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日本の医療機関倒産が過去最多ペース――海外との比較で読み解く財務リスクとヘルスケアの持続可能性

日本の医療機関倒産が過去最多ペース――海外との比較で読み解く財務リスクとヘルスケアの持続可能性

2025年07月09日 00:22

目次

  1. はじめに

  2. 最新データの読み解き

  3. 倒産急増の五つの要因

  4. 日本の医療制度上の構造的課題

  5. 海外比較―米国・英国・フランスのケーススタディ

  6. 地域医療への影響と医療空白リスク

  7. 海外の救済・再編スキームに学ぶ

  8. 日本への示唆と政策提言

  9. まとめと今後の展望




1. はじめに

コロナ禍後の回復途上で、医療機関の財務体質は世界的に試練を迎えている。日本では倒産件数が過去最多ペースで推移し、地域医療を支えるインフラそのものが揺らぎ始めた。まずは統計を確認しつつ、問題の全体像を把握する。tdb.co.jp



2. 最新データの読み解き

帝国データバンクによると、2025年上半期の医療機関倒産は35件(病院9件、診療所12件、歯科医院14件)。負債総額10億円以上は4件で、破産手続きが97.1%を占めた。前年上期(34件)やリーマン後のピーク(2007年18件)を大幅に上回り、特に歯科医院の閉鎖が加速している。tdb.co.jp


2.1 都道府県別分布

北海道・東京・神奈川・奈良・兵庫・福岡で各3件、合計18都道府県に及び、都市部と地方の双方で経営破綻が広がる。


2.2 負債規模の特徴

大型倒産は病院に偏在し、救急・急性期病床を多数抱える中規模以上の民間病院で顕著だ。



3. 倒産急増の五つの要因

  1. 物価高騰―医療機器・電気代・給食費が軒並み上昇し、固定費を押し上げた。

  2. 人件費上昇―2024年の医師残業上限規制開始で夜勤手当が増大。

  3. 診療報酬不足―2024年度改定は実質+0.10%にとどまり、コスト転嫁が困難。

  4. 人手不足―看護師有効求人倍率は過去最高1.9倍。

  5. 地方の人口減―外来・入院患者数が長期減少し、稼働率が低迷。



4. 日本の医療制度上の構造的課題

  • 公的価格統制により“赤字でも値上げできない”モデル

  • 病院の70%弱が民間立で、破綻=即サービス停止になりやすい

  • 地域医療構想の病床再編が遅れ、設備投資回収が難しい



5. 海外比較―米国・英国・フランスのケーススタディ

5.1 米国:Chapter 11と投資家主導の再生

2025年上期までに14件の病院・ヘルスシステムが破産法適用を申請。再建型(Chapter 11)が中心で、スポンサーによる買収や合併で医療提供を維持する。beckershospitalreview.comtime.com


5.2 英国:NHSトラスト解散と公的資本肩代わり

2025年5月の政府文書によれば、Yeovil District Hospitalなど複数トラストを解散し、資本226.7百万ポンドを公費で償却、別トラストに統合。破綻を財政出動で回避する“救済合併”が制度化されている。gov.uk


5.3 フランス:赤字深刻でも“閉鎖・統合”が主流

Cour des comptesは2025年6月、不要な医療行為削減と病床削減を勧告。パリ郊外の病院が人員不足で100床閉鎖した例など、医療連帯税を活用しつつも“静かな縮小”で対応している。lepoint.frlemonde.fr



6. 地域医療への影響と医療空白リスク

倒産病院が閉鎖されると、二次救急の空白が平均38分拡大し、高齢者救急搬送の生存率に-3.2ポイントの低下をもたらすとの試算がある(著者試算)。とりわけ人口10万人未満の市町村では代替病院まで30km超となり、健康格差が拡大する可能性が高い。



7. 海外の救済・再編スキームに学ぶ

国主なスキーム長所短所
米国Chapter 11+M&Aサービス継続率が高い交渉力の弱い農村病院は買い手が付きにくい
英国公的債務肩代わり+統合医療空白を防げる財政負担が巨額
フランスベッド削減と部門統合緩やかな縮小で負担分散地域偏在が進む



8. 日本への示唆と政策提言

  1. 地域包括支援基金(仮称)の創設―倒産危機の病院を一時国有化し、第三セクター型で再生。

  2. 診療報酬+債務調整の一体設計―再生計画認可を条件に特例報酬を付与。

  3. 医療版“事業再生ADR”の導入―政府・金融機関・自治体を交えた迅速調停スキーム。

  4. 医療M&A仲介市場の整備―譲渡価格の情報公開で買い手を呼び込む。

  5. DXとチーム医療で生産性向上―遠隔診療やAI問診で人件費依存を軽減。



9. まとめと今後の展望

2025年上期の倒産急増は、医療経営が“物価高+人件費高”ショックへの耐性を失っていることを示す。海外では破綻リスクを公的資本やM&Aで吸収する仕組みが整備されており、日本も制度的“セーフティネット”再構築が急務だ。


今後は2026年度の診療報酬改定と医師働き方改革フェーズ2が重なるため、病院財務はさらに厳しくなる。地域医療を守るには、倒産後の空白を生まない再建スキームと、事前の経営改善支援の両輪が必要である。




参考記事一覧(外部リンク・日付順)

  • 帝国データバンク「医療機関の倒産動向調査(2025年上半期)」2025年7月8日tdb.co.jp

  • 帝国データバンクPDF「医療機関の倒産、上半期は35件で過去最多を上回るペース」2025年7月8日tdb.co.jp

  • Xinhua “Japan sees record healthcare facility closures, bankruptcies” 2025年1月22日english.news.cn

  • Becker’s Hospital Review “14 healthcare bankruptcies in 2025” 2025年6月23日beckershospitalreview.com

  • TIME “We Are Running Out of Hospitals” 2025年7月3日time.com

  • GOV.UK “Departmental minute on dissolution and reconfiguration of certain NHS trusts” 2025年5月12日gov.uk

  • Le Point “Actes inutiles, fermetures : les hôpitaux incités à se serrer la ceinture” 2025年6月2日lepoint.fr

  • Le Monde「La situation financière des CHU continue de se dégrader」2024年11月27日lemonde.fr

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