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1杯1.99ドルの衝撃――ルーキンコーヒーがNY上陸でスターバックスに突き付けた“価格革命”

1杯1.99ドルの衝撃――ルーキンコーヒーがNY上陸でスターバックスに突き付けた“価格革命”

2025年07月03日 00:57
Photo © Shwangtianyuan / CC BY-SA 4.0

1. ルーキン参入という“黒船”ショック

「スターバックス最大の脅威がついに米国にやって来た」――米フォーチュン誌は2025年7月1日、この挑戦をそう表現した。瑞幸咖啡(Luckin Coffee、以下ルーキン)は2017年創業、わずか8年で中国国内のスターバックスを店舗数・売上ともに逆転し、現在2万店超。彼らの武器は アプリ決済 × 超高速提供 × 低価格 のシンプルな方程式だ。その勝ちパターンが「第三の居場所」を標榜してきたスターバックスの牙城を揺さぶる――これが今回の核心テーマである。


2. マンハッタン2店舗の“実験場”

7月1日に同時開店したのはグリニッジ・ヴィレッジとタイムズスクエア近くの小型路面店。広さはどちらも30㎡前後、席は壁際のスツールのみで基本はテイクアウト&デリバリー。オープニングセールは 全品1.99ドル。開店直後の行列は歩道を塞ぐほどで、インフルエンサーのライブ配信が店頭を占拠した。注文はアプリか店頭のQRコードのみ、支払い完了から受け取りまで平均3分。店員はバリスタ2名+受け渡し係1名と極少人員で回転率を叩き出す。


3. SNSに見る“熱狂”と“冷笑”

X(旧Twitter)では「#LuckinCoffee」「#スタバ卒業宣言」がトレンド入り。米Z世代人気クリエイター @LatteLizzz は「スタバで5ドル払うのがバカらしくなった」と投稿し10万いいね。対照的に保守系コメンテーター @PamphletsY は「値上げした瞬間に客は霧散する“ディスカウント・バブル”だ」と一蹴。TikTok でも「LUCKIN 5秒レビュー」なる縦動画が乱発され、“1.99ドルでまあまあ美味い”という短い驚きが拡散されている。


4. 価格破壊の持続性――“1.99ドル”はいつまで?

NYは全米でも家賃・人件費が群を抜いて高い。ルーキンは

  • モバイル注文比率 90%超

  • 無人受取棚による待ち時間短縮

  • 店舗あたり3〜4名シフト
    により固定費を極限まで削っているとはいえ、原材料と賃料の壁は厚い。実際、中国本土の平均価格は2024年時点で16〜18元(約2.2〜2.5ドル)。NYの原材料調達コストを考えると1.99ドルは“投資価格”であり、3〜6ヵ月後に段階的値上げを行う可能性が高い。とはいえ、最初に提示された衝撃プライスは消費者の「コーヒーはこのくらいで買えるはず」という認知を塗り替え、市場の錨(アンカー)として残り続ける。


5. スターバックスの苦境――値上げ・人件費・AI投資

スターバックスは2024年に米国内主要メニューを平均7%値上げ。定番のトールラテは5.15ドルまで上昇した。慢性的な人手不足に対処するため、同社は2025年6月からAIチャットボット「Green Dot Assist」を全米店舗のドライブスルーに導入し、注文取りを自動化する方針を発表。しかしAI投資は初期コストが重く、短期的な利益圧迫要因ともなる。


6. “第三の居場所”VS“5分で完結”

スターバックスが創業以来掲げてきた「Third Place(家庭でも職場でもない居心地の良い空間)」はミレニアル世代のライフスタイルと親和性が高かった。一方、ルーキンの顧客体験は「滞在しないこと」そのものに価値を置く。

  • 目的:ゆっくりくつろぐ ←→ 仕事前に1杯調達

  • 導線:カウンター注文 ←→ アプリオーダー

  • 時間:平均15〜20分滞在 ←→ 3~5分で完結
    Z世代の「時間最適化+価格感度」の高い行動様式が、スターバックスの空間付加価値を“オーバースペック”にしてしまうリスクがある。


7. “粉飾決算”からの復活劇が示す企業文化

ルーキンは2020年に約3億ドルの売上水増しが発覚しNASDAQ上場廃止。倒産の危機をクーポン乱発と投資ファンドの資本注入で乗り切り、2022年には黒字転換。2024年には中国チェーン最大手へと返り咲いた。わずか3年でレピュテーションを修復したスピードは、中国スタートアップ特有の**「失敗を無かったことにして走り続ける」**文化を象徴していると言える。かつての粉飾を知らない米Z世代にとっては、むしろ“勢いのある海外ブランド”に映る面もある。


8. 消費者行動の変化と“ミドル層”の取り合い

米国の可処分所得は伸び悩み、長引くインフレで「週5スタバ層」は“週3”へシフトしている。平均客単価を5ドルから3ドル台へ一気に引き下げるルーキンは、この空白を埋める存在だ。特に、

  • 高校〜大学キャンパス周辺(学割ニーズ+スマホ世代)

  • オフィス街の通勤導線(朝の時短需要)

  • アジア系コミュニティ(ブランド認知が高い)
    は取り込み余地が大きい。


9. 競合連鎖と“値下げドミノ”

ルーキン上陸後、ダンキンドーナツはアプリ限定で2.49ドルラテキャンペーンを即時開始。Tim Hortons USもクーポン強化を発表し、サブウェイはモーニングセットのドリンクを50セント値引き。連鎖的な低価格キャンペーン合戦が広がれば、スターバックスは①マージン圧縮を受け入れて値下げ参戦、②体験価値をさらに上げて高価格を正当化、③サブブランドで価格帯を分離、という3択を迫られる。


10. 今後のシナリオ

シナリオ実現確率インパクト説明
NY成功→東海岸10店へ拡大(2025年内)高★★★★☆売上・口コミが堅調ならボストン、ワシントンD.C.へ波及
値上げ失敗→NY撤退中★★☆☆☆話題性だけ残し、ディスカウント戦争は沈静化
スターバックスが低価格サブブランド立ち上げ低★★★★★“McCafé化”はブランドカニバリを招くが全方位戦略の可能性
第三勢力(ダンキン、Tim)が台頭し“3強時代”中★★★☆☆価格帯と体験価値で3極化、市場規模そのものは拡大


11. まとめ――“Coffee Wars 2.0”の幕開け

ルーキンのNY進出は単なる価格競争ではない。モバイルネイティブの顧客体験を武器に、滞在時間ゼロの「非空間型カフェ」を持ち込んだ点で革新的だ。スターバックスの“第三の居場所”という概念は、長らくカフェ体験の金字塔だった。しかしスマホで生活の大半を最適化するZ世代にとって、カフェは「居る場所」ではなく「通過する場所」へと進化しつつある。


Coffee Wars 2.0――それは価格×UX(ユーザー体験)×スピードの三位一体で勝負が決まる新時代の戦いだ。スターバックスが30年かけて築いた価値を、ルーキンはわずか数ドルと数分で揺さぶっている。勝敗はまだ見えない。だが確かなのは、消費者がすでに“選択肢”という名の勝者であることだ。



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