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核融合レースは“点火”より“量産”で決まる:中国が狙う次の覇権

核融合レースは“点火”より“量産”で決まる:中国が狙う次の覇権

2025年12月16日 07:52

「核融合」は“科学”から“国家の実装競争”へ

2025年12月、米New York Timesは「核融合(フュージョン)をめぐる米中競争」を、建設現場の“物量”から描き出した。東部の緑豊かな研究拠点では、巨大な円形構造物と、空母級の長さに例えられる“腕”のような構造が急ピッチで組み上がる。さらに中国西南部の元・水田地帯では、外部にあまり知られていなかった大型のX字型施設が極秘性を帯びて建設され、衛星画像の分析をきっかけに存在が注目された――という導入だ。ASPI Cyber & Tech Digest


ここで象徴的なのは、「核融合が実現すれば世界が変わる」という古典的な夢ではなく、その夢を現実のインフラに落とし込む“国家の実装力”そのものが、いま競争の主題になっている点だ。


※本稿はNYT本文そのものの転載ではなく、公開されている引用・要約部分と、関連する一次情報(政府・研究機関発表、報道、当事者のSNS投稿)を突き合わせて、オリジナルの観点で再構成したものです。ASPI Cyber & Tech Digest



そもそも核融合は、なぜ“覇権テーマ”になるのか

核融合は、軽い原子核を融合させてエネルギーを取り出す反応で、理屈の上ではCO₂排出が極めて小さく、燃料制約も相対的に小さい“次世代の基幹電源”になり得る。


ただし現実は「燃えるプラズマを作る」だけで終わらない。材料、耐熱、燃料サイクル、発電設備としての保守性、コスト、規制——これらを束ねる総合格闘技だ。


ここに、地政学が入り込む。核融合の研究は“クリーンエネルギー”の文脈だけでなく、(特にレーザー慣性核融合)核兵器関連のシミュレーション・実験能力とも近接する。つまり「エネルギー技術」でありながら「安全保障技術」でもある。Reuters



中国の強みは「一本道」ではなく“並列で走る国家プロジェクト”

米中比較で語られがちなのは「中国=国家主導、米国=民間主導」という構図だが、より正確には中国の特徴は複数の核融合ルートを並列に前進させる“ポートフォリオ型”の国家投資にある。


たとえば、政策・研究面では中国科学院(CAS)が合肥(Hefei)で国際プログラムを立ち上げ、燃焼プラズマ研究や主要設備の国際協力・開放を打ち出している。中国科学院
また合肥は、超伝導磁石やダイバータ(高熱を受ける部位)など、実機に直結する要素技術の拠点として言及されている。IGCC


“実験の記録”も、国威発揚の材料になる。国営メディアは2025年1月に、中国のトカマク型装置EASTが長時間運転の記録を更新したと報じた(研究の詳細評価は別として、対外的には「前進している」シグナルになる)。新華網



もう一つの顔:衛星画像が映す「レーザー核融合」と“デュアルユース”

NYT記事で示唆される西南部の大型施設は、衛星画像を起点に注目が広がった点が重要だ。これと強く響き合うのが、Reutersが2025年1月に報じた「四川・綿陽(Mianyang)での大型レーザー核融合施設建設」だ。報道によれば、施設のレイアウトは米国のNIF(National Ignition Facility)に類似し、実験区画がより大きい可能性が指摘される。Reuters


レーザー慣性核融合(ICF)は、発電技術の可能性であると同時に、核兵器の信頼性評価や設計研究にも関係しうる。だからこそ、SNS上の反応も「クリーン電源」だけでは終わらず、「軍事転用」や「透明性」の話題へ分岐していく。Reuters



米国側:民間主導の加速と「国家戦略の追い上げ」

一方で米国は、スタートアップと民間資本が核融合を押し上げてきたという自負がある。実際、米エネルギー省(DOE)のロードマップを紹介する報道では、民間投資が既に90億ドル規模に達していることが触れられ、官民連携で“中期(2030年代半ば)”の商用化を目標に掲げる。ワールド・ニュークリア・ニュース


ただ、ここで出てくる焦りが「相手が中国だと、VCの論理だけでは勝負にならないのでは?」という点だ。
実際に業界団体Fusion Industry Association(FIA)は、一時的に100億ドル規模の公的資金注入が必要だとして、その配分案まで示している。Fusion Industry Association


