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がんは“ならない/再発しない”を設計できるか : 例外の科学を標準治療へ - がん“スーパーサバイバー”が開く治療の次世代

がんは“ならない/再発しない”を設計できるか : 例外の科学を標準治療へ - がん“スーパーサバイバー”が開く治療の次世代

2025年08月12日 10:52

がん研究はいま、「なぜ発病するのか」から「なぜ生き延びるのか」へ。治療の常識を越えて長期生存を果たした“スーパーサバイバー”を徹底的に調べ、その体内に隠れた「勝ち筋」を見つけて治療へ還元しようという試みが世界で走り出している。Undarkが8月11日(米国時間)に報じた特集は、その最前線を生々しく描く。中心にいるのはフランス発のTechBioスタートアップCure51。彼らの「ロザリンド(Rosalind)研究」は、膵がん、広範期小細胞肺がん、IDH野生型の膠芽腫という“最凶”クラスのがんで、上位数%の長期生存者だけを集め、遺伝子、腫瘍、免疫の差を網羅的に比較する巨大プロジェクトだ。cure51.com


ストーリーで見る「例外」の力

たとえば2017年に転移性膵がんと診断されたヤン・ビジアン。通常、膵がんの5年生存率は二桁に届かず、ステージIVの5年生存は1%とされる厳しい現実があるが、彼は化学療法への“異例の反応”で生還し、いまはロザリンド研究の患者委員会で働いている。「なぜ自分は助かったのか」を知るために、自ら組織サンプルを提供しているのだ。ジョンズ・ホプキンス医学


ロザリンドは最終的に1,000例規模を目指し、上位約3%の長期生存者のみを厳選する。Cure51は「生存者の生物学」を世界規模のデータベースとして整備し、既に複数の治療標的候補を見つけたという(詳細は非公開)。ただし、放射線腫瘍医のステイシー・ウェントワースは「患者集約の時間的制約」を懸念し、過去の膠芽腫研究の難しさを指摘する。希望と冷静さ、その両方が同居している。


動物が教える「がん抵抗性」の設計図

「例外」を学ぶ発想は人間の枠を超える。長寿のコウモリでは、腫瘍抑制因子p53の活性化や免疫監視の強化を思わせる仕組みが示され、がんになりにくい生理の断片が見え始めた。2025年のNature Communications論文は、コウモリ線維芽細胞が“たった2ヒット”で悪性転換し得る一方で、p53の活動が高くアポトーシスが起こりやすいという“矛盾のような耐性”を報告している。これは象の多重p53コピーに通じる戦略の可能性を示す。Nature


また、ハダカデバネズミは超高分子ヒアルロン酸(vHMM-HA)によって増殖の暴走を物理的に抑える“早期接触阻止”様のメカニズムを持つ。盲目モグラでは過増殖を察知するとIFN-βを放出して一斉壊死に向かう“自爆装置”が働く。これらは人への直接移植に時間がかかるとしても、「がん抵抗性という性質は設計できる」ことを示す見本市だ。PMCNaturePubMed


年齢と発がん:高齢で“減る”のはなぜ?

がんは年齢とともに増える――それ自体は常識だが、英国の統計では85–89歳で発症率がピークを示し、その後の最老年層では低下が見える。細胞の「幹性」が衰えることで腫瘍が立ち上がりにくくなるという説を、2024年のNature論文(タメラら)は肺をモデルに実験的に裏づけた。鉄代謝の再配線が幹性を落とし、腫瘍形成を抑えるという意外な経路だ。若年期の予防介入の重要性も示唆する。Cancer Research UKNature


リスクとDNA損傷:喫煙者にも「天井」がある?

気休めではない。気管支上皮の単一細胞全ゲノム解析は、喫煙による体細胞変異の蓄積が約23パック・イヤーで“頭打ち”になる人がいることを示した。まるで個体差のある「変異回避システム」が働いているかのようだ。スーパーサバイバーの体内にも、こうした“見えない防波堤”が潜んでいるのかもしれない。Nature


追い風と慎重論:資金、臨床、そして倫理

国際的なCancer Grand Challengesは2025年に「がん回避(Cancer avoidance)」など7課題を提示し、最大2,500万ドルの大型支援で“がんにならない体”の原理探究を後押ししている。AI-人協調、腫瘍微小環境の動態など、スーパーサバイバー研究の受け皿になるテーマが並ぶ。Cancer Grand Challenges


一方、臨床の現場からは、話題性と再現性のギャップを気にする声も根強い。最新の話題として、KRAS変異を狙う“既製ワクチン”ELI-002 2Pの初期成績が英ガーディアンで報じられた。膵・大腸がんの再発抑制で有望な免疫反応を示したが、規模は小さく、対照群も限られる。期待と同時に、次相試験の結果を冷静に待つ必要がある。The Guardian


SNSの地鳴り――希望、用心、当事者の声

SNSを眺めると、大きく三つの“地鳴り”が聞こえる。

  1. 当事者の希望
    がんコミュニティでは、ステージIVからの長期生存や“治療中でも普通に暮らせる”日常を共有する投稿が安堵と連帯を生んでいる。「Keep the faith(信じ続けよう)」という短い言葉が繰り返されるスレッドは象徴的だ。例外の積み重ねが“新しい標準”を作ることへの期待がある。Reddit

  2. 臨床試験こそ鍵
    X(旧Twitter)では「治療法は最終的に臨床試験がすべて」という率直な意見が繰り返し流れる。研究の物語性に引っ張られすぎず、きちんとした試験設計と長期追跡が肝だという指摘だ。X (formerly Twitter)

  3. 用心深い現場感覚
    ロザリンド研究の野心は評価される一方、患者募集のハードルや時間軸への懸念も語られる。Undarkが紹介したウェントワース医師のコメントは、現場が“集める大変さ”を知っていることの表れだ。Undark Magazine


何をどう前に進めるか

“スーパーサバイバーの秘密”は単一の魔法ではなく、多層の小さな優位の束に見える。遺伝子の偶然、免疫のチューニング、腫瘍とその周辺環境の細やかなバランス、生活史。そこから導ける実装は三つだ。

  • 選抜と層別化の再設計:上位数%の反応者のパターンをデータベース化し、バイオマーカーに落として治療選択を最適化する。ロザリンドが狙うのはまさにここだ。cure51.com

  • 生体の“抵抗性”を写す:コウモリやモグラの耐がん性に学び、p53経路や細胞外マトリクスの制御など“防波堤”を薬理・ワクチンで再現する。NaturePMC

  • 予防年齢の見直し:幹性の年齢変化が発がんの種まきに影響するなら、若年期からの介入設計(禁煙支援、感染症対策、環境因子低減、予防ワクチン)に一層重心を置く。Nature


もちろん、データの扱い(プライバシー・帰属・利活用の透明性)や成果の再現性、費用対効果の検証は欠かせない。だが“例外”を体系化できれば、標準治療の質は静かに底上げされる。スーパーサバイバーは奇跡の物語ではない。臨床の次の設計図なのだ。Undark Magazine


参考記事

がんの超生存者が新たな治療法の鍵を握る可能性
出典: https://undark.org/2025/08/11/cancer-super-survivors/

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