女子の42%が「学校の圧力で強く苦しむ」 ― ドイツの若者調査が映す日本の教育問題

女子の42%が「学校の圧力で強く苦しむ」 ― ドイツの若者調査が映す日本の教育問題

「学校に行くだけで疲れる」「テストのことを考えると眠れない」「成績が落ちると、自分まで否定されたように感じる」。

こうした言葉は、決して一部の若者だけのものではないのかもしれない。

ドイツで公表された最新の若者調査によると、14歳から17歳までの若者の3人に1人が、学校から受けるストレスによって日常生活に強い影響を受けていることが明らかになった。

特に目を引くのが、男女差だ。

女子では42%が学校ストレスによって「強く影響を受けている」と回答したのに対し、男子では25%だった。全体では33%に達し、一方で学校ストレスをほとんど感じていない層は22%にとどまった。

つまり、学校で感じるプレッシャーは、少数の「勉強が苦手な生徒」だけに起きている問題ではない。

しかも、この数字を日本から眺めたとき、決して「ドイツ特有の話」として片づけることはできない。


学校ストレスが最大の負担要因に

今回の調査は、ドイツの大手公的医療保険組合BARMERの依頼を受け、社会調査で知られるSINUS研究所が実施したものだ。

2025年秋、ドイツ国内の14~17歳の若者約2000人を対象にオンライン調査が行われた。

そこで若者の日常生活に強く影響している要因として最も多く挙げられたのが、学校ストレスだった。

33%が学校からの圧力を強い負担として挙げている。

2位は家庭内のストレスで16%、3位は孤独で12%だった。

そのほか、精神的な問題と友人関係のストレスがそれぞれ11%、依存に関する問題が9%、いじめが8%、慢性的な身体疾患が7%と続く。

恋愛関係によるストレスは6%で、14~17歳という年代では学校や家庭の問題と比較すると影響は小さい。

注目すべきなのは、学校が若者にとって学習や友人関係を得る場所である一方、「最も大きなストレス源」にもなり得ているという点だ。

BARMERのクリストフ・シュトラウブCEOは、学校ストレスは決して周辺的な現象ではないと指摘し、とりわけ若い女性の負担の大きさを深刻に受け止める必要があるとの考えを示している。


女子42%、男子25%――なぜこれほど差があるのか

最も考えさせられる数字が、女子42%、男子25%という差だ。

もちろん、この数字だけから「女子の方が勉強に弱い」などという結論を導くことはできない。

むしろ世界的な調査を見ると、思春期の女子が学校に関連したプレッシャーを男子より強く感じる傾向は、ドイツだけに限られない。

WHO欧州地域事務局が44の国と地域、およそ28万人の11歳、13歳、15歳を対象とした国際調査を分析したところ、15歳女子の約63%が学校の勉強からプレッシャーを感じていたのに対し、男子では43%だった。

2018年時点では女子54%、男子40%であり、特に女子側で学校の圧力を感じる割合が上昇している。

今回のドイツ調査とは質問方法も「ストレス」の定義も異なるため数字を単純比較することはできない。

しかし、「思春期後半の女子ほど学校からの圧力を強く感じやすい」という方向性は共通している。

背景についてWHOは、学業上の成功への期待だけでなく、家庭や社会からの役割期待、周囲との人間関係、支援の受けやすさなど、複数の要因を考える必要があるとしている。

現代の女子生徒に求められているものは、テストで高得点を取ることだけではない。

人間関係を良好に保つこと、外見を整えること、SNS上で周囲から浮かないこと、進学や将来について早い段階から答えを出すこと――。

学校生活の外にも「評価される場所」が広がったことで、心理的な負担が途切れにくくなっている可能性がある。


SNSでは「テストだけが原因ではない」との声

今回のBARMER調査は8月25日に報じられたばかりであり、調査そのものに対する大規模なSNS上の反応は、現時点ではまだ十分に蓄積されていない。

 

