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アルツハイマーの“主犯”は1つの遺伝子? APOEが示す「90%」の真意

アルツハイマーの“主犯”は1つの遺伝子? APOEが示す「90%」の真意

2026年01月11日 00:02

「アルツハイマーの90%が“単一遺伝子”に関係」—この数字は希望か、誤解の種か

「アルツハイマー病の90%以上は、たった1つの遺伝子に結びつく」。


そんな見出しが海外で広がり、SNSでも一気に拡散した。話題の中心は、脂質代謝に関わるAPOE(アポリポタンパクE)遺伝子。UCL(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン)主導の解析によれば、APOEの一般的な型(ε3とε4)がなければ、アルツハイマー病の多くが起きなかった可能性があるという。


ただし、この“90%”は「遺伝子だけで発症が決まる」という意味ではない。むしろ数字が強烈なぶん、読み違えが起きやすい。ここでは研究の中身と、SNS上で広がった反応(期待・懸念・ツッコミ)を整理しながら、このニュースの「本当のインパクト」を解説する。



まずAPOEとは何か:ε2、ε3、ε4の3タイプ

APOEには主にε2・ε3・ε4という型(アレル)があり、人は両親から1つずつ受け継ぐため、組み合わせは6通りになる(例:ε3/ε4など)。従来、ε4はリスク上昇、ε2は保護的、そして**ε3は“中立(ニュートラル)”**と扱われることが多かった。


ところが今回の分析は、「ε3は中立」という理解に揺さぶりをかける。
研究チームは、最も低リスクと見なされるε2/ε2を“基準(低リスクベースライン)”に据え直し、そこから見たときにε3とε4がどれだけ発症に寄与しているかを推定した。



研究は何をしたのか:4つの巨大データで「寄与割合(PAF)」を推計

論文(npj Dementia、2026年1月9日掲載)は、次の4リソースを使って推計している。

  • UK Biobank:60歳以上約17万人、診断情報などの医療記録でAD/認知症を把握

  • FinnGen:60歳以上約28.9万人、同様に医療記録で把握

  • A4 Study:無症状者のアミロイドPET(脳内アミロイド陽性)約4,415人

  • ADGC:剖検で確認されたAD症例とコントロール約5,007人


そして中心指標が、Population Attributable Fraction(PAF:集団寄与割合)。
ざっくり言うと、「もし(仮に)集団が低リスク状態だったら、どれだけの症例が起きなかったと推定されるか」を表す。



結果:「72〜93%」と「約45%」—ただし幅がある

結論は刺激的だ。

  • アルツハイマー病(AD)のPAF:71.5%〜92.7%(データセットにより幅)

  • 脳アミロイド陽性(A4):85.4%

  • 全認知症(UKBとFinnGen):44.4%と45.6%


UCLの説明でも「72〜93%のアルツハイマー病、約45%の全認知症が、ε3/ε4の影響なしには起きにくい」とまとめられている。

ここで重要なのは、“単一遺伝子で90%が説明できる=遺伝子が原因で90%が確定する”ではないという点だ。



なぜ誤解が起きる? 「寄与割合(PAF)」は“原因の割合”ではない

SNSで最も多かった反応の一つが、これだ。

  • 「じゃあ遺伝子検査でほぼ未来がわかるの?」

  • 「生活習慣は関係ないってこと?」

  • 「親がアルツハイマーなら詰み?」


しかし専門家は、報道の表現が強すぎることに注意を促している。英Science Media Centreに集まったコメントでは、PAFを「因果(原因)そのもの」と読んでしまう危うさが指摘された。例えば、“感受性”と“原因”を混同しやすいこと、ε3を「リスク」と呼ぶフレーミングが数字を大きく見せること、そして環境要因(生活習慣)が依然として重要な“共犯”であること—といった論点だ。


実際、UCLのリリース自体も「APOEだけで決まらない」と釘を刺す。最も高リスクとされるε4/ε4でも、生涯リスクは推計で70%未満とされ、遺伝子が強くても発症しない人が相当いる。



それでも“APOEを狙え”が出てくる理由:アミロイド薬の限界と次の標的

今回の研究が注目される背景には、ここ数年のアルツハイマー治療がある。


アミロイドを除去する薬が登場し「疾患修飾」の期待は高まった一方、効果の大きさ・副作用・費用対効果などをめぐって議論も続く。英国でも慎重な判断が続いてきたという文脈があり、Guardianは「次の一手としてAPOEを正面から標的にするべきだ」という研究者側の主張と、実装の難しさを併せて伝えている。


