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ネコは本当に幸せ? “可愛い”だけでは守れない - 猫の感情を誤解したままにしないための科学

ネコは本当に幸せ? “可愛い”だけでは守れない - 猫の感情を誤解したままにしないための科学

2025年12月05日 09:23

「幸せそうな猫」は、本当に幸せなのか

スマホを開けば、タイムラインには猫の写真と動画があふれている。
お腹を見せて転がる子、窓辺で黄昏れる子、庭をパトロールする子……。


私たちはそれらを見て「楽しそう」「退屈してそう」「不満げ」などと、当然のように感情を読み取っている。

しかし、その“読み取り”は、猫自身の表情よりも私たち人間の気分や先入観に強く左右されているかもしれない。


2025年12月に発表されたオレゴン州立大学の研究は、まさにこの点に切り込んだ。室内と屋外というたった一枚の背景の違いが、同じ猫を「幸せそう」と見るか「不安そう」と見るかを変えてしまうことを示したのだPhys.org。



実験の中身:12匹の猫と665人の「見え方」

研究チームは、12匹の猫の写真にAI生成の背景を合成し、「室内版」と「屋外版」の2パターンを用意した。被験者は18〜60代の665人。約6割が25〜34歳、7割が女性で、約7割は猫を飼った経験があったというPhys.org。


参加者は24枚の画像を見せられ、それぞれについて

  • 猫がどんな感情状態にあるか(ポジティブ/ネガティブ、落ち着き/興奮 など)

  • 画像を見た自分自身の感情

を評価した。


結果をざっくりまとめると、次のようになるPhys.org。

  1. 室内背景の猫は、屋外背景よりも一貫して「ポジティブ」だと評価された。

  2. 屋外背景は、猫が「より興奮している」「落ち着きがない」と見なされやすかった。

  3. 猫を外に出すことに賛成か反対かにかかわらず、どちらの立場の人も室内の猫をより幸せそうに見ていた。

  4. 画像を見ている人がその瞬間に感じている感情が、猫の感情評価に強く連動していた。

  5. さらに意外なことに、黒猫はキジトラや茶トラよりも「ポジティブな感情を持っている」と受け止められる傾向があった。


つまり、猫の写真を見て「この子は幸せ」「この子は不安そう」と判断しているつもりでも、それは猫の表情や行動だけでなく、「室内か屋外か」「毛色は何色か」「今、自分はどんな気分か」といった余計な要素に強く引っ張られているのだ。



私たちの気分フィルターが、猫の感情を上書きする

研究で特に重要なのは、「見る側の感情」と猫の感情評価がほぼセットで動いていた点だ。


同じ猫の写真を別のタイミングで見るとき、以前にその猫の写真で“自分がポジティブな気分になったかどうか”が、再度その猫を見たときの評価に影響していたというPhys.org。


これは人間同士でもよく知られた現象だ。心理学の研究では、私たちは自分の感情状態を外の対象に投影し、「相手もそう感じているに違いない」と思い込みやすいことが指摘されているPMC。


猫とのコミュニケーションでも同じことが起きている可能性が高い。

  • 飼い主が幸せな気分で猫を眺めると、「うちの子も幸せそう」と感じやすい

  • 逆に気分が落ちているときは、猫の何気ない表情も「つまらなそう」「ストレスたまってそう」とネガティブに見えてしまう

猫の感情が私たちの心を動かしているだけでなく、**私たちの心が猫の感情を“見たことにしてしまう”**のだ。



黒猫は「不吉」どころか、むしろポジティブ?

もうひとつ興味深いのが「毛色」の効果だ。
この研究では、写真の中の黒猫は、茶トラやキジトラよりも「よりポジティブな感情状態にある」と評価されやすかったPhys.org。


黒猫といえば、欧米の一部では「不吉」「縁起が悪い」といった迷信が根強い。過去の調査でも、黒猫は里親が見つかりにくい・SNSでの反応が弱いといった“ブラック・キャット・バイアス”が報告されているSAGE Journals。


それにもかかわらず、今回の実験では黒猫が「より幸せそう」に見えた。
背景がAI合成で均されていることや、参加者の年齢層・文化背景が影響している可能性もあるが、「若い世代を中心に黒猫のイメージが変化しつつあるのでは」という見方もできる。


