「断食は“誰にでも効く”の嘘」 — 炎症と代謝が分ける「効く人/効きにくい人」 : 肥満では“スイッチ”が入りにくい?

「断食は“誰にでも効く”の嘘」 — 炎症と代謝が分ける「効く人/効きにくい人」 : 肥満では“スイッチ”が入りにくい?

「ファスティングは誰にでも同じように効くのか?」—“個体差”を生む免疫と代謝のリアル

断食(ファスティング)は「体脂肪を燃やすスイッチ」を入れる――そんなフレーズは、SNSでも健康メディアでもおなじみだ。だが2025年に公開された新研究は、私たちの身体が断食に示す反応は“ひとつ”ではない、と明確に示した。特に肥満(BMI30以上)の人では、代謝や免疫の変化が“鈍い”ケースが見られ、期待した効果が出づらい可能性があるという。今回の記事では、研究の中身をやさしく解説しつつ、SNSのリアルな受け止め方、実践のヒントと限界点までを総まとめする。参照元のドイツの解説記事もこの点を端的に伝えている(記事公開:2025年9月7日)。 24vita.de


研究の設計:48時間断食で何が起きたか

調査は、48時間の断食が代謝と免疫に及ぼす影響を、肥満群(n=16)標準体重群(n=16)で比較したもの。どちらの群でも脂肪燃焼は進んだが、血中ケトン体(β-ヒドロキシ酪酸:BHB)の上昇、BHBとアミノ酸の結合体、さらにはタンパクのβ-ヒドロキシ酪酸化といった分子レベルの指標は、肥満群で上がり幅が小さい(鈍化)ことが確認された。免疫側では、標準体重群のT細胞が脂肪酸酸化に寄る方向へ柔軟に適応したのに対し、肥満群ではこの適応が弱めで、IL-17を産生する炎症性T細胞(Th17)の比率やシグナルが相対的に高く保たれていた。 PubMed


この知見は、「断食=誰にでも同じ効き方をする」という単純化にブレーキをかける。大学の公式リリースは「体型(ボディタイプ)で反応が異なる」点を強調し、特に肥満群では代謝の“柔軟性(metabolic flexibility)”免疫のバランスが切り替わりにくい可能性を指摘している。 UBC's Okanagan Newsubctoday.ubc.caメディカルエクスプレス


何が「個体差」を生むのか——カギは代謝柔軟性と慢性炎症

肥満では、脂肪組織と免疫が相互作用し、慢性的な低度炎症が起きやすい。過去研究でも、IL-17のような炎症性サイトカインが脂肪組織の振る舞いや糖代謝に影響しうることが示されている。断食は本来、糖代謝から脂肪代謝への“燃料切替”を促すが、炎症が強いと切替がスムーズに進まず、ケトン体の上がり方が鈍る——これが今回の人間データで裏づけられた格好だ。 PMC


実践への含意:万能鍵ではなく“処方設計”

では、断食はやめるべきなのか? 研究チームは**「そうではない」と慎重だ。断食は有望な手段だが、個体差を前提に設計・伴走が必要になる。とりわけ肥満の人は、医療専門家の監督のもとで始める、あるいは時間制限食(例:16時間断食+8時間摂食の“16:8”)など“短め”から段階的に試すのが現実解だ。食事内容は地中海食などの抗炎症パターン**に寄せると、炎症の下地を和らげ、代謝の切替を助ける可能性がある。こうした提案は一般向け記事でも述べられている。 24vita.de


一方で、ランダム化比較試験やメタ解析では**断食は従来のカロリー制限と体重減少効果が“同程度”**という結論も見られる。つまり「断食だから特別に痩せる」わけではなく、継続性と総摂取量が依然として勝負どころだ。 Reddit


