ドイツの子ども25%に心の不調サイン、日本の小中学生3.9%が不登校 ― 異なる数字が映す学校の課題

ドイツの子ども25%に心の不調サイン、日本の小中学生3.9%が不登校 ― 異なる数字が映す学校の課題

教室に座り、授業を受け、宿題を提出し、休み時間には友人と話している。

外から見れば、何の問題もなく学校生活を送っているように見える子どもでも、心の中では強い不安や疲労を抱えている可能性がある。

ドイツで公表された「ドイツ学校バロメーター」2025/26年版では、8~17歳の子ども・若者の25%に、心理的負担が高まっていることを示すサインが確認された。割合にすると4人に1人である。

内訳は、心理的な問題が顕著な範囲にある子どもが15%、境界領域にある子どもが10%だった。前回調査の21%から4ポイント増えている。

ただし、この25%は精神疾患の診断率ではない。質問票を使い、感情、行動、注意力、人間関係などの状態を確認したスクリーニング結果である。医師が病名を付けた子どもの割合ではなく、注意深い見守りや支援が必要となる可能性を示す数字だ。

この違いを理解せずに、「ドイツでは子どもの4人に1人が精神疾患を抱えている」と表現するのは正確ではない。

それでも、学校に通い続けている子どもを含め、4人に1人に何らかの心理的な注意サインが表れているという結果は重い。


日本は小中学生の約3.9%が不登校

日本では2024年度、小中学校の不登校児童生徒が35万3,970人となった。割合にすると、小中学生全体の約3.9%、およそ26人に1人である。

小学生では約2.3%、およそ43人に1人。中学生では約6.8%、およそ15人に1人が不登校となっている。

この記事では、国の人口や児童生徒数によって大きく変わる総数だけではなく、割合を先に示す。

したがって、「ドイツでは4人に1人、日本では不登校35万人」と並べるのではなく、「ドイツでは25%に心理的負担のサイン、日本では小中学生の約3.9%が不登校」と表記する。

ただし、この二つの割合も、そのまま比較することはできない。

ドイツの25%は、登校しているかどうかに関係なく、質問票によって心理状態を調べた結果である。

一方、日本の約3.9%は、病気や経済的な理由などを除き、何らかの心理的、情緒的、身体的、社会的要因によって、年間30日以上登校しなかった児童生徒の割合だ。

心に強い負担を抱えながらも毎日登校している日本の子どもは、不登校の数字には含まれない。

つまり、ドイツの25%と日本の3.9%の差は、両国の子どもの心理状態の差を表しているわけではない。測っている対象も、定義も異なる。

むしろ注目すべきなのは、日本では子どもの苦しさが長期欠席という形で表れて初めて、全国統計として見えやすくなるという点である。


「登校できている子ども」の苦しさは見えにくい

学校に行けていることと、心が健康であることは同じではない。

遅刻も欠席もなく、成績も大きく下がっていない。しかし、帰宅後は何もできないほど疲れている。日曜日の夜になると腹痛が起きる。テストの前には眠れない。教室では笑っていても、自宅では突然泣き出す。

こうした状態は、欠席日数だけを見ていても把握できない。

ドイツの調査では、回答した子どもの26%が自分の生活の質を低いと評価し、16%が学校での居心地を悪いと感じていた。約半数は強い成績プレッシャーを感じ、多くの子どもが週末にも学校のために勉強しなければならないと答えた。

日本でも、学校に通っている子どもの心理的負担を継続的に把握する仕組みが必要ではないか。

長期欠席、成績低下、問題行動といった目に見える変化が起きてから対応するだけでは、支援が遅れる可能性がある。

子どもが自分の不安、睡眠、学校での居心地、人間関係などを定期的に振り返り、必要に応じて専門家につながれる仕組みが求められる。


いじめは教室の外まで続く

ドイツの調査では、11~17歳の約3割が、少なくとも月に1回、同級生からの侮辱、脅し、仲間外れなどを経験していると答えた。

日本でも2024年度、小中高校と特別支援学校で認知されたいじめは76万9,022件に達している。

いじめの認知件数が増えること自体は、必ずしも悪化だけを意味しない。以前なら見過ごされていた小さな行為を、学校がいじめとして把握するようになった結果も含まれる。

しかし、生命や心身、財産に重大な被害が生じた疑いのある「重大事態」も1,405件に達しており、深刻なケースが増えていることは無視できない。

現在のいじめは、学校から帰宅すれば終わるとは限らない。

SNSやメッセージアプリを通じて、悪口、仲間外れ、画像の拡散、グループからの排除が続く。オンラインと教室内の人間関係がつながっているため、子どもは一日中逃げ場を失うことがある。

