「女性だけが並ぶ」からの脱却――PayPayドームに学ぶ日本のトイレ男女格差解消術

「女性だけが並ぶ」からの脱却――PayPayドームに学ぶ日本のトイレ男女格差解消術


1. なぜ日本では女性だけ行列ができるのか


1-1 数字で見る「トイレ格差」

  • 交通機関・商業施設729か所調査で、女性便器が男性を上回ったのはわずか4%ytv.co.jp

  • 国交省の駅トイレ調査では「行列が不満」女性44%に対し男性31%ytv.co.jp

  • 朝日新聞フォーラムは「女性用3:男性用1」を推奨するスフィア基準を紹介し、利用時間が女性は男性の約3倍との実測を掲載asahi.com



1-2 制度面の空白

  • 労働安全衛生法は「従業員数」を基準に便器数を定めるが、公共・興行施設に法的基準はない。

  • 建築士が「床面積平等」で設計すると、男性側には小便器が加算され、結果的に女性個室が不足。




2. PayPayドームの挑戦


2-1 改修の経緯

2018年から段階的に進められたドーム改修では、来場者動線を再解析し、2020年に女性個室を約1.7倍へ増設jp.toto.com。球団は「女性ファン比率の増加と国際イベント対応」が動機と説明。



2-2 デザイン&テクノロジー

対策概要効果
可変壁システム男女間仕切りをスライドして比率を動的変更イベントの男女構成に応じ最適化
個室占有センサードア上LED+入口モニターで空室可視化待機列短縮、平均滞在19秒短縮asahi.com
B―Flow動線入口と出口を分離、洗面台を出口側に配置ボトルネック解消、回転率向上
ベビー/多目的ブース全ブロックに設置子連れ・高齢者にも配慮



2-3 成果

  • 2024年シーズン開始後、試合日アンケートで「トイレ混雑に不満」回答は男女とも5%未満。

  • 西日本新聞への取材で「女性トイレ苦情はほぼゼロになった」担当者談b.hatena.ne.jp




3. 海外の“Potty Parity”と比較

地域法規女性:男性便器比
米GSA連邦施設基準3:2以上wcpinst.org公開アセンブリ空間に適用
カリフォルニア州1:1(便器+小便器総数)1987年施行
20州以上(2020年時点)2:1〜3:1「Potty Parity Law」拡大civilbeat.org
国際スフィア基準3:1人道支援現場を想定asahi.com


考察

  • 日本には全国一律の「便器比」法がないため、自治体・民間の自主性が鍵。

  • 可変型トイレや全個室ジェンダーニュートラルなど、海外で成果を上げた設計は日本でも普及可能。




4. 技術革新が変える待ち時間

  • IoTセンサー+AI分析で個室ごとの平均利用時間を自動調整。

  • ARナビゲーションで空室トイレをスマホに表示。

  • スマート分割壁で男女比を5分で再構成(大阪城ホール事例)asahi.com




5. 施設運営者への提言

  1. 利用時間×来場者属性で初期便器数を算定。

  2. 高需要イベント用に可変型個室を組み込む。

  3. ジェンダーニュートラル個室でピーク分散。

  4. 待ち時間KPIを公開しPDCAを回す。




6. まとめ

女性のみが長蛇の列に並ぶ光景は「当たり前」ではない。PayPayドームの成果が示すとおり、便器比の再考・動的レイアウト・情報可視化を組み合わせれば、わずか数年で苦情ゼロも可能だ。訪日外国人に対しても、ジェンダー平等を体験できるスタジアムは日本の新たな“おもてなし”の象徴となるだろう。



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