ソーシャルメディアで急増中:「ドッキリ」の主役に無断でされた女性たち スマートグラス動画の境界線

ソーシャルメディアで急増中:「ドッキリ」の主役に無断でされた女性たち スマートグラス動画の境界線

「撮られていると気づけない」街へ――パリのスマートグラス無断撮影、捜査が問うもの

街中で誰かがスマートフォンをこちらに向ければ、撮影されているのかもしれないと気づける。ところが相手がカメラ付きのメガネをかけているだけなら、その判断は難しい。パリで明らかになった複数の捜査は、そんな日常の変化を突きつける。

2026年9月22日、パリ検察は、スマートグラスを使って女性を同意なく路上で撮影し、その映像をネット上に公開したとする訴えを受け、複数の捜査を開始したと説明した。検察はSNSで増えつつある傾向として問題視している。一部では、同意のない性的な接触を伴うとして性的暴行も捜査対象となっている。現時点で示されているのは捜査の開始であり、各事案の事実認定や有罪判決ではない。


「面白い動画」の裏で誰が代償を払うのか

フランスでオンライン上の被害相談窓口「3018」を運営するe-Enfanceは、若い女性らに路上で声をかけ、本人に気づかれないままメガネで撮影し、困惑した反応を「いたずら」や街頭インタビュー風の動画として投稿するパターンを報告している。投稿先は主にTikTokだという。

同団体が9月8日に公表した情報では、2026年に入ってから、カメラ付きメガネで知らない間に撮られた女性に関する相談がおよそ20件寄せられていた。その後、団体担当者はAFPの取材に約30件の相談があったと述べている。発表時点の異なる数字であり、相談件数だけで被害全体の規模は分からない。

撮影された人は、投稿される動画の編集方法も、コメント欄でどう扱われるかも選べない。団体によると、公開後に嘲笑、女性蔑視の発言、脅迫が重なる例があり、音楽イベントで撮影された少女に殺害予告が届いた事例もあった。問題は撮られた一瞬で終わらない。


SNSの反応――笑い、批判、二次被害

確認できるSNS上の反応には、投稿された動画への嘲笑や侮辱、脅迫がある。これらは被害者支援団体が実際に相談を受けた内容だ。一方、同団体やオンライン暴力に取り組む活動家は、被写体を困らせることで再生回数を稼ぐ構造を批判している。出所を確認できない投稿を「ネットの多数派の声」として扱うことは避けたい。

AFPによれば、相談窓口の働きかけでTikTokから複数の動画が削除された一方、再投稿された動画や、新たな投稿を続けるアカウントもあった。コメントを面白がって共有する行為も、本人にとっては被害を広げうる。SNSの反応を伝える際にも、被害者の顔や元動画をもう一度広めない配慮が必要だ。


録画を知らせるランプは、同意の代わりにならない

フランスの個人情報保護機関CNILは、スマートグラスが普通のメガネに見え、近くの人には録画の有無を判断しにくいと指摘する。スマホを取り出して構える動作がなくなるためだ。CNILが2026年初めに実施した調査では、回答者の67%がスマートグラスをプライバシー侵害のリスクと捉えた。

AFPの取材に対し、Metaは製品に撮影中を示す点滅ランプがあり、ランプを覆ったり壊したりすればカメラが使えなくなると説明した。ただ、録画に気づくことと、撮影・編集・公開を許すことは別の判断だ。e-Enfanceも、ランプが見えることは撮影やSNS公開への同意を意味しないと訴える。製品の安全設計、投稿者の行動、動画を配信するプラットフォームの対応をあわせて考える必要がある。


日本の街頭動画にもつながる問い

日本でも、街頭インタビューや通行人の反応を見せる動画は珍しくない。スマートグラスが普及すれば、映り込んだ人が自分の顔や声の公開に気づく機会はさらに減るだろう。撮影した場所が公共の道路だからといって、特定できる他人の映像を無条件に投稿してよいわけではない。

警視庁は、個人を特定できる写真を無断公開した場合、肖像権の侵害に当たるおそれがあると案内している。ただし、今回フランスで捜査対象となった犯罪名や刑罰を、そのまま日本の事案に当てはめることはできない。日本での評価も撮影や公開の態様、映像の内容など個別の事情による。

撮られた本人が気づかないまま編集され、投稿後に初めて知る。その順番を変えるために、投稿者には被写体の了解を確かめること、プラットフォームには通報後の削除と再投稿への対応が求められる。見る側にも、困っている人の反応を娯楽として拡散しない選択がある。スマートグラスの利便性を享受する社会ほど、映される人の意思を置き去りにしない仕組みが必要だ。


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