こうした状況で、被害を受けた子どもからスマートフォンを取り上げるだけでは、問題は解決しない。

相談した結果、自分だけがSNSを使えなくなれば、子どもは「相談するとさらに孤立する」と感じる可能性がある。

必要なのは、端末の利用時間だけを見ることではない。誰と、どのようなやり取りをし、利用後にどのような気持ちになっているかまで確認することである。


日本の子どもは身体的に健康でも、心の満足度が低い

ユニセフが2025年に公表した先進国の子どものウェルビーイング調査では、日本は身体的健康の分野で36カ国中1位だった。

子どもの死亡率や過体重などの指標を見る限り、日本は子どもが身体的に安全に暮らしやすい国である。

一方、生活満足度と自殺率を基にした精神的幸福度は37カ国中32位だった。

身体は守られていても、心の面では必ずしも安心して生活できていない。この差は、日本の子どもを取り巻く環境を考えるうえで重要である。

日本の学校では、同じ年齢の子どもが同じ教室に集まり、同じ時間割で学び、同じ時期に試験を受けることが基本になっている。

この仕組みは集団で学ぶ力や協調性を育てる一方、集団環境への適応が難しい子どもにとっては逃げ場が少ない。

教室を離れれば目立つ。保健室に行けば、さぼっていると思われるかもしれない。欠席すれば授業に遅れる。クラス内の人間関係が悪化しても、簡単には所属集団を変えられない。

「学校には毎日行くものだ」「みんな我慢している」「休んだら将来困る」といった言葉も、限界に近づいている子どもにとっては、自分の苦しさを否定されたと感じる場合がある。


不登校を「本人の弱さ」だけで説明しない

日本の不登校をめぐっては、異なる意見がぶつかりやすい。

一方では、生活習慣の乱れ、スマートフォンの長時間利用、家庭での規律不足を問題視する声がある。

もう一方では、学校に行かないことを、いじめ、過度な競争、感覚過敏、発達特性、人間関係などから自分を守る行動として捉える見方がある。

どちらか一方だけで、すべての子どもを説明することはできない。

昼夜逆転が不登校を長期化させる場合はある。しかし、学校への不安で眠れないため、深夜までスマートフォンを見続けている可能性もある。

表面に現れた行動と、その原因を取り違えてはならない。

不登校の子どもに必要なのは、一律の登校指導ではない。何が負担になっているのかを確認し、その子どもの状態に合った選択肢を用意することである。

午前中だけ登校する、別室で学ぶ、一部をオンラインにする、教育支援センターやフリースクールを利用するなど、学び方には複数の形があってよい。

学校復帰だけを唯一のゴールにすると、子どもは「元の教室に戻れない自分は回復していない」と感じてしまう。

大切なのは、どこで学んでいるかよりも、安心、安全、学習、人とのつながりが確保されているかである。


SNSで広がる「学校復帰だけを目標にしないで」

日本のSNSでは、不登校や子どもの自殺に関するニュースが報じられるたびに、保護者、元不登校経験者、教員、心理職、支援団体などから多くの意見が投稿される。

 

公開投稿で目立つのは、「学校に戻ることだけを目標にしないでほしい」という声だ。

元不登校経験者や保護者からは、フリースクールやオンライン学習を利用し、その後に進学や就職につながった経験が共有されている。

登校を強く求めるのをやめたことで、子どもが少しずつ話せるようになったという趣旨の投稿もある。

また、「不登校を親の責任だけにしないでほしい」「家庭を責めれば、保護者は学校に相談できなくなる」という意見も見られる。

一方で、「生活習慣を整えるべきだ」「スマートフォンの利用を家庭が管理する必要がある」「嫌なことから逃げることを簡単に認めるべきではない」とする反応もある。

学校側の負担が限界に近いことから、家庭にも役割を求めたいと感じる教員の声も少なくない。

しかし、親と教師のどちらに責任があるかという対立だけでは、問題は解決しない。

保護者にも教師にも、子どもの心理状態を丁寧に見守るための時間や専門知識が十分にない場合がある。個人の責任を争うより、心理職、福祉職、医療機関、地域の支援団体が関われる体制をつくる必要がある。

