薬剤師の信頼が未来の医療を変える?米国調査で84%が薬局を信頼できる医療の情報源に ― 日本でも見直したい薬剤師との関係

薬剤師の信頼が未来の医療を変える?米国調査で84%が薬局を信頼できる医療の情報源に ― 日本でも見直したい薬剤師との関係

薬を受け取るだけではもったいない――「相談できる薬剤師」がいる安心

病院を出てから、聞きたかったことを思い出す。

「この薬について、もう少し説明してほしかった」

「別の病院でもらった薬のことを、伝え忘れた」

「飲み続けるのが難しいけれど、誰に相談すればいいのだろう」

診察中にはうまく言葉にならなかった疑問が、帰り道や自宅で浮かぶことがある。そんなとき、相談先の一つとして思い出したいのが薬剤師だ。

米CVS Healthが発信し、2026年11月4日付でACCESS Newswireを通じて配信された記事は、薬剤師との信頼関係を、医療を支える重要な関係の一つとして取り上げている。

中心にあるのは、薬を渡す瞬間だけでは見えにくい仕事だ。疑問を聞き、困り事を整理し、患者が治療内容を理解する手助けをする。薬局のカウンターには、そうした対話の入り口がある。


「84%が信頼」の数字は、何を意味するのか

元記事で目を引くのは、米国成人の84%が薬局を信頼できる医療の情報源と捉えている、という数字だ。

この数字を読むときは、調査の背景も押さえておきたい。出典となる「2025 Rx Report」の調査は、CVS Healthの依頼を受けてMorning Consultが実施したもの。調査期間は2025年6月24日から7月1日で、米国の18歳以上の消費者2,207人に加え、薬剤師996人、薬局技術者72人が対象となっている。

同社の発表には、地元の薬剤師を信頼している成人が77%という別の数字もある。「薬局という場への評価」と「身近な薬剤師への信頼」は、区別して読む必要がある。

また、元記事は独立した報道機関による検証記事ではなく、CVS Health自身の企業発信だ。薬剤師の役割を広く知ってもらうと同時に、同社の事業の価値を伝える性格も持つ。

だからといって、数字に意味がないわけではない。ただし、「日本人も同じ割合で信頼している」「薬剤師を信頼すれば必ず健康状態が改善する」とまでは言えない。

この調査から考えたいのは、信頼の高さを競うことよりも、なぜ人は薬局に相談先としての価値を感じるのか、という点だ。


診察が終わっても、患者の疑問は終わらない

医療者から説明を受けたときには、理解できたと思っていた。それでも、毎日の生活に戻ると新しい疑問が生まれる。

例えば、仕事の時間が不規則で、指示された飲み方を生活に組み込みにくい。複数の病院に通っていて、薬の情報をどう伝えればよいか迷う。薬が余っているが、そのことを言い出しづらい。

こうした問題は、薬の名前や用量が分かるだけでは解決しない。実際の暮らしの中で何に困っているかを、言葉にする必要がある。

CVS Healthの記事が強調しているのも、この日常的な会話の価値だ。薬剤師は、処方薬への疑問、市販薬との関係、慢性的な病気に伴う服薬の悩みなどについて、患者の理解を支える存在として描かれている。

日本でも、厚生労働省の資料では、かかりつけ薬局・薬剤師の役割として、市販薬を含む薬の重複や飲み合わせ、副作用の確認、相談対応、必要に応じた医師への問い合わせや受診の勧めを挙げている。

「こんなことを聞いてよいのだろう」と考えている疑問こそ、まず言葉にしてみる価値がある。


信頼とは、困ったことを隠さず話せること

薬剤師との良い関係は、説明を黙って聞き、毎回「分かりました」と答えることだけではない。

むしろ、「実はよく分かっていません」「飲めていない日があります」「説明された方法だと続けにくいです」と言えるかどうかが大切ではないだろうか。

ここからは、元記事の問題提起を日本の日常に引き寄せて考えてみたい。

患者が相談をためらう理由には、知識不足だけでなく、遠慮もある。「忙しそうだから」「前にも聞いたから」「きちんと飲めていないと怒られそうだから」。そんな気持ちが、会話を止めてしまうことがある。