ただし、ドイツ語圏のSNSや掲示板では以前から「Schulstress=学校ストレス」をめぐる議論が活発に行われている。

そこから見えてくるのは、若者が感じるストレスを「試験が難しいから」という一言では説明できないということだ。

Reddit上でWHOの学校ストレス調査が話題になった際には、

「若者なのだからストレスなんてない、と親から言われてきた」

という趣旨の体験談に、多くの共感が寄せられた。

これは日本でも聞き覚えのある話ではないだろうか。

大人から見れば、仕事も住宅ローンも子育てもない中高生は「気楽」に見える。

しかし、本人からすれば、学校は生活世界の大部分を占める。

成績が下がること、友人から孤立すること、教師に認められないこと、志望校に届かないことは、その時点の本人にとって極めて大きな問題である。

「大人になればもっと大変だ」と言われても、現在の苦痛が軽くなるわけではない。


「一度に多すぎる教科」という問題

SNSでは、学校制度そのものへの疑問も出ている。

あるドイツの投稿では、多数の教科を並行して勉強し、それぞれでテスト、課題、宿題、発表を求められる状況そのものがストレスにつながっているという指摘があった。

数学を勉強した直後に歴史へ移り、翌日は英語、その後には理科のテストがある。

さらに複数の試験が同じ週に重なれば、生徒は短期間に大量の知識を詰め込むことになる。

覚えた内容を十分に理解して長期的な知識として身につけるより、「試験当日まで覚えて、終わったら忘れる」という学習になりやすい。

これは日本の中高生にとっても決して他人事ではない。

定期テスト前には5教科、場合によっては実技科目を含む多数の科目の試験が数日間に集中する。

さらに学校によっては小テスト、提出物、部活動、塾、模試、英語資格、推薦入試に向けた活動などが重なる。

一つ一つを見れば無理のない課題でも、合計した瞬間に許容量を超える。

学校ストレスを考える際、「一つの課題が難しすぎるか」だけではなく、「同時期に何個の要求を生徒へ課しているか」という視点も必要になるだろう。


「成績が自分の価値を決める」という感覚

2026年にドイツの学校関連コミュニティに投稿されたある10代の書き込みでは、学校の成績や評価によって将来だけでなく、自分自身の価値まで決められてしまうように感じるという強い不満が語られていた。

もちろん、SNS上の個人投稿は社会全体を代表する統計ではない。

しかし、こうした言葉は学校ストレスの核心を理解する材料になる。

本来、成績は特定の時点で、特定の科目について、一定の評価基準に基づき学習到達度を測るものだ。

ところが本人の中で、

「数学の点数が低かった」

が、

「自分は頭が悪い」

に変わり、

さらに、

「自分には将来がない」

へと拡大してしまうことがある。

評価対象だったはずの「答案」が、いつの間にか「人格」へすり替わってしまう。

日本でも偏差値や学校名、進学実績が強く意識される環境では、同じ問題が起こり得る。


学校だけを悪者にしても解決しない

一方、SNSには別の視点もある。

「学校だけが原因なのか」という問いだ。

スマートフォンによって友人と24時間つながり、InstagramやTikTokなどでは同年代の成功や楽しそうな生活が絶えず目に入る。

学校から帰宅しても、人間関係がそこで終了するわけではない。

グループチャットは動き続け、SNSでは誰が誰と遊んでいるかが可視化される。

テスト勉強中であっても、友人の投稿、動画、ニュース、広告が流れ込んでくる。

WHOの別の調査では、SNS利用を自分でコントロールすることが難しく、生活に悪影響が出ているとみられる若者の割合が2018年の7%から2022年には11%へ上昇した。