SNSを見ると、黒猫の写真に「影のようについてくる可愛さ」「真っ黒で表情が読めないのが逆にツボ」といった愛情表現が並ぶことは珍しくない。
黒猫の“再評価”は、科学だけでなくネット文化ともリンクして進んでいるのかもしれない。



SNSのリアクション:共感と葛藤と、保護猫界隈の熱狂

このニュースは公開からまだ日が浅いが、関連する記事や大学のプレスリリースがX(旧Twitter)やFacebookでシェアされ、徐々に反応が集まり始めている。加えて、これまでの「猫の感情」や「室内飼い」をテーマにしたスレッドの雰囲気を踏まえると、おおむね次のような声が目立つ。


1. 「やっぱり人間側の問題だったんだ」派

猫飼いのユーザーからは、

  • 「うちの猫が窓際でボーッとしてるだけで“退屈してる”って決めつけてたかも」

  • 「気分が落ちている日は、猫も不機嫌そうに見えるの、単に自分の投影だったんだ…」

といった、自分のバイアスに気づかされたという反応が多い。


実際、ペット動画に寄せられるコメントを大量に分析した研究でも、視聴者は猫の行動よりも“自分がどう感じたか”を前面に出して語る傾向が報告されているBES Journals。


「かわいすぎて泣いた」「今日一日の疲れが吹き飛んだ」といった言葉は、猫の感情というより、見る側の感情そのものだ。


2. 「外に出す自由まで奪うな」派

一方で、完全室内飼いを推奨する流れに対する抵抗感もくすぶっている。

  • 「室内の猫が幸せそうに見えるからって、外で遊ぶ時間をゼロにしていいとは限らない」

  • 「猫本来の行動欲求を満たせる環境づくりこそ大事でしょ」

といったコメントだ。


今回の研究でも、屋外自由行動に賛成する人たちでさえ、写真になると室内の猫をよりポジティブに評価していたPhys.org。


つまり、「頭では“外も必要”と思っていても、写真や広告になると“室内のほうが安心で良さそう”と感じてしまう」ねじれがある。
SNSでは、このギャップをどう埋めるかをめぐって、屋外派と室内派の議論が続いている。


3. 保護猫・シェルター関係者のポジティブな受け止め

もっとも強く反応しているのは、保護団体やシェルター職員、フォスター(預かりボランティア)たちだ。

  • 「里親募集の写真は、やっぱり室内風景を背景にした方がいいという科学的裏付けが出た」

  • 「黒猫のポジティブ評価はうれしいニュース。撮り方次第で“売れ残り”を減らせるかも」

といった声が多く、さっそく「背景を木々からリビングに変えた募集ポスター」を試す団体も出てきているという。


実際、SNS上のペット里親募集では、背景や構図によってエンゲージメントに大きな差が出ることが報告されておりSemantic Scholar、今回の研究はその“なぜ”に科学的根拠を与えた形だ。



誤解がもたらす福祉上のリスク

「どう見えるか」が「どう扱うか」に直結するのが、動物福祉の難しさだ。

過去の研究では、猫の痛みやストレスサインが見逃されやすく、獣医師でさえ評価が分かれることが示されているPhys.org。


それに加え、今回のように見る側の感情や写真の文脈が評価をねじ曲げてしまうと、例えば次のような事態が起こりうる。

  • 室内で撮られた写真だからといって「この子は幸せに暮らしているに違いない」と思い込み、実際のストレスサイン(粗相、過度なグルーミングなど)に気づくのが遅れる。

  • 黒猫の写真がポジティブに見えやすいことで、「ちょっと太りすぎ」「動きが鈍い」といった健康リスクを軽視してしまう。

  • 逆に、「外にいる猫は危険でかわいそうだ」というイメージだけで、地域猫や外で生活する猫に対し、一律に敵対的な感情を向けてしまう。

「猫の感情を正しく読む」ことは、単なる好奇心の問題ではない。


誤読が、そのまま猫の暮らしや生死に関わる決定へとつながってしまうのだ。



科学はどこまで「猫の気持ち」を読めるのか

ここで気をつけたいのは、「人間が猫の感情を読めない」という話ではないという点だ。

猫の表情や仕草から感情状態を見抜く力には個人差があり、一部の人はかなり高い精度で読み取れるという研究もあるCambridge University Press & Assessment。


