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マダニ被害の新常識――感染症だけでは終わらない「肉アレルギー」の脅威

マダニ被害の新常識――感染症だけでは終わらない「肉アレルギー」の脅威

2025年07月01日 21:21

目次

  1. はじめに――二重の脅威を正しく理解する

  2. マダニの生態と分布拡大:温暖化が後押し

  3. マダニ媒介感染症:SFTS・日本紅斑熱・ライム病

  4. α-Gal症候群(肉アレルギー)とは

  5. 発症メカニズム:α-Gal糖鎖、IgE、遅発型食物アレルギー

  6. 世界と日本の流行状況:「日本だけ?」の誤解

  7. 症状・診断・治療・寛解

  8. 生活インパクト:食習慣・医薬品・日用品への影響

  9. リスク要因と予防策――「もらわない・持ち込まない・早く取る」

  10. 研究最前線:ワクチン開発と糖鎖改変食材

  11. よくある質問(FAQ)

  12. まとめ



1. はじめに――二重の脅威を正しく理解する

2013年以降、SFTSの国内患者は2025年4月末時点で累計1,071例に達し、致死率は概ね10〜30%で推移している id-info.jihs.go.jp。一方、マダニ咬傷が引き金となる遅発型食物アレルギー――α-Gal症候群(以下AGS)が世界的に増加し、感染症とはまったく異なる生活上の制約をもたらしている。感染症対策とアレルギー対策を両輪で捉える必要がある。



2. マダニの生態と分布拡大:温暖化が後押し

2-1 マダニとは

クモ形綱ダニ目に属し、幼虫・若虫・成虫すべてのステージで脊椎動物の血液を吸う。日本にはシュルツマダニやフタトゲチマダニなど40種以上が確認され、そのうち数種が人への病原体伝播に関与。樹木や下草の先端で待ち伏せし、哺乳類やヒトに付着して吸血を始める。

2-2 分布の北上

環境省の気候変動影響評価では、平均気温が3 °C上昇すると節足動物の生息域が北方・高地へ拡大する可能性が示され、マダニ分布も例外ではない env.go.jp。実際に本州中部山地や東北南部の標高1,500 m帯でマダニ捕獲数が増加したとの調査報告もある。

2-3 都市近郊でのリスク

シカやイノシシが市街地へ出没しやすくなり、マダニを“お供”に連れてくる。ペットの散歩や園芸作業でも人への咬着機会が増えている。



3. マダニ媒介感染症:SFTS・日本紅斑熱・ライム病

  • SFTS:SFTSウイルスを保有するマダニ(主にフタトゲチマダニ)が媒介。国内死亡例は117例(2025年4月時点) id-info.jihs.go.jp。

  • 日本紅斑熱:リケッチア感染症。毎年200〜300例を報告。

  • ライム病:北海道・長野・山形などで散発。欧米に比べ報告数は少ないが、温暖化に伴い増加予測。



4. α-Gal症候群(肉アレルギー)とは

AGSは、マダニ唾液由来の糖鎖Galα1-3Galβ1-(3)4GlcNAc-R(α-Gal)に対するIgE抗体が産生され、哺乳類肉摂取後3〜6時間遅れて蕁麻疹・腹痛・下痢・呼吸困難を引き起こす。2009年米国バージニア大学プラッツ=ミルズ教授らが初報告して以来、17か国以上で確認される pmc.ncbi.nlm.nih.gov。



5. 発症メカニズム:α-Gal糖鎖、IgE、遅発型食物アレルギー

  1. 咬傷:マダニが唾液とともにα-Galを注入。

  2. 感作:皮膚免疫がTh2優位となりIgE産生。

  3. 摂食:肉・ゼラチン・乳製品などα-Gal含有食品摂取。

  4. 遅発反応:食後3〜6時間で全身性アレルギー。
    筋肉組織中の脂質輸送に関わるキロミクロンがゆっくり血中を巡る速度が“遅発”の鍵と考えられている sciencedirect.com。



6. 世界と日本の流行状況:「日本だけ?」の誤解

  • 米国:2010〜2022年の疑い症例は110,229件、潜在患者は最大45万人と推定 cdc.gov。2025年6月の報道では気候危機に伴いローンスター・ティックが北東部へ拡大し「数百万人リスク」へと警鐘が鳴らされた theguardian.com。

  • 豪州:カンガルー島のマダニで児童のAGS例を報告。

  • 欧州:ドイツ・スペイン・スウェーデンなどで症例増。2024年の総説では「欧州全土で数千~数万例規模」と試算。

  • 日本:症例報告は10例程度に留まるが、保険収載されていない検査項目のため統計が捕捉しにくい。高知大学医学部から2024年に寛解症例が報告され、的確な回避指導の有用性が示唆された。


