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不況の波で揺れる自動車業界:月々11万円のローンはもう無理? アメリカ人が新車から離れていく日

不況の波で揺れる自動車業界:月々11万円のローンはもう無理? アメリカ人が新車から離れていく日

2025年12月04日 08:36

1. 「売れない」ではなく「買えない」時代へ

アメリカの車好きメディア・Jalopnikの朝刊コラム「The Morning Shift」は、2025年12月2日の記事でこんな見出しを掲げた。
「A Crummy Economy Is Seriously Sinking Car Sales」――“しょぼい景気”が自動車販売を沈めている。Jalopnik


記事によれば、Cox Automotiveがまとめた2025年11月のデータでは、米国の新車販売は前月比1%減、前年同月比では7.8%減と大きく落ち込んだ。一方でJDパワーの数字では減少幅は4.8%と若干小さいものの、「勢いを失っている」という点では一致している。Jalopnik


年初、Coxは2025年の新車販売が1,630万台に達し、2024年比で2〜3%の伸びになるという“穏やかな成長シナリオ”を描いていた。Jalopnik


しかし年末が近づく今、そのシナリオは明らかに崩れつつある。問題は「車が余っている」ことではなく、「家計に余裕がない」ことだ。



2. 平均価格5万ドル、ローン金利7%台の現実

ここ数年、アメリカの新車価格はじわじわどころか、かなりのスピードで上昇してきた。Jalopnikが引用するデータでは、新車の平均価格は5年前の約3万8,000ドルから現在は5万ドル超へ。Jalopnik


同時に、金利上昇が追い打ちをかける。2022年初頭に3.5%程度だった4年ローンの平均金利は、2024年には7.7%前後にまで跳ね上がったという試算もある。Northern Trust


ローン残高全体の伸びはわずか2.8%なのに対し、クレジットカード残高は10%以上増えている。Northern Trust


つまり、人々は「長期ローンで車を買う」より、「とりあえずカードで日々の出費をしのぐ」ことを選んでいるというわけだ。

Jalopnikは、月々の支払いが平均766ドル(約11万円)に達し、7年ローンが新車購入の“標準”になりつつある現状を指摘する。Jalopnik

「クルマは必需品のはずなのに、いまや高級時計みたいな“贅沢品”になってしまった」


ある30代の家族持ちドライバーは、SNSでこう嘆いている。
家賃、医療費、保険料、学費、そして食料品とエネルギー価格の高騰。新車購入はその中で「一番あと回しにできる大きな支出」になってしまった。



3. 関税と政策が踏み込んだ“もう一つのブレーキ”

価格を押し上げているのは、市場要因だけではない。J.P.モルガンの試算では、最近の関税政策により、自動車メーカーは年間410億ドル規模の関税コストを負担することになり、それが約3%の価格上昇要因になっているという。Jalopnik


たとえば韓国からの自動車や部品に対する米国の関税率は、25%という“懲罰的”水準から15%に引き下げられたものの、それでも依然として高い。Jalopnik


さらに将来的な安全保障関税の可能性をめぐっては、アメリカと韓国、日本、EUなど主要国の間で、綱引きが続いている。Jalopnik


この「関税ゲーム」に巻き込まれているのは企業だけではない。最終的に上乗せされたコストを支払うのは、ショールームでハンコを押す消費者だ。
デトロイトのあるディーラーは、業界紙の取材にこう話している。

「クルマの値札には、金利・保険料・税金・関税……全部が積み上がっている。お客さんは“車代”ではなく“システム代”を払わされていると感じている」



4. EVブームの「揺り戻し」と中国の逆襲

もう一つ見逃せないのが、EV(電気自動車)市場の揺れだ。アメリカでは、かつて新車販売の成長を牽引したEVが、いまや失速気味だと言われている。Jalopnikの記事は、7,500ドルのEV税控除終了が販売のブレーキになったと指摘する。Jalopnik


補助金があれば「ギリギリ手が届く」価格だったEVも、補助がなくなれば一気に射程外になる。既に住宅ローンや学費ローンに追われる中産階級にとって、環境に優しい選択をする余裕はそう多くない。


一方、中国ではまったく別のダイナミクスが働いている。EVへの急激なシフトでガソリン車の国内需要が縮小し、余ったガソリン車が新興国向けに大量輸出されているという調査もある。Reuters


中国メーカーは、これらの車を比較的安価に海外市場に投入し、東欧・中東・アフリカなどで存在感を高めている。

同じ中国でも、EVの雄BYDは直近3カ月の販売が前年割れとなる一方、テスラは中国市場で販売を伸ばしているとJalopnikは伝える。Jalopnik


ただし、その背景にはブランド疲労や価格競争だけでなく、中国政府によるEV業界への引き締めもある。補助金に頼った過当競争の見直しが進めば、世界のEV戦争の勢力図も変わっていくだろう。



