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ウクライナが求める「NATO型の盾」─食い違う米国とヨーロッパ

ウクライナが求める「NATO型の盾」─食い違う米国とヨーロッパ

2025年11月25日 00:01

「NATO型の盾」を求めるウクライナ──米国案への“カウンター”が映す本音

2025年11月下旬、ジュネーブ。ロシアとの戦争が4年目に入ったウクライナをめぐり、米国と欧州、そしてウクライナ自身の思惑が、1本の“修正版”文書を中心に激しくぶつかっている。

カナダの Financial Post など各国メディアに転載されたブルームバーグのスクープによれば、ウクライナと欧州主要国は、米国が提示した「28項目和平案」に対するカウンター・プロポーザルを準備した。最大のポイントは、「ロシアへの譲歩」を前提とした米国案を土台にしながらも、

攻撃停止後の「現在の戦線」を基準に交渉を始める
NATO条約5条型の集団防衛保証を米国に求める
ロシアの凍結資産をウクライナ復興と賠償に充てる

という3本柱を打ち出したことだ。news.bgov.com+2Reddit+2

この“逆提案”は、X(旧Twitter)やRedditでも大きな議論を呼んでいる。そこで本稿では、

  1. そもそも米国の「28項目案」とは何か

  2. 欧州・ウクライナ側のカウンター案はどこをどう変えようとしているのか

  3. 「NATO型の盾」が意味する安全保障の重さ

  4. SNSで飛び交う賛否と、その裏にある世界の本音

を整理し、日本の読者向けに解説していく。


1. トランプ政権の「28項目和平案」──ウクライナに迫る“尊厳か同盟か”の二択

ワシントン・ポストなどによれば、米政権は特使スティーブ・ウィトコフが起草した28項目の停戦・和平案を、11月半ばにゼレンスキー大統領へ提示した。The Washington Post


主な中身をざっくり整理すると、次のようなものだ。


  • 領土面での大幅な譲歩

    • ドネツク州の要衝からのウクライナ軍撤退

    • クリミアやルハンスクなど、ロシアが実効支配する地域を「事実上のロシア領」と認める方向で整理The Washington Post

  • 軍事力の縮小

    • ウクライナ軍の兵力を現在の80万〜85万人規模から60万人に削減することThe Washington Post

  • NATO断念と駐留禁止

    • ウクライナ憲法に「NATO加盟を志向しない」と明記

    • 戦後もNATO軍や他国軍がウクライナ領内に駐留することを禁止The Washington Post

  • ロシア資産の扱い

    • 凍結中のロシア政府資産1000億ドルを、米主導のウクライナ復興投資ファンドに回し、その利益の半分を米国が取得

    • 残りの資産は段階的にロシアへ返還Reuters

  • 見えない「安全の傘」

    • 代わりにウクライナには「信頼できる安全保障の保証」を与えるとされるが、条文には具体的な義務や自動的軍事介入の仕組みはほとんど書かれていない。The Washington Post


要するに、「領土と軍事力を大幅に差し出せば、将来の安全と経済支援は考えてやる」という構図だ。

この案に対し、ゼレンスキー大統領はテレビ演説で「ウクライナは今、歴史上もっとも厳しい瞬間の一つにいる」と述べ、**「尊厳を失うか、主要な同盟国を失うかという選択を迫られている」**とまで語ったという。The Washington Post


米側は感謝の言葉を求めつつ、「感謝が足りない」と不満を漏らす。トランプ大統領は感謝を示さないなら「いずれ何らかの取引をのまざるを得ない」と語り、感謝と従属をほのめかす発言を繰り返している。The Washington Post



2. 欧州E3とウクライナのカウンター案──「NATO型の盾」と凍結資産

こうした米案に、最初に強く“待った”をかけたのが欧州のE3(三か国)=英国・フランス・ドイツだ。彼らはジュネーブでの協議を前に、米案をベースとしつつも、ほぼ全条文に赤ペンを入れた修正版ドラフトを作成した。Reuters

