メインコンテンツにスキップ
ukiyo journal - 日本と世界をつなぐ新しいニュースメディア ロゴ
  • 記事一覧
  • 🗒️ 新規登録
  • 🔑 ログイン
    • English
    • 中文
    • Español
    • Français
    • 한국어
    • Deutsch
    • ภาษาไทย
    • हिंदी
クッキーの使用について

当サイトでは、サービスの向上とユーザー体験の最適化のためにクッキーを使用しています。 プライバシーポリシー および クッキーポリシー をご確認ください。

クッキー設定

クッキーの使用について詳細な設定を行うことができます。

必須クッキー

サイトの基本機能に必要なクッキーです。これらは無効にできません。

分析クッキー

サイトの使用状況を分析し、サービス向上に役立てるためのクッキーです。

マーケティングクッキー

パーソナライズされた広告を表示するためのクッキーです。

機能クッキー

ユーザー設定や言語選択などの機能を提供するクッキーです。

「心地いい言葉ほど忘れない」 ─ 意味より“音の手触り”が大事? 疑似語実験で見えた、記憶に残る言葉の条件

「心地いい言葉ほど忘れない」 ─ 意味より“音の手触り”が大事? 疑似語実験で見えた、記憶に残る言葉の条件

2025年12月06日 10:18

「なんとなく心地いい言葉」は、やっぱり覚えやすかった

「ハーモニー」「メロディー」という単語を聞くと、口の中で音が転がるような心地よさを感じる。逆に、「ドロッジ」「ブランといった濁った音は、なぜかちょっとイヤな感じがする——。


私たちは日常的に、言葉の「意味」だけでなく「音の手触り」にも反応している。しかし、音が心地いいから好きなのか、それとも意味が好きだから心地よく聞こえるのか、長らくはっきりしない問題だった。


この疑問に正面から挑んだのが、オーストリア・ウィーン大学の言語学者Theresa Matzinger(テレーザ・マッツィンガー)氏らの研究チームだ。彼女たちは2025年12月にPLOS Oneに発表した論文で、「音だけが美しい単語」を人工的につくり出し、その覚えやすさを調べた。Phys.org


結論から言えば、**「心地よい音の単語ほど記憶に残りやすい」**という結果が示されている。



意味を消すために作られた「ニセ単語」

今回の研究のポイントは、実在の単語ではなく「pseudoword(疑似語)」を使ったことだ。


たとえば、

  • clisious(クリジアス)

  • smanious(スマニアス)

  • drikious(ドリキアス)

といった、英語っぽく聞こえるけれど現実には存在しない単語たち。意味がないぶん、「かわいい/硬い/ねっとりしている」といった印象は、ほぼ音の構成だけから生まれる。Phys.org


研究チームは、英語の音の美しさをランク付けした過去の資料(Crystalのランキング)をもとに、「とても心地よいはずの音」「まあまあ」「あまり心地よくない音」を組み合わせ、数十個の疑似語を設計した。



100人に覚えてもらい、思い出してもらう

実験には英語を母語とする100人が参加した。手順は三段階だ。Phys.org

  1. 学習フェーズ
    参加者は画面と音声で疑似語を提示され、できるだけ覚えるよう指示される。

  2. 想起テスト
    その後、記憶に残っている単語を自由に書き出してもらう。

  3. 美しさ評価
    最後に、表示されるそれぞれの疑似語について「どれくらい美しい(心地よい)と感じるか」を7段階などで評価してもらう。

こうすることで、「どの単語がよく思い出されたか」と「どの単語が美しいと感じられたか」の関係を、意味に邪魔されずに測ることができる。



研究者の予想と、参加者の感覚はズレていた

結果は少し意外だった。PLOS Digital Exchange

  • 研究者が「一番美しいはず」と設計した疑似語よりも、中くらいの美しさに設定した単語の方が、参加者にはより魅力的に聞こえた。

  • しかし、記憶テストで最もよく思い出されたのは、研究者が「とても美しい」と設計したグループだった。

  • さらに全体として、思い出された単語は思い出されなかった単語よりも高い「美しさ」の評価を受けていた。


つまり、

「参加者本人の評価」と
「研究者が事前に想定した美しさ」
「記憶のしやすさ」

この三つが、微妙なズレを持ちながらもお互いに関連していることが分かったのだ。


マッツィンガー氏は、「私たちが美しいと感じる音のパターンと、記憶しやすいパターンは密接に関係しているが、どちらが原因でどちらが結果なのかはまだ分からない」とコメントしている。Phys.org



「美しいから覚えられる」のか、「覚えやすいから美しい」のか

では、この関係はどちらが先なのだろうか。

  1. 美しさ → 記憶
    快い感情は記憶を強める、という心理学の知見がある。楽しい旅行ほどよく覚えているのと同じで、「気持ちいい音の単語」はポジティブな感情と結びつき、記憶に残りやすくなる可能性がある。

  2. 記憶 → 美しさ
    一方、人は「よく知っているもの」を好きになりやすい(単純接触効果)。言語でも、母語の中で頻出する音パターンは聞き慣れていて、「なんとなく気持ちいい」と感じやすい。
    今回の疑似語も、たまたま英語でよく出てくる音の組み合わせを多く含んでいたものが、覚えやすく、そして「好き」と評価された可能性がある。Phys.org