ポイント:流行は世界共通。日本の低報告は「少ない」のではなく「見えていない」可能性が高い。




7. 症状・診断・治療・寛解

7-1 主症状

蕁麻疹・血管浮腫・腹痛・下痢・嘔吐・喘鳴・低血圧。発熱は稀。


7-2 診断

  • 問診:マダニ咬傷歴+赤身肉摂取後の遅発症状。

  • 検査:血清α-Gal特異的IgE(>0.35 kUA/L)、皮膚テストは偽陰性が多い。

  • 負荷試験:入院下で段階的摂取。


7-3 治療

  • 急性期:エピネフリン自己注射、H1/H2ブロッカー。

  • 慢性期:α-Gal含有食品の除去、ダニ回避。


7-4 寛解

マダニ回避によるIgE低下で3–5年後に肉再摂取可能となった報告が複数ある wwwnc.cdc.gov。



8. 生活インパクト:食習慣・医薬品・日用品への影響

赤肉だけでなく、ゼラチンを含むゼリー菓子・マシュマロ・ワクチン補助剤、動物由来ヘパリン、一部の歯磨き粉にも注意が必要。ベジタリアン転向や鶏肉・魚中心食への変更で栄養バランスを保つ工夫が求められる。



9. リスク要因と予防策――「もらわない・持ち込まない・早く取る」

フェーズ実践ポイント補足
野外に出る前長袖長ズボン・裾を靴下にイン
ディート30%・イカリジン15%忌避剤
衣類用パーマトリン加工も有効
活動中ブルーシートを敷いて座る
草むらに直接触れない
ピクニック・キャンプ・園芸
帰宅後シャワーで洗い流し鏡で全身確認
ペットの被毛ブラッシング
付着後数時間以内に除去すれば病原体伝播リスク低下
咬着時ピンセットで皮膚に平行にゆっくり引き抜く口器が残った場合は医療機関へ
医療機関受診咬着部写真を撮りマダニを密閉袋保存同定・病原体PCR検査に役立つ





10. 研究最前線:ワクチン開発と糖鎖改変食材

10-1 マダニ唾液タンパクワクチン

ローンスター・ティックの32 kDa抗原に対するmRNAワクチンが米国立衛生研究所で前臨床段階。皮膚免疫のTh2偏位を抑制。


10-2 α-Galフリー赤肉

CRISPR/Cas9でα-Gal合成酵素を欠損させた豚・牛の培養肉開発が進行中。


10-3 低免疫反応ゼラチン

コラーゲン由来糖鎖を植物性ペプチドに置換した医療用ゼラチンが臨床試験へ。



11. よくある質問(FAQ)

Q:鶏肉・魚もダメになる?
A:多くのAGS患者は問題なく摂取できる。まれに交差反応あり要医師相談。


Q:市販コラーゲンサプリは?
A:豚・ウシ由来ゼラチンを含むものは禁忌。植物性ペプチドタイプに置換。


Q:アウトドアが趣味だがやめるべき?
A:完全回避は困難でも、服装・忌避剤・チェックでリスクを大幅に下げられる。



12. まとめ

マダニは感染症とアレルギーという二重の健康被害をもたらす。日本はSFTSの注意喚起が浸透する一方、肉アレルギーへの認知が遅れている。早期の気づきと咬着回避行動が生活の質を守る鍵となる。医療・農林・環境分野の連携による包括的対策が急務だ。




参考記事一覧(出典ID付き)

№文献タイトル・媒体・年出典ID
1CDC “Emerging Tick Bite–Associated Meat Allergy Potentially Affects Thousands” (2023)turn0search1
2CDC MMWR “Geographic Distribution of Suspected AGS Cases, United States, 2017–2021” (2023)turn0search1
3The Guardian “Explosive increase of ticks that cause meat allergy in US due to climate crisis” (2025)turn0news49
4Forbes JAPAN「牛・豚肉を体が拒絶 マダニ原因の赤肉アレルギー、米国で拡大中」(2023)turn0search2
5Platts-Mills T. & Commins S. Tick bites and red meat allergy Allergy 70(12) (2015)turn0search3
6Environmental Risk and Alpha-Gal Syndrome in the Mid-Atlantic PLOS Climate (2024)turn0search6
7日本感染症情報センター「感染症発生動向調査 SFTS 症例の概要」(2025-04-30)turn0search0
8環境省『気候変動影響評価報告書 概要版』(2024)turn0search4
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