メインコンテンツにスキップ
ukiyo journal - 日本と世界をつなぐ新しいニュースメディア ロゴ
  • 記事一覧
  • 🗒️ 新規登録
  • 🔑 ログイン
    • English
    • 中文
    • Español
    • Français
    • 한국어
    • Deutsch
    • ภาษาไทย
    • हिंदी
クッキーの使用について

当サイトでは、サービスの向上とユーザー体験の最適化のためにクッキーを使用しています。 プライバシーポリシー および クッキーポリシー をご確認ください。

クッキー設定

クッキーの使用について詳細な設定を行うことができます。

必須クッキー

サイトの基本機能に必要なクッキーです。これらは無効にできません。

分析クッキー

サイトの使用状況を分析し、サービス向上に役立てるためのクッキーです。

マーケティングクッキー

パーソナライズされた広告を表示するためのクッキーです。

機能クッキー

ユーザー設定や言語選択などの機能を提供するクッキーです。

日本の大麻取締法も変わった今、「カンナビス音痴」のままでいいのか - 医療用カンナビスを巡る“教育ギャップ”を埋めろ

日本の大麻取締法も変わった今、「カンナビス音痴」のままでいいのか - 医療用カンナビスを巡る“教育ギャップ”を埋めろ

2025年11月14日 00:32

「医師はカンナビスを知らないままでいいのか」――新しい医学教育の現場から

医療用カンナビス(医療大麻)が、世界の医療現場で“避けて通れないテーマ”になりつつあります。

米メリーランド州は、医療用カンナビスを合法化した米国38州と3つの準州、そしてワシントンD.C.のひとつです。加えて24州では、成人向けの娯楽用カンナビスも認められています。メディカルエクスプレス


それにもかかわらず、多くの医師や医学生は、患者から「カンナビスってどうなんですか?」と質問されても、十分に答えられない――。そんな現状に対し、「医療用カンナビスの“必須科目化”」を提案する論文が、2025年10月、医学誌 JAMA Network Open に掲載されました。JAMA Network


この論文をもとにした解説記事が、科学ニュースサイト「Medical Xpress」で紹介されています。記事の主役は、メリーランド大学医学部(UMSOM)の精神科医デヴィッド・ゴレリック教授。彼は「どんな診療科で働こうと、患者のカンナビス使用と向き合うことは避けられない」と語ります。メディカルエクスプレス


では、具体的に医学教育はどう変わろうとしているのでしょうか。そしてこの流れは、日本の医療と医学生にもどんな意味を持つのでしょうか。



医療用カンナビスの拡大と「教育ギャップ」

米国では、1996年にカリフォルニア州が医療用カンナビスを合法化して以降、その利用は着実に広がってきました。ところが、医療教育の側はそのスピードについていっていません。


JAMAの論文や既存調査では、2015〜2016年時点で「医療用カンナビスをカリキュラムに含めている医学部は1割未満」、カリキュラム責任者の約3分の2が「卒業生は医療用カンナビスを処方・指導する準備ができていない」と回答したと報告されています。メディカルエクスプレス


同じ頃、メリーランド大学の研究チームは妊婦のカンナビス使用に注目しました。2009〜2016年の間に、妊婦の自己申告によるカンナビス使用率は170%増加していたというのです。メディカルエクスプレス


これは決して米国だけの話ではありません。イスラエルやカナダなど、医療用カンナビスが広く認められている国々でも、「患者は増えるが、教育は追いついていない」という現象が指摘されています。イスラエルのベングリオン大学のRADARセンターは、多国間調査を通じて「医療者側の知識と態度に大きなギャップがある」と報告し、国際的な教育指針の必要性を訴えてきました。bgu.ac.il


つまり今、世界中で「カンナビスを使う患者」が先に増え、「カンナビスを理解した医療者」が後から慌てて追いかけている状態なのです。



JAMA論文が示した「6つのコア・コンピテンシー」

こうした危機感を背景に、23人の臨床・研究の専門家がオンラインで集まり、「医学生が卒業までに身につけるべき医療用カンナビスの能力」を議論しました。その結果としてまとめられたのが、次の6つのコア・コンピテンシーです。JAMA Network

