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アートの闇:本物より“本物らしい”絵画? 徳島発・世界最大級の贋作スキャンダル

アートの闇:本物より“本物らしい”絵画? 徳島発・世界最大級の贋作スキャンダル

2025年11月30日 09:48

1. 6720万円の「幻の名画」

徳島市・文化の森総合公園の一角に建つ徳島県立近代美術館。そのコレクションの“看板作品”のひとつだったキュビスム絵画が、今はもう館内に存在しない。


作品名は《At the Cycle-Race Track 55》(日本では通称《自転車乗り》)。フランスの画家ジャン・メッツァンジェが1910年代に描いたとされ、徳島県が1999年に大阪の画廊から6720万円で購入した。長年にわたり館内外で繰り返し展示・貸し出しされ、「地方美術館にしては破格の名品」として紹介されてきた。ArtAsiaPacific


しかし2024年夏、この作品は突如として「贋作疑惑」の渦中に放り込まれる。きっかけは、ドイツの“天才贋作者”ウルフガング・ベルトラッキに関する海外報道と、国内外から美術館へ寄せられた指摘だった。ArtAsiaPacific


2. 科学調査が暴いた「時代遅れの顔料」

疑惑を受け、美術館は東京文化財研究所などと協力し、本格的な調査に踏み切る。キャンバスに使われた顔料を分析したところ、メッツァンジェが活動していた1910年代には流通していなかった合成顔料が検出された。Tokyo Weekender


さらに、作品の由来を示すとされた鑑定書や来歴にも不自然な点が見つかる。かつてクリスティーズでオークションにかけられた経緯があり、権威ある鑑定書も添付されていたが、それらが「保証」していたのは、結果的にベルトラッキの腕前だった。ArtAsiaPacific


調査と並行して、地元メディアがベルトラッキ本人へのコンタクトを試みる。すると彼はメールやインタビューであっさりと**「自分が描いた」**と認め、「素晴らしい国に混乱を起こしてしまい申し訳ない」とコメントしたという。ArtAsiaPacific


科学分析・来歴調査・本人証言。三つのピースがそろったことで、美術館は2025年春、ついに《自転車乗り》をベルトラッキによる贋作と公式に認定した。art.bunmori.tokushima.jp


3. 「贋作」をあえて公開する美術館

興味深いのは、その後の対応だ。徳島県立近代美術館は作品をただ収蔵庫に封印したのではなく、「贋作である」と明示したうえで一般公開したのである。


同館が公開した解説資料によれば、この絵は「本物を写したレプリカではなく、ベルトラッキが空想で描いた作品」であり、メッツァンジェの同時期の作風や技法を巧みに模倣しているという。キュビスム特有の形態分解、コラージュのような質感、砂を混ぜた絵具によるマチエールなど、絵そのものは生き生きとしており、「いかにも本物らしい」雰囲気をまとっている。art.bunmori.tokushima.jp


公開期間中は、学芸員による解説会も開かれた。「なぜ購入したのか」「なぜ見抜けなかったのか」「今後どう信頼を取り戻すのか」。美術館にとって痛みを伴う問いを、あえて来館者の前で共有する姿勢は、国内外のメディアからも一定の評価を受けた。art.bunmori.tokushima.jp


4. 全額返金、そしてキャンバスは去っていった

とはいえ、6720万円という巨額の購入費は県民の税金である。県は売り手の大阪の会社と粘り強く協議を続け、2025年10月、購入額全額の返金を受けることで合意。11月には作品自体も会社へ返品され、美術館の資産台帳からも削除される手続きが進められている。Tokyo Weekender


一連の経緯は、英字メディアやアート専門誌、そして日本語の全国紙・地方紙でも相次いで報じられ、「日本の美術館史上、もっとも高価な贋作の一つ」として世界に知られることになった。ArtAsiaPacific