しかし、困り事を伝えなければ、相手は困っていること自体を知ることができない。

信頼できる相談先の価値は、いつも安心する答えを返してくれることではない。分からないことを一緒に整理し、必要なら別の医療者につなぎ、確認が必要な点を曖昧にしないことにある。

薬局での会話を「説明を受ける時間」から「自分の状況を伝える時間」へ少し広げる。その小さな変化が、相談のしやすさを変えるかもしれない。


SNSに見える感謝――「忙しい中、ありがとう」の重み

薬剤師への信頼を考えるうえで、SNS上の体験談も示唆を与えてくれる。

 

ただし、以下は今回のCVS Healthの記事への直接の反応ではない。薬剤師との関係や薬局の仕事をめぐる、関連する公開投稿だ。また、匿名投稿の内容や投稿者の立場を独立に確認したものではなく、社会全体の傾向を示す調査でもない。

2024年3月22日、Redditの薬局関連コミュニティ「r/WalgreensRx」には、利用者が薬剤師に感謝を伝えた体験が投稿された。

投稿者によると、薬の容器のふたを求めて来店した際、店内は忙しく、待つことになった。対応した薬剤師に、忙しい様子が分かることと、助けてくれたことへの感謝を伝えると、薬剤師は目を潤ませ、人手が足りず疲れていると話したという。

返信には、忙しい店舗で働く実習生を名乗る人から、日々の仕事を理解してくれる患者の言葉が支えになる、という趣旨の声も寄せられている。

このやり取りには、薬局の価値を考える二つの視点がある。

一つは、小さな対応でも、患者にとっては助けになるということ。もう一つは、その対応を続ける専門職にも、余裕や支えが必要だということだ。

信頼は患者が一方的に受け取るものではなく、対話の中で育つ。ただし、現場の人手不足を患者の感謝で解決できるわけではない。温かなエピソードとして受け止めるだけでなく、十分に話を聞ける環境についても考えたい。


「頼れる薬剤師」を、個人の頑張りだけに任せない

元記事が描く、気軽に相談できる薬剤師像は魅力的だ。しかし、相談がしやすい薬局をつくるには、専門知識だけでなく、時間と環境も必要になる。

患者の側からすると、カウンターに薬剤師がいることと、落ち着いて相談できることは同じではない。後ろに長い列ができていれば、話を切り上げたくなる。周囲に会話が聞こえそうなら、相談をためらうこともあるだろう。

これは、個々の薬剤師の親切さだけで解決する問題ではない。

相談内容に応じて時間を確保できるか。プライバシーに配慮できるか。複雑な問題を一人で抱え込まず、医師や他の職種と連携できるか。こうした条件も、患者が感じる信頼を支えるはずだ。

企業が「薬剤師は頼れる存在」と発信するなら、その役割を果たせる働き方や体制も、同じように問われる。

薬剤師の価値を認めることと、現場にさらなる負担を求めることを、混同してはいけない。


日本で役立つ第一歩は、お薬手帳を「会話の道具」にすること

日本の読者が取り入れやすいのは、お薬手帳を相談に活用することだ。

政府広報オンラインは、お薬手帳について、服用薬やアレルギー、副作用の経験などを医師・薬剤師に正確に伝えるための道具として紹介している。医療機関や薬局を利用するときに提示することが、基本的な使い方となる。

ここで意識したいのは、記録を見せるだけで会話を終わらせないことだ。

例えば、次のような一言を添えてみる。

  • 「別の病院でも薬をもらっています。一緒に確認してもらえますか」
  • 「市販薬も使っています。名前を伝えたいです」
  • 「飲み方について、もう一度説明してもらえますか」
  • 「薬が余っています。どう相談すればよいですか」
  • 「人前では話しにくい内容なのですが、相談できますか」

難しい医学用語を使う必要はない。「何が起きているか」「何が分からないか」が伝わる言葉でよい。

厚生労働省の資料も、薬が余った場合は医師や薬剤師に相談し、自分の判断で服用を中断しないよう呼びかけている。困ったときに薬を自己調整するのではなく、まず状況を共有することが大切だ。


