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“気づかない程度の効き目”と“無視できない副作用” ― トラマドールの現実

“気づかない程度の効き目”と“無視できない副作用” ― トラマドールの現実

2025年12月27日 00:09

「安全神話」が揺らぐ鎮痛薬――トラマドールは“効き目”より“代償”が大きいのか

「トラマドール(tramadol)は、他のオピオイドより“安全そう”」。慢性痛の現場では、そんな空気が長く漂ってきた。ところが2025年末、ScienceDailyが取り上げたBMJ系ジャーナルの大規模検証が、その前提を静かにひっくり返した。結論は刺激的だ――痛みは“少し”しか減らないのに、危険な副作用は“はっきり”増えるかもしれない。ScienceDaily


そもそもトラマドールとは何者か

トラマドールはオピオイド系鎮痛薬の一つで、痛みを抑える作用を持つ。米国では乱用や依存の懸念から規制薬物(スケジュールIV)に分類されている、という位置づけもある。作用機序としては中枢のオピオイド受容体に加え、代謝や神経伝達に関わる要素が絡む(CYP2D6で活性代謝物に変換され、個人差が出やすいことも知られる)。NCBI


この「他の強いオピオイドよりは軽い」「依存性が相対的に低いのでは」という印象が、処方のハードルを下げてきた面は否定できない。だが、“安全そう”は“安全”と同義ではない。今回の研究が突きつけたのは、その当たり前の事実だった。


研究は何を調べ、どう結論したのか

検証したのは、慢性痛の成人を対象に「トラマドール vs プラセボ(偽薬)」を比べたランダム化比較試験(RCT)の系統的レビュー+メタ解析。検索は2025年2月6日までの主要データベースに及び、最終的に19試験・6506人が解析対象になった。PubMed


対象となった慢性痛は、神経障害性疼痛、変形性関節症、慢性腰痛、線維筋痛症など。治療期間は2〜16週、追跡も比較的短期が中心だった、というのが前提条件だ。ScienceDaily


「統計的に有意」でも「生活では誤差」――痛みの改善は0.93点

結果で最も注目を集めたのが、痛みの強さ(0〜10のNRS)での差だ。メタ解析ではトラマドール群がプラセボ群より平均0.93点痛みが下がった。数字だけ見ると「効いている」ように見える。ところが研究側は、患者が実感しやすい最小差(MID)を1.0点と事前に設定しており、0.93点はその基準に届かない。つまり「統計上の差は出ても、日常では“気づきにくい程度”の可能性がある」という読みになる。PubMed


ScienceDailyも「改善は小さく、臨床的に重要とみなされる水準を下回る」と要約している。ScienceDaily


いちばん重い話:重篤な有害事象が“約2倍”

一方で、リスク側は分かりやすく跳ねた。解析では、重篤な有害事象についてオッズ比2.13(約2倍)の増加が示唆され、主に心血管系イベント(胸痛、冠動脈疾患、うっ血性心不全など)と、腫瘍(neoplasms)の報告が寄与したとされる。PubMed


腫瘍については追跡期間の短さもあり、因果の断定は難しい(疑わしい可能性があるが慎重に、というトーン)――ここは読み手が冷静でいたいポイントだ。ScienceDaily


よくある副作用も“現実的な頻度”で増える(NNHが示すもの)

さらに「命に関わるほどではないが生活を削る」副作用も増えた。吐き気、めまい、便秘、眠気などが代表で、研究ではNNH(何人治療すると1人に害が出るか)として、吐き気7、めまい8、便秘9、眠気13といった推計が示されている。PubMed


慢性痛の人にとって、痛みそのものが生活の中心を侵食する。そこへ「吐き気・めまい・眠気」が加われば、通勤、家事、育児、仕事の集中力まで連鎖的に落ちる。“痛みを1点弱下げる代わりに、別の苦痛が乗る”――その損得勘定が、今回の議論の核心だ。


ただし、研究にも弱点がある:バイアスと短期フォロー

著者らは、含まれた試験の多くが高いバイアスリスクにある点を明確に述べている。これは重要で、「効き目は盛られやすく、害は過小評価されやすい」方向に働きうる。つまり、もし偏りが強いなら、現実は“さらに割が悪い”可能性すらある。ScienceDaily


また、多くが16週未満の短期である点も限界だ。長期使用でどうなるか、あるいは特定の患者層で相対的に得が大きいのか――そこは今後の課題として残る。


臨床の受け止め:「驚きはないが、やはり懸念」

医療側の反応も出ている。豪州のGP向けメディアRACGP newsGPでは、この結果を「懸念すべき(concerning)」としつつ、慢性痛が「組織損傷」だけでなく、神経の過敏化や痛み処理の変化と結びつくこと、薬だけに頼らない包括的アプローチの重要性を強調するコメントが紹介されている。RACGP