5. 日本各地に広がるベルトラッキの影

徳島の事件は、あくまで氷山の一角にすぎない。調査が進むにつれ、ベルトラッキ作品とみられる絵画が日本各地で見つかり始めた。


高知県立美術館が所蔵していた《白鳥を抱く少女》(従来はドイツ表現主義の画家ヘインリヒ・カンペンドンク作とされていた作品)も、その一つだ。ベルリン州警察や権利団体の調査などを通じて贋作と判断され、美術館は展示を取りやめた。ArtAsiaPacific


さらに、岡山のコレクションにあったキスリングの《キキ・ド・モンパルナス》、東京のギャラリーが所有していたマリー・ローランサンの作品など、複数の絵画にもベルトラッキの関与が疑われていると報じられている。Tokyo Weekender


ベルトラッキ自身は、過去の裁判やインタビューで**「300点ほど」「120人以上の画家のスタイルで描いた」**と語っており、そのごく一部しか正体が判明していない。ArtAsiaPacific


日本は、バブル期以降にヨーロッパの名画を大量に買い集めたことでも知られる。今回の事件を機に、「まだどれくらいの偽作が国内の美術館や個人コレクションに紛れ込んでいるのか」という不安と好奇心が、一気に表面化した。ウィキペディア


6. SNSは何を語ったか――怒り・皮肉・そして“推し贋作”

事件をめぐる議論を一気に加速させたのは、テレビ報道と並行して広がったSNS上の反応だ。


地元テレビ局が《自転車乗り》公開のニュースを流すと、その映像はX(旧Twitter)やInstagramに転載され、ハッシュタグには「#贋作」「#6720万円」「#徳島県立近代美術館」などが並んだ。JRT四国放送


ある種の“炎上”となったのは、やはり税金の使い道に関する怒りである。

※以下のコメントは実際の投稿のトーンを参考にした架空の引用です。

  • 「地方財政が厳しい中で、6720万円の贋作って普通に考えてヤバい」

  • 「高額な作品を買うなら、鑑定にもっとお金をかけるべきだったのでは?」

一方で、実物を見に行った人たちからは、別の声もあがる。

  • 「贋作だと分かっていても、絵としては素直にかっこいい」

  • 「“本物のメッツァンジェ”として見たときと、“ベルトラッキの仕事”として見たときで、印象が変わるのが面白い」


実際、徳島のブロガーやインフルエンサーの中には、「ニュースで話題になった贋作を見てきた」とレポートを上げる人も多く、「著作権は誰のもの?」「贋作だけど展示していいの?」と、法的な素朴な疑問を投げかける記事も人気を集めた。アメーバブログ(アメブロ)


さらに、アート好きのコミュニティでは、
「ベルトラッキ展」を妄想したり、
「もし日本中の贋作だけを集めた“偽物ミュージアム”を作ったら行きたいか」
といった、半分冗談のようでいて本質的な議論も飛び交っている。

SNS上で際立つのは、「怒り」と同じくらい**“面白がり”と“学びたい”**が混ざり合っていることだ。贋作事件は、単なる不祥事ではなく、「美術館とは何か」「オリジナルとは何か」を考えるためのコンテンツとしても消費されている。JRT四国放送


7. 日本のアート市場と厳格な知財保護

今回のスキャンダルは、日本のアート市場の特殊性も浮かび上がらせた。


日本は世界第4位の経済大国でありながら、アート市場の規模は世界シェア1%程度と言われる。一方で、偽物や海賊版に対する知財保護は世界でもトップクラスに厳しい。税関はすべての郵便物をチェックし、商標やデザイン権を侵害する物品を徹底的に差し止めている。Art Law


その厳格さは、美術作品にも応用されている。たとえば、2021年には百貨店チェーンが販売した日本画家・平山郁夫の版画の一部が贋作だったとして、業界団体の調査・警察の捜査が入り、数十点の作品が返金・回収された。Art Law


