国内サービス価格が年3.3％上昇──企業向けサービス価格指数（SPPI）5月速報と日銀金融政策の行方

目次

1. 企業向けサービス価格指数とは

2. 5月速報値の詳細と主要業種分析

3. 賃金インフレと価格転嫁の現状

4. 金融政策へのインプリケーション

5. 国際比較：欧米サービスインフレとの違い

6. 今後のリスクシナリオと企業の備え

7. まとめ：鍵を握る「賃金―価格スパイラル」の行方
   
   

1. 企業向けサービス価格指数とは

企業向けサービス価格指数（SPPI）は、企業同士が取引するサービスの価格動向を測定する日銀統計だ。財の卸売物価に相当する企業物価指数（CGPI）のサービス版で、2020年=100を基準に毎月公表される。コストの約7割が人件費とされるサービス業では、賃金上昇分を価格に転嫁できるか否かが賃上げの持続性を左右し、日銀が金融正常化の可否を判断する重要指標となる。boj.or.jp

指数の区分

• 全項目（国際運輸含む）

• 国際運輸を除く全項目：為替変動の影響を除いた内需主導の動きを見る

• サブ指数：運輸・郵便、情報通信、金融保険、広告、人材派遣　など
  
  

2. 5月速報値の詳細と主要業種分析

日銀の速報によれば、5月の全項目指数は111.0（2020年=100）となり、前年同月比+3.3％を記録。国際運輸を除く指数は+3.5％とさらに強い。業種別では、

宿泊・飲食サービスはインバウンド復調で+4.9％となり、対面型サービスの回復が指数を底上げした。investing.com

3. 賃金インフレと価格転嫁の現状

春闘2025の波及

大企業の妥結賃上げ率は平均5.1％と31年ぶりの高水準。中小企業にも波及し始め、派遣社員の時間当たり賃金は前年比+4.4％。これがサービス価格の持続的上昇を後押ししている。

「良い物価上昇」とは何か

日銀が掲げるのは**「賃金と物価がともに安定的に2％超で推移する」**状態。財価格のコストプッシュ的な高騰ではなく、賃金主導のサービス価格上昇こそが「良い物価」と位置づけられる。

4. 金融政策へのインプリケーション

日銀は1月の政策決定会合でマイナス金利を解除し、短期金利を+0.50％へ引き上げた。ただし

• **米国の対日鉄鋼・半導体関税（4月発動）**が輸出セクターを直撃

• 円高進行で輸入物価が低下し、CPI全体を押し下げる可能性
  
  
  

こうした不確定要因から、次の利上げ時期を「早くても年末以降」と見る市場参加者が増加。ロイター調査ではエコノミストの54％が「次回利上げは2026年初」と回答した。reuters.com

5. 国際比較：欧米サービスインフレとの違い

• 米国：サービスPCEは+3.9％。住宅・医療費が主因

• ユーロ圏：サービスHICPは+4.0％だが賃金伸びは日本より高い

• 日本：エネルギー価格上昇が一服し、財価格は+2.1％に減速。サービス主導へ転換が鮮明
  
  
  

日本の場合、「賃金→サービス価格→賃金」というスパイラルが欧米ほど確立しておらず、政策担当者は慎重姿勢を崩していない。

6. 今後のリスクシナリオと企業の備え

企業は価格転嫁だけでなく「付加価値向上型の値上げ」戦略へ舵を切ることが生産性と利益率を守る鍵となる。

7. まとめ：鍵を握る「賃金―価格スパイラル」の行方

5月のSPPIは3.3％と高水準を維持し、サービス価格がインフレの主軸へ移行したことを示した。

• 賃金上昇が継続すればサービス価格の粘着性は高まり、追加利上げの確度が増す

• 外部ショックによる景気後退が強まれば物価と賃金の好循環は腰折れしかねない
  
  
  

日銀の次の一手は、秋以降のボーナスと冬季商戦で**「値上げが実需に受け入れられるか」**を見極めてからとなる公算が大きい。企業にとっては、**コスト管理と付加価値創出を同時に進める「両利き経営」**がこれまで以上に重要だ。

参考記事一覧

• Investing.com「Japan’s corporate service inflation hits 3.3% in May」（2025-06-24）investing.com

• Reuters「Japan's corporate service inflation hits 3.3% in May」（2025-06-25）reuters.com

• 日本銀行「Monthly Report on the Services Producer Price Index（May 2025）」boj.or.jp

• Reuters「Japan core inflation hits 2-year high, keeps rate-hike bets alive」（2025-06-19）reuters.com

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