移民を追い詰めるフロリダ式「選択」：自主退去か「アリゲーター・アルカトラズ」か

1. 「自費帰国」制度の全貌

24日付 The Independent は、フロリダ州が州警察と米国境警備隊（BP）を連携させ、拘束した無許可移民に対し片道航空券を提供して“自主的帰国”を促す制度を極秘裏に数週間運用してきたと報じた。取材に応じた州危機管理局のケヴィン・ガスリー局長は「最後のチャンスを与える」と強調し、帰国を選べば「格安航空券を州が購入する」と明言した。

2. 背景にあるCBP Homeアプリ

制度は連邦政府が3月にリブランドした「CBP Home」アプリを下敷きにしている。アプリ利用者は自発的帰国を申請すると1,000ドルの手当と罰金免除を受けられるが、フロリダ版では手当がなく航空券のみ支給される。ウィキペディア

3. SNSで拡散する“帰国推奨”メッセージ

6月18日、DHS公式Xアカウントは「米国に不法滞在しているなら今すぐCBP Homeで自発的帰国を」と投稿し、移民コミュニティに衝撃が走った。この投稿は保守層のフォーラムでも引用され、「従わなければ強制送還」とする政府の強硬姿勢が話題となった。TexAgs

4. 批判派の声――「強制に等しい」

移民法の専門家アーロン・リヒトリン＝メルニック氏はXで「数時間以内に家族や仕事を捨てる決断を強いられ、拒否すれば過酷な収容施設行き。重大な適正手続き上の懸念がある」と警鐘を鳴らした。

ACLUフロリダ支部も「州警察が287(g) 協定で連邦代理人化し、人種プロファイリングを助長する」と訴え、制度の差別性を指摘している。

5. 「ワニのアルカトラズ」の実情

収容所はエバグレーズの旧滑走路に建設された仮設テント群で、劣悪な衛生環境が報告されている。「トイレは詰まり、食事にはウジが混入」とする訴訟も起こされ、収容者は弁護士との面会すら困難だという。MySA

6. 支持派の論理――コスト削減と“自己責任”

州当局は「長期収容より航空券の方が安い」「自発的帰国なら再入国の可能性が残る」と説明。保守系紙 Washington Examiner は「国と州双方の資源節約」と評価し、同紙記者アンナ・ジャリテリは「全国初の画期的連携」と報じた。washingtonexaminer.com

7. 現場からの証言

マイアミの運送業者ルイス（仮名）は「検問で同僚が連行された」と証言。彼によれば「警官は“飛行機代は州が出すから帰国した方が得だ”と勧めた」という。一方、州立大学の警察まで移民摘発に協力する実態が恐怖を拡大させ、ラテン系住民は車に国旗を掲げるのをやめた。

8. 全米への波及

テキサス選出のコーニン上院議員は「テキサス版ワニのアルカトラズを作るべきだ」と主張。自州導入の可能性を示唆したことで、移民団体は「ドミノ化」を懸念している。MySA

9. 法的・倫理的論点

• 適正手続きの欠如: 数時間で決断させ、弁護士も付かない

• 自由意志か強制か: 収容所という“脅し”が自発性を歪める

• 州と連邦の権限線引き: 287(g)協定の濫用と批判される

• 費用対効果: 短期的節約でも長期的社会コストは不明

10. 今後の展望

制度はすでに複数の集団訴訟に直面しており、連邦裁判所が一時差止めを出す可能性もある。11月大統領選を控え、移民政策は再び分断の震源地となりそうだ。支持派・反対派ともSNSで情報戦を展開し、CBP Homeのダウンロード数は急増する一方、削除を呼びかける運動も広がっている。