女子では13%、男子では9%だった。

だからといって、「学校ストレスの原因はスマホだ」と単純化するのも危険だ。

現実には、学校、家庭、友人関係、SNS、将来不安などのストレスが積み重なり、一つの大きな負担になっていると考える方が自然だろう。

今回のドイツ調査で、学校ストレスだけでなく、家庭のストレスや孤独が上位に入っていることも、その複合性を示している。


日本でも見過ごせない「学校から離れる子ども」の増加

では、日本はどうだろうか。

ドイツの「学校ストレス33%」と直接比較できる全国調査があるわけではないため、単純な国際比較はできない。

ただ、日本の教育現場にも無視できない数字がある。

文部科学省がまとめた令和6年度の調査では、小中学校の不登校児童生徒は約35万4000人となり、過去最多を記録した。

高等学校の不登校生徒も約6万8000人に上る。

もちろん、不登校の理由は一人ひとり異なる。

学校ストレスだけが原因ではないし、不登校を単純に「悪い状態」と決めつけるべきでもない。

それでも、これほど多くの子どもが従来型の学校生活から距離を取っている事実は、「学校へ通えていること」を健康状態の証明と考える危うさを示している。

教室に座っているから問題がないとは限らない。

限界まで我慢して登校している子どももいる。

学校ストレスを考えるとき、本当に注意すべきなのは「休んだ子」だけではなく、「休めないまま耐えている子」なのかもしれない。


日本では児童生徒の自殺も深刻な水準

さらに重い問題がある。

文部科学省の学校側の報告では、令和6年度に自殺した児童生徒は413人だった。

一方、警察庁・厚生労働省側の統計とは集計方法が異なり、同年度に相当する児童生徒の自殺者数にはより大きな数字が示されている。

文部科学省自身も、児童生徒の自殺が高止まりしている状況を「極めて憂慮すべき」としている。

学校から把握できた背景では、進路に関する問題、友人関係の悩み、学業不振なども確認されている。

当然ながら、自殺という結果を学校ストレスだけで説明することはできない。

家庭、健康、経済状況、人間関係など、多数の要因が複雑に関係する。

それでも「成績ぐらいで」「学校なんて誰でも行っている」と、子どもの訴えを小さく扱うことは危険だ。

本人にとって何が耐え難い負担になっているのかは、外から見ただけでは分からない。


それでも若者は未来を完全に諦めているわけではない

ここで重要なのは、「今の若者は希望を失っている」と一括りにしないことだ。

同じBARMER・SINUSの2025/2026年調査では、ドイツや世界の将来を楽観視する若者は減っている一方、自分自身の未来については約80%が楽観的に見ている。