なお、SNSに投稿する人は、問題意識の強い当事者や支援者に偏りやすい。公開投稿は社会全体の意見を統計的に示すものではないが、当事者が何に苦しみ、どのような支援を求めているかを知る手掛かりにはなる。


ドイツのSNSでは専門職の拡充を求める声

ドイツ語圏のLinkedInなどでは、今回の調査結果を受け、学校心理士、スクールソーシャルワーカー、カウンセラーなどの拡充を求める意見が出ている。

「4人に1人」という数字を一時的なニュースで終わらせず、問題が深刻化する前に相談できる仕組みを整えるべきだという主張である。

また、子どもにストレスへの対処法を教えるだけでは不十分だという指摘もある。

過密な時間割、大人数の学級、成績競争、いじめ、専門職不足などを変えないまま、子どもにだけ感情管理やレジリエンスを求めれば、制度上の問題を個人の責任に置き換えることになる。

「あなたがもっと強くなれば耐えられる」と教えるだけでは、心の支援とはいえない。

子どもを強くする取り組みと、子どもを苦しませる環境を減らす取り組みは、同時に行う必要がある。


相談員は「いる」だけでは足りない

日本ではスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置が進んでいる。

しかし、配置率が高くても、専門家が毎日学校にいるとは限らない。複数校を担当し、週に数時間だけ来校するケースも多い。

相談したい日に不在だったり、予約が埋まっていたりすれば、子どもが助けを求めようと思った瞬間を逃してしまう。

子どもにとって、知らない大人に悩みを説明することは簡単ではない。

普段から廊下や教室で顔を合わせ、「この人なら話しても大丈夫」と思える関係がなければ、相談室に入ること自体が高い壁になる。

名古屋市の市立中学校における常勤スクールカウンセラーの効果を調べた研究では、カウンセラーへの相談経験率が2.6%から10.3%へ上昇した。

カウンセラーをまったく知らないと答えた生徒も減少している。

この研究だけで、不登校や自殺が減少したとまではいえない。それでも、専門家が継続的に学校にいることで、子どもとの心理的な距離を縮められる可能性は示されている。

必要なのは、相談窓口の数だけではない。

相談できる曜日と時間、担当者の継続性、プライバシーが守られる場所、保護者や教師との連携方法まで含めて考えなければならない。


子どもの意見を聞くことも心の支援になる

ドイツの調査では、約4分の3の子どもが、授業内容や試験方法について、もっと発言したいと答えた。

一方、約5分の4は、実際には自分の意見をほとんど反映できないと感じている。

子どもの希望をすべて採用することが、意見を尊重することではない。

なぜそのルールが必要なのか、どの意見を採用し、何を採用できなかったのかを説明する。意見を集めた後に、学校がどのように検討したのかを子どもへ返す。

その過程がなければ、生徒会やアンケートが存在しても、子どもは「何を言っても変わらない」と感じる。

日本でも、校則、宿題、行事、相談方法、いじめ防止策、休み時間の過ごし方など、子ども自身が影響を受ける問題に意見を反映させることが必要だ。

自分の声によって環境が少しでも変わったと実感することは、自己効力感につながる。

「自分には何も変えられない」という無力感を減らすことも、心理的な支援の一つである。


子どもを強くする前に、環境を変える

ドイツの25%と日本の約3.9%は、同じ基準で測った数字ではない。

ドイツの数字は、登校している子どもも含めた心理的負担のスクリーニング結果であり、日本の数字は長期欠席という行動が表れた児童生徒の割合である。

そのため、両国のどちらが深刻かを順位付けすることはできない。

それでも、二つの数字が共通して問いかけているものはある。

学校に通えているかどうかだけで、子どもの心の状態を判断していないか。

相談窓口を設置したことで、支援したつもりになっていないか。

成績や規律を求める一方で、失敗したり休んだりする余地を奪っていないか。

子どもに我慢する力を教えながら、子どもを苦しませる環境を放置していないか。

子どもが弱くなったのではなく、弱音を吐きにくく、休みにくく、助けを求めにくい環境になっている可能性もある。

「もっと強くなりなさい」と言う前に、安心して弱さを見せられる場所があるかを確かめなければならない。

「相談しなさい」と言う前に、相談したことで責められたり、無理に登校させられたりしないと信じられる仕組みを整えなければならない。

「学校に戻りなさい」と言う前に、その学校が本当に安心して戻れる場所なのかを問い直す必要がある。

数字の向こう側には、それぞれ異なる事情を抱えながら、何らかの方法で苦しさを伝えようとしている子どもがいる。

問われているのは、子どもの弱さではない。

その小さなサインを見逃さず、受け止め、支援につなげる社会の力である。


出典URL

ドイツの子どもの心理的負担、レジリエンス教育、学校や地域での予防的な取り組みを報じた記事
