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声優の「声」は守られるのか?――81プロデュース×ElevenLabs提携が示す“保護と活用”の未来

声優の「声」は守られるのか?――81プロデュース×ElevenLabs提携が示す“保護と活用”の未来

2025年12月22日 18:54

1. いま「声」が狙われている――生成AIが変えた前提

声は、俳優・声優・ナレーターにとって“身体の一部”であり、同時に職能そのものだ。ところが音声生成AIの普及で、ネット上に存在する音声断片(出演作の一部、インタビュー、イベント配信、SNS動画など)から、本人の許諾なく「それっぽい声」を量産できる時代になった。


被害は単に「似ている」だけでは終わらない。本人が言っていない言葉を言わせられる、作品外の広告に使われる、政治・詐欺・誹謗中傷に転用される――“声の乗っ取り”が現実のリスクとして立ち上がっている。


ここで重要なのは、声は画像よりも「信じてしまう」媒体である点だ。人は音声を聞くと、そこに人格・感情・意図を読み取りやすい。つまり、声の無断生成は、名誉や信用、そして仕事機会の侵害に直結しうる。



2. 81プロデュース×ElevenLabs提携の骨子――「保護」と「多言語化」を同時に狙う

今回の提携で示された方向性は明快だ。

  • 81プロデュース:所属声優の声を、必要に応じて随時ElevenLabs側へ登録

  • ElevenLabs:多言語化のためのプラットフォーム/技術を提供

  • 共同の狙い:日本語コンテンツを、オリジナル声優の声質を保ったまま多言語化し、世界へ届ける プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES+1


報道では、許諾を得たアニメ・ナレーション・番組などを、最大29カ国語(規模)で生成する構想が語られている。KAI-YOU | POP is Here .+1
さらに、同社は「声を守る技術」として、VoiceCAPCHA、デジタル透かし、C2PA準拠といった要素にも触れている。KAI-YOU | POP is Here .+2ASCII+2


この提携は、AIを“禁止”するのではなく、許諾・登録・来歴証明を前提に、正規ルートでの活用へ誘導するモデルだと言える。



3. 「声を守る技術」とは何か――透かし、来歴、なりすまし対策

提携報道で登場するキーワードは、技術者だけでなくクリエイターにも重要だ。

(1) デジタル透かし(Watermarking)

AI生成音声に、聞こえない形で“印”を埋め込み、後から検出できるようにする考え方。目的は「本物の声」vs「生成音声」の判別だけでなく、拡散経路の追跡や、プラットフォーム上での自動検知にもある。



(2) C2PA(来歴・真正性の標準)

C2PAは、コンテンツの出所・編集履歴を暗号学的に扱うオープン標準で、「コンテンツの栄養成分表示」になぞらえられることもある。c2pa.org
また、C2PAの解説資料では、来歴情報(マニフェスト)をコンテンツに埋め込んだり、不可視透かし等の“ソフトバインディング”で紐づけたりして、配布後も真正性を検証できる流れが説明されている。spec.c2pa.org



(3) なりすまし・悪用の抑止(ポリシー運用)

技術があっても、ルールがなければ抜け道ができる。ElevenLabsは、同意なく他人の声を複製して使うこと、AI生成であると誤認させる形のなりすまし等を禁止するポリシーを掲げている。ElevenLabs
これはプラットフォーム側の“最低限の柵”であり、提携が目指す「正規化」は、こうしたルール設計とセットで初めて機能する。



4. なぜ今、声優事務所が“AI提携”に踏み切るのか

一見すると矛盾して見える。「声を守りたいのに、なぜAI企業と組むのか?」
答えは、守るためには、使う側の経路を整備する必要があるからだ。


無断利用が蔓延する理由の一つは、正規のライセンス窓口が弱い/遅い/高いといった摩擦にある。そこへ、

  • 正規登録された声

  • 許諾を得た案件だけを多言語化

  • 来歴証明(検知・追跡)
    をセットにした“業界標準の道”ができれば、少なくとも「正規にやる理由」が生まれる。


そしてもう一つ、世界市場の現実がある。配信プラットフォームやグローバル同時展開では、多言語対応のスピードが重要だ。字幕・吹替は品質が命だが、制作・キャスティング・スタジオ収録・監修に時間も費用もかかる。
もし「元の声優の演技ニュアンスを保ったまま、各言語へ展開できる」なら、コンテンツの到達範囲は一気に広がる。ASCII+1



5. “多言語化”は福音か、それとも脅威か――現場に起きる変化

この提携が本格稼働したとき、影響を受けるのは声優だけではない。翻訳者、吹替ディレクター、音響制作、海外ローカライズ会社、さらには配信プラットフォームまで含む。


期待されるメリット

  • 海外展開の速度:公開タイミングを世界で揃えやすい

  • 一貫性:キャラクターの“声の同一性”を保ったまま言語を跨げる

  • アクセシビリティ:字幕が苦手な層にも届く、学習用途にも応用可能

  • 制作の選択肢:従来の吹替とAI多言語化を、作品・地域・予算で使い分けられる


懸念されるポイント

  • 吹替市場の仕事量の再編:一部の領域で、従来型吹替が置き換えられる可能性

  • 演技の“責任範囲”:別言語で生成された演技が炎上した場合、誰が責任を負うのか

  • 品質管理:文化的ニュアンス、ジョーク、敬語、感情の振れ幅をどう担保するか

  • 声優のブランド毀損:本人の意図しない文脈で“声だけ出演”が増えるリスク


結局、AI多言語化は「置き換え」か「拡張」かではなく、どの条件で、誰が、何をコントロールできるかの問題に帰着する。



6. 法制度は追いついているのか――日本の「声の権利」はまだグレーが多い

ここが本題だ。「声は守られるのか?」は、技術よりも制度と運用に左右される。



(1) 文化庁資料が示す“論点”