ここはSNSでも誤解が起きやすい点だ。**「痛み=炎症や損傷=鎮痛薬で抑える」**だけでは説明できない慢性痛が多い。だからこそ「薬を足す」より「全体を組み替える」方向が効く場合がある――というのが、臨床家が言い続けてきた話でもある。



SNSの反応:二極化する“現場の声”と“データの声”

この種のニュースが出ると、SNS(X、Reddit、記事コメント欄など)ではだいたい反応が割れる。今回も同じ構図が見える。


1)「まず論文を見せて」派:拡散より一次情報

Redditの線維筋痛症コミュニティでは、TikTok経由の紹介に対し「動画よりデータ(論文リンク)を」と求める流れが目立つ。たとえば「データそのもののリンクは?」という要求が出て、最終的にBMJ論文リンクが共有される展開になっている。Reddit


“can we have a link to the data itself…?” Reddit

SNS時代らしく、入口は短尺動画でも、最後は「一次情報に戻れ」が強い。


2)「効いてるから、リスク込みで続けたい」派:生活の実感が最優先

同じスレッド内には、もっと切実な声もある。トラマドール服用者が「副作用より、痛みが減ることが最重要」と語る投稿があり、慢性痛の“代替がない”現実がにじむ。Reddit


またNew Atlasの記事コメント欄でも、長年の脚の痛み(RLS関連)に苦しんできた人が「100%ではないが、危険な麻薬系よりましで、生活が成り立つ」と主張している。ここには、メタ解析が示す“平均”と、当事者が生きる“個別”のズレが凝縮されている。New Atlas


3)「“安全な薬”って言ったよね?」派:説明不足への怒り

一方で、「安全だと聞いていたのに」「医師やメディアは都合よく言い換える」という不信の方向に燃えやすいのも、このテーマの特徴だ。今回の研究は「直ちに禁止」ではなく「利益が限定的で害が増えうるから最小化を」という提案だが、SNSの文脈では“白黒”に変換されがちだ。


4)「遺伝や体質で違うのでは?」派:個別化の議論

トラマドールは代謝(CYP2D6)で効き方が変わり得る薬で、個人差が出やすい。New Atlasは追記で、遺伝的な代謝差や心血管イベントの“件数の小ささ”を踏まえ、個別には慎重に判断すべきという趣旨の論点にも触れている。New Atlas



じゃあ私たちは何をすればいい?(重要)

ここから先は、記事を読む人が最も知りたい部分だろう。ただし大前提として、自己判断での急な中止・増減は危険だ。離脱症状や痛みの増悪もあり得る。必ず主治医・薬剤師と相談してほしい。


そのうえで、ニュースを“実務”に落とすなら論点は3つ。

  1. 「痛みがどれくらい下がっているか」を数値で再確認
    なんとなく続けている場合、NRSや生活機能(睡眠・活動量・仕事への影響)で効果を見直す価値がある。平均0.93点という数字は、「効いている人がいる」ことと「多くの人は劇的ではない」ことを同時に示す。PubMed

  2. 副作用を“痛みと同じ重み”で棚卸しする
    眠気、めまい、便秘、吐き気は軽視されがちだが、慢性痛の生活には致命的になり得る。NNHの数字は、決してレアな出来事ではないことを示唆する。PubMed

  3. 薬以外の選択肢を「併用」で組む
    RACGPの臨床コメントが示すように、慢性痛は神経系の過敏化やストレス反応とも絡むことが多い。運動療法、睡眠、心理教育、ストレス低減、リハビリなどを、現実的に続く形へ“設計”することが、長期的には強い。RACGP


まとめ:平均のデータと、個別の現実の間で

今回のBMJ系メタ解析が言っているのは、乱暴に要約するとこうだ。
「トラマドールは慢性痛に“少し効く”可能性がある。でも、重い副作用リスクも増える可能性があり、総合すると割に合わない人が多い」。PubMed


そしてSNSが教えてくれるのは、もう一つの真実だ。
「平均では割に合わなくても、個別には“それしかない”人がいる」。Reddit


だから結論は単純な禁止でも礼賛でもない。必要なのは、データを盾に誰かを裁くことではなく、自分(あるいは患者)の“得と損”を、医療者と一緒に再計算することだ。ニュースは、その計算を始めるための合図にすぎない。



出典メモ(記事の核になった情報)

  • ScienceDaily(BMJ Group提供)「This popular painkiller may do more harm than good」ScienceDaily

  • PubMed(BMJ Evid Based Med, 2025)メタ解析要旨(NRS差、OR、NNH等)PubMed

  • BMJ Groupプレスリリース(研究概要)BMJグループ

  • RACGP newsGP(臨床家コメント)RACGP

  • New Atlas(一般向け解説・コメント欄)New Atlas


参考記事

この人気の鎮痛剤は、利益よりも害を及ぼす可能性があります
出典: https://www.sciencedaily.com/releases/2025/12/251225080723.htm

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