや私立クレッシュに頼るが、費用負担が増す。


6-3. オーストラリア:多重ウェイトリスト

調査によると65%の家庭が6園以上に18か月待機登録している。abc.net.au 郊外でも供給不足が深刻で、母親の再就職が遅れる要因となる。


6-4. 北欧:自治体保証と補助

スウェーデンなど北欧は“保育権”を掲げ、自治体が最大3~4カ月で保育枠を用意する義務を負う。料金は所得連動で上限設定され、男女平等な就労を後押ししている。nordics.infonhwstat.org



7. なぜギャップが生まれるのか

要因日本米国北欧
財源国庫+自治体、補助限定民間主体、税控除中心高税率で公的負担
保育士給与国基準低め州差大・低賃金公定価格+資格で安定
定義待機児童定義が狭いゼロ定義なし全入所保証
文化母親育児前提が残存個人責任論が強い性別役割平等意識




8. 解決に向けた提案

  1. 定義の統一と公開
    ・利用保留児童を国基準に含め、自治体は月次で公表。


  2. 小規模保育・企業主導型の拡充
    ・入所数を増やすだけでなく、保育士待遇を改善し質を担保。


  3. 柔軟な育休と復職支援
    ・部分休業やリスキリング研修で“キャリア断絶”を防止。


  4. 保育費の上限設定と給付金
    ・北欧型の所得連動上限と給付で低中所得層を支援。


  5. 地域子育てシェアリングの普及
    ・豪州の家族デイケア制度など他国の多様な仕組みを導入。


9. まとめ

“待機児童ゼロ”という目標は、あくまで通過点だ。数字のマジックを超え、親と子どもの生活実感に寄り添う制度設計こそ必要である。海外に目を向けると、公的負担と透明性を高めることで待機期間を短縮し、キャリアと子育ての両立を実現している国がある。日本でも保育士の待遇改善、保育枠拡大、そして定義の見直しが急務だ。“隠れ待機児童”を可視化し、保育をインフラとして再構築することが、少子化対策と男女共同参画社会の鍵となる。



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