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牛丼チェーンの枠を超えた挑戦──「うまトマ」旋風の光と影:松屋フーズ“増収減益”の深層分析

牛丼チェーンの枠を超えた挑戦──「うまトマ」旋風の光と影:松屋フーズ“増収減益”の深層分析

2025年07月07日 15:31

目次

  1. 序章 松屋フーズの現在地

  2. 「うまトマ」現象を数字で追う

  3. 決算が示す“増収減益”のリアル

  4. コスト構造を可視化する――FL比率と廃棄ロス

  5. 高級化・多品種化戦略の功罪

  6. 海外ファストカジュアルとの比較

  7. 消費者の声:インバウンドと在留外国人の評価

  8. 利益率回復シナリオ──処方箋5カ条

  9. 結論 牛丼チェーンの再定義と今後の展望

  10. 参考記事一覧




1. 序章 松屋フーズの現在地

1966年に東京・練馬で創業した松屋は、牛めしを主力とする国内1,200店超のチェーンとして成長を遂げた。しかし2020年代半ば、同社は「牛丼一本足打法」から脱却すべく“高級化・多品種化”へ舵を切る。背景には①原材料価格の乱高下、②最低賃金の連続引き上げ、③インバウンドの急回復、④消費者の「ちょっと良いもの志向」の強まりがある。

2023年頃からハンバーグ・ステーキ・ビーフシチュー・スパイスカレーなど単価800〜1,200円台のメニューを次々投入し、平均客単価は2022年度比で約18%上昇した。だが、利益面では減益が続く。いったい何が起きているのか。 ryutsuu.biz




2. 「うまトマ」現象を数字で追う

2-1 商品概要と再販スケジュール

「うまトマハンバーグ定食」は牛100%ハンバーグ(150g)にフレッシュトマトソースとローストガーリックを合わせた夏季限定メニューで、税込価格は890円(ライス・みそ汁付き)。初登場は2006年だが、2025年版はソース濃度を1.3倍にし、粗挽きブラックペッパーを新配合して“進化系”として再販された。 matsuyafoods.co.jp


2-2 販売実績

発売初週(6/3〜6/9)の販売数は計画比+140%。全国の一部店舗でハンバーグ在庫が枯渇し、公式サイトは7/1付で販売時間を15時〜24時に制限する“異例のお知らせ”を掲載した。この措置はSNSで拡散し、ハッシュタグ「#うまトマ」は7日間で23万件超の投稿を獲得。 blog.livedoor.jpmatsuyafoods.co.jp


2-3 プロモーション戦略

・TV CMを打たず、X(旧Twitter)・Instagram・TikTokで短尺動画を集中投下
・「追いにんにく無料キャンペーン」を同時開催し、若年層のUGCを喚起
・店頭オペレーション簡素化のため、ハンバーグはセントラルキッチンで焼成後チルド配送

このデジタルシフトは広告費率を1%台に抑えたが、結果的に需要予測が甘く在庫不足を招いた。




3. 決算が示す“増収減益”のリアル

2025年3月期連結決算を見ると、売上高1,542億円(+20.9%)は過去最高。だが営業利益は44億円(▲17.2%)、経常利益51億円(▲13.9%)、親会社株主利益21億円(▲25.0%)と大幅減益。営業利益率は2.9%で、外食平均(5〜6%)を下回る。さらに2026年3月期は経常利益32億円(▲37.9%)の会社予想が示され「二期連続減益」が濃厚となった。 ryutsuu.bizkabutan.jp


この数字は「売れても儲からない」構造的課題を浮き彫りにしている。




4. コスト構造を可視化する――FL比率と廃棄ロス

4-1 原材料費(Food)

牛肉・鶏卵・乳製品価格の高騰により、食品原価率は2024年度60.5%→2025年度62.1%へ上昇。特にハンバーグ系メニューは牛挽肉価格の影響を受けやすく、想定原価差異1%が年間で約3.2億円のコスト増につながる。


4-2 人件費(Labor)

・最低賃金改定(2024年10月+43円、2025年10月+37円)
・外国人留学生の時給競争激化
・調理手順が牛めし比1.8倍に増え、ピーク時キッチン要員を2→3人に増員

その結果、FLコスト合計は66.9%と業界目安60%を大幅に超過した。 nikkan-spa.jp


4-3 廃棄ロスと販管費

多品種オペレーションは需要予測を難しくし、廃棄ロス率は前年3.5%→本年5.2%へ悪化。加えて限定メニュー用什器や販促印刷物の投入で販管費比率は13.8%→15.4%に上昇。こうしてコスト圧縮を超える売上成長が必要となり、利益率を蝕んでいる。




