メインコンテンツにスキップ
ukiyo journal - 日本と世界をつなぐ新しいニュースメディア ロゴ
  • 記事一覧
  • 🗒️ 新規登録
  • 🔑 ログイン
    • English
    • 中文
    • Español
    • Français
    • 한국어
    • Deutsch
    • ภาษาไทย
    • हिंदी
クッキーの使用について

当サイトでは、サービスの向上とユーザー体験の最適化のためにクッキーを使用しています。 プライバシーポリシー および クッキーポリシー をご確認ください。

クッキー設定

クッキーの使用について詳細な設定を行うことができます。

必須クッキー

サイトの基本機能に必要なクッキーです。これらは無効にできません。

分析クッキー

サイトの使用状況を分析し、サービス向上に役立てるためのクッキーです。

マーケティングクッキー

パーソナライズされた広告を表示するためのクッキーです。

機能クッキー

ユーザー設定や言語選択などの機能を提供するクッキーです。

アメリカで進行中の新聞廃刊とニュース業界の未来:アルゴリズム、AI、そして空白地帯

アメリカで進行中の新聞廃刊とニュース業界の未来:アルゴリズム、AI、そして空白地帯

2025年10月22日 17:46

1. 「静かな閉鎖」が生む大きな空白

米国のローカル新聞は今、静かに、しかし確実に姿を消している。最新の報道と研究によれば、この1年ほどで少なくとも136紙が発行を止め、ニュースの空白地帯——いわゆる「ニュース砂漠」はさらに広がった。特に農村部や小規模コミュニティで影響は深刻で、地元の行政監視や選挙情報、学校・病院・地域経済の細やかなカバレッジが失われつつある。直近の事例では、ユタ州の週刊紙Wasatch Waveやアイオワ州のAurelia Starといった長い歴史を持つ独立系の新聞までが相次いで閉じた。これらは巨大チェーンの統合作業ではなく、家族経営や個人オーナーの撤退という「最後のともしび」が消えるタイプの閉鎖である。 AP News


2005年以降の20年で新聞数は約7,300から4,500前後に減り、平日発行の累計部数は約5,000〜6,000万から1,500万強まで落ち込んだとされる。雇用も急減し、同期間で新聞業界の就業者は約36万人から9万人台へ。これは単なるメディアの縮小ではなく、地域の「情報インフラ」そのものが細っていることを意味する。 AP News


2. 5000万人が直面する「地元が見えない」というリスク

ノースウエスタン大学メディル校の年次レポート「State of Local News 2025」は、米国で約5,000万人が地元ニュースへのアクセスが限定的な「ニュース砂漠」あるいはその縁辺に暮らしていると指摘する。カウンティ単位でみると、地元紙が1つも存在しない地域は200を超え、残る地域でも週1回以下の発行や実質的に中身が薄い「ゴースト新聞」が目立つ。都市部ではデジタル発の新興メディアが芽吹きつつあるが、空白を埋めるには至っていない。 Local News Initiative


こうした空白は政治や生活に波及する。地元記者が少ない地域ほど汚職や非効率が増えるとの研究は少なくないし、公共事業のコスト上昇や投票率の低下といった負の連鎖も報告されている。情報の空白は、SNSで流通する未検証情報やAI生成コンテンツに席巻されやすい土壌にもなる。 Axios


3. 原因は「広告の崩落」だけではない

崩落の主因は言うまでもなく広告のデジタル移行だが、近年は以下の複合要因が効いている。

  • プラットフォーム依存の反動:SNSのアルゴリズム変更で、新聞サイトのトラフィックは過去4年で大きく減退したとされる。検索エンジンからの流入も競争が激化。 AP News

  • AI時代の分配問題:生成AIの要約・回答にユーザー接触が奪われ、一次報道への直接流入が細る構造が浮き彫りになった。 AP News

  • コスト構造の硬直:印刷・配達の固定費、負債対応、統合の副作用で地域取材が後景化。大手チェーンでは100百万ドル規模のコスト削減まで打ち出され、編集現場への圧力は強まる。 poynter.org

4. 現場のサバイバル:3つの方向性

それでも各地で「ローカルを守る」試みが走っている。成功の芽は主に三つだ。

(1) デジタル・ファーストの再設計
週刊から「常時更新」に移行し、ニュースレターやアプリ、会員制コミュニティを中核に据えるモデルだ。記者一人あたりの影響半径を拡大し、ニッチな関心に応える縦型の特集を積み上げる。課金は段階制で、地元企業の広告・求人と組み合わせる。


