“ゼロカロリー”の落とし穴:人工甘味料で脳年齢+1.6年?若いほどリスクが高いのはなぜか

“ゼロカロリー”の落とし穴:人工甘味料で脳年齢+1.6年?若いほどリスクが高いのはなぜか

「ゼロ」の代償は、脳の“静かな減点”か

「砂糖は太る。だからゼロカロリーで。」――この10年で常識になった選択に、冷や水を浴びせる論文が出た。ブラジルの約1.3万人を8年追跡した研究は、人工・低カロリー甘味料(LNCS)の摂取量が多い人ほど、記憶や言語流暢性などの認知機能がより速く落ちていく関連を示し、その差は最大で1.6年の脳の老化に相当したという。CNN.co.jp神経学会


何をどう追ったのか:ELSA-Brasilという土台

対象は35~75歳, 約1万3000人。食習慣は登録時に把握し、平均8年の間に3回の認知検査(言語流暢性、ワーキングメモリ、単語想起、処理速度)を実施。摂取量は三分位に分け、高摂取群の平均は1日191mg(小さじ約1杯)。参考までにダイエット炭酸1缶にはアスパルテームが約200~300mg含まれるとされる。結果、高摂取群の低下は最小群より62%速く, 約1.6年の老化に相当。中間群でも35%速く, 約1.3年に相当した。CNN.co.jp


どの甘味料が“問題”とされたのか

評価されたのは7種類

  • 関連あり:アスパルテーム、サッカリン、アセスルファムK、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール

  • 関連なし:タグトース(希少糖の一種)
    総合的な認知機能、とくにワーキングメモリ言語流暢性との関連が目立った。CNN.co.jpPsyPost - Psychology News


誰が影響を受けやすい?

60歳未満では低下の加速がはっきりし、糖尿病のある人では関連がより強かった。これは「中年期の食習慣が、のちの脳の健康を左右しうる」という含意をもつ。専門家論評も「症状が出る何十年も前からの曝露が生涯影響を及ぼす可能性」を指摘している。Medscape


因果か相関か――“観察研究”を正しく読む

本研究は観察研究であり、人工甘味料が直接“脳の老化を引き起こす”と断定はできない。食事全体の質、超加工食品の摂取、既存の代謝リスクなど、交絡要因は完全には消せない。業界団体国際甘味料協会(ISA)は「主要保健機関が安全性を確認している」と反論。規制当局のFDAは、アスパルテームを含む甘味料に**GRAS(一般に安全とみなされる)**の枠組みを与えている。一方、WHOは2023年にアスパルテームを「発がん可能性」のリストに加えたが、FDAはこれを否定してきた。見解は割れているのが現状だ。CNN.co.jp


国際報道と専門メディアが強調するポイント

英ガーディアンやMedscape、AANプレスリリースは、「1.6年の老化」「62%速い低下」の数字を繰り返し報じ、60歳未満糖尿病のサブグループでの強い関連をクローズアップした。タグトースが例外だった点もニュース性が高い。ザ・ガーディアンAanMedscape


日本語圏・英語圏SNSの反応は?

SNSでは大きく三つの論点で盛り上がった。

  1. 「相関と因果の混同に注意」派
     Redditの科学系コミュニティでは、「観察研究である以上、原因とは言えない」「健康意識の高低や加工食品摂取が交絡している可能性」を指摘するコメントが上位に。Reddit

  2. 「60歳未満・糖尿病に注目」派
     「若いほど影響が大きいのは衝撃」「糖尿病で強い関連は実務的に重要」との議論が目立つ。医療ニュースの共有スレッドでも同様の観点で要約が広がった。New Atlas

  3. 「代替甘味料の再検討」派
     「ステビア羅漢果(モンクフルーツ)は今回の7種に含まれていない」「タグトースは関連なしとされた」との情報が拡散。成分表を読む重要性が指摘された。PsyPost - Psychology News


日本語圏でははてなブックマークで記事が共有され、「ゼロコーラをやめるべき?」「習慣的な『甘さ』依存が問題では」といった実感ベースの声と、「加工度の高い食事全体の見直しを」という冷静な受け止めが混在した。はてなブックマーク


では、明日から何を変えればいい?

1) “どの甘味料か”を確認する癖
 原材料表示でアスパルテーム/サッカリン/アセスルファムK/エリスリトール/キシリトール/ソルビトール/タグトースを見分ける。今回関連が示されなかったのはタグトースのみ。PsyPost - Psychology News


2) “飲み物”から着手
 ダイエット炭酸やフレーバーウォーターは“ゼロ”でも甘味料の主要な供給源。まずは水・炭酸水・無糖茶へ。※1缶あたりのアスパルテームは約200~300mgとされる。CNN.co.jp


3) “若いときほど”慎重に
 60歳未満での関連が目立つ。将来の脳の健康を積み上げる投資と考え、中年期からの摂取頻度を見直す。Medscape


4) “ゼロ甘味”に戻れないなら選択肢を
 甘さそのものの頻度を減らすのが本筋だが、どうしても必要なら、今回評価対象外のステビア羅漢果などへ一時的にスイッチする戦略も。ただし未検証の点が多く、万能ではないザ・ガーディアン


5) 食事の“全体設計”を見直す
 人工甘味料はしばしば超加工食品に同梱される。野菜・果物・全粒穀物・オリーブ油・魚などを重視した加工度の低い食事に寄せることが、長期の脳健康には堅実だ。ザ・ガーディアン


業界・規制の見解のズレ

規制当局(FDA)はGRASの枠組みを維持し、業界団体は**「安全性は確認されている」と主張する。一方で、WHOのIARCによるアスパルテーム分類や、血栓リスクを指摘した過去研究(エリスリトール等)もあり、「無条件に安全」ではない可能性が積み上がっている。結論はまだ収斂しておらず、「用心深い最適化」**が現実解だ。CNN.co.jp


メディア・SNSの“読み方”ガイド

  • **見出しの数字(1.6年・62%)**は、比較上の推定であり、個人の未来を断定するものではない

  • 「原因」と断言する記事には注意。研究は観察デザイン

  • サブグループの強弱(<60歳、糖尿病)仮説生成として重要だが、臨床判断の唯一の根拠にはならない神経学会

最後に:甘さの“設計”を、脳の未来から逆算する


今回の研究は、**「砂糖か人工甘味料か」という二者択一の議論を超え、「そもそもどれだけ“甘さ”を日常に求めるか」**を問い直している。習慣としての甘さが、未来の脳にじわじわと“減点”を重ねていないか。中年期の一杯、そのラベルを読むところから、私たちの選択は変えられる。ザ・ガーディアンCNN.co.jp



参考:主要報道・一次情報