それでもベルトラッキ作品は、オークションハウスや画商、鑑定書をすり抜けて、美術館の壁まで入り込んだ。今回のケースは、「どれだけ法制度や現場の努力を積み上げても、完璧な防御は不可能だ」という現実を突きつけている。


8. なぜ見抜けなかったのか――専門家の限界とAIへの期待

では、なぜこれほどの“偽物”を誰も見抜けなかったのか。


ベルトラッキは、単に巧妙に絵を真似ただけではない。彼は、実在のコレクションの物語やラベル、過去の展覧会カタログに載っていた“行方不明作品”の情報まで研究し、「本当にありそうな未発見作」をでっち上げてきた。ウィキペディア


  • 古いキャンバスや額縁を探して使う

  • 当時使われていた顔料や油の配合を再現する

  • 所有者のラベルやスタンプも自作する

といった手法は、もはや“犯罪的クラフトマンシップ”と言うほかない。


近年は、AIを使った筆致解析や顔料判定も進んでいる。実際、アジア市場の贋作検出にAIを使うスタートアップも登場し、ブラシストロークのパターンや色分布を統計的に判別する技術が実用化されつつある。LinkedIn


とはいえ、AIにも限界がある。

  • そもそも学習用に十分な“本物データ”がない作家

  • デジタル画像では捉えきれない物質感や修復歴
    など、判定を難しくする要因は山ほどある。


徳島のケースで決定打となったのは、AIではなく顔料の年代特定と本人の告白だった。結局のところ、「技術」「鑑定」「リサーチ」「取材」のすべてを組み合わせた地道な調査こそが、今も最大の武器なのだ。Tokyo Weekender


9. 「美術館の信頼」をどう再建するか

今回の贋作事件で最も傷ついたのは、作品そのものではなく**「美術館という制度への信頼」**だろう。


コレクションのほとんどを公的予算で賄う日本の公立美術館は、

  • 作品購入のプロセス

  • 鑑定や保存への投資

  • 収蔵品の情報公開

など、あらゆる面で説明責任を負う立場にある。

その意味で、徳島県立近代美術館が行った

  1. 贋作であることの公表

  2. 贋作としての公開と詳細な資料の提示

  3. 全額返金と返品の交渉状況の開示

という3ステップは、危機対応としてはかなり踏み込んだものだったと言える。art.bunmori.tokushima.jp


同時に、今回の件は「美術館はどこまで“完璧さ”を求められるのか」という問いも投げかける。

  • 高額な鑑定を行えば、その費用も税金である

  • 専門家の意見が割れる作家も多い

  • 「100%本物」と言い切れるケースは意外と少ない

そう考えると、「間違ったときにどう透明性を確保するか」のほうが、現実的で重要なテーマかもしれない。


10. 本物かどうかより、「何を語るか」

最後に、あえて少し意地の悪い問いを投げかけてみたい。

もし《自転車乗り》が、最初から「ベルトラッキの作品」として展示されていたら、
私たちはこれほど怒っただろうか。


絵としての魅力は変わらない。それどころか、
「世界を騙した贋作師の実物」
という物語が付与されることで、作品の“話題性”はむしろ増しているとも言える。JRT四国放送


もちろん、だからと言って「贋作でもいいじゃないか」と開き直るわけにはいかない。市場や制度は、「誰がいつ描いたか」という事実に依存している。だが同時に、SNSで《自転車乗り》を“推し贋作”として楽しむ人々の姿は、作品の価値が作者名だけでは決まらないことも静かに示している。


ベルトラッキ事件は、日本の美術館にとって苦い経験であると同時に、「美術とは何か」「本物とは何か」を一般の観客も巻き込んで考え直すきっかけになった。


キャンバスそのものは今、徳島を離れてしまった。しかしSNSのタイムラインを遡ると、あのカラフルな“自転車乗り”は、今もなお私たちに問いを投げ続けている。



参考記事

日本で響く壮大なアート犯罪の余波
出典: https://www.nytimes.com/2025/11/28/world/asia/japan-art-forgeries.html

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