その修正ポイントを整理すると、次の4つに集約できる。


(1) 兵力上限を「戦時仕様」に

米案では、ウクライナ軍は60万人で頭打ちとされていたが、欧州案では**「平時80万人」**という上限を提案している。Reuters


表現上は「平時」となっているものの、実際にはロシアとの関係が完全に正常化する可能性は低く、事実上「抑止力としての80万人」を確保する狙いがあると見られる。


(2) 領土交渉は「現在の戦線」から

米案は一部地域をあらかじめ「事実上のロシア領」とみなし、交渉のスタート地点をロシア寄りに設定していた。これに対し欧州案は、
「領土交換交渉は、戦闘が停止した時点の戦線(ライン・オブ・コンタクト)を起点とする」
と記し、ロシアに“先に取ったもの勝ち”を認めない立て付けに変えている。Reuters


さらに、占領すらされていない東部の一部地域をロシアへ渡すというモスクワ側の要求は明確に退けている。Reddit


(3) 「NATO条約5条型」の安全保障

もっとも象徴的なのが、安全保障条項だ。欧州・ウクライナ案は、

米国がNATO条約第5条に類似した安全保障を提供すること

を求めている。Reddit


NATO5条は「一国への武力攻撃は全加盟国への攻撃とみなす」と定める集団防衛の中核であり、最悪の場合には自動的な軍事介入につながり得る強い約束だ。これに対し、以前から報じられてきた米国の「NATOスタイル」保証は、

  • 大規模攻撃があった場合にウクライナの安全が「深刻な懸念」となる

  • ただし、実際に軍事力を使うかどうかはその時々の大統領の裁量

というかなりあいまいな表現にとどまり、「ブダペスト覚書2.0だ」と専門家から批判されている。ニューヨーク・ポスト


カウンター案は、こうした曖昧さを埋め、**「本当に撃たれたら一緒に撃ち返してくれるのか」**というウクライナ側の根源的な不安に向き合うよう求めていると言える。


(4) ロシア凍結資産は「賠償原資」として維持

欧州案は、ロシアの主権資産について「ロシアが戦争被害を補償するまで凍結を維持し、その資金をウクライナの復興と賠償に充てる」と明記。米案のように米主導ファンドの利益を米国が半分受け取り、残りをロシアに戻すスキームは認めない。Reuters


これは、EUがこれまで進めてきた「ロシア資産をウクライナ復興に使う」という路線と整合的であり、主権侵害への国際法上のペナルティを形にしようとするものだ。



3. 「NATO型の盾」が意味するもの──ブダペストのトラウマと欧州防衛の現在地

では、ウクライナが求める「NATO型の盾」とは、具体的にどの程度の重みを持つのか。


ブダペスト覚書という失敗

1994年、ウクライナは旧ソ連時代から引き継いだ大量の核兵器を放棄する代わりに、米・英・ロシアから**「領土保全の尊重」**などを約束するブダペスト覚書に署名した。しかし2014年のクリミア併合、2022年の全面侵攻で、その約束はあっさり踏みにじられた。


覚書には防衛義務の明文はなく、制裁や国連での協議など曖昧な対応にとどまった。ウクライナ国民の間では、

「紙切れの保証なんて二度と信じない」
という感情が根強い。


今回のカウンター案でアメリカに求めているのは、まさにこの**「紙切れ保証」からの脱却**だ。


NATOに加盟できないからこそ

とはいえ、現実的にはウクライナを直ちにNATO加盟させることは難しい。加盟は全会一致が必要であり、戦争中の国を正式加盟させれば、NATOがロシアと直接開戦するリスクが跳ね上がるからだ。