研究の限界:48時間断食=現実のIFと同義ではない

本研究は48時間という比較的ハードな条件で、サンプルは合計32名。時間制限食や隔日断食など、日常的に行われるインターミットファスティング(IF)とは前提が違う。短中期のIF介入で体組成や代謝指標がどう動くかは、別の研究系譜でも評価されており、全体像は“賛否入り混じる”。だからこそ、個別最適化長期の行動変容が要になる。 PubMedBioMed Central



SNSの反応ダイジェスト(要約)

  • 賛成派:「断食は“カロリー制限と同等でもやりやすい”から続けられる。自分は朝食を抜くと集中できる」(IFコミュニティでの一般的な声の要約)。 Reddit

  • 懐疑派:「単発の研究を一般化しすぎ。効果は結局カロリー収支次第で、IFは魔法ではない」(科学系コミュニティでの議論)。 Reddit

  • 実践Tips派:「IFでもたんぱく質十分が大切。食事ウィンドウ内で目標量を確保してやっと体組成が寄ってくる」(体験談ベースの助言)。 Reddit

  • オートファジー慎重派:「人で“断食がオートファジーを有意に高める”直接証拠は限定的。過度な期待は禁物」(コミュニティの注意喚起)。 Reddit

※今回のUBCO(ブリティッシュコロンビア大オカナガン校)の研究自体へのReddit投稿も見られるが、議論量は限定的だった。 Reddit



ここまでの実務ポイント(編集部まとめ)

  1. 身体は人それぞれ:肥満ではケトン体上昇・免疫適応が鈍いケースがある。“同じ断食”でも出る結果は違う。 PubMed

  2. 計画を軽めから:まずは16:8など短時間から。既往症がある場合は医師と相談を。 24vita.de

  3. 食の質が効く:抗炎症寄りの食事パターンを土台に。

  4. 過信しない:IFはカロリー制限と同等の減量効果という知見も。続けやすさを軸に選ぶ。 Reddit

  5. 研究は進行中:48時間断食の知見が、そのまま日常のIFに等号で結べるわけではない。UBCOの中核結果は“方向性”を示した重要な一歩。 UBC's Okanagan Newsメディカルエクスプレス


出典:
・24Vita(ドイツ語・一般向け解説、2025年9月7日) 24vita.de
・iScience 論文(2025年、Neudorfら。DOI:10.1016/j.isci.2025.112872) PubMed
・UBCO公式ニュース/EurekAlert/MedicalXpress(大学リリース系) UBC's Okanagan NewsEurekAlert!メディカルエクスプレス
・関連トピックのSNS議論(Reddit科学・IFコミュニティ等) Reddit



FAQミニ

Q. 48時間もやらないと意味がないの?
A. そうではない。今回は研究上の設定。日常的には時間制限食など短い断食でも体重や代謝に一定の効果という報告がある一方、カロリー制限と同程度というエビデンスも多い。継続可能性が鍵。 BioMed CentralReddit


Q. IL-17って何?
A. 炎症性サイトカインの一種。肥満ではこの系統のシグナルが高まり、代謝の切替を邪魔する要因になりうる。 PMC


Q. 「自分は痩せ型だけど、断食で燃えやすい体になる?」
A. 今回のデータでは、痩せ型群のT細胞が“脂肪酸酸化”に適応する傾向が示された。ただし個人差は大きく、短期間の研究結果をそのまま長期効果へ一般化はできない。 PubMed



まとめ

断食は“スイッチ”というより“ダイヤル”だ。体型・炎症・生活習慣の織りなす個別の条件で、効果の出方は変わる。大切なのは、(1)短く始める、(2)食の質を整える、(3)医療者と連携する、(4)続けやすい方法を選ぶ。研究はさらに積み上がるだろうが、現時点の最善解は“あなたの身体に合う設定を見つけること”に尽きる。 24vita.dePubMed


参考記事

断食中に体内で起こることと体重が与える影響 - 24vita
出典: https://www.24vita.de/ernaehrung/studie-zeigt-fasten-wirkt-aber-nicht-bei-jedem-gleich-93910949.html