5. ディーラーを揺るがした「1.6ビリオンドル事件」

Jalopnikの記事は、暗いニュースをもう一つ取り上げている。
米大統領が、推計16億ドル(約2,400億円)相当の投資詐欺事件に関わったとされる元投資ファンドCEOの刑期を短縮したという話だ。Jalopnik


このファンドは複数の自動車ディーラーを傘下に収めており、自動車ビジネスの世界とも浅からぬ縁を持っていた。被害者の多くは、将来の生活費や年金を託していた一般投資家とされる。Jalopnik


もちろん、すべてのディーラーや投資ファンドが不正を働いているわけではない。だが、
「車を売っていると思ったら、自分の人生そのものを担保に取られていた」
そんな感覚を抱いた人が増えれば、自動車ビジネス全体への信頼も揺らぐ。



6. SNSにあふれる、クルマと家計の「本音」

この“クルマ不況”を、普通の人たちはどう感じているのか。アメリカのSNSを眺めると、こんな声があふれている(いずれも要約・仮名)。

「ディーラーで見積もりを出してもらったら、月々800ドル。保険入れたら1,000ドル近い。
それなら今の10年落ちSUVをもう3年乗る。」

「新車の平均価格が5万ドル?俺の年収の半分じゃん。
車は“ステータス”じゃなくて“ストレス”になった。」

「EVが地球に優しいのはわかる。でも、今の電気代とローン金利を考えたら、
地球よりまず自分の財布を守らないと。」

ディーラー側からも悲鳴混じりの投稿が目立つ。

「在庫はある、値引きもしている。それでもお客さんが決断できない。
みんな“いつクビになるかわからない”って本気で心配している。」


景気指標としては、アメリカ経済はなお一定の成長を続けるという予測もある。たとえばグローバルデータは2024年の世界のライトビークル販売が前年比2%程度の成長になると見込んでおり、2025年の販売見通しも小幅ながらプラス成長だ。News Release Archive


しかし、家計の側から見れば、「数字に表れない疲れ」が蓄積しているのだろう。



7. 「車離れ」ではなく「買えなさ離れ」

自動車販売が落ち込むと、すぐに「若者の車離れ」という決まり文句が顔を出す。
だが、今回のアメリカの状況を見ると、より正確なのは「買えなさ離れ」だ。

・使えるお金は増えないどころか、インフレで目減りしている
・金利と保険料がじわじわ効いてくる
・車両価格は上がり、平均新車価格は5万ドル超
・中古車市場やカーシェア、ライドシェアの選択肢が広がっている


こうした条件がそろえば、「今すぐ新車に乗り換える必要ある?」と自問するのは自然な流れだろう。実際、アメリカでは中古車を選ぶ人が増え、より安いコンパクトSUVや小型車に乗り換える動きがはっきりと見え始めている。AIADA



8. 日本と世界への波紋

「アメリカの話でしょ?」と片付けるのは早い。
高金利と物価高、そして自動車価格の上昇は、程度の差こそあれ世界中で起きている。


Fitch Ratingsは、2024年の世界の乗用車販売は成長が鈍化しつつも、高金利と弱い景気の中で“なんとかプラス”を維持するという見通しを示した。yieh.com


一方、S&P Global Mobilityは2025年の世界ライトビークル販売を8,960万台と予測し、前年比1.7%増という慎重な数字を出している。News Release Archive


つまり、グローバルにはまだ「微増」だが、北米や西欧など成熟市場では成長のエンジンが止まりつつある、という構図だ。automotivelogistics.media


日本も例外ではない。円安と資源高で車両価格は上昇し、新車よりも中古車や軽自動車に人気が集まる傾向は既に見えている。
加えて、中国メーカーによる低価格EVやガソリン車の輸出攻勢は、日本メーカーにとってもプレッシャーとなる。Reuters



9. それでもクルマは「移動の自由」の象徴であり続ける

暗い話ばかり続けてきたが、クルマそのものの価値が消えたわけではない。
むしろ、不況や高金利の時代だからこそ、「本当に必要な移動手段としてのクルマ」「長く付き合える一台」が再評価される余地がある。

・ライフスタイルに合ったサイズのクルマを選ぶ
・中古車や認定中古車をうまく活用する
・ローン期間と利率をシビアに比較する
・カーシェアやサブスクと組み合わせて“持ち方”を変える


こうした工夫は、日本に住む私たちにとっても他人事ではない。
Jalopnikの辛口なコラムが描き出したのは、単なるアメリカ自動車業界の不調ではなく、「移動の自由」を維持することすら難しくなりつつある、家計と経済の現実だった。


「クルマは欲しい、でも買えない」――そのギャップをどう埋めていくか。
自動車メーカー、金融機関、政府、そして私たち一人ひとりが、これから真剣に向き合うべきテーマになっている。



参考記事

不況が自動車販売を深刻に低迷させている
出典: https://www.jalopnik.com/2041258/car-sales-sinking-crummy-economy/

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