年末年始の“胃と心”を整える:韓国ヴィーガンの「白菜テンジャンスープ」が沁みる理由

年末年始の“胃と心”を整える:韓国ヴィーガンの「白菜テンジャンスープ」が沁みる理由

「もう、濃い味はしばらくいいかも」――年末年始のごちそうが続くと、体が自然に“軽い温かさ”を求める。バターやチーズの余韻が残る胃に、でも冷えた体には湯気が必要。そんな矛盾をすっと解いてくれる一杯として、米ワシントン・ポストが紹介したのが、韓国の家庭で親しまれてきた**Baechu Doenjang Guk(白菜テンジャンスープ)**だ。 The Washington Post


「癒やし」は、栄養だけじゃない

この記事が面白いのは、スープを“健康食”としてだけ扱っていないところにある。レシピの出どころは、SNSでも人気の料理家・作家、“The Korean Vegan(韓国ヴィーガン)”ことジョアン・リー・モリナロの新刊『The Korean Vegan: Homemade』。紹介文では、白菜テンジャンスープが「体だけでなく心も落ち着かせる」食べものとして語られる。 The Washington Post


モリナロがこのスープを作るようになったきっかけは、かなり現実的だ。本人いわく当時、胃の不調があり、「胃にはキャベツがよい」と読んでキャベツ料理を増やしていたという。そこで思い出したのが、韓国でおなじみの「キャベツ(白菜)×テンジャン」の組み合わせ。さらに彼女の中では“スープとシチューの境界線”の会話が重なり、たんぱく質は控えめで、胃にやさしい“スープ寄り”に着地させたThe Washington Post


白菜に変えた瞬間、「生き返った」

レシピは当初、普通のグリーンキャベツで作っていたが、途中から**白菜(napa cabbage)**へ。ここが象徴的で、「普通のキャベツでも悪くない。でも白菜にしたら“生き返った”」という言葉が紹介される。韓国の食卓にとって白菜はキムチだけでなく、スープや鍋の“土台”でもある。食感が柔らかく、火の入り方が穏やかで、出汁を吸っても重くなりにくい。だからこそ“整う”一杯に向くのだろう。 The Washington Post


テンジャンは「味噌っぽい」けど、別物として愛される

テンジャン(doenjang)は発酵大豆ペースト。記事でも「日本の味噌に似ているが、より旨味が強く、香りもパンチがある」と説明される。 The Washington Post


一方でモリナロ自身は、自身のサイトで「テンジャンチゲを“Korean miso soup”と呼ぶのはおすすめしない」と、文化的なニュアンスも含めて釘を刺す。似ているからこそ雑に一括りにされがちで、そこに“呼び名”の違和感が生まれる――このあたりは、発酵食品が世界で広がるいま、料理好きほど刺さるポイントだ。 The Korean Vegan


たった35分、9つの材料で「深い」

このスープが“現代向き”なのは、忙しい平日にも成立するスピード感にある。ワシントン・ポストは、材料9つ/約35分で完成し、テンジャンの“長期発酵”が短時間でも味の奥行きを作る、と紹介している。 The Washington Post


実際のレシピ(同紙のレシピページ)では、油はオリーブ油とごま油を少量、具はしいたけ・玉ねぎ・白菜・絹ごし豆腐。鍋で香りを立て、テンジャンを絡め、野菜ブロスでのばして煮る。仕上げに白菜と豆腐を入れ、白菜が“柔らかいけどクタクタではない”ところで止める――ここがキモだ。 The Washington Post


さらに親切なのが「代替案」。白菜は“他のキャベツでもOK”、テンジャンは“味噌でも代用可”とされる。発酵の香りにビビっても、まずは家にある味噌で試して“方向性”を掴める設計だ。 The Washington Post


