メインコンテンツにスキップ
ukiyo journal - 日本と世界をつなぐ新しいニュースメディア ロゴ
  • 記事一覧
  • 🗒️ 新規登録
  • 🔑 ログイン
    • English
    • 中文
    • Español
    • Français
    • 한국어
    • Deutsch
    • ภาษาไทย
    • हिंदी
クッキーの使用について

当サイトでは、サービスの向上とユーザー体験の最適化のためにクッキーを使用しています。 プライバシーポリシー および クッキーポリシー をご確認ください。

クッキー設定

クッキーの使用について詳細な設定を行うことができます。

必須クッキー

サイトの基本機能に必要なクッキーです。これらは無効にできません。

分析クッキー

サイトの使用状況を分析し、サービス向上に役立てるためのクッキーです。

マーケティングクッキー

パーソナライズされた広告を表示するためのクッキーです。

機能クッキー

ユーザー設定や言語選択などの機能を提供するクッキーです。

コンピュータサイエンスからAI専攻へ:学生たちの“進路シフト”の正体

コンピュータサイエンスからAI専攻へ:学生たちの“進路シフト”の正体

2025年12月03日 12:11

1. 「Move Over, Computer Science?」――見出しが象徴する不安

12月1日付のニューヨーク・タイムズは、「Move Over, Computer Science. Students Are Flocking to New A.I. Majors.(どいて、コンピュータサイエンス。学生たちは新しいAI専攻に群がっている)」という挑発的な見出しで、アメリカの大学キャンパスの変化を伝えた。


記事で紹介されたのは、「CS離れ」と「AI専攻ブーム」という、ここ数年の教育現場の空気を象徴するような現象だ。MITでは「Artificial Intelligence and Decision Making(AI+意思決定)」専攻が、コンピュータサイエンスに次ぐ2番目に人気の学部専攻になっていると報じられている。MITニュース


さらにフロリダ州サウスフロリダ大学では、AIとサイバーセキュリティを掲げる新しいカレッジに、この秋だけで3,000人以上の学生が登録したという。EdScoop


数年前まで、保護者や高校の進路指導教員が勧める「鉄板」の進路といえばコンピュータサイエンスだった。それが今、「AI専攻」という新しい看板に書き換えられつつある。


だがSNSを覗くと、反応は手放しの称賛ばかりではない。
「来年には“みんな量子コンピュータ専攻”って記事が出るんじゃないか」と冷笑するコメントや、
「AI専攻ばかり増やして、誰がOSやコンパイラを書くんだ」と嘆くエンジニアもいる。LinkedIn


この“専攻シフト”は、一体何を意味しているのだろうか。



2. 数字が示す「CSの頭打ち」とAI専攻の伸び

まずはデータから見てみよう。


米コンピューティング・リサーチ協会(CRA)のサーベイによると、米国のコンピュータサイエンス専攻の学生数は2005年から2023年にかけて約4倍に拡大したが、直近1年の伸びはわずか0.2%にとどまっていると報告されている。Medium


トップ校では、より極端な数字も出始めている。

  • プリンストン大学では、数年内にCS専攻が25%減少する予測

  • デューク大学では入門CS科目の履修者がすでに2割減

といった試算が紹介されている。Medium


一方で、AI専攻はどうか。
EdScoopの記事は、NYTの報道を受けて「AI専攻が、従来の“Computer Science”という名前の専攻より速いペースで学生を集めている」と整理し、MITやサウスフロリダ大学の事例に加え、ノースカロライナ大学が既存の二つのスクールを統合して「AIカレッジ」を作ろうとしていること、ワシントン大学が1,000万ドルのキャンパス横断AIイニシアチブを打ち出していることなどを伝えている。EdScoop


つまり数字レベルでも、

  • 「CS専攻の急増時代」は一旦ブレーキ

  • その一部が、「AI」「AI+○○」と名付けられた新専攻に流れ始めている

という構図が見えてくる。



3. なぜ学生はAI専攻に惹かれるのか――3つの理由

(1) 生成AIブームの「わかりやすいヒーロー感」

2020年以降、画像生成モデルやChatGPTのような大規模言語モデルの登場で、「AI」は一般のニュースやSNSをにぎわす存在になった。ウィキペディア


高校生にとって、「AIで絵も文章もプログラムも一瞬でできる」という体験は、「OSのプロセス管理」や「コンパイラ最適化」より、直感的で“カッコいい”。
専攻紹介パンフレットに載せる写真を想像すれば、どちらが映えるかは明らかだ。


(2) CS就職市場の冷え込みと「不安」

CS専攻の人気は、歴史的にテック業界の求人状況と連動して上下してきた。theatlantic.com
ここ数年は、大手テック企業のレイオフや新卒採用の抑制、AIによる一部タスクの自動化などが重なり、「CSに行けば安泰」という神話が揺らいでいる。