文化庁のワーキングチーム資料では、生成AIが声優を模した声を生成・利用するケースについて、著作権との関係整理が進められている。さらに、政府文書の記載として、俳優や声優等の肖像・声の利用・生成について、不正競争防止法との関係を整理し、必要に応じ見直し検討する方針も示されている。bunka.go.jp


同資料は、特定声優に似せた声を生成し、氏名・肖像・キャラクター表示を用いて混同を生じさせる場合など、具体的な想定例も列挙している。bunka.go.jp



(2) 実演家(声優)の課題――「声そのもの」に著作権が乗りにくい

声優の演技は“実演”だが、AIが生成するのは往々にして「録音そのものの複製」ではなく“似せた新規音声”になる。このズレが、権利救済を難しくする。
日本俳優連合(日俳連)は、生成AI問題に関して、実演家のパブリシティ権の明確化や、実演家に翻案権・複製権を付与すること等を求めている。nippairen.com


要するに、現状の法体系は「声優を守れない」と断言はできないが、確実に守れるとも言い切れない部分が残っている。だからこそ、提携のような“契約と技術で先に囲いを作る”動きが現実味を持つ。



7. 提携モデルの核心は「契約」――同意、対価、範囲、撤回、監査

この提携が社会的に支持されるかどうかは、PRの言葉ではなく、運用の透明性にかかっている。チェックポイントは少なくとも次の5つだ。


  1. 同意(Consent):誰が、何に、どの粒度で同意したのか

  2. 範囲(Scope):作品単位か、ジャンル単位か、期間・地域・媒体はどうか

  3. 対価(Compensation):固定報酬か、売上連動か、二次利用料はあるのか

  4. 撤回(Revocation):途中で引き上げられるのか、既存利用はどうなるのか

  5. 監査(Auditability):生成ログ、透かし検出、来歴証明を第三者が検証できるのか


特に重要なのが、プラットフォーム利用規約が含むライセンス条項の扱いだ。ElevenLabsの利用規約(非EEA)には、入力(声を含み得る)やユーザー音声モデルに関するライセンスが、**perpetual(永久)かつ irrevocable(撤回不能)**等として記載されている箇所がある(※同時に「単体での商用化は許可なく行わない」といった趣旨の記載もある)。ElevenLabs


事務所・声優側が「どこまでをプラットフォームに許諾し、何を留保するか」を、契約でどう組み立てるかが極めて重要になる。



8. 「声のマーケット化」は止まらない――世界では“ライセンス市場”が整い始めた

世界に目を向けると、音声AIはすでに「権利者の同意を前提にした流通」へ舵を切りつつある。ElevenLabsは、権利者と利用者をつなぐ“Iconic Voice Marketplace”のような市場構想を打ち出している。The Verge+1
この動きは、無断利用を完全に消すものではない。しかし、正規ルートで買えるなら買うという企業ニーズを取り込める。結果として、無断利用の“収益化”を弱め、摘発や削除の実効性を高める可能性がある。


81プロデュースの提携は、この国際潮流に日本の声優文化がどう接続するか、という問いでもある。プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES+1



9. 未来予測:提携が示す3つのシナリオ

ここから先、業界が向かう可能性は大きく3つに分かれる。


シナリオA:標準化が進み、「声の権利管理」がインフラ化する

登録・許諾・来歴証明が標準となり、制作会社や配信会社が“正規の声”だけを採用する世界。違法コピーは残るが、ビジネス上は正規が強くなる。


シナリオB:作品ごとに“ハイブリッド制作”が当たり前になる

主要市場は従来吹替で高品質に、長尾言語はAI多言語化で迅速に――という折衷。制作の選択肢が増える一方、職能再編も進む。


シナリオC:炎上・訴訟・規制で揺り戻しが起きる

同意や対価、撤回の設計が不十分なまま事例が増えると、社会的反発が強まり、規制やプラットフォーム制限が強化される。結果、活用が一時的に萎む。

どれになるかは、技術性能よりも、透明性・公正性・説明責任の積み上げ次第だ。



10. 結論:声は「守られるか」ではなく、「守れる形に作り直せるか」

81プロデュースとElevenLabsの提携が示したのは、単なる“AI導入”ではない。

  • 無断利用が増える現実を直視し

  • 禁止ではなく正規化で対抗し

  • 多言語展開という市場要求に応えながら

  • 透かし・来歴・規約・契約で「声の扱い」を再設計する
    という、極めて実務的な戦略だ。プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES+2音楽業界総合情報サイト | Musicman+2


声優の声は、文化であり、職能であり、資産でもある。守るためには、法律の整備と同時に、現場で回る“合意と証明”の仕組みが要る。
この提携は、その未来へ向けた大きな一歩である――ただし、成功の条件ははっきりしている。本人の同意が明確で、対価が公正で、撤回と監査が可能で、生成の来歴が検証できること。
それが満たされて初めて、私たちは「声は守られる」と言える。


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