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イカの魔法?透明から虹色へ ― イカの“瞬間変身セル”が拓く光の未来

イカの魔法?透明から虹色へ ― イカの“瞬間変身セル”が拓く光の未来

2025年06月29日 01:38

1. イントロダクション──深海のドレスコード

 イカは古今東西の海洋生物のなかでもとりわけ“変身”が巧みな生き物だ。危険を察知すると一瞬で透明化し、捕食者の目をくらます。仲間とコミュニケーションを取るときや求愛行動の際には、虹色の波が肌を駆け抜け、色彩パターンでメッセージを送り合う。その舞台裏には二種類の発色システムがある。ひとつは黄色・赤・黒などの色素を含む「クロマトフォア」(色素嚢)で、もうひとつは光の干渉を用いて色を出す「イリドフォア」(構造色細胞)だ。本記事では、イリドフォアに潜むナノスケール構造を世界で初めて3Dで解き明かし、さらにその知見をもとに多機能フォトニックフィルムを試作した最新研究を、SNSの反応も交えて詳しく紹介する。



2. 研究の背景──“リフレクチン”という謎めいたタンパク質

 イリドフォアの内部には「リフレクチン(reflectin)」と呼ばれる特殊なタンパク質が高密度で存在する。リフレクチンは1950年代にその存在が報告されて以来、イカやコウイカ、タコなど一部の頭足類にのみ見つかっている希少な分子だ。分子表面に正負両方の電荷を持ち、リン酸化やpHの変化によって自己集合状態がダイナミックに変わる――それが「瞬時変色」のメカニズムに関わっていると推測されてきた。しかし、実際に細胞内でどのような立体構造をとり、どんな物理法則で光を操っているのかは長年“ブラックボックス”だった。



3. アプローチ──3Dホロトモグラフィーで細胞を丸ごと撮る

 今回、カリフォルニア大学アーバイン校(UCI)とウッズホール海洋生物学研究所(MBL)の合同チームは、低照度定量位相顕微鏡(3Dホロトモグラフィー)を採用した。これは生細胞に強い蛍光色素を入れなくても、屈折率の違いをもとに内部構造をナノスケールで再構築できる技術だ。研究者らは生きたカリフォルニアイカ(Doryteuthis pealeii)の皮膚片を摘出し、3次元データセットを1シングルボリュームあたり数秒で取得。これにより、「リフレクチン板」がどのように積層しているかが手に取るようにわかった。



4. 発見──らせん状に積層した“可動ブレッグ鏡”

 解析の結果、リフレクチンは板状ではなく“ナノカラム”がゆるやかな螺旋(ヘリカル)を描いて積み上がる、前例のない構造を取っていた。各カラムの幅は200〜400nm、巻き上がりのピッチは平均1.5µm。屈折率はリフレクチンが1.46、水が1.33でコントラストが高く、これがサイン波状に変化することで「ブレッグ反射」が起こる。イカが神経刺激を受けると、リフレクチンのリン酸化度が変化→荷電バランスが崩れ→カラム間の浸透圧が変化→板間距離(d)が収縮。わずか数ミリ秒で“d値”が可逆的に可変し、反射ピークが可視光域(青〜赤)から近赤外域までシフトする。まさに生体が作り出した“可動ブレッグ鏡”といえる。



5. バイオミメティック材料化──伸縮で色も赤外も変えるフィルム

 構造解明だけで終わらないのが今回の研究の面白いところだ。チームはリフレクチン遺伝子を大腸菌で大量発現させ、抽出タンパク質をポリイミド基材に自己集合させてナノカラムを再現。さらに銀の極薄メタル層を10nmおきに挿入し、赤外放射のコントロール性を持たせた。試作フィルムは厚さ80µmと柔軟で、引き伸ばすと緑→橙→赤へとグラデーション変化し、表面温度を上げると赤外エミッタンスが最大40%低下する。折り曲げ2000回試験でもフォトニック特性はほぼ維持された。