社会全体の未来には不安がある。

しかし、自分の人生についてはまだ希望を持っている。

この二つは同時に存在する。

若者のメンタルヘルス問題を語る際、「最近の若者は弱くなった」「将来に悲観的だ」と説明してしまえば、問題の本質を見失う。

むしろ多くの若者は、自分なりに前へ進もうとしている。

問題は、その努力に対して学校や家庭、社会がどのような環境を提供しているかだ。


日本が考えるべきなのは「ストレスに耐えさせる教育」からの転換

学校には一定の負荷が必要だ。

試験、締め切り、人前での発表、競争、失敗経験。

これらをすべて取り除けば良いわけではない。

適度な負荷を乗り越えることで成長する面もある。

問題になるのは、「乗り越えられる負荷」と「心身を削り続ける負荷」の境界が見えなくなることだ。

日本では「社会に出ればもっと大変だから、学生のうちから耐えるべきだ」という考え方も根強い。

しかし、教育の目的は、子どもをストレスに慣れさせることではない。

難しい課題に向き合い、失敗したときに立て直し、必要なら他者へ助けを求めながら成長できる力を身につけることの方が重要ではないだろうか。

その意味では、「ストレスをなくす」だけでなく、「ストレスが限界に達する前に気づける仕組み」が必要になる。

テストや課題の日程を学校全体で調整する。

定期的に匿名のストレス調査を行う。

スクールカウンセラーへの相談を特別なことにしない。

成績以外の評価軸を増やす。

休んだ生徒が戻りやすい仕組みをつくる。

教師だけに負担を集中させず、心理、福祉、医療などの専門職と連携する。

こうした対策は「子どもを甘やかすこと」ではない。

深刻な状態になる前に支える、予防的な教育政策と捉えるべきだ。


保護者に必要なのは「解決」より先に「把握」

家庭でも同じことが言える。

子どもが「学校がつらい」と言ったとき、親はつい解決策を提示したくなる。

「もっと早く勉強すればいい」
「スマホをやめればいい」
「みんな同じ条件なんだから頑張りなさい」

しかし、本人が最初に求めているのは必ずしも解決策ではない。

「何がどの程度つらいのか」を理解してもらうことかもしれない。

成績なのか。

教師との関係なのか。

友人関係なのか。

部活動なのか。

睡眠不足なのか。

進路なのか。

SNSなのか。

あるいは、それら全部なのか。

原因を一つに決めつけないことが重要になる。


「学校に行けているから大丈夫」ではない

ドイツの「3人に1人」という数字が日本に教えてくれるのは、学校ストレスを例外的な問題として扱ってはいけないということだ。

そして女子42%という数字は、平均値だけを見ていては見逃してしまう集団が存在することも示している。

子どもが学校に通い、テストを受け、友達と話している。

表面上は普通に見える。

それでも心の中では限界に近づいている可能性がある。

学校ストレスの厄介なところは、一定の段階まで外から見えないことだ。

遅刻や欠席が増えたときには、すでにかなり消耗しているケースもある。

だからこそ必要なのは、「問題が起きてから対応する学校」から「問題が大きくなる前に気づく学校」への転換だろう。


子どもの苦しさを「社会に出ればもっと大変」で終わらせない

かつては、学校での苦労を「青春の一部」「誰でも通る道」と考えることが珍しくなかった。

確かに、多くのストレスは一時的であり、時間とともに乗り越えられる。

しかし、全員が同じ方法で乗り越えられるわけではない。

現代の若者は、学校の評価だけでなく、将来不安、家庭環境、SNS上の比較、人間関係、世界情勢まで、過去には存在しなかった形の情報とプレッシャーにもさらされている。

「自分たちの時代も大変だった」という大人の経験だけでは、現在の子どもたちの負担を完全には測れない。

ドイツで33%。

女子では42%。

この数字を単なる海外ニュースとして読むのか。

それとも、日本の学校や家庭を見直すきっかけにするのか。

求められているのは、子どもをストレスから完全に隔離する社会ではない。

つらいと言ったときに「それくらい普通」と切り捨てられず、助けを求めても将来に不利益を受けず、休んだとしても再び前へ進める社会だ。

学校とは本来、失敗できる場所であるはずだ。

一度の試験、一枚の通知表、一つの進路選択が、自分の価値そのものだと思わせない教育環境をつくれるか。

ドイツで明らかになった「3人に1人」という数字は、その問いを日本にも突きつけている。



出典

BUSINESS-PANORAMA.de/AFP:BARMER・SINUS若者調査に関する報道。学校ストレス33%、女子42%・男子25%、家庭ストレス16%、孤独12%などの数値を掲載。

SINUS-Institut:BARMER Jugendstudie 2025/2026の調査概要。2025年10~11月にドイツ全国の14~17歳2000人を対象に実施された代表性のあるオンライン調査であることを確認するために使用。
https://www.sinus-institut.de/media-center/studien/barmer-jugendstudie-2025-26

SINUS-Institut:同調査の「将来への楽観・生活満足度」。自分自身の未来を約80%が楽観視する一方、ドイツや世界の未来への楽観度が低下している点の参考。
https://www.sinus-institut.de/media-center/presse/barmer-jugendstudie-2025-26-zukunft

WHO Europe:44の国・地域、約28万人を対象としたHBSC調査。15歳女子の学校プレッシャーが約63%、男子が43%であるなど、学校ストレスの男女差を考えるために使用。
https://www.who.int/europe/news/item/13-11-2024-rising-school-pressure-and-declining-family-support-especially-among-girls--finds-new-who-europe-report

WHO Europe:若者のSNS利用とメンタルヘルスについてのHBSC調査。問題のあるSNS利用が2018年の7%から2022年には11%へ増加したことなどの参考。
https://www.who.int/europe/news/item/25-09-2024-teens--screens-and-mental-health

文部科学省:令和6年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」。小中学校の不登校約35万4000人、高校約6万8000人、学校から報告された児童生徒の自殺413人など、日本の状況の参考。
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422178_00006.htm

厚生労働省:令和7年版自殺対策白書。若者の自殺をめぐる状況やSNS等を活用した相談事業について、日本の若者のメンタルヘルス政策を考える参考資料。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/jisatsuhakusyo2025.html

Reddit / r/de:WHOの学校ストレス調査に関する公開議論。「若者にはストレスがない」と大人から扱われる経験、SNS、成績、学校制度などに関する反応を確認するために使用。個々の投稿は統計的な世論調査ではない点に注意が必要。
https://www.reddit.com/r/de/comments/1gqay69/whostudie_zeigt_steigenden_schulstress_bei/

Reddit / r/schule:2026年に投稿された学校ストレスについての若者の公開投稿。成績や評価と自己価値・将来を結びつけて感じる心理を紹介する際の参考。個人の体験談であり、若者全体を代表するものではない。
https://www.reddit.com/r/schule/comments/1ru8ngg/kleiner_vent_%C3%BCber_das_schulsystem/

Reddit / r/einfach_posten:試験や複数科目の課題が重なった際の学校ストレス、優先順位づけを周囲が支援する必要性についての公開投稿。SNS上の具体的な論点を確認するために使用。
https://www.reddit.com/r/einfach_posten/comments/1bkdbws/schulstress_und_warum_eigentlich_niemand_helfen/