  1. エンドカンナビノイドシステムの基礎を理解する
    人体には、あらかじめカンナビノイド受容体(CB1・CB2など)や内因性カンナビノイドが備わっており、痛み・食欲・気分・記憶などに関わっています。この生理学的な仕組みを知らなければ、THCやCBDの作用も語れません。

  2. カンナビス植物の主成分とその生体への影響を説明できる
    精神作用の強いTHC、精神作用は弱いが抗けいれん作用などが期待されるCBDをはじめ、多数のカンナビノイドとテルペンが含まれます。濃度や比率、製剤形によって臨床効果や副作用が変わる点も重要です。

  3. 米国の法規制と歴史的背景を理解する
    連邦法では依然としてスケジュールI(「医療的価値なし」と分類される最も厳しいカテゴリー)に位置づけられる一方、州レベルでは医療・娯楽ともに合法化が進んでいます。この「法のねじれ」が、研究・教育・診療現場にどんな影響を与えているのかを理解する必要があります。

  4. 医療用カンナビスがよく使われる疾患のエビデンスを把握する
    慢性疼痛、がん関連の悪心・嘔吐、けいれん性疾患、不眠、食欲不振、炎症性腸疾患など、適応候補は幅広い一方で、エビデンスの強さにはばらつきがあります。「効くと言われている」だけでなく、「どの疾患で、どのくらいの質のエビデンスがあるのか」を批判的に評価する力が求められます。

  5. 医療用カンナビスのリスクを理解する
    依存性、認知機能への影響、精神病リスク、妊娠中・若年者への影響、他薬との相互作用など、リスクに関する最新の知見を学び、患者にわかりやすく説明できることが求められます。

  6. 臨床での基本的なマネジメントを理解する
    適応の見極め、製剤の選択、用量・用法の決定、フォローアップ、やめ時の判断など、具体的な診療プロセスを学びます。


これら6つは、単なる「知識」ではなく、さらに細かい26のサブコンピテンシーに分解され、教育目標として整理されています。JAMA Network


同じ JAMA Network Open には、このコンピテンシーを評価しながら「カンナビス教育は専門職としての倫理的義務でもある」と強調する論説も掲載されました。JAMA Network


カンナビスに賛成か反対か以前に、「患者が実際に使っている薬物について、科学的知識を持たずに語ることはプロフェッショナルとして許されない」というわけです。



メリーランド大学は何を教えているのか

Medical Xpressの記事によれば、メリーランド大学医学部はすでに、プレ・クラークシップ(臨床実習前)の2年間で、カンナビスに関する講義を「比較的しっかり」組み込んでいるといいます。メディカルエクスプレス

  • エンドカンナビノイドシステム

  • カンナビス製品の種類と薬理

  • 依存症・乱用のリスク

  • 妊娠中や若年者など脆弱な集団への影響

  • 州と連邦法の違い

といったトピックが扱われ、臨床実習に進めば、実際にカンナビスを含む様々な薬物を使用している患者と関わる経験も得られます。メディカルエクスプレス


ゴレリック教授は加えて、メリーランド州のカンナビス公衆衛生諮問委員会のメンバーも務めています。この委員会が2025年12月に発表予定の報告書では、「医師だけでなく、すべての医療専門職にカンナビスのコア・コンピテンシーを導入すべき」と提言する予定だとされています。メディカルエクスプレス


つまり、医学部教育だけでなく、看護、薬学、リハビリテーション、さらには公衆衛生分野までを視野に入れた「横断的なカンナビス教育」を構想しているのです。



SNSで見える“歓迎ムード”と冷静なまなざし

このJAMA論文と、それを紹介するMedical Xpressのニュースは、学術界だけでなくSNSでも拡散しました。

 


X(旧Twitter)上では、JAMAや米国医師会(AMA)の教育プラットフォームが、この論文を継続教育(CME)コンテンツとして繰り返し紹介。「医師がカンナビスについて体系的に学べる、初めてのロードマップ」として、学習リンクを共有しています。X (formerly Twitter)


カナダやイスラエル、米国の研究者アカウントからも、リンク付きのポストが相次ぎました。ある研究者は「臨床医が『よくわからないのでダメ』と答える時代を終わらせる一歩だ」とコメントし、別の医師は「ようやくカンナビスが、感情論ではなくコンピテンシーで語られるようになった」と歓迎しています。X (formerly Twitter)