6. 応用分野──軍事・環境・医療まで広がるポテンシャル

防衛迷彩
 可視光・近赤外・熱放射の三領域を同時に制御できるため、従来別素材で賄っていた“色迷彩”と“熱迷彩”を一枚の布で達成できる。DARPAはすでにパイロットプログラムを立ち上げ、2027年フィールドテストを予定している。

ウェアラブル温調衣料
 屋外作業者やアスリート向けに、気温上昇時にはアルベドを上げ赤外放射を抑え、寒冷時には逆に放射率を上げる“パッシブ空調ウェア”の開発が進行中。試算ではエアコン使用エネルギーを都市全体で6〜12%削減できる可能性がある。

生体センサー
 圧力や伸縮でリフレクチンカラム間距離が変わる特性を利用し、皮膚貼付型ストレインゲージとして血圧変動や呼吸パターンをリアルタイム解析。光学式なので電磁ノイズの影響を受けにくい。

フォトニクス機器
 可変ブレッグ反射をマイクロキャビティレーザーの共振ミラーに応用し、波長可変レーザーをメンテナンスフリーで構築する研究が始まった。光ファイバー内部にコーティングすれば、外部磁場や温度で波長が変わる“インラインセンサー”も期待される。



7. SNSの反響──「SFが現実に近づいた」

 研究が米Science誌に掲載されるや否や、*X(旧Twitter)*では「#SquidSkinTech」がトレンド入り。技術系インフルエンサー @The_Tradesman1 が投稿した解説スレッドは48時間で3.1万RT、1.2万いいねを記録した。コメント欄には「イーロン・マスクはこれをStarshipの外壁に貼るべき」といったジョークから「光学迷彩制服が実現したら取材現場はどうなる?」という報道現場の戸惑いまで、幅広い声が寄せられた。


 Redditのr/scienceでは、トップコメントが「Reflectin? It's reflecting more than light; it's reflecting my insecurities about camouflage tech!」というダジャレで5万アップボート超。エンジニアリング寄りの議論スレッドでは「ロールtoロール式製造プロセスのスループットをどう上げるか」「自己集合時間をms→µsに短縮できないか」など、実装面のディープな議論が活発だ。



8. 専門家の視点──色彩生物学とフォトニクスの交差点

 マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボのレイラ・デラヴィ准教授は「動物色彩学と材料科学がここまで接近した前例はほとんどない。次のステップは、クロマトフォアとイリドフォアが神経系でどのように協調してダイナミックな模様を描き出すのかをリアルタイムで観察すること」とコメント。また、スタンフォード大学応用物理学科のマリオ・アーロン教授は「自己集合ポリペプチド材料としてのリフレクチンは、レアメタル不要でサステナブル。シリコンフォトニクスと組み合わせれば、CO₂排出を大幅に抑えつつ次世代データ通信の光スイッチとして機能する潜在力を秘めている」と語る。



9. 商業化へのロードマップ──量産・コスト・規制

 現在の研究試作ラインでは、1平方メートルあたり約120ドルと高価だが、DARPAおよび米空軍の助成で、ステンシル印刷+プラズマ重合を組み合わせたロールtoロール生産設備が2026年末に稼働予定。量産化が進めば2028年には15ドル/㎡まで低下すると試算されている。規制面では生体由来タンパク質を含むため、バイオハザード等級をクリアするサプライチェーン認証が必要。また、輸出規制(ITAR)が適用される可能性があり、国内外共同開発ではライセンス・透明性が必須だ。



10. 結論──“海の魔法”が紡ぐ光の未来

 イカの皮膚に隠されていたのは、まるで生きたマイクロマシンのような“可動ブレッグ鏡”だった。動物行動学という基礎科学のセレンディピティが、軍事迷彩やエネルギー効率化、医療センサー、さらには通信フォトニクスへと応用範囲を一気に開く。海洋生物が何千万年もかけて進化させた“瞬時変色”というサバイバル術は、気候危機と資源枯渇に直面する人類にとって、まさに未来を照らすヒントとなるだろう。次に変わるのは、イカの色ではなく、私たちの暮らし全体なのかもしれない。


参考記事

科学者たちが、イカが外見を変えるために使う細胞構造を解明
出典: https://phys.org/news/2025-06-scientists-uncover-cell-squids.html

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