そこで考えられているのが、

  • 形式的にはNATO非加盟のまま

  • 実質的にはNATO5条級の防衛義務を米国が単独で負う

というハイブリッドな安全保障モデルである。


欧州側がこのモデルを重視する理由は、単にウクライナを守るためだけではない。ウクライナが再び侵略され、ロシアが黒海沿岸を押さえれば、

  • NATO東側の防衛ラインが一気に崩れる

  • モルドバやバルト三国、ポーランドなどへの圧力が増す

といった形で、欧州全体の安全保障が根底から揺らぐからだ。Reuters



4. SNSの反応:歓迎・懐疑・諦観、三つのトーン

今回のカウンター案は、SNS上でもさまざまな反応を呼んでいる。XやRedditなどをざっと追うと、おおむね次の3つの論調が目立つ。Reddit


① 「やっと欧州が本気になった」派

  • Redditのr/worldnewsやr/europeでは、「米案はロシアの要求の丸のみだが、E3の修正でようやくバランスが取れてきた」という声が多い。

  • 特に、戦線を起点とする領土交渉や兵力上限の引き上げは、「ウクライナの生存に必要最低限のラインだ」と歓迎するコメントが目立つ。Reuters


欧州の防衛専門家アカウントの中には、X上でカウンター案の全文と見られる文書を共有し、「これなら欧州議会や各国議会でもある程度説明がつく」と評価する声もあった。


② 「理想論すぎて、実現性がない」派

一方で、「ロシアが戦争で負わせた損害は1.5兆ドル規模と試算されているのに、これを全面賠償させるなんて、降伏要求と同じで現実的ではない」という冷ややかな意見もある。実際、r/worldnewsのスレッドでも、

「ロシアに全面賠償させるプランは、事実上『条件付き降伏』を求めているのと変わらない」
と指摘するコメントが上位に来ていた。Reddit


また、「ウクライナにNATO級の防衛義務を与えれば、米国はウクライナのためにロシアと戦争する羽目になる。そんな約束をトランプ政権が本当に飲むはずがない」という“リアリスト”の反論も強い。


③ 「米国の保証は信用できない」派

三つ目の論調は、より感情的だ。

  • 「ブダペスト覚書の二の舞になるだけでは」と、米国の「NATOスタイル」保証案を「Budapest 2.0」と揶揄する投稿

  • 「トランプ次第で政策が180度変わる国の“約束”に、どれほど意味があるのか」という、米政治の不安定さへの不信

などが飛び交っている。ニューヨーク・ポスト


同時に、ロシア寄り・反ウクライナ的なアカウントからは、

  • 「ウクライナはもう負けを認めるべきだ」

  • 「欧州は自国の軍事産業のために戦争を長引かせている」

といった主張も見られ、コメント欄はしばしば激しい口論の場になっている。



5. それでもウクライナが「盾」を求める理由

こうした賛否の嵐の中でも、ウクライナが「NATO型の盾」にこだわる理由は明快だ。

  1. 軍事的現実

    • 仮に停戦しても、ロシアは戦力を温存・再建し、数年後に再侵攻する可能性が高い。2014年のクリミア以降、ウクライナは同じパターンをすでに経験している。

  2. 政治的正統性

    • 大統領選を経てなお、世論調査では多数のウクライナ国民が「領土の譲渡には反対」と答えているとされる。大幅な譲歩に踏み切れば、政権の正統性そのものが揺らぎかねない。

  3. 欧州の安全保障構造

    • 欧州側から見ても、ウクライナが“灰色地帯”のまま残れば、NATO東側は常に不安定な最前線を抱えることになる。だからこそ、E3は米案に真っ向から修正を突き付けたのだ。Reuters

今回のカウンター案は、「戦争を終わらせる」だけでなく、「次の戦争をどこまで防げるか」を巡るせめぎ合いでもある。



6. 日本にとっての意味──「同盟の信頼性」という鏡

このニュースは、一見すると遠い欧州の話に思えるかもしれない。しかし、日本にとっても他人事ではない。

  • 日本もまた、米国との同盟に自国の安全保障の多くを依存している。

  • もし米国がウクライナに対して「曖昧な保証」しか与えず、ロシアの既成事実を追認するような合意に傾けば、

    • 「有事の際、本当に助けてくれるのか」という疑念は、欧州だけでなくアジアでも高まる。


逆に、米国が欧州案に近い形で、一定のリスクを取ってでも信頼できる安全保障を提供するのであれば、

  • 日米同盟の信頼性

  • 台湾海峡や朝鮮半島の抑止力

にも、間接的ながらプラスのメッセージとなりうる。


ウクライナが求める「NATO型の盾」は、単なる一国の安全保障の話ではなく、21世紀の同盟がどこまで「血を流す覚悟」を共有できるのかを世界に問いかけるテストケースでもあるのだ。



参考記事

ウクライナ、米国にNATOのような防衛を要請、対案が示される
出典: https://financialpost.com/pmn/business-pmn/ukraine-seeks-nato-like-shield-from-us-counter-proposal-says

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