また、短いトレーニング動画を見ることで、多くの人が猫の表情やボディランゲージの読み取りを上達させられるという報告も出てきているFrontiers。


つまり、

  • 猫の感情を読むことは難しいが、

  • 学習と意識の持ち方次第で、かなり改善できる

というのが、今のところの科学的コンセンサスだ。


今回の「文脈の影響」を示した研究は、その上で「どんなバイアスが私たちの読み取りを邪魔しているのか」を明らかにした、と言える。



私たちにできる3つの実践ポイント

では、猫の写真や日々の仕草から感情を推測するとき、どんな点に気をつければよいのだろうか。
今回の研究や関連文献を踏まえ、すぐに試せるポイントを3つに絞ってみる。


1. まず「自分の気分」をチェックする

猫の表情を見る前に、「今の自分はどんな気分か?」を一瞬考えてみる。
疲れている、イライラしている、落ち込んでいる──その状態だと、猫もネガティブに見えやすい。
逆にハイテンションなときは、猫の微妙なストレスサインを見逃しやすい。


「自分のフィルターがかかっているかも」と意識するだけでも、評価の精度はぐっと上がる。


2. 背景より「全身のサイン」を優先する

写真や動画を見るとき、背景や雰囲気よりも、

  • 耳の向き

  • ひげの張り具合

  • しっぽの位置

  • 体の緊張・脱力

など、猫の身体そのもののサインに注目する習慣をつけよう。
これは獣医行動学の分野でも繰り返し強調されているポイントだMDPI。


SNSに投稿する側も、「おしゃれな背景」より「猫の仕草が分かりやすい構図」を優先すると、見る人が変なバイアスに惑わされにくくなる。


3. 不安になったら、SNSではなく専門家へ

「なんだか元気がない気がする」「表情が硬いような…」と感じたとき、SNSで“エモい”解釈を求めるのではなく、
まずはかかりつけの獣医師や、信頼できる動物行動学の情報源に相談するのがベストだ。


ネット上では「うちもそうだけど大丈夫だよ」「猫は気まぐれだから」といった安心させるコメントが集まりがちだが、
それが本当に大丈夫なケースなのか、病気のサインを見落としているのかは、素人には判断しづらい。



画像一枚が、猫の未来を変えるかもしれない

今回の研究がもうひとつ示唆しているのは、「1枚の写真が猫の人生(猫生)を左右しうる」という現実だ。

  • 里親募集サイトのトップに掲載される写真

  • シェルターのポスター

  • 地域猫の啓発チラシ


これらの画像が、室内風景か屋外風景か、暗い路地か明るいリビングかによって、見る人が抱く感情は大きく変わる。
特に保護猫の場合、「幸せそうに見えるかどうか」が里親の申し込み数を左右することが、SNS上のデータ解析からも示され始めているSemantic Scholar。


研究代表者のモニーク・ユーデル氏は、「私たちが猫の感情をどう認識するかは、最終的にその猫の福祉に直結する」と強調するPhys.org。
感情の読み違いが、飼育放棄やシェルター行き、さらには安楽死にまでつながるケースもあるからだ。



「猫の気持ち」を巡る物語を、少しだけアップデートしよう

SNS時代の私たちは、これまでになく多くの猫たちを見ている。
しかし、そのたびに発動する“人間の感情フィルター”を意識しなければ、
どれだけ科学が進んでも、猫の本当の感情には近づけないのかもしれない。


室内か屋外か、黒猫か茶トラか──そうしたラベルに引きずられず、
目の前の猫の身体サインと長期的な行動パターンをじっくり観察すること。
そして、自分の感情が猫の評価に混ざり込んでいないか、時々立ち止まって確かめること。


それは、猫の福祉を守るだけでなく、
「この子はきっとこう思っているに違いない」と決めつけがちな
私たち人間同士の関係にも、静かな変化をもたらしてくれるはずだ。



参考記事

研究によると、人間の感情が猫の感情や幸福についての信念に影響を与えることが示されています。
出典: https://phys.org/news/2025-12-human-beliefs-cat-emotions.html

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