デジタル化しても、「質問できる相手」は必要だ

薬の情報を扱う方法も変わっている。

厚生労働省は、電子版お薬手帳を、スマートフォンで服用歴などを管理し、医師や薬剤師と共有するためのツールとして紹介している。サービスによっては、薬剤師とのチャットや、マイナポータルと連携した薬剤情報の取得などの機能もある。

記録を持ち運びやすくなり、情報を共有する手段が増えることには意味がある。その一方で、記録がそろっていることと、本人の疑問が解けていることは別だ。

薬の一覧に、患者が言い出せずにいる不安まで自動的に記載されるわけではない。便利な仕組みがあっても、「この点が心配です」と伝えられる相手は必要になる。

今後の薬局を考えるなら、デジタルか対面かという二択よりも、必要なときに質問でき、必要な情報を共有できるかという視点が役に立つ。

道具が進化するほど、その情報を使ってどんな会話ができるのかが問われる。


次に薬局へ行くとき、一つだけ疑問を持っていく

CVS Healthの記事が日本の読者にも投げかけるのは、身近な薬局をどう利用しているかという問いだ。

薬を受け取り、会計を済ませ、帰る。その流れの中で、「本当は少し聞きたかったこと」が置き去りになっていないだろうか。

もちろん、薬局ですべてが解決するわけではない。薬剤師への相談が、診察や検査の代わりになるわけでもない。それでも、薬について困ったときに、まず状況を伝えられる専門家がいることには意味がある。

次に薬局へ行くときは、一つだけ、気になっていることを言葉にしてみたい。

「この薬のことで、確認したいことがあります」

その一言から、いつもの薬局が、自分の治療について話せる場所に変わるかもしれない。


出典・参考資料

  1. FinanzNachrichten掲載/ACCESS Newswire配信:CVS Health「Why Trusted Pharmacists Remain One of Health Care’s Most Important Relationships」
    2026年11月4日付の企業発信。薬剤師との信頼関係、服薬相談、慢性疾患への支援などについて。
    https://www.finanznachrichten.de/nachrichten-2026-11/70036435-cvs-health-why-trusted-pharmacists-remain-one-of-health-care-s-most-important-relationships-200.htm

  2. CVS Health「2025 Rx Report」発表記事
    米国成人の84%が薬局を信頼できる医療の情報源と評価し、77%が地元の薬剤師を信頼するとした調査結果。2025年10月14日公開。
    https://www.cvshealth.com/news/pharmacy/cvs-health-2025-rx-report-highlights-transformation-of-community-pharmacy.html

  3. CVS Health「The Rx Report: Community Pharmacy Reimagined」報告書
    Morning Consultによる調査の実施期間、消費者・薬剤師・薬局技術者の対象人数などの確認資料。
    https://www.cvshealth.com/content/dam/enterprise/cvs-enterprise/images/campaigns/rx-report-2025/CVS-2025-Rx-Report.pdf

  4. Reddit「I made a pharmacist cry. In a good way.」
    2024年3月22日の利用者の体験談と返信。薬剤師への感謝や、多忙な現場への共感を紹介するために参照。今回の元記事への直接の反応ではない。
    https://www.reddit.com/r/WalgreensRx/comments/1bl4hx1/

  5. 厚生労働省「全国高齢者医療・国民健康保険主管課(部)長及び後期高齢者医療広域連合事務局長会議」参考資料
    資料中の「お薬相談のかかり方通知」などを参照。かかりつけ薬局・薬剤師の役割、飲み合わせの確認、残薬の相談、自己判断による服用中断を避けることについて。
    https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001241645.pdf

  6. 政府広報オンライン「知っておきたい 薬のリスクと、正しい使い方」
    お薬手帳に記録する情報と、医師・薬剤師への提示方法について。
    https://www.gov-online.go.jp/article/201310/entry-8822.html

  7. 厚生労働省「電子版お薬手帳」
    電子版お薬手帳の概要、健康情報の共有、薬剤師とのコミュニケーション機能などについて。
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/e-okusuritecho.html