運動は“5分”でいい? 最新研究が突きつけた、続けられる最小単位

運動は“5分”でいい? 最新研究が突きつけた、続けられる最小単位

「運動、どれくらいやれば健康的と言えるんだろう?」


年始や健康診断の前、あるいは階段を前にして一瞬ひるんだ時に、この疑問が頭をよぎる人は多い。理想は分かっている。週に150分の中強度運動、筋トレも週2回……でも現実は、仕事や家事、疲労、天気、予定の崩壊。結果、「できないならやらない」に転びやすい。


ところが最近、“最小の運動”に光を当てる研究が増えている。結論から言えば、キーワードは「ゼロ→少し」。完璧を狙うほど失速するなら、最小単位で日常に差し込むほうが、結果的に強い。


1)「たった5分」の上積みが、集団では大きな差になる

大規模データを用いた研究では、最も活動量が少ない層において、1日あたりの中〜高強度の身体活動を「5分」増やすだけでも、死亡の抑制につながり得ると推計されている。さらに、この小さな上積みが広く行き渡ると、集団全体としての影響はより大きくなる、という見立ても示されている。


ここで重要なのは、「5分で長生き確定!」という単純な話ではない点だ。研究が語るのは、個人向けの魔法の処方箋というより、人口全体で見たときの“底上げ”の効きやすさである。運動習慣がすでにある人が5分増やすより、ほぼ動かない人が5分動くほうが、健康指標に与える変化が大きい――いわゆる“逓減”の発想だ。


言い換えると、「すでに頑張っている人ほど伸びしろが小さく、何もしていない人ほど伸びしろが大きい」。この構造は、運動が苦手な人にとって朗報だ。スタート地点が低いほど、少しの前進が“効きやすい”。


2)「座りすぎ」は、運動していても相殺できないことがある

“運動不足”と並んで、近年よく槍玉に挙がるのが“座りすぎ”だ。研究の中には、座位時間を「1日30分」減らすことが、死亡の抑制に関連し得る、という推計もある。


ここでも誤解しやすいポイントがある。座る時間を減らすと言っても、いきなりスタンディングデスクを買う必要はない。極端な改革は続かないからだ。むしろ現実的なのは、「座りっぱなしを分割する」こと。座り時間を“合計で”減らすというより、“連続時間を短くする”発想が役に立つ。


たとえば、長時間座り続ける状況を想定した実験では、「30分ごとに5分歩く」パターンが血圧や血糖などの指標に良い影響を示した、という報告がある。


オフィスワークや在宅作業が長い人ほど、「運動の時間を捻出」よりも、「座りの連続を切る」ほうが実装しやすい。


3)公的ガイドラインは“ゴール”、最小運動は“入口”

もちろん、公的機関が示す推奨量は今も重要だ。WHOは成人に対し、週150分以上の中強度活動(または週75分以上の高強度、あるいは組み合わせ)に加え、筋力強化を週2日以上行うことを掲げている。


米CDCも同様に「週150分+筋力強化週2日」を基本にしつつ、「少しでもやるほうが、やらないより良い」「もっと動いて、座るのを減らそう」と明記している。


ここでのコツは、推奨量を“合否判定”にしないことだ。
150分を達成できない=失敗、ではない。達成できるなら素晴らしいが、達成できない週があっても、その週の「5分」「10分」が無駄になるわけでもない。推奨量は“ゴール”で、最小運動は“入口”。入口が広いほど、人は入りやすい。


4)「最小運動」を“生活の部品”として設計する

最小運動の強みは、根性ではなく設計で回せること。ポイントは3つある。


(1)1日のどこかに「確実に発生する隙間」を見つける
歯磨き、湯沸かし、会議前、昼休み、風呂前。意志の強さに依存する予定より、毎日起きる行動にくっつけたほうが失敗しにくい。


(2)「強度」を上げるより「頻度」を稼ぐ
“5分の早歩き”が象徴するのは、短い単位で積み上げる思想だ。頑張って30分を週2回より、5分を週7回のほうが、生活に馴染みやすい人も多い。


(3)「できた」を可視化する
最小単位は達成感が薄い。だからこそ、チェックリストや歩数、カレンダーの印など、見える形で“できた証拠”を残す。自己評価は、事実があるとブレにくい。

5)今日からできる「5分」メニュー例

  • 駅や職場の手前で1区間だけ速歩き

  • エレベーターをやめて階段を上る(上りだけでも)

  • 電話・オンライン会議は立って受ける

  • 30分作業→立って飲み物を取りに行く→戻る、をルール化

  • 家事(掃除機・拭き掃除・洗濯物運び)を“少し速め”にやる

  • 夜の歯磨き後に、家の周りを一周だけ歩く


「ジムに行け」「ウェアを買え」という話ではない。靴を履く、玄関を出る、階段を選ぶ――その“入口”を軽くするほど、習慣は太くなる。

6)SNSで目立った反応:「全部やる」より「ちょい足し」派が優勢

このテーマはSNSでも刺さりやすい。特に多かったのは、“オール・オア・ナッシング”への反省だ。海外掲示板のコメントでは、「小さな変化が積み上がるのは意外だけど大きい」「“全部かゼロか”のフィットネス計画を見直したくなる」といった趣旨の声が見られた。


また「何でもいいから、何かをやるほうがいい」という短い断言も支持を集めている。


面白いのは、成功談が“根性”ではなく“環境”由来で語られる点だ。「子犬を飼ったら活動量が増えた」というコメントのように、意思決定の努力より、生活構造の変化が運動を連れてくるケースがある。
「芝刈りを手押しにしている。仕事で座りがちだから」という実用的な工夫も同様だ。


要するに、SNSの空気はこうだ。
“モチベで運動する”より、“暮らしが勝手に運動を生む”形に寄せたい。

これは、最小運動の思想と相性が良い。

7)注意点:「個人の処方箋」と「集団の推計」は違う

最後に現実的な注意点も書いておきたい。


今回紹介したような研究は、集団レベルでの推計や関連を示すものが多い。個々人の病歴、年齢、体力、関節の状態、服薬状況によって最適解は変わる。持病がある人や痛みが出る人は、自己判断で強度を上げず、医療者に相談したほうが安全だ。


また、「5分やったから帳消し」という免罪符にもしないほうがいい。最小単位は“入口”であり、余力が出たら少しずつ増やすことで、より大きな健康上の利益が見込まれる――というのが公的ガイドラインの立場でもある。



参照URL(本文末にまとめ)


参考記事

健康を維持するために必要な最小限の運動量とは? - ニューヨーク・タイムズ
https://www.nytimes.com/2026/01/13/well/move/minimum-exercise-advice.html