おそらく現実には、この二つがループのように回っているのだろう。**「耳に心地よいから覚える → 何度も使うからさらに好きになる」**という循環だ。



SNSで巻き起こりそうな会話たち

このニュースは、すでに各国のメディアや学術系アカウントからSNSにシェアされている。Phys.org


具体的なコメントを網羅的に追うことは難しいが、もしあなたのタイムラインにこの記事が流れてきたら、きっとこんな会話が展開されるはずだ。

  • 語学クラスタの反応

    「だからイタリア語が“歌うように聞こえる”って言われるのかも」
    「単語帳も“キレイめの単語”から覚えた方がモチベ上がりそう」

  • マーケター・ネーミング屋さんの反応

    「商品名やサービス名は、意味だけじゃなく音の設計ももっと科学したい」
    「“なんとなくいい感じのカタカナ語”って、こういう実験で裏付け取れるのかも」

  • やや懐疑的な人の反応

    「英語だけで100人の実験でしょ? 日本語でも同じ結果になるかは怪しい」
    「『moist』が気持ち悪いっていうのは意味のイメージもデカい気がする」

  • お遊び系の反応

    「“推しの名前”、めちゃくちゃ覚えやすいし口に出したくなるの、音が良すぎるから説」
    「“ぬるっと”“ふわもち”“とろける”みたいなコピーは、単語レベルで強い」

こうしたリアクションが示しているのは、私たちの直感がすでにこの研究結果を知っていたということかもしれない。「なんか言いやすくて、記憶に残る」言葉に、SNSはいつも支配されているのだから。



言語学的には「フォネステティクス」の世界

専門的には、言語の音の美しさを扱う分野を**phonaesthetics(フォネステティクス/音象美研究)**と呼ぶ。今回の論文は、この分野において、

  • 個々の音素(p, t, k など)や

  • それらの組み合わせ(音節・音韻パターン)

がどのように美しさと結びつき、さらに記憶と連動しているかを、定量的に示したものだ。PLOS Digital Exchange


論文では、音象徴(bouba/kiki効果など)との関連にも触れられている。丸いものには「bouba」、尖ったものには「kiki」が当てられやすい、という有名な実験だ。これも、音とイメージの結びつきが偶然ではないことを示している。



日本語の「ふわふわ」「ザクザク」も同じメカニズム?

日本語話者として気になるのは、「日本語でも同じことが起きるのか?」という点だ。


日本語には、

  • ふわふわ、ぽかぽか、さらさら —— 柔らかく心地よい印象の音

  • ざらざら、ガリガリ、ドロドロ —— 荒く重たい印象の音

といった擬音語・擬態語が大量に存在する。おそらく多くの人が、意味を説明されなくても「どんな感じか」を直感的に理解できるだろう。


もし今回と同じような疑似語実験を日本語風の音列で行えば、

  • 「ラ」「マ」「ナ」などの響きが多い単語は覚えやすく

  • 「グ」「ズ」「ド」のような濁音が多い単語は覚えにくい

といった傾向が見つかるかもしれない。さらに、方言や個人差も絡めれば、「この地域では“カ行”が好き」などの文化的な特徴も見えてきそうだ。



実用編:言葉の「音設計」で変わる3つの領域

研究チームは、今回の知見には言語学以外にも応用があると指摘している。Phys.org


ここでは、特に影響が大きそうな三つの領域を挙げてみよう。

1. 外国語学習

単語学習アプリや単語帳において、

  • 初期段階では「音が心地よく、覚えやすい単語」を多めに配置する

  • 発音練習では、学習者が「言っていて気持ちいい」と感じる音列を意識的に取り入れる

といった工夫が考えられる。学習のハードルが下がり、「単語を覚えるのがちょっと楽しい」という体験を設計できるかもしれない。


2. マーケティング・ネーミング

ブランド名・商品名・キャッチコピーは、意味だけでなく音韻パターンの観点から評価できる。

  • 読み上げたときのリズム

  • 子音と母音の並びのなめらかさ

  • 口を大きく開く音か、こもった音か

といった特徴をスコア化し、「記憶に残りやすく、美しく感じられる名前」を科学的に設計することが可能になっていくだろう。


3. 言語変化のメカニズム

マッツィンガー氏らは、「快い音パターンをもつ単語は世代を超えて残りやすく、そうでないものは淘汰されるかもしれない」とも示唆している。Phys.org


もしこれが本当なら、私たちが話している母語の姿は、数百年単位で続く“音の人気投票”の結果なのかもしれない。


昔の人々が「言いにくい」「耳障りだ」と感じた音の組み合わせは、自然と使われなくなり、やがて消えていく。逆に、口にしやすく心地よい音の連なりは、歌や詩、物語の中で繰り返され、文化の中で生き残る——そんなダイナミクスが想像できる。



私たちは今日も、「音のいい言葉」に惹かれている

SNSを眺めていると、みんながこぞって使う流行語やキャッチコピーがある。意味だけ見れば大したことはないのに、なぜか言いたくなる言葉たち。


今回の研究は、その裏側に音の快さと記憶の相互作用があることを示してくれた。

  • 試験勉強で単語を覚えるとき

  • 新しいサービス名を考えるとき

  • プレゼンのキーフレーズを練るとき

ちょっとだけ「意味」から離れて、「この言葉は、耳と口にとって気持ちいいか?」と自問してみる。

その小さな意識の変化が、あなたのメッセージを、誰かの頭と心に長く残るものに変えてくれるかもしれない。



参考記事

心地よい響きの言葉は記憶しやすいことが、疑似語実験で示される
出典: https://phys.org/news/2025-12-pleasant-words-easier-pseudoword.html

← 記事一覧に戻る

お問い合わせ |  利用規約 |  プライバシーポリシー |  クッキーポリシー |  クッキー設定

© Copyright ukiyo journal - 日本と世界をつなぐ新しいニュースメディア All rights reserved.