脳を守る最強の処方箋は「運動」だった - 長寿の専門家が語る健康的な老化の秘密

脳を守る最強の処方箋は「運動」だった - 長寿の専門家が語る健康的な老化の秘密

1. ブラジルで語られた「予防医学3.0」と最強ツール

「認知症を遠ざける最強のツールは運動だ」。ブラジルでのイベントHSM+登壇前に、長寿医療で知られる医師ピーター・アティア氏が現地メディアの取材にそう語った。氏は『Outlive』で提唱する“Medicina 3.0(予防医学3.0)”の要諦として、心血管疾患、がん、神経変性疾患、代謝異常という四つの大敵を未然に遠ざけることを重視する。InfoMoney


アティア氏は、良質な睡眠、代謝と血圧の正常化、インスリン感受性の維持、頭部外傷の回避、適切なサウナ習慣やコレステロール管理などを補助線として挙げつつ、なかでも運動が“第一選択”だと繰り返した。アルコールは、がんのみならず認知症リスクにも悪影響が示唆されると慎重な姿勢を見せる。InfoMoney


2. 「数独よりダンス」が示す、脳が喜ぶ動き方

なぜ運動が脳に効くのか。アティア氏は、同じ動作の反復よりも「計画し、反応し、全身を協調させる」複合的課題がカギだと説明する。数独やクロスワードも意味はあるが、ダンスやラケットスポーツのように多面的な負荷を脳に与える活動のほうが、神経回路を広く使い、認知機能の維持に有利だという。InfoMoney


3. 科学は何を言っているか――最新レビューとガイドライン

アティア氏の主張は、近年のエビデンスとも大筋で合致する。2024年のランセット委員会は、14の修正可能な危険因子に取り組むことで、世界の認知症の約45%が理論上は予防可能と整理。危険因子には身体不活動、難聴、高血圧、糖尿病、社会的孤立、過度の飲酒、外傷などが含まれる。ランセット


世界保健機関(WHO)のガイドラインも、身体活動を含む生活習慣介入にエビデンスがあるとし、リスク低減の一環として強く推奨している。世界保健機関


一方で、効果量の評価には幅があり、JAMA Network Openのメタ解析などは「身体活動と認知機能低下の関連は小さめで、用量反応も明確ではない」と冷静に記述する。観察研究の性質上、因果推論に限界がある点にも留意したい。JAMA Network


それでも、総体として「動けば脳に良い」方向性は揺らいでいない。2025年の研究では、中強度〜高強度の身体活動(MVPA)が30分増えるごとに全原因性認知症リスクが統計的に低下する関連が示された。認知症の一次予防において“続けられる活動量を日々積む”価値は高い。ジャムダ


4. SNSは何を盛り上げたか――反響の3ポイント

今回の発言は、現地メディア経由でSNSにも拡散。以下の論点が特に議論を呼んだ。

  • 「数独よりダンス」論への驚きと賛同
    ブラジルの主要紙がX(旧Twitter)やThreads、Facebookで記事を展開。コメント欄では「ダンスを再開する動機になった」「ラケット競技を始めたい」といったポジティブ反応が目立つ一方、「有酸素の地道な継続こそ重要では」との異論も。X (formerly Twitter)

  • “2g/体重kgのタンパク質”発言への賛否
    摂取目標が高いとの指摘と、「忙しい日はサプリで補う」という実用論が交錯。食事ベースを推奨しつつ、旅行や多忙時のみサプリで補うという本人のスタンスも共有された。InfoMoney

  • アルコールの扱いを巡る議論
    「少量はOK」派と「リスクを考えて控えるべき」派がぶつかる構図。氏が“認知症リスクへの悪影響”を強調した点が、飲酒文化の強い地域で反響を呼んだ。InfoMoney

また、著名医やフィットネス系アカウントが「運動は脳の味方」とする短尺動画やリールで同趣旨を発信し、一般層への波及を後押しした。Instagram


5. 今日からできる“脳を守る”運動デザイン

① 週合計150分のMVPAを柱に
早歩き・自転車・水中運動など中強度中心でOK。細切れ(10〜15分×複数回)でも合算される。余力があれば心拍を一段上げる高強度インターバルを週1〜2回。(関連:MVPAと認知症リスクの関連)ジャムダ


② 「計画・反応・全身協応」を伴う種目をミックス
ダンス、卓球・テニスなどのラケット競技、バドミントン、バスケのスキルドリルなど。単調な反復だけでなく、空間認識・タイミング・意思決定を同時に使う。InfoMoney


③ レジスタンス(筋トレ)を週2回
スクワット、ヒップヒンジ、プッシュ、プル、キャリー(持ち運び)の5大基本動作を中心に。筋量は血糖管理や転倒予防に直結し、結果的に脳リスクを下げる基盤になるという考え方だ。InfoMoney


④ 回復の質を高める
睡眠の最適化、血圧・脂質・血糖のチェック、飲酒は控えめに。頭部外傷の可能性があるスポーツでは適切な防具と技術習得を。InfoMoney


6. 注意点:科学と実務の“ちょうどよい距離”

身体活動が認知症の“万能薬”というわけではない。効果量は小さいとするレビューもあり、観察研究の限界や交絡の可能性も残る。だからこそ、運動は睡眠・血圧・代謝・聴力・社会参加・飲酒コントロールといった多面的対策の中核として位置づけ、継続可能性を最大化することが大切だ。JAMA Network


7. 結論――“動く”ことは、最良の長期投資

アティア氏のメッセージは端的だ。「予防の主役は運動」。そして科学はその方向性を支持しつつ、行動変容の現実解(続けられること)を私たちに求めている。数独を否定する必要はない。そこにダンスやラケット競技、協応性の高い動きを一さじ加える――それが、今日からできる脳の長寿戦略である。InfoMoney


参考記事

運動は認知症予防に最適な手段、長寿の専門家が語る
出典: https://www.infomoney.com.br/saude/exercicio-fisico-e-melhor-ferramenta-para-prevenir-demencia-diz-guru-da-longevidade/