(2) 共同インフラとネットワーク化
CMS、分析、広告販売、法務・ITなどの共通基盤を地域横断で共有し、記者は取材に集中する。大学や公共放送とのコンテンツ提携も増えている。州や都市別に「プレス・フォワード」支部が立ち上がり、資金とノウハウの流れを太くしている。 pressforward.news


(3) 公共的支援の制度化
雇用維持を促す記者給与の税額控除、読者の購読税額控除、中小企業の地域広告税額控除など、政策メニューが整ってきた。連邦レベルでは「Local Journalism Sustainability Act」案が再提出され、州レベルではイリノイ州などで持続化の税制が動き始めた。 Congress.gov


5. フィランソロピーの現在地:4億ドル超

フィランソロピー連合「Press Forward」は、立ち上げから2年で累計4億ドル超の投資を動員したと公表した。7月にはインフラ分野の22プロジェクトに2,270万ドルの助成、各地域章(シカゴなど)でも移民報道や地域課題の取材力を底上げする資金配分が進む。APは昨年、小規模ローカル205媒体に対する1億ドル規模の草の根助成の広がりを報じ、ナイト財団など既存財団の地域特化も加速中だ。 pressforward.news


一方で、州の財政や大手企業との連携は揺れも大きい。カリフォルニア州のGoogleとの協定は財政悪化で再設計を余儀なくされ、当初の規模感からスリム化された。官・民・財が三位一体で投資する難しさも露わになっている。 ポリティコ


6. SNSの反応:ペイウォールから公共財まで

SNS上の議論は大きく三つの軸に分かれる。

  • 「ペイウォールの是非」論:有料化が拡散を妨げるとの批判がある一方、収益確保の要であることは多くが認める。Threadsでは、全国紙・地方紙の併走とペイウォールの折り合いを模索する投稿が目立つ。 Threads

  • 「公共財」アプローチ:大学や公共放送、州機関と連携し、ローカル報道をインフラとして支えるべきという主張。研究機関のアカウントは、ニュース砂漠で人々が「自分は十分に情報を得ている」と錯覚しがちな点を指摘し、情報リテラシーと地域参加を同時に高める設計を提案する。 Threads

  • 「AI時代の警戒」:記者の目が減るほど、AI生成の偽情報やディープフェイクが地域を侵食するという警鐘。現場の検証力を保つための人件費支援が繰り返し主張されている。 Threads

また、大学紙やジャーナリズム教育界隈では、最新レポートを踏まえて取材教育の地域還元を促す声が強い。学生記者の地域配属や大学と地方局の協働プロジェクトを常設化する案も拡散している。 The Daily Northwestern


7. それでも希望がある理由

厳しい数字の一方で、都市部を中心にデジタル・ローカルの新規参入が増えていること、そして政策とフィランソロピーの「仕組み」が整い始めたことは確かな前進だ。重要なのは、単発の助成ではなく雇用(記者のポスト)を維持・増やす恒常的な資金の流れをつくれるかだ。具体的には——

  • 雇用税額控除と読者側控除の二面攻撃で、供給(記者)と需要(購読)を同時に下支えする。 Rebuild Local News

  • 大学・公共放送・地方政府・財団・企業のマルチステークホルダー型で、記者育成から配信・検証・翻訳までを分業する。 pressforward.news

  • ビート(担当分野)を「教育・医療・環境・移民・地方財政」など生活密着の縦軸に再設計し、速報より説明・検証を厚くする。

  • プラットフォームとの協定は安定財源と編集独立をセットで担保する条項を標準化する。 ポリティコ


8. 日本の事業者・自治体にとっての示唆

少子高齢化と地域の疲弊は日本も同じ文脈だ。地方紙の宅配網や記者の地の利は、災害・選挙・行政監視において代替の利かない公共性を持つ。米国の動きから輸入できるのは、(a)雇用・購読の税制、(b)大学・公共放送・財団の連携、(c)地域課題に特化した縦型編集の三点だろう。自治体が関与する際は、編集介入を排する独立性のガバナンスが要になる。


ニュースは「紙」から離れても、地域の意思決定を支える基本的インフラであり続ける。砂漠を緑地に変える技術もお金も芽生え始めた。残る課題は、それを恒常化し、地域の手に取り戻すことだ。



参考記事

新聞の廃刊が進み、困難に直面するニュース業界でニュースの空白地帯が拡大
出典: https://financialpost.com/pmn/newspapers-closing-news-deserts-growing-for-beleaguered-news-industry

← 記事一覧に戻る

お問い合わせ |  利用規約 |  プライバシーポリシー |  クッキーポリシー |  クッキー設定

© Copyright ukiyo journal - 日本と世界をつなぐ新しいニュースメディア All rights reserved.