Reutersも、米国の核融合業界が年間10億ドル超の予算措置などを求め、対中競争を強く意識している状況を報じた。Reuters



「勝つ」とは何か:点火ではなく、供給網と量産と規格

核融合のニュースはどうしても「点火」「ブレークイーブン」「○秒達成」といった“実験の記録”に目が行く。けれどNYTが描くのは、そこではない。


もし本当に「勝敗」を定義するなら、それはおそらく——

  • 材料:中性子で傷む構造材、プラズマ対向材の寿命

  • 燃料:トリチウムの調達・増殖(ブランケット)・管理

  • 巨大装置のサプライチェーン:超伝導磁石、真空機器、電源、制御、計測

  • “工場”としての再現性:一品モノから規格化へ

  • 許認可と保険、立地、送電:電源としての社会実装


つまり「研究所で勝つ」より「産業として勝つ」ほうが難しい。そして中国が得意としてきたのは、まさに後者——巨大な供給網と建設・製造の統合だ、という読みになる。


この観点は、当事者のSNS発信にも現れている。例えば、対中技術競争を研究する投稿者は「米国が技術ルートを先に開いても、中国が工学化・スケールで先行するリスク」を指摘している。LinkedIn



SNSの反応(抜粋:LinkedIn/Hacker News/Lemmy など)

※以下は2025年12月中旬時点で可視化できた投稿・コメントの一部です。地域・コミュニティに偏りがあり、世論全体を代表するものではありません。


1) 「核融合はいつも“20年後”」という冷笑(テック系コミュニティ)

Hacker Newsのコメントでは、核融合の長い歴史を踏まえて「子どもの頃から“あと20年”と言われ続けている」という趣旨の定番ツッコミが見られる。期待はしつつも、**“突破口はまだない”**という温度感だ。Hacker News


2) 「どうせまた“お湯を沸かす”発電?」という皮肉と、ベースロード期待(Fediverse)

Lemmyでは、核融合も結局は蒸気タービン中心になるのか、という“ボイラー・ジョーク”が連鎖する一方で、風力・太陽光の変動性を踏まえて「制御可能な大電力の基幹電源になり得る」という擁護もある。Lemmy.World

また、記事が中国を持ち上げすぎるのでは、という警戒(「グリーンウォッシュでは?」)も混ざる。Lemmy.World


3) 「VC vs 国家」の不公平さと、同盟的な“政府連合”論(LinkedIn)

核融合政策の発信者Andrew Hollandは、民間主導の西側に対し「中国のような国家規模の後ろ盾と戦うのはフェアではない」とし、志のある政府の連合で押し切らないと次の巨大産業を失う、と煽る。LinkedIn


コメント欄にも「同じこと(国家主導)をしないで、どうやって匹敵するのか」「西側政府は官僚制で遅すぎるのでは」といった悩ましさが出ている。LinkedIn


さらに別コメントでは、国家金融を伴う輸出(インフラ融資)によって受け入れ国が依存関係に入るリスクを、既存の原子力(核分裂)案件になぞらえる声もある。LinkedIn


4) 産業側の“実装目線”:「規模で勝つ」ことの示唆

核融合企業Commonwealth Fusion Systems(CFS)のLinkedIn投稿は、NYT記事が描くのは「(理論ではなく)エンジニアリングとスケーリング競争」だという読みを強調している。LinkedIn



ここから先、私たちが見るべき「5つのシグナル」

核融合のニュースに踊らされないために、2026年以降は次の“実装指標”を追うのが有効だ。

  1. 材料試験と調達網:量産に耐える品質管理が回り始めたか

  2. 燃料サイクル(トリチウム):実験炉レベルから商用レベルへ“管理の桁”が変わる

  3. 高温機器の保守性:運転停止→交換→再稼働の工数が読めるか

  4. 規制の型:核分裂(原発)と同じ枠組みで縛るのか、別の枠を作るのか

  5. コストのストーリー:発電単価だけでなく、資本費・保険・廃棄・サイバーまで含めた“総コスト”


そして何より、核融合は「来年の電源不足」を救う技術ではない。短期の脱炭素は再エネ・送電・蓄電・効率化が主戦場で、核融合は“次の世代の基幹技術”として、国家と産業の体力が問われるテーマだ——NYT記事は、その現実を建設現場のスケールで突きつけてくる。ASPI Cyber & Tech Digest


参考記事

クリーンで無限のエネルギーは存在する。中国がその活用競争で大きく動き出す。 - ニューヨーク・タイムズ
出典: https://www.nytimes.com/2025/12/13/climate/china-us-fusion-energy.html

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