一方で、

「教育が整うほど、業界ロビーが“お墨付き”として利用するのでは」
「エビデンスの弱い適応にまで拡大しない歯止めも一緒に教えるべき」

といった慎重な声も見られます。

また、ある米国の医師は、自身の投稿で「父が50年前から、医師はカンナビスをきちんと学ぶべきだと訴えていた」と述懐し、「ようやく歴史が追いついた」と感慨を語っています。X (formerly Twitter)


SNS空間には、

  • 「長年の空白を埋めるポジティブな改革」とみる楽観派

  • 「医療と商業の境界線があいまいになることへの不安」を抱く慎重派
    が同時に存在している、といえるでしょう。



日本の文脈から見る「カンナビス教育」

では、日本にとってこの動きはどのような意味を持つのでしょうか。

日本では、2023年に大麻取締法が制定以来初めて大きく改正され、2024年12月に施行されました。改正により、医療用のカンナビス由来製剤は、オピオイド系鎮痛薬などと同様の枠組みで処方可能な「医薬品」として扱われる道が開かれました。ResearchGate


一方で、娯楽的な使用や高THC製品については依然として世界有数の厳罰主義が維持され、使用罪の新設など規制強化も同時に行われています。Euromonitor


つまり、日本は

  • 医療用カンナビス製剤の利用は限定的に開きつつ、

  • 非医療用途のカンナビスには引き続き極めて厳しい態度
    という「アクセルとブレーキを同時に踏んでいる」状態です。

にもかかわらず、医療者教育の側では、

  • カンナビノイド製剤(例:てんかん治療薬Epidiolexなど)の薬理とエビデンス

  • 依存症・乱用のリスク

  • 国内外の法制度の違い

  • CBD製品市場と安全性問題(違法成分混入など)

を体系的に学ぶ機会はまだ限られています。DIA Global Forum

もし今後、日本でもカンナビス由来医薬品が承認され、てんかんや難治性疼痛への処方が広がれば、神経内科・小児科・精神科・緩和ケアなど、多くの領域の医師がカンナビノイドと向き合うことになります。そのとき、

「危ないからダメです」
「海外では使われていますが、日本では認められていません」


といった**知識の裏付けに乏しい“反射的な拒否”**だけでは、患者との信頼関係を損ねかねません。


逆に、エビデンスを十分に理解しないまま「海外で流行っているから」と安易に期待を煽ることも、プロフェッショナルとして避けるべきでしょう。

JAMAの6つのコンピテンシーは、米国の医学部向けに作られたものですが、

  • 「法制度」の部分を日本の大麻取締法・医薬品医療機器法に置き換え

  • 「州ごとの違い」の代わりに「医療用途と非医療用途の線引き」を強調し

  • CBD市場の特殊事情や日本の社会的スティグマを加味する

といった修正を加えれば、日本の医学教育にも十分応用可能です。



カンナビスを「知識」で語る時代へ

Medical Xpressのゴレリック教授の言葉を借りれば、

「あなたがどこで、どんな診療科で働こうと、カンナビスを使用する患者と向き合うことは避けられない」メディカルエクスプレス

という現実が、静かに、しかし確実に近づいています。


この現実に対して、

  • 「知らないし、怖いから話したくない」と目をそらすのか

  • 「わからないからこそ、科学的に学び、患者と対話する」と向き合うのか

両者の差は、これからの医療者にとって決定的なものになるはずです。


医療用カンナビスの是非を巡る社会的な議論は、今後も続くでしょう。
しかし、その前提として「医療者が最低限共有すべき知識とスキル」を定義し、教育に落とし込む――。


今回のJAMA論文と、それを紹介したMedical Xpressの記事は、そのためのスタートラインを世界に示したと言えます。


日本の医療界もまた、
「カンナビスは危険だから触れてはいけない」という古いタブーから、
「危険も潜在的な有用性も含めて、専門職として責任を持って語るべき対象」へと、
発想をアップデートするタイミングに来ているのではないでしょうか。



参考記事

研究者が大麻使用に関する新たな医療トレーニングを提案
出典: https://phys.org/news/2025-11-medical-cannabis.html

← 記事一覧に戻る

お問い合わせ |  利用規約 |  プライバシーポリシー |  クッキーポリシー |  クッキー設定

© Copyright ukiyo journal - 日本と世界をつなぐ新しいニュースメディア All rights reserved.