ミネソタ大学の教授はラジオインタビューの中で、

数年前までCS専攻は“就職オファーが山ほど届く”分野だったが、今の学生は就職市場を現実的に見ており、より柔軟なキャリアを考え始めている

と語っている。MPR News


LinkedIn上でも、
「CS卒なのに新卒で仕事が見つからない」「AIツールに置き換えられそうで怖い」といった声が共有され、それに対してキャリアコーチが「スキルの棚卸しとキャリアのピボットを考えよう」とアドバイスする投稿も目立つ。LinkedIn


(3) 大学側の「看板の付け替え」と投資の論理

大学にとっても、「AI専攻」は時代のキーワードを冠した魅力的な商品名だ。

  • サウスフロリダ大学のように新カレッジを立ち上げる

  • 既存のCS学部を「AI+データサイエンス」「コンピューティング&AI」といった名前にリブランドする

  • 学内全体のAIイニシアチブに巨額投資する

といった動きが広がっている。EdScoop


AI研究は資金も集まりやすく、企業連携もつくりやすい。
「AIをやっています」と言えた方が、寄付も研究費も取りやすい――そんな大学側の事情も、専攻シフトの背景にある。



4. SNSで割れる評価:「AI専攻ブーム」への4つの視線

NYTの記事公開後、X(旧Twitter)、LinkedIn、スレッズなどには様々な反応が流れた。ここでは、典型的な4つのタイプに分けて整理してみる。

① FOMO型:乗り遅れたくない学生・保護者

  • 「子どもにはAI専攻を選ばせたい。CSだけでは将来が不安」

  • 「AIはあらゆる業界に入ってくる。どうせやるならAIのど真ん中を」

といった、“AIがすべてを飲み込むならAI側に回りたい” という心理だ。

LinkedInでは、MITのAI専攻の記事をシェアしながら「これからのトップ学生はAI+意思決定のスキルを持つべきだ」と語るビジネスリーダーの投稿も見られる。MITニュース


② 現場エンジニア型:基礎軽視へのいら立ち

一方、長年ソフトウェア開発に携わってきたエンジニアからは、辛辣なコメントも多い。

  • 「AIモデルを動かすには、OSもコンパイラもネットワークも必要。誰がそれを作るんだ?」

  • 「ツールの使い方だけ学んで、“AIエンジニアです”と言われても困る」

といった声は、「AI専攻がCSの基礎を犠牲にしないか」という懸念の表れだ。


実際、AI教育に関する専門家のブログでも、
「生成AIを前提にカリキュラムを再設計する必要があるが、アルゴリズムやデータ構造、計算理論といった基礎はむしろ重要性を増している」と強調されている。バッキネル大学工学部


③ 教育者・アカデミア型:冷静なカリキュラム議論

Carnegie Mellonなどの大学では、教員がリトリート(合宿)を開き、「生成AI時代のCSカリキュラムとは何か」を議論していると紹介されている。Daniel S. Christian


教育関係者の投稿では、

  • CSを「狭い意味のプログラミング」から、「計算論的思考」と「AIリテラシー」を中心に据えた学問へ拡張すべき

  • 他分野(人文社会、デザイン、ビジネス)とのハイブリッド専攻を増やすべき

といった提案が目立つ。


ある教育プランナーは、NYTの記事を引用しながら「大学のカリキュラムはCS/AI/ML業界の現実から数年遅れていることが多い。変化の速さにどう追いつくかが鍵だ」と投稿している。LinkedIn


④ 自虐的楽観型:「CSは死んでない、むしろ再定義される」

「Is Computer Science Dead? NOT EVEN CLOSE.(CSは死んでいない、むしろ再誕している)」と題したLinkedInの投稿が象徴的だ。そこでは、

  • AIやオートメーションで変わるのは求められるスキルの組合せであって、CSそのものが不要になるわけではない

  • システムアーキテクチャ、アルゴリズム最適化、倫理的なAI設計など、人間にしかできない役割はむしろ増えている

と論じられている。LinkedIn


このタイプの投稿は、CSとAIを対立させるのではなく、
「CSを土台にAIを使いこなす人材こそが強い」というスタンスだ。



5. 変わるCS教育:コードから「計算論的思考」へ

AI専攻ブームの背景には、大学側の「CS教育の中身」を見直す動きがある。

NYTの別記事を紹介した教育ブログでは、専門家の見解として、

  • これからのCS教育の中心は**「計算論的思考」と「AIリテラシー」**に移る

  • 計算論的思考とは、問題を小さな部分に分解し、ステップバイステップで解決策を設計し、データに基づいて検証すること

  • AIリテラシーとは、AIの仕組み・限界・バイアスを理解し、社会的影響や倫理も含めて「責任ある使い方」を身につけること

だとまとめている。Daniel S. Christian


Bucknell大学のCS教授は、AI時代のCSカリキュラムについて次のようなポイントを挙げている。バッキネル大学工学部


  • CSをリベラルアーツ的な教養として捉え直し、他分野との連携を強める

  • ユーザー体験(UX)や人間中心設計など、人間側に寄った科目を重視する(AIが特に苦手な領域)