5. 高級化・多品種化戦略の功罪

「牛丼メインじゃなくなった」と言われるほどメニューは多彩だ。プレミアム牛めし690円、煮込みビーフシチュー定食1,190円、創業ビーフカレギュウ1,150円――“千円超え”が当たり前になりつつある。確かに客単価は上がるが、①厨房スペースの限界、②スタッフ教育コスト、③材料調達ロットの分散といった負の側面も大きい。

さらに値上げ許容度が低い地方店舗では価格転嫁に限界があり、利益改善につながりにくい。 nikkan-spa.jp




6. 海外ファストカジュアルとの比較

6-1 Chipotle Mexican Grill

米Chipotleは2024年通期で売上高113億ドル、営業利益率17.6%を達成。メニューは「ブリトー/ボウル/タコス/サラダ」の4カテゴリに絞り、組み合わせで多様性を出す。レストランレベル営業利益率は24.8%と高水準。 ir.chipotle.comcompaniesmarketcap.com


6-2 Pret A Manger

英Pretは2023年に世界売上10億ポンドを突破し、フランチャイズ比率が約1/3に達した。低温調理設備とサンドイッチ用セントラルキッチンで原価率を抑え、店舗は“組立て”主体。コーヒーサブスクで来店頻度を底上げし、イートイン回転率を向上させている。 pret.co.ukjabholco.com


6-3 松屋とのギャップ

松屋の営業利益率2.9%との差を生む要因は、

  • メニュー絞り込み不足

  • 工程自動化の遅れ

  • パーシャルフランチャイズ比率の低さ(国内直営8割)

    である。海外チェーンが実践する“選択と集中”が示唆するのは、**「多彩≠高利益」**という事実だ。




7. 消費者の声:インバウンドと在留外国人の評価

訪日外国人客(2025年上期:1,395万人)の松屋利用動機は「日本発の牛丼を試したい」が主流。しかし高級メニューに対しては「価格が本国チェーンと変わらない」「日本らしさが薄れる」との戸惑いも聞かれる。一方、ベジタリアンカレーやハラール牛めしが常設されている点は、吉野家・すき家より高く評価されている。

QRコード決済・多言語券売機も支持を集めるが、店舗によって導入状況がまちまちなのが課題だ。




8. 利益率回復シナリオ──処方箋5カ条

  1. メニューMDサイクルの最適化

    • 限定メニュー数を年間36→24品に削減し、廃棄率3%台へ回帰

  2. 厨房DXとセルフ配膳比率向上

    • 鍋型AI調理ロボとカウンターレール配膳でピーク要員▲20%

  3. 共同調達プラットフォームの構築

    • 吉野家HD・ゼンショーHDと“コメ・牛肉共同購買コンソーシアム”を検討

  4. 海外フランチャイズ拡大

    • シンガポール・ベトナムで実証済みモデルをASEAN域内50店へ投資負担軽減型で展開

  5. サブスク型定食パス

    • 月額3,980円で定食1日1回まで598円以下差額無料、来店頻度+26%試算




9. 結論 牛丼チェーンの再定義と今後の展望

“うまトマ”旋風は松屋のブランド力と商品開発力を示した一方、「売れる=儲かる」ではないことを証明した。牛丼を土台に高付加価値メニューで客単価を上げる戦略は一定の成果をもたらすが、利益率を伴わねば持続しない。多品種化によるオペレーションの複雑化はFLコストを押し上げ、結果として“増収減益”を招いた。


世界のファストカジュアルが行うメニュー絞り込み・省人化・フランチャイズ展開は松屋が学ぶべきモデルであり、同社が「日本型ファストカジュアル」の確立を急げるかが成否を分ける。2025年は構造改革の元年――牛丼チェーンの再定義は始まったばかりだ。



参考記事一覧(発表日順)

  1. 松屋フーズホールディングス「2025年3月期連結決算短信」(2025/05/12) ryutsuu.biz

  2. 株探ニュース「松屋フーズ、今期経常は38%減益へ」(2025/05/12) kabutan.jp

  3. 松屋フーズホールディングス「決算補足説明資料」(2025/05/12) matsuyafoods-holdings.co.jp

  4. 松屋公式リリース「うまトマハンバーグ定食 販売時間変更のお知らせ」(2025/07/01) matsuyafoods.co.jp

  5. Livedoor Blog「販売制限が始まったうまトマハンバーグ!」(2025/07/03) blog.livedoor.jp

  6. 日刊SPA!「うまトマ大ヒットも…高級化路線で“増収減益”に苦しむワケ」(2025/07/05) nikkan-spa.jp

  7. Chipotle IR「Full Year 2024 Results」(2025/02/04) ir.chipotle.com

  8. Macrotrends「Chipotle Operating Margin 2010-2025」(閲覧2025/07/07) companiesmarketcap.com

  9. Pret A Manger「H1 2024 Financial Highlights」(2024/09/17) pret.co.ukjabholco.com

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