栄養は軽やか、でも満足はある

このレシピの栄養情報(推定)では、1人分(2カップ)で149kcal・たんぱく質9g。豆腐が主役級に効いている。塩分は485mgとされ、やさしめの味付けをベースに、最後にテンジャンや醤油で微調整するスタイル。 “軽いのに満ちる”の正体は、発酵の旨味と豆腐のたんぱく質の組み合わせなのだと思う。 The Washington Post


SNSの反応:共感ポイントは「癒やし」「発酵」「アレンジ耐性」

では、SNSではどう受け止められているのか。まず“反応”として分かりやすいのが、同紙レシピページのレビュー欄。公開されている範囲では評価が付き、少なくとも「作ってみた人がいる」ことが見て取れる。 The Washington Post
(※個別コメント本文までは、環境によって閲覧できない場合があるため、ここでは評価の存在に留める。)


一方、より広い意味でのSNS的な盛り上がりは、「白菜テンジャンスープ/テンジャンのスープ」そのものに集まっている。たとえばRedditの韓国料理コミュニティでは、テンジャンのスープにほうれん草やスイスチャード、白菜を入れるのが好き、という声があり、“青菜や葉物で季節対応する”発想が共有されている。 Reddit


Facebookの料理系グループでも、テンジャン系スープについて「レシピがほしい」「(肉を)足す」など、家庭の定番としての会話が起こっている(投稿の一部が検索結果として確認できる)。 Facebook


Instagramでも、モリナロの新刊掲載レシピの手順・材料に触れた投稿が見つかり、“作ってみた/作る予定”の共有が回っている様子がうかがえる。 Instagram


この反応の方向性は、モリナロ本人が語る「ヴィーガンコミュニティは新しい食材(発酵の香りなど)に前向きで、テンジャンチゲを繰り返し作ってくれる人が多い」という実感とも重なる。 The Korean Vegan


つまりSNS的に刺さっているのは、次の3点だ。

  • “整う”物語性:胃の不調や気分の落ち込みに寄り添う「こういう時の一杯」 The Washington Post

  • 発酵のワープ感:煮込み時間が短くても、テンジャンが味を“完成させる” The Washington Post

  • アレンジ耐性:白菜→別キャベツ、テンジャン→味噌、ブロスの種類変更など、家庭に寄せられる The Washington Post

“料理動画”を超えて広がった人

モリナロが支持される背景には、レシピだけでなく「語り」がある。シカゴ・サンタイムズの取材では、彼女が当初は法律家としてのキャリアを歩みつつ、SNSはヴィーガンへの転向を記録する目的だったこと、そして転機は“作り方”よりも“自分の物語”を語り始めた時だったと紹介されている。彼女は当時「Instagramのフォロワーが1万人くらいだった」と振り返り、家族や移民家庭の経験などを短い物語として投稿し始めたという。 Chicago Sun-Times


今回の白菜テンジャンスープも、その延長線上にある。「おいしい」だけでなく「帰る場所がある味」が人を動かす。


今日の結論:年末の“ごちそう疲れ”に、発酵のやさしさを

白菜テンジャンスープは、豪華さとは逆方向の魅力で勝負している。材料は少ない。工程も短い。なのに、発酵の奥行きと、白菜・豆腐のやさしさで、食後に“軽くなる”。そして、作った人がそれぞれの台所事情に合わせて、青菜を足したり、味噌で代用したり、ブロスを変えたりして、自分の定番にしていく。 The Washington Post


寒い夜に、まずは鍋を出す。しいたけと玉ねぎをごま油で温め、テンジャンを溶かし、白菜を入れる。湯気の中に、発酵の香りが立つ。――それだけで、年末の情報量の多さから少し降りられる気がする。そんな「心のスープ」を、この記事は静かにすすめている。 The Washington Post


参考記事

コラム | 心と体を癒す、手軽で心地よいキャベツスープ - ワシントン・ポスト
出典: https://www.washingtonpost.com/food/2025/12/29/cabbage-doenjang-soup-korean-vegan/