  • 生成AIが出すコードはしばしば誤っているため、基礎理論を理解していないとデバッグも改善もできない


つまり、

「コードを書くためのCS」から、「AIを含めた計算システムを設計・批判的に評価するためのCS」へ

というパラダイムシフトが進行しているといえる。



6. 学生にとってのリアル:AIは敵か、ツールか

現場の学生にとって、AIはすでに日常のツールだ。

ある調査では、大学生の約3分の1が「AIをほぼ毎日使っている」と報告されている。EdScoop


一方で、「AIチャットボットを多用する学生ほど成績が低い」という研究も報じられ、AI頼みの学習が理解を浅くしている可能性が指摘されている。LinkedIn


ミネソタ大学の教授は、「AIはコード生成には優れているが、そのコードが本当に要件を満たし、正しく動いているかを評価し、修正する力は依然として人間側にある」と強調する。MPR News


これは、専攻の名前にかかわらず、

  • AIを“便利なコピペ機”としてだけ使うのか

  • AIを思考のパートナーとして使いこなし、自分の理解を深める方向に活用するのか

という、学生自身の姿勢が問われていることを意味する。



7. 「AI専攻に行くべきか?」という問いへの3つの視点

では、これから進路を選ぶ高校生や、その親にとって、NYTが描くようなAI専攻ブームはどう受け止めるべきなのか。


ここでは、3つの視点を提示したい。

視点1:専攻名より「中身のシラバス」を見る

「Computer Science」か「Artificial Intelligence」かというラベルよりも大事なのは、

  • どの程度、アルゴリズム・データ構造・離散数学といった基礎がカバーされているか

  • AI関連科目が、倫理・社会的影響・人間との協調まで踏み込んでいるか

といった中身だ。


同じ「AI専攻」でも、
片方は「AIツールの使い方講座」に近く、もう片方は「CS+統計+倫理+社会科学」を統合した高度なカリキュラム、というケースもあり得る。


視点2:CSとAIを二者択一にしない

SNS上の議論を見ると、「CSは古くて、AIが新しい」という単純な構図で語られがちだが、実際には

  • AIを深く理解したければ、CSの基礎は必須

  • CSの専門家も、AIを使いこなせなければ市場価値を維持しづらい

という相互依存関係にある。


現実的な戦略としては、

  • 「CS専攻+AI関連の副専攻・サーティフィケート」

  • 「AI専攻だが、CSの基礎科目はしっかり履修」

といったハイブリッド型が強い。


視点3:ジョブマーケットは「短期のノイズ」と「長期の構造」を分けて見る

短期的には、

  • 大手テックのレイオフ

  • AIによるエントリーレベル職の再編

などで不安材料が多い。Chapman Newsroom


しかし長期的には、

  • ほぼすべての産業でソフトウェアとデータの重要性は増す

  • AIツールを前提とした新しい職種(AIプロダクトマネージャー、AI安全性エンジニアなど)が生まれつつある

という大きな流れもある。Daniel S. Christian


NYTの見出しは刺激的だが、「CSからAIへ」という一方向の乗り換えではなく、
「CS×AI」という掛け算の能力をどう身につけるか
という問いとして捉え直した方が、実務的にも賢明だろう。



8. おわりに:専攻名より、「どう学ぶか」が問われる時代

今回のNYT記事は、

  • AI専攻を立ち上げて学生を集める大学

  • CS専攻の先行きに不安を覚える学生

  • カリキュラムの再設計に悩む教員

それぞれの立場の思惑と不安を一度に照らし出した。


しかし、記事へのSNSの反応を眺めていると、最終的に残るメッセージは意外とシンプルだ。

「AI時代だからこそ、基礎と批判的思考を捨ててはいけない」


専攻名に惑わされず、

  • 自分はどんな問題を解決したいのか

  • そのためにどんな計算論的思考やAIリテラシーが必要なのか

  • AIを「答えを出してくれる箱」としてではなく、「一緒に考える相棒」として扱えるか

を問い続けること。


CSを選ぶにせよ、AI専攻を選ぶにせよ、
この態度こそが、次の10年を生き抜くエンジニアや研究者の条件なのだと思う。



参考記事

大学生がコンピュータサイエンスよりもAI専攻を選ぶ
出典: https://www.nytimes.com/2025/12/01/technology/college-computer-science-ai-boom.html

← 記事一覧に戻る

お問い合わせ |  利用規約 |  プライバシーポリシー |  クッキーポリシー |  クッキー設定

© Copyright ukiyo journal - 日本と世界をつなぐ新しいニュースメディア All rights reserved.