論文も、近年の抗アミロイド治療の“限定的な効き方”を踏まえ、標的の多様化が必要だという立場を示している。



ただし現実は難しい:「ほぼ全員が対象」問題と、APOEの生理機能

APOEは、脳と体で脂質(コレステロールなど)を運ぶ重要な役割を担う。


だから「悪さをするから消せばいい」と単純にはいかない。Guardianも、APOEを丸ごと止めると別の副作用が出る可能性、そしてε3/ε4を持つ人が99%超という“対象者の多さ”が、予防戦略を難しくする点を挙げている。


要するに、「効く薬」を作るだけでなく、
誰に・いつ・どの程度・どんな方法で介入するのか(遺伝子編集なのか、経路阻害なのか、リスク層別化なのか)という設計図が必要になる。



SNSの反応:希望、混乱、そして「数字の読み方」論争

今回の話題は、SNSでも典型的な三層の反応に分かれた。


1)「希望が見えた」層:研究団体・医師インフルエンサーが拡散

アルツハイマー研究支援団体のアカウントは、「APOE3/4が少なくとも7割の症例に関与し得る」という趣旨で紹介し、研究の意義を強調した。
また、医療・科学系の発信者が「ε3/ε4がなければ多くのADや認知症が起きにくい」という論文の一文を引用して拡散する動きも見られた。


2)「怖い・自分ごと化」層:遺伝子検査や家族歴への不安

「親族に患者がいる」「自分もAPOE4かもしれない」という不安は、数字が大きいほど増幅しやすい。ここで重要なのは、**APOEは“確定診断”ではなく“確率を動かす要因”**だという点。研究側も「多くの人はリスク型を持っていても発症しない」と繰り返している。


3)「ちょっと待て」層:統計の言い回しへのツッコミ

Science Media Centreに寄せられた専門家コメントでは、ε3を“リスク”と呼ぶことでPAFが跳ね上がる構造や、「原因」と誤解されやすい表現への懸念が複数出た。


LinkedInでも、報道を引用しつつ「ε2/ε2を全員が持つ世界を仮定している」点など、前提を丁寧に確認する投稿が見られる。



「遺伝子が強いなら、生活習慣は無意味?」—答えは逆

ここが最大の誤解ポイントだが、結論はむしろ逆だ。
遺伝子が強く効くほど、環境要因(生活・社会要因)との“掛け算”で発症確率が動く。UCLのリリースでも、社会的孤立、高コレステロール、喫煙などの修正可能な要因に触れ、「複雑な病気には複数の減らし方がある」としている。


アルツハイマーは「遺伝100% or 環境100%」の二択ではない。
遺伝子という“地形”の上に、睡眠、運動、血圧、糖代謝、喫煙、孤立…といった“天候”が重なって、発症という結果に至る。今回の研究は、その地形のうちAPOEが想像以上に大きいことを示した、と捉えるのが筋がいい。



今後の焦点:APOE標的は「薬」だけではない

この研究が開く道は、単に「新薬候補が増える」だけではない。

  • 臨床試験の設計:APOE型で層別化し、効果が出る群を見つけやすくする

  • 予防介入の優先順位:高リスク群に生活介入を集中する(ただし倫理・差別の議論も)

  • 生物学的経路の探索:APOEがアミロイド処理、炎症、脂質代謝にどう絡むかを解像度高く追う


一方で、遺伝子編集のような強力な介入は、対象者が「ほぼ全員」になり得るという時点で、医療としての現実性・コスト・リスクの議論が避けられない。希望と同じくらい、地に足のついた設計が求められるフェーズに入ったと言える。



まとめ:数字に踊らされず、「次の研究投資の地図」として読む

「90%」という数字は強い。だからSNSでは、希望も恐怖も同時に増幅する。
けれど、この研究が示したのは「遺伝子で運命が決まる」という話ではなく、予防と治療の“どこを狙うべきか”を再配線する地図だ。


APOEを標的としたアプローチが本当に“次のブレイクスルー”になるかは、これからの研究と臨床試験次第。少なくとも今言えるのは、遺伝要因が大きいからこそ、生活要因の介入もまた重要であり続ける—ということだ。 



参考記事

画期的な発見:ほとんどの認知症を引き起こす単一の遺伝子を特定、新たな治療法への期待高まる
出典: https://www.dailymail.co.uk/health/article-15448591/Alzheimers-linked-variants-single-gene.html?ns_mchannel=rss&ito=1490&ns_campaign=1490

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