https://www.ad-hoc-news.de/wissenschaft/psychische-belastung-jedes-vierte-kind-zeigt-auffaelligkeiten/69897802

ロバート・ボッシュ財団:心理的負担25%、低所得家庭の状況、成績プレッシャー、いじめ、学校での意思決定への参加に関する主要結果
https://bosch-stiftung.de/presse/deutsches-schulbarometer-psychische-belastung-bei-kindern-und-jugendlichen-steigt-erstmals

ロバート・ボッシュ財団:心理的負担、生活の質、学校での居心地、教師の支援との関係を解説した記事
https://bosch-stiftung.de/story/psychische-belastungen-bei-schuelerinnen-nehmen-wieder-zu

ドイツ学校バロメーター2025/26年版:調査方法、質問票による判定、15%の顕著群と10%の境界群などを掲載した報告書
https://bosch-stiftung.de/sites/default/files/documents/2026-03/Deutsches%20Schulbarometer%20Sch%C3%BCler_innen%202025_26_.pdf

文部科学省:日本の不登校、いじめ、暴力行為などに関する全国調査の掲載ページ
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1302902.htm

文部科学省:2024年度の不登校児童生徒数、いじめ認知件数、重大事態などを示した調査資料
https://www.mext.go.jp/content/20260305-mxt_jidou02-100002753_3.pdf

警察庁・厚生労働省:2025年の自殺統計。小中高生の自殺者数や内訳を掲載した資料
https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/jisatsu/R08/R7jisatsunojoukyou.pdf

日本ユニセフ協会:先進国の子どものウェルビーイング調査。日本の身体的健康と精神的幸福度に関する資料
https://www.unicef.or.jp/news/2025/0081.html

日本ユニセフ協会:日本の子どもの精神的幸福度や社会経済的格差についての解説
https://www.unicef.or.jp/report/rc19_commentary.html

名古屋市立大学:常勤スクールカウンセラーの配置と、生徒の相談経験率や認知度の変化を調べた研究発表
https://www.nagoya-cu.ac.jp/media/202605211000press.pdf

こども家庭庁:子どもや若者の意見を政策に反映する取り組み
https://www.cfa.go.jp/policies/iken

バイロイト児童保護協会:感情理解、レジリエンス、自己効力感を育てる「MUTIG」プロジェクトの概要
https://www.kinderschutzbund-bayreuth.de/aktuelles/news/projekt-mutig-mentale-unterstuetzung-und-training-im-umgang-mit-gefuehlen-fuer-mentale-gesundheit-von-kindern-sowie-infos-fuer-schule-und-eltern/

ドイツ語圏のSNS反応:心理的健康と学校での意思決定参加、自己効力感を結び付けた公開投稿
https://de.linkedin.com/posts/dr-bernhard-straub-62000722b_jedes-vierte-kind-in-deutschland-f%C3%BChlt-sich-activity-7439928595604561920-px2G

ドイツ語圏のSNS反応:学校心理士やスクールソーシャルワーカー、継続的な予防事業の必要性を指摘した公開投稿
https://de.linkedin.com/posts/dr-anja-reinalter-893b0b129_schulbarometer-schule-mentalhealth-activity-7440036547586035712-7Jvq

日本のSNS反応:学校復帰だけを不登校支援の目標にしないよう求める公開投稿
https://x.com/masashisakamoto/status/2054888623829565803

日本のSNS反応:不登校を親の責任だけにする見方に疑問を示した公開投稿
https://x.com/miokashi2020/status/1840432381607764156

日本のSNS反応:登校再開より、子どもの心の安全と学びの保障を優先すべきだとする公開投稿
https://x.com/